Friday, June 21, 2024

喧喧諤諤 第232回:続・裏から見たお風呂屋さんの話

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喧喧諤諤 ケンケンガクガク
喧喧諤諤

6月、日本ではジメジメした梅雨の季節に向かう時期ですが、先月でも結構雨の日があったりして季節の移り変わりや区切りが以前ほど明確でなく曖昧になっている感じがします。当地米国ではメモリアルデーの連休が過ぎて学校が夏休みに入る時期になりましたが、今年は去年までコロナ騒ぎで自重されていた対面の卒業式や卒業パーティーが復活しそうです。人生の大きな節目である高校や大学の卒業式が対面で出来るのは本人にとっても親にとっても大きな喜びでしょう。ビジネスシーンではコロナパンデミックの影響で重要度、緊急度、必要度の高いエセンシャルワーク以外の仕事や業務の多くはリモートワークにシフトしていましたが、ここに来て雇用者側は社員を従来の職場であった事務所や工場に戻す動きが出始めているようです。決められた時間に決められた場所で働くスタイルから離れ、通勤時間や交通費、ガソリン代を節約できる自宅やリモートで働く自由度の高いスタイルに慣れてしまった社員の中には必要性に疑問を持ったり、個人的なわがままから元の就業形態に戻ることに抵抗や不満を持つ人も少なからずいるようです。一体感やコミュニケーション、チームワークの維持・強化を目指す経営者側と従業員側それぞれに理由や意向があるようですが、仕事の効率化だけでなく社員の参加意識、意欲向上を推進する動機付けと環境作りが必要です。

 職場環境で仕事に対する意欲や効率が変わる一例として思い出したのは、長女が大学生だった頃に親のキャンパス訪問ウィークエンドがあり、夫婦でキャンパス訪問した際に、たまたま同校の有名なベテラン心理学教授の引退前の最後の授業を親も聴講できると聞いて同席した時のことです。円形ドーム型大講堂の階段席に学生と親を合わせて何百人もの聴講者がいましたが、スライドを使った教授の授業の中で特に私の興味を引いたのは空軍パイロットの敵機識別能力テストに関する部分でした。教授の専門分野である心理学の見地から空軍パイロットが正規の軍服を着ている場合と私服の場合の敵機識別能力の比較テストの結果にかなりの有意差があるというものでした。即ち、私服の時よりも正規の軍服を着ている方が敵機の識別能力(遠距離での視認や友軍機との識別も合わせて)が高いというテスト結果です。軍服を着ている場合は職業意識、就業意識が高く集中力が高まり識別能力が高くなるためという教授の心理学的見解でした。なるほどと思い今でも強く印象に残っています。

 パンデミックで一般的になったリモートワークやリモート学習の効率、成果にも通じるものがあると思います。人間の心理は環境に影響される要素が大きいので、自宅で朝起きてパジャマ姿のまま仕事を始めたり、授業を受けたりすると「仕事をする」、「勉強する」という意欲や集中力が高まらず、効率が上がらず成果も期待通りに出ない恐れがあるということです。ビジネスミーティングも対面からバーチャルとなるケースが増えましたが、上半身や背景などの見える部分だけ体裁を繕い、下半身はパジャマやトレーナー姿とか実際の背景は物が散らかった寝室またはリビングルームとかいう環境ではオフィスに出社したり客先に訪問してするミーティングと緊張感や集中力のレベルが異なり効率や成果も期待薄になる可能性が増すということですね。例が適当でないかもしれませんが、女性が普段外出時にはきちんと化粧して出掛けるのに、コロナ騒ぎでマスク着用が習慣化、常態化し、マスク着用時には「周りからは見えないからいいか」と化粧をしないで外出することが多くなり、会食などでマスクを外す必要があった際に化粧無しであったことに気付いて慌てるケースも似たようなものかもしれません。化粧してマスクをするとマスクが汚れてしまい洗って再利用するか、使い捨てになるので化粧無しにするのにも理由がありますが、人付き合いや心理学的な点で気を使いますね。(閑話休題)

 スポーツの話題やウクライナへのロシア軍侵攻、米国内での直近の連続銃乱射事件、コロナ騒ぎが収束しないまま一部規制緩和が進む中で新たなモンキーポックス(サル痘)の発生、継続・長期化するインフレーションなど触れたい深刻な項目は沢山ありますが、今回のテーマは先月号の続きで「続・裏から見たお風呂屋さんの話」にします。

 前回廃業になったとお話した生家の風呂屋はGW連休明けから建物の解体・取り壊し作業に入りましたが、通常の建物と設計も作りも大きく異なる風呂屋の建物は解体・取り壊しも容易でなく、梅雨時を挟んで来月7月末まで掛かる見込みとのことです。廃業の届出や解体作業の許可申請など経験のない事務・書類手続きも色々あって大変なようですが、梅雨の長雨で作業が遅れたり、想定外の問題が起きたりしないことを願っています。義姉と姪の家族は近隣のマンションに引っ越し済みで環境や生活習慣は様変わりしましたが、少しずつ慣れて安定しつつあるとのことで一安心です。

 先月号でも他の風呂屋と違う特徴として1番の違いは水道水ではなく井戸水を使っていたことと書きましたが、カルキ臭がありチョロチョロしか出ない水道水を使っている近隣同業者に比べて豊富な水量が出るのが気に入られて、自宅近くの風呂屋ではなくわざわざ遠くから車で来るお客さんもいました。カランを押せばお湯がバシャバシャ出るので、お客さんは文字通り湯水のように使っていたものです。自宅の内風呂では水道代が更に気になりますよね。

 もう一つの特徴は湯を沸かす燃焼釜が燃料として重油の他に薪、オガくず、石炭も使える併用タイプだったことです。改築設計時にそこまで細かく意識・考慮していたか分かりませんが、世界中を騒がせたあの第1次、第2次オイルショック当時にはこの併用釜が大いに威力と存在価値を発揮し、重油専用釜にしていた同業者が燃料供給を断たれて休業を余儀なくされた間も営業を続けられ、お客さんにも大いに喜ばれました。その後も廃業まで高価な重油よりも遥かに安価な木材の端材や薪の使用で運営コスト削減、収益改善に役立ったようで貢献度大です。

 また、改築前の旧風呂屋には中庭(当然ながら覗き防止のために高い塀に囲まれていました)があり、今では余り見掛けない広葉樹や草木が植えられていて春夏にはモンシロチョウ、紋黄チョウ、キアゲハ、ムギワラトンボ、シオカラトンボ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ニーニーゼミなどが入れ替わり、立ち替わりで訪れ、庭でセミ捕り、トンボ捕りをしていました。ある時にはキアゲハが草木に産みつけた卵からイモ虫が生まれその草木の葉を全て食い尽くしてから蛹(サナギ)となり、数日後背中が割れて中からまだ翅(はね)が縮んだ状態のキアゲハが抜け出して数分で翅が伸び羽化した成虫として飛び去っていくのを目撃しました。後に残った丸坊主の草木は光合成ができず、翌年は2度と新芽が出ずに枯れてしまいました。また、ある時は広葉樹の根元近くに抜け殻になる前のアブラゼミのサナギがついているのを見つけ、家の食卓に持ち込んで観察しているとやはり背中が割れて同じく翅が縮んだ状態のアブラゼミが抜け出してきて、最初は全体が茶色ではなく白っぽく翅の翅脈だけが緑色だったのが凄く印象的でした。数分で見る見る内に胴体も翅も茶色に変わり成虫になっていきましたが、左右4枚ある羽の片側の一部が何故か癒着していて翅を伸ばせず飛べない状態だったため、慎重に指で剥がしてあげてから窓を開けて離してあげたら無事に飛び去っていったので子供心にホッとした記憶もあります。今思えば天然の理科の青空教室だったなと懐かしく思うと同時に、近所のハス田のドジョウ、オタマジャクシ、カエル観察や小川、池でのザリガニ捕り、メダカやフナ捕り、セミ捕り、トンボやヤンマ捕り、昆虫採集など今の子供たちにはそういう環境や機会がなくて気の毒だなと改めて思いました。

 風呂屋といえば季節の行事として正月2日の朝風呂、5月端午の節句の菖蒲湯、12月の柚子湯もありました。年末の大晦日は年が変わる深夜過ぎまで営業し、一年の垢を流して元日はお休みの後すぐまた2日は新年のスタートに体を清める朝風呂と忙しい年末年始でした。3日はまた休みで家族揃って比較的近くの亀戸天神にお参りに行ったこともありました。菖蒲湯の時には頭に菖蒲の葉を巻いたり、葉を掌と指で挟んで息を吹き込んで鳴らしてみたりもしましたね。柚子湯の時は柚子を丸ごと何個も湯船に浮かべて良い香りに包まれながら入浴したり、裏で柚子を絞ってちょっぴり砂糖を入れて飲む柚子湯を楽しんでいました。

 また、昭和世代の方はご記憶があると思いますが、風呂屋といえば浴場の奥の壁一面の背景画ですよね。3〜4年に一度専門の背景画業者に依頼して描き替えるのですが、これが三日がかりの大作業。高所作業になるため何本も丸太を使って足場を組むのに1日、絵描き作業に1日、最後の仕上げタッチと乾燥、足場外しに1日かかりその間は休業でいつもは裏から入るお風呂に入れず、近所の同業者のところへ出かけました。私にとっては生まれてからずっと風呂屋の大きな湯船と洗い場が内風呂でお店側から入ったことがなく、番台で入浴料を払って他所の風呂に入るのはこの時だけ。一般の人には当たり前でも私にとっては特別な経験でいつもと違う周りの景色に違和感があり、落ち着いてゆっくり湯船に浸かっていられずサッと身体を洗ってそそくさと退散したものです。富士山や湖、海辺の景色など何種類かパターンがあるこの背景画も描けるプロがその後は減るばかりで今では皆無ではないかと思います。代わりに壁面全体をタイル画にして描き替えをしなくていいようにしている風呂屋がほとんどではないかと思います。

 ああ本当にあの大きな内風呂が懐かしい!なくなってしまったのは残念至極!!

 日本の公衆浴場は身体を清潔に保つだけの単なる入浴施設ではなく、ご近所さん達の重要な交流コミュニティー、心身ともにリラックス・リフレッシュできる大切な場所であり、男湯と女湯の区別はあっても老若男女、貧富の差や身分・階級に関係なく文字通り『裸のお付き合い』ができる場であり、何百年も歴史のある町の文化、日本の文化です。近年では来日した外国人観光客や長期・短期の滞在者が温泉ではなく銭湯を気に入ってわざわざ入りにくるケースも紹介されているので、今回生家の廃業は止むを得ないとしてもこの歴史と伝統を日本人である我々が大切に守って続けていけることを祈って末尾とします。

 まだまだ数多くの思い出があり、前後2回ではとても書き切れませんので、また別の機会があれば再度触れたいと思います。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第231回:裏から見たお風呂屋さんの話

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五月晴れ、端午の節句の5月になりました。日本では3年ぶりに緊急事態宣言もまんぼう法も無いゴールデンウィークの連休に各地で相当の人出があったようですが、今月中旬から下旬にかけてコロナの新規感染者が急増しないことを願っています。当地ミシガンでは先月中旬に1日だけ雪が積もり、咲き始めていた草花が驚いて冬が逆戻りしたかと首をすくめたように見えましたが、翌日には雪も消えてやれやれとまた背筋を伸ばし、勢いを増した陽射しの中で若葉や芝生の緑が目立ってきました。

 スポーツの話題では日米ともプロ野球が先月開幕しましたが、日本のNPBセ・リーグでは昨年最終盤までヤクルト・スワローズとリーグ優勝を争った阪神タイガースが何と開幕9連敗のセリーグワースト新記録。一時勝率が甲子園球場のある兵庫県西宮市の市外局番063を下回るのではないか?とまでされ、最悪4月中に今季自力優勝の可能性が消滅するかもしれないとまで言われましたが、何とか踏みとどまり、直近の先月末には4連勝し、半身不随タイガースからおめでタイガースに変貌しました。パ・リーグでは千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手が先月10日のオリックス・バッファローズ戦で13者連続奪三振のプロ野球新記録と毎回の1試合19奪三振のプロ野球タイ記録で元巨人の槙原投手以来28年ぶりの完全試合達成。毎回奪三振での達成は史上初、プロ通算14試合目での達成は史上最速、20歳5ヶ月(若い!)での達成は史上最年少と記録づくめのおまけ付きでした。その次の先発登板でも8回まで完全試合を継続し、17イニング連続無安打と52者連続アウトはどちらもプロ野球新記録。今後もどれだけ凄い記録を作っていくか楽しみです。

 一方米国MLBでは大谷二刀流復活。今シーズンは投打ともややスロースタートながら相変わらず話題には事欠きません。開幕戦1番・投手として先発したのが史上初ならば、開幕7試合ホームランなしも8戦目敵地で1番・指名打者で出場した対テキサス・レンジャース戦の第1打席で初球を豪快に叩き今季第1号を記録しただけでなく第3打席で第2号、翌日の試合で第3号と続けてファンの懸念を払拭しました。また、4/20敵地で先発登板した対ヒューストン・アストロズ戦では初回1球も投げる前に打者として2度打席に立ち、1900年以降では史上初の記録。この2打席は1四球、1二塁打で得点1、打点2。投げては強打のアストロズ打線を相手に6回1死まで完全試合、12奪三振の快投で投打に躍動するワンマンショーでした。今季から彼のために作られた感のある先発降板後も指名打者としてプレー継続可能になった新ルールにより同じ試合で二刀流を見る機会が増えそうですし、先発登板する度に『史上初』の新たな記録がまた幾つか生まれそうです。昨年は唯一見劣りがした打率は今年もまだ2割半ばですが、先月末には1試合3安打の猛打賞、休養日後の対クリーブランド戦では4号ホームランを含む2試合連続マルチ安打と調子を上げて来ており、まだ累積打数が少ないシーズン序盤の今は数試合マルチ安打が続けば急上昇するので期待できます。今シーズンは強打者の証であるホームラン数、長打率、打点に加えて好打者の証である打率3割も達成して欲しいですが、過剰期待でしょうか?

 ポスティング制度でシカゴ・カブスに入団した鈴木誠也選手も出だし好調で嬉しいです。日本での実績同様にMLBでも通用するか?活躍できるか?が注目されていましたが、ボール球に手を出さない選球眼の良さと左右、中央に打ち分けられる広角打法はMLBでも十分通用しますね。足の速さと広い守備範囲も合わせてカブスは理想的な外野手を手に入れたと言えます。性格も明るく球団内、選手間やメディアにも好印象を持たれており、MLB移籍は成功と思われる好スタートです。先月後半はやや勢いがしぼみましたが、大谷選手や他の日本人選手と共にシーズンを通して怪我なくこの調子を続けて完走して欲しいと願っています。気が早いですが、オールスターゲームで大谷選手と対決する夢のシーンが実現すると最高ですね。

 春めく当地を他所に、ロシア軍の侵攻・攻撃が続くウクライナからは連日悲惨なニュースと映像が届いています。和平交渉はプーチン大統領の意地を通したいロシア側が形式的なジェスチャーだけで本気で戦争を終結させる気がないと感じます。長期化しつつあるこの戦争はロシアとウクライナの国家間の戦争ではなくロシア軍を私物化して動かしているプーチン個人とウクライナの戦争の色合いが強いです。意地を張り続けるプーチンの兵力増強や兵器レベルアップと同時に民間施設、民間人攻撃も激化し、これに対抗・反発する米国・NATO陣営の兵器供与、戦術指導もレベルアップし、間接的代理戦争から米露の直接対決にエスカレートしかねない恐れもあります。万一、偶発的にでも米軍・NATO連合軍関係者やNATO陣営の地域が攻撃を受けたり、化学兵器や戦術核兵器が使われたりした場合はウクライナ一国の悲劇では済まない恐ろしく悲惨な事態になりかねません。鬱が高じて別な形の五月病にならないといいですが・・・

 先月末でウクライナから国外に避難した難民の数は550万人を超え、受け入れ先の国々もそれぞれ対応に追われていますが、ロシア軍の手中に落ちたと言われる南部のマリウポリではほとんどの建物が破壊され、投降を拒否している千人超のウクライナ軍と数百人の民間人が立て篭もるアゾフタリ製鉄所はロシア軍に包囲され蟻の這い出る隙間もない状況でしたが、グテーレス国連事務総長がプーチンと会談し人道的避難経路確保のための協議後民間人が数十人、百人単位で脱出できたとのことで、少なくとも民間人だけでも全員無事に脱出できることを祈ります。また、北部の首都キーウ(前呼称キエフ)近くのブチャーもロシア軍のコントロール下にあり、投降したウクライナ軍人が射殺され、道路に放置されていたり、無抵抗の民間人女性が自宅で子供と食事中に酒に酔った数人のロシア軍人に押し入れられ強姦されたなどという残虐で非人道的な戦争犯罪行為や国際法違反行為があったと聞いて強い憤り(いきどおり)を覚えます。こんな事があってはならず、許されてはなりません。1日でも早い戦争の終結と戦争犯罪行為の立証、犯罪者の糾弾・懲罰を願います。

 前書きはここまでにして、今月号の本題『裏から見たお風呂屋さんの話』に移ります。

何故このタイミングでこんな話題?と不思議に思われる方が多いと思いますが、お風呂屋さんと私はこの世に生まれてから今まで切っても切れない深い縁で結ばれています。読者の中にはご存知の方もいらっしゃると思いますが、実は私の生家はお風呂屋さん(公衆浴場)です。

 東京都内江戸川区の西小松川町に『小松湯』という名で店を構え、三男坊で末っ子の私が物心ついた幼稚園年少組の頃から同じ場所にありましたので、少なくとも約70年の歴史があります。その場所に移る前に別な場所で営業し、2度空襲で焼けて今の地に建て直したと亡き母から聞きましたので、店名は変わったとしても公衆浴場業としては前後4代100年近くになると思います。今回本欄で私的な記事を書くきっかけになったのは、その思い出深い小松湯が先月29日付で暖簾を下ろし、店仕舞いしたためです。3月末に廃業すると聞いて居ても立ってもいられず、日本の入国手続き、フォロー管理が緩和したのを幸いに4月4日出発、10日帰米の駆け足で一時帰国してきました。(余談ですが、私が風呂屋の息子と分かるとほとんどの人、特に男性が尋ねてくる質問は「番台に上がったことある?」ですね。耳にタコができるほど何度も訊かれるので、私は「あるよ。」と先ず答えます。相手の目が好奇心で輝くのを見てから次に「休みの日にね。」と言うと輝きが失せます。私が長男だったらひょっとして家業を継ぐか、臨時応援で番台に上がることもあったかもしれませんが、若い男性が番台に上がると若い女性のお客さんが嫌がり敬遠されます。綾小路きみまろのギャグが好きな中年のおばさん、おばあさんは若い男性でもお構いなし(むしろ歓迎?)ですが、若い女性客が他の風呂屋に鞍替えされては商売になりませんので、男性が番台に上がる場合は既婚者のおじさんかおじいさんが相場です。それにしても今改めて思うのは、不謹慎ながら「お金をもらって女性の裸を見れるのは風呂屋だけかも?」です。ヌードショーにしてもストリップショーにしても通常はお金を払わないと見れませんものね。下衆(ゲス)な話で失礼しました。話を本線に戻します。)

 私が幼稚園児の頃既に祖父は他界していましたが、祖母はまだ健在で私の両親が家業を継いでいました。父は当時江戸川保健所の所長と二足の草鞋を履いており、実際の店の切り盛りは表のお客さん相手の仕事は母が、裏の仕事は住み込みの番頭さんが当たっていました。私が小学3年生9歳の時に父が脳溢血で急逝した後しばらくは母が経営者として取り仕切っていましたが、住み込みの番頭さんの扱い対応や年配男性がほとんどの公衆浴場組合の会合、燃料供給業者との交渉など当時は女性では難しい環境であり、長兄が大学卒業のタイミングに合わせて母の余生と我々兄弟、姉が社会人として独立するまで面倒を見ることを条件にして家業を譲りました。私が社会人となって名古屋に就職後しばらくして、その長兄が時代の移り変わりに合わせて古くなった風呂屋の改築・改装という一大決断をして新しい建物となり、私が幼少時代から大学卒業まで住み慣れた住居も風呂屋の建物、店構えも様変わりし、「もうこの家は私の家ではないな。兄夫婦と姪・甥の家だな。」と実感した次第です。

 長兄は若い頃から高血圧症の気があり、結婚後姪二人、甥一人の子持ちとなってからは自分自身で食事療法と生活習慣改善にかなり気を使って、塩分を控え好きなビールも週一1本だけに抑えて数値も良好になっていたと義姉から聞いていたのですが、50代半ばの働き盛りの時に皮肉にも定期検診に出掛けた病院のロビーで待っている間に突然倒れて急逝しました。当時既に米国赴任中だった私も家内も姪からの国際電話で訃報を聞いて大いに驚きましたが、死因は動脈瘤破裂とのことでしたので若い頃の高血圧症が遠因のようでした。誰も全く予想していなかった突然のことで、慌ただしく葬儀を終えた後家業をどうするか?継続するか、廃業するか?という大問題を前にして残された家族と近しい親戚一同が熟慮の結果、当時30代半ばだった長兄の次女にあたる姪が「私がやります!」と決意を表明し、家業を承継しました。当時姪にはまだ小学生、中学生の子供がいる家庭事情でいきなり日々の現金収入がなくなり、今までの生活が続けられなくなる事態を避けるために止むを得ない選択だったかもしれませんが、清水の舞台から飛び降りるくらいの決断・決意だったと思います。それ以降先月末までの20年間表のお客さん相手の事しかやったことのない義姉を支えて交代に番台に上る役目と合わせて、住み込みの番頭さんと一緒に全く経験のない裏の仕事も切り盛りしてきたことはもの凄い忍耐と努力を必要とする大仕事だったはずです。

 裏の仕事と一言で言っても、お客さんが出入りする店側からは窺い知れない別世界で毎日店が開く前と閉めた後の数時間にわたる作業で、着替えをする板場やトイレ、ロッカー、小児用の着せ替えベッド、足拭きマット、下駄箱、出入り口周りの掃除、燃料の仕込み、下湯の準備と湯加減の調節、店舗内販売の飲料の在庫管理・補充、入浴関連用品(石鹸、シャンプー、タオル、垢すり、髭剃りなど)の品揃え在庫管理、釣り銭の準備、閉店後の湯船と洗い場・カラン・シャワー、鏡、腰掛けと湯桶の掃除・水切り・乾燥など店が閉まっている間も裏の仕事は続いており、その合間に家事と子育てをする超激務なので、それを若女将として20年も続けたことに大いに感服し頭が下がります。私にはとてもできません。今のご時世の風呂屋は人を雇って営業していたのでは利益が出ず、家族営業でなければ経営を続けるのは至難の技です。小松湯も義姉の知り合いで山梨から引っ越してきて長年働いてくれていた家族同然の住み込みの番頭さんが数年前に引退した後は雇いの番頭さんを使わず、姪が女手一つで仕入燃料の角材の切断作業など男でも大変な裏の力仕事も全て面倒見ていたそうで二重に驚きです。

 私が住んでいた頃は風呂屋の営業時間は午後3時から夜中の12時過ぎ、1時近くまででした。理由は一般のお客さんと違いそば屋、すし屋、中華料理店、飲食店などいわゆる店屋業の職人さん達が夜遅く仕事が終わってから入浴できないと困るからです。夜11時半過ぎごろには店の入り口の引き戸を半分以上閉めて細く開けておき「職人さんオンリー」を暗示していました。また、開店時間もお年寄りは身体には良くない一番風呂を好み、30分以上も前から入り口前で立ち話していることが多いので、寒い冬場は特に早めに開けて入ってもらっていました。

 店舗と住居が併設の風呂屋の建物は通常の建物より天井が高く3階建て相当の高さがあります。天井が低いと湯気が直ぐに天井に当たり結露して冷たい水滴が背中に落ちてヒヤリと感じるパターン(ドリフの「いい湯だな」の歌詞そのもの)を避けるためです。東京ディズニーランド方面に向かう首都高速道路ができる前までは、年末年始休みや台風一過のスモッグのない晴天の際には2階の窓から遠く駿河湾越しに富士山が望めました。積み上げた薪材やドラム缶入り廃油(コールタール)の燃料置き場だった隣の空き地にアパートが建つ前は夏恒例の両国隅田川の打ち上げ花火も良く見えましたね。この空き地は近所の子供達の遊び場にもなっていて、缶蹴り、かくれんぼ、馬跳び、キャッチボールやゴロピッチ(ピッチャーはボールを投げずに転がし、バッターは地面を拭き払うようにボールを打つ)の三角ベース野球(スペースが狭いためホームベース、一塁、2塁だけの三角形状)をよくやりました。また、積み上げた薪材から2〜3本薪を引き抜いて刀代わりにしたチャンバラごっこや3〜4メートルの高さの薪材の上に登って当時人気のTV番組『月光仮面』の真似をして「ターッ!」と掛け声を発しながら飛び降りたりしていました。足を捻挫したり骨折しなかったのは幸運でした。

 他の風呂屋と違う小松湯の特徴はいくつかありましたが、1番の違いは水道水ではなく井戸水を使っていたことです。井戸水と言っても昔の映画に出てくるような丸井戸に鶴瓶で組み上げる小さな井戸ではなく、長い鋼管を何本も連続して地中深く打ち込んで地下何百メートルの綺麗で潤沢な地下水を組み上げる井戸水です。地表近くの浅い井戸では雨水や生活排水が紛れ込む恐れがありますが、地下何百メートルの深さまで行くと途中何十、何百の地層がフィルターとなり極めて水質の高い天然のミネラルウオーターが汲み上げられます。実際に中学校の理科の時間にリトマス試験紙などを使った水質検査の授業があり、先生が水道水以外の水を持ってこれる人を募集したので我家の井戸水を持参して検査してみたところ水道水よりずっと上質で綺麗だったと先生に言われ嬉しかった思い出があります。

 この井戸工事が難産で、確か途中まで打ち込んだ鋼管の角度が曲がってしまい、それを引き抜いてまた打ち込み直し作業を2度繰り返したと記憶しています。工事屋のお兄さんが「過去にも親切にしてくれるお客さんほどこんな事故があった」と言っていたそうですが、今でもそのお兄さんの顔がはっきり浮かびます。眉毛が太く、キリッとした顔立ちで体格もがっちりした男らしい人で、今で言うイケメンに近い印象でした。昨日や一昨日のランチのおかずは覚えていないのにずっと昔のことは覚えているなんて不思議ですね。「三つ子の魂百まで」でしょうか?

 1ヶ月以上もかかった難産の結果、最終的に狙い通りの地点に到達し、ポンプで汲み上げた地下水に初めて触れた感触は「温かい」でした。地下水は外気温に比べて冬は温かく、夏は冷たい感じがするものですが、夏場にスイカを冷やしておくと冷蔵庫に入れておくのと同じような効果があります。家庭の電化が進んでいなかった当時はまだ冷蔵庫がなく、氷屋さんが配達する氷の塊を氷冷庫に入れてそこに肉や魚、牛乳など冷蔵の必要な食品を保管するシステムでした。懐かしいですね。

 ここまで書いて通常のページ数、行数をかなりオーバーしているのに気付き、ここで一旦中断して、続編は次号以降に致します。中途半端をご容赦ください。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第230回:ロシア軍の攻撃続くウクライナの春

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卯月4月、日本では政府や多くの企業、各種学校の新年度、新学期になりました。桜前線も南から北へ移動し、各地でサクラ便りが聞かれます。『まんぼう法』が解除された直後の週末には場所によってはかなりの人混みが見られたようですが、オミクロン株の主流系統だけでなく派生変異種で感染性が更に強いBA.2が新たな感染爆発に繋がらないように個人、個人がガードを下げないように要注意ですね。米国では先月末FDAとCDCが2回目のブースターショット使用を承認した2社のワクチンでブースター1回目から4ヶ月以上経過した50歳以上の人に2回目のブースターショット(合計4回目のワクチン接種)を奨励したのに続き、バイデン大統領が記者会見で直々にパンデミック収束に向けて最新の対策方針を発表し、特に未接種もしくは、接種回数不足の国民の理解と協力を求めました。早速自分が2回目のブースターショットを受ける映像もニュースで流れていましたね。またコロナに関する総合的な情報を一元的に管理・掲示する連邦政府のウェブサイトを立ち上げ、国民が偽情報・誤情報に振り回されないように正確で有用な情報を提供するシステムが遅ればせながら2年越しで出来上がりました。これであちこちのウェブサイトに行って個別の情報を探さなくても1箇所で済むのは時間の節約上もありがたいですね。料理のメニューで言えば、好みの料理が単品のアラカルトではなく定食セットメニューで提供されるのに似ています。

 先月割愛したスポーツの話題では、待ちに待った球春到来です!

 日本ではいち早くレギュラーシーズンが開幕し、見どころや期待の選手、優勝チーム予想などがニュースになっています。昨シーズン終了後から大きな話題となっていた日本ハム・ファイターズの「ビッグボス」こと新庄新監督が注目されていましたが、期待とは裏腹に開幕5連敗のスタートとなり、本人も周囲も心穏やかでなくなりました。初勝利を挙げられればチームも彼も心機一転で流れが変わると思うのですが、本紙が皆さんのお手元に届く頃には初勝利の祝杯を挙げているでしょうか? 就任1年目は何かと多難と思いますが、リーグ優勝とまで行かなくとも話題先行だけにで終わらず実力、実績もついてくるといいですね。

 当地米国では、長引いていたMLBオーナー会と選手会の団体交渉がようやく合意に達し、各球団のトレーニングキャンプとオープン戦が始まりました。レギュラーシーズン開幕は今月7日、1週間ほど遅れましたが、シーズンの試合数が大幅に減らずに済んで本当に良かったです。今年も楽しみにしていたSHOTIME=二刀流大谷劇場が観られるのは「めでたし、めでたし。」また、ポスティングシステムでシカゴ・カブス入団が決まった鈴木誠也選手もホッとしたことでしょう。今やベテラン組のダルビッシュ投手、前田投手、菊池投手らと共に同姓のイチローさんの後継者として日本から移籍した他の野手も活躍できることを実証して欲しいですね。テニスでは男子の錦織選手は今年初めに実施した股関節手術の術後ケアで引続き長期離脱中。西岡選手やプレーが進化したダニエル太郎選手が頑張っていますが、錦織選手が引退する前に有望な新人は出て来ないでしょうか?

 女子では昨年出場試合数、獲得ポイント数が少なくランクが一時80位まで落ちた大坂選手が先月末週に開催されたマイアミオープンではかなり復調し、本稿作成時では準決勝進出が決まっていましたが、最終結果はどうなったでしょうか? これからシーズンが本格化するので、とにかく心身ともに健康で伸び伸びプレーする姿を見せて欲しいですね。今回はダメでしたが、ベテランの土井選手やダブルスの青山・柴原組も応援したいです。

 では、今月号の本題『ロシア軍の攻撃続くウクライナの春』に入ります。

 皆さんも連日のニュースでご存知の通り、北京冬季五輪閉幕直後の2月24日に始まったロシア軍のウクライナ侵攻は1ヶ月余り経過した今なお続いています。ウクライナの東部、南部、北部の3方から次々と侵入を繰り返し、国境近辺の地上部隊やクリミア半島南部の黒海沖に停泊中の艦艇からのミサイル攻撃、戦闘機やヘリコプターによる空爆、戦車・装甲車と歩兵部隊による地上攻撃など連日にわたる攻撃でウクライナ国軍や義勇軍、空港などの軍事施設、官庁・政府機関の建物、原子力発電所、通信アンテナ・施設などのインフラだけでなくロシアの国連代表や外相の「民間人、民間施設は攻撃しない。していない。」との公式発言とは真逆で民間施設、民間人を標的として意識的に攻撃している節があります。犠牲者のニュースを見るたびに心が痛みますが、特に悲惨だったのは『難民回廊』と呼ばれる幾つかの指定避難経路を通って両軍が攻撃休止合意した時間帯に国外に避難しようとしていた幼少の子供連れの家族が本来ならあるはずのないミサイル攻撃の巻き添えで亡くなったり、400人以上の民間人が観劇中の劇場がミサイルの直撃を受けて崩壊し、100人程は救出されたものの瓦礫の中に埋もれた300人以上(正確な数は未だに不明)は継続するロシア軍の攻撃下では直ぐに捜査・救出作業が出来ず、残念ながら次々と遺体として発見される結末となったことです。

 この21世紀の時代に空襲警報のサイレンが鳴り、人々が建物の地下や地下鉄の駅構内に避難する映像を見て、亡くなった母が私の子供時代に話してくれた第二次世界大戦末期の東京大空襲の話を思い出しました。戦時経験者の多くは酷くて悲しく恐ろしい戦争体験談を思い出すのが嫌で余り子供や孫には話さないようですが、私が小学生高学年だったその時に一度だけふと話をしてくれたのが印象に残っています。

 東京大空襲は1942年4月18日から1945年3月10日の長期間にわたり東京都市部を標的に60回(都下、諸島を含めると100回以上)を超えた無差別空爆のことですが、南方から飛来するB−29戦略爆撃機の大編隊が何列も横並びになって一つも目標を外さないように大量のナパーム弾と呼ばれる油脂の雨を降らせたいわゆる『爆撃』を繰り返し、確認された遺体数だけでも10万5千人超、負傷者は約15万人、罹災者(焼け出されて家の無くなった人)約300万人、罹災住宅戸数約70万戸の被害をもたらした大空襲ですが、最も大規模で被害が酷かったのが3月10日夜間に低高度から軍需施設がほとんどない下町の住宅密集地帯と民間人の殺戮と戦意喪失を狙った下町大空襲です。折りからの強風に煽られた火災は直接標的だった地域だけに留まらず、下町の大部分を焼き尽くし一帯は地獄絵となりました。

 母の話によると空襲の際には「空襲警報発令」とともに今はない火の見の半鐘が鳴らされ、各家庭では電灯の灯りが漏れて標的にされないように電灯の傘の周りを黒い布切れで覆い地下に潜るか、指定の防空壕に避難するかして空襲が終わるのをひたすら耐え忍ぶだけだった由。防空壕に避難する途中で体の近くに爆弾が着弾するとその衝撃で目玉が飛び出すこともあるので、避難する際には手で瞼を押さえて逃げ込んだ、という嘘のような話も聞きました。3月10日夜の大空襲では江戸川区側の自宅近くを流れる江戸川と荒川放水路の向こう側(いわゆる川向こう)江東区の本所、深川辺りが遠目からでも見渡す限り一面の火の海で夜空を明々と照らしていたそうです。当時の自宅は今も続いている公衆浴場(風呂屋)でしたが、戦時中に2度も空襲で焼け出されそこは3軒目で、それがなければもう少し財産が残っていたはずと一度だけ母がこぼしていたのも覚えています。そんな絵空事のような昔話を思い出すようなウクライナでの空爆は本当に信じられない出来事です。余談を元に戻します。

 国外に避難したウクライナ難民は隣国ポーランドやルーマニア、ハンガリー、スロバキア、モルドバ、更に西方のチェコやドイツにも達し、遠く米国や日本も含めると先月末で総数400万人を超えたとのことで、とんでもない数の人々が悲惨な目に遭っています。中でも目立つのは小さな子供連れの女性や高齢者の姿ですが、18歳から60歳(先月号の50歳は誤りでした。訂正してお詫びに代えさせていただきます。)までの男性は国内に留まる義務を命じた国令で家族とは離れ離れになっても武器を持って国を守る意思のある者には武器が与えられてロシア軍に抵抗しています。米国やNATO加盟諸国からの武器・物資供給、軍事支援・指導を受けながら国家の存亡を賭けた戦いに臨む義勇軍や民間人志願者の意志は強烈でロシアのプーチン大統領や軍幹部の予想を遥かに上回る抵抗に合いロシア軍にもかなりの死亡者、負傷者や戦車、装甲車、ヘリコプターなどに物的損害が出ているようです。『ジャべリン』と呼ばれる人が持ち運び可能な歩兵携行式多目的ミサイル発射装置や携帯式防空ミサイルシステム『スティンガー』の攻撃で撃墜炎上した軍用ヘリ、破壊されたロシア軍の戦車や装甲車、兵運搬車両が道路に放置されたり、その近くに横たわるロシア兵士の死体を映したニュース報道もありました。

 ロシア側は認めても公表もしていませんが、一説では既に1万から1万五千人の死亡者とその何倍かの負傷者が出ているのではないかと見られています。歩兵部隊による地上銃撃戦と異なり、軍用ヘリや戦車・装甲車などは必ず複数の乗員で出撃するため1機、1台が破壊されると複数の犠牲者が出るので必然的に被害が大きくなります。プーチン大統領と軍幹部は、ウクライナの抗戦力を物質・精神両面で過小評価していたと同時に、トランプ前政権時代に「NATOは時代遅れの遺物」とか「NATOを継続・維持するためには加盟国がそれ相当の費用を負担すべき。米国は余分には負担しない」と言って従来の慣例を突然変えて結束力を弱め、自分の考えや意向に従わない国を名指しで非難して相互の信頼・尊重関係が崩れていると見て、ウクライナ侵攻を実行してもNATOが即時に結束して対応策を取らないうちにウクライナの主要都市占拠、現政権転覆、ロシア寄りの傀儡政権樹立が極めて短期間で完了すると予測していたと思われますが、予想に反して驚くほどの抵抗力、反発力に遭遇し思い通りに事が運ばず、自軍の損害と犠牲者は増えるばかり。長期戦に備えていなかった兵線が断続的になり物資供給不足でカサにかかった攻撃が続けられず、一時は占拠しかけた都市もウクライナ側の反攻に遭い直ぐに明け渡して退却せざるを得ない場面があり、一進一退の状況が続いています。

 驚くべき事に、ウクライナから国外に避難する人の流れに逆行して家族を見送った後ウクライナに戻り、国を守るためにロシア軍と戦う勇敢な戦士たちや国外から生まれた国ウクライナに戻り仲間と一緒に戦う愛国者もいます。中には戦争が始まってから結婚した若夫婦や武器を一度も扱ったことのない一般の若者や隠居暮らしの老人、火炎瓶製造や食料・飲水の配布で活躍する家庭の主婦の姿もあり、映画やドラマではないリアルな世界での愛国心と信念の強さに心を打たれました。

 ベラルーシ国境付近で複数回開催された二国間の直接和平交渉もロシア側の本気度が疑わしく、単なる時間稼ぎでその間にも抜き打ちの攻撃を計画・実行していたようでまとまる道理がありませんでした。最新の状況ではトルコのエルドアン大統領が仲介役を買って出て新たな和平交渉が始まりましたが、今回は話がまとまるかどうかは疑問です。私見では、プーチン大統領が「ウクライナは歴史的に旧ソビエト連邦、ロシア連邦の属領であり独立国と認めない。親ロシア派住民が虐待され、虐殺されている2州はロシア連邦内の自立国として承認し、保護する」と自分勝手なをつけてウクライナに対して最後通牒も宣戦布告もなしにこの気違い染みた戦争を始めた以上、予想以上の多大な損害と犠牲者が出たまま振り上げた拳を下ろして、国全体の占拠、政権交代、属領化は無理としても、何も戦果も手土産もなしで手ぶらでおめおめと軍隊を引き上げるわけにはいかず、和平交渉が合意するには、強盗に押し込まれたようなウクライナ側が何らかの譲歩をしないと更に攻撃が無差別で熾烈・凄惨なものとなり事態は悪化、泥沼化するのではないかと思います。喩えとしては適当でないかもしれませんが、大分以前にある知人が「会社に国税の調査が入った場合は何も手土産なしでは帰らない。何か出るまで居座られて調査が長引くよりも、多少議論の余地や疑問があっても先方の言い分を受け入れて、そこそこの手土産(追加納税)を持たせて早く引き上げてもらう方がいい」と言っていましたが、それと似た感じです。

 真冬でも凍らない不凍港が喉から手が出るほど欲しいロシアは、黒海に通じるクリミア半島を強奪しましたが、それと連動して国際交易の要衝でウクライナ第三の都市オデッサを手に入れたいのでしょうが、そこはウクライナにとっても国家経済の太い生命線でもあるため譲るわけにはいかないので、南部か南東部でそれより格下の都市を一つか二つ含む地域を渋々でも譲渡しないと収まらず、戦争は終わらないのではないでしょうか?

 それ以外の考えられるシナリオとしては、米国とNATO加盟国を始め、人権と自由民主主義を支持・擁護する西側諸国、アジア、アフリカ、南米の諸国が結束してロシアやプーチン大統領と取り巻きの大富豪など国や企業、個人に対して実行しているかつてない規模とレベルの金融・経済制裁が時間経過とともにロシア経済、国民生活に致命的な打撃となってロシア国内の戦争反対・終結を求める声が大きくなり、全国的な大きな波となってプーチン政権を揺るがし、戦争を止めざるを得ない状況に追い込まれるかでしょう。いずれにしても多数の犠牲者、崩壊された都市、国外に逃れた何百万人の難民、直接当事者の両国だけでなく何らかの形で関与した国々の疲弊し活力を失った経済、何も生産的な効果に結びつかない巨額のお金の無駄遣い等々でこの戦争は(この戦争も)結果として敗者が残るだけで、誰も勝者なき戦いに終わりますね。ホモサピエンス=賢い人は幻か、人類の自惚(うぬぼれ)に過ぎませんでした。本当にやり切れない、悲しい事です。

 現地取材の多数のレポーターから送られる悲惨な光景やインタビューの映像を見ると時々小雪がチラつく画面がありましたが、この悲惨で無慈悲、無意味な戦争が終わり、ウクライナに本当の春が訪れるのはいつのことでしょうか?

 敵味方の区別なく、犠牲者の方々のご冥福をお祈りするとともに、ウクライナ国外に避難された方々や国内に留まっている方々の苦難が少しでも軽く済みますようにお祈りして末筆とします。(合掌)

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第229回:プーチン殿、ご乱心!?

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喧喧諤諤

3月弥生になりました。当地ミシガンでは桃の節句、ひな祭りもすっかり縁遠くなりましたが、先月日本の留守宅で義母が虫干しを兼ねて久しぶりに出して飾ったひな壇の写真を義妹がスマホで撮って送ってくれ、目を楽しませてくれました。娘たちが小さかった頃同じひな飾りの前で人形を愛でながら柏餅、ちまき、ひなあられなどを口にしていた遠い昔の光景が頭に浮かび、懐かしく思いました。日本では梅の便りが聞かれ、南から桜前線が北上する春の訪れが近いようですが、こちらではまだ雪が降る日があり、冬を抜け出しておりません。それでも少しずつ日が長くなり、日差しも強くなっているのは間違いありません。

 そうした中で先月下旬に突然起きたロシア軍のウクライナ侵攻は信じ難い事件です。先月号の本欄で侵攻がないことを心で祈りながら、もしあるとしたら「北京冬季五輪閉幕後が一番危ない」と書きましたが、不幸にもそれが当たってしまいました。この21世紀の時代に、それも『世界の火薬庫』と呼ばれ、常に紛争の火種が絶えない中東でも南北朝鮮問題がある極東でも中南米やアフリカでもなくヨーロッパ大陸でこんなことが起こるとは誰が予想したでしょうか?一体全体、プーチン大統領に何があって、こんな気違いじみた暴挙に出たのでしょうか?

 それに関連して、今月号では「プーチン殿、ご乱心!?」をテーマとして取り上げます。スポーツの話題は今回お休みです。

 遡(さかのぼ)れば、米軍関係者や国防省が衛星写真などで確認した事実として年明け早々1月から10万人規模のロシア軍大部隊が東部ウクライナ国境付近に集結しているというニュースが流れ、その数が2月には15万人から20万人近くまで膨らみ、外交・軍事関係者でなくても2014年に起きたロシア軍のクリミア半島占拠の再現か?と不安な空気が流れました。当時はウクライナに投資しているロシアの大富豪絡みで政権幹部の贈賄・背任行為、選挙違反などの不正事件でウクライナ前政権は国内がゴタゴタしており、オバマ政権時代の米国や西側諸国も対ロシア戦略上及び国際安全保障上の重要拠点として認識はしていても、国家としてのウクライナを完全には信用できず、経済支援や軍事支援も限定的だったため、ロシア帰属復帰希望者が過半数であったというクリミア地区住民のレファレンダム(直接国民投票)の結果(不正の疑いあり)を盾にロシア軍がそのまま居座り、親ロシア派グループとともに無抵抗で占拠となり、今も継続したままです。

 その後ゼレンスキー大統領就任で政権が安定し、経済的にもロシアの大富豪だけでなく西側諸国からの投資や新規開発プロジェクトが進み、軍事面でも同様の支援を受けて2014年の二の舞にはならないと現政権も諸外国も思っていたのですが、「もしもロシア軍が越境して侵攻すれば過去に前例のない強烈なサンクション(経済・金融制裁)をする」というバイデン大統領直々、再々の事前警告にもかかわらず、正式な宣戦布告もないままロシア軍が侵攻してこの緊急事態となりウクライナ政権・国民だけでなく世界中を驚かせました。プーチンに一体何があったのでしょう?

 動機となる理由は先月号でも少し触れましたが、プーチン大統領は本気で旧ロシア帝国かソビエト連邦のような専制国家、諸国同盟・連合、社会主義統合経済、覇権政治復活を目指しているのでしょうか?

 トランプ前大統領就務時代の4年間で米国とNATO同盟国間の相互信用低落、信頼関係悪化、結束力低下が顕著だったため、ウクライナ侵攻を強行しても米国と
NATO諸国は足並みが揃わず強硬な対抗手段を取れないだろうと舐めていた節があったプーチンは国内で部下に対して我儘し放題だった手前対外的にも大胆に振る舞わないわけにいかず、何も成果がないままロシア軍撤退という形で一旦振り上げた拳を簡単に降ろせなくなり、面子が潰せないプーチンは頑固に意地を張ってわがままを押し通した結果だと思います。米国とNATO諸国もプーチンの個人口座・資産の他ロシア最大の銀行を含む主力大手銀行やプーチンの資金源となっている大富豪の銀行口座凍結、取引停止、SWIFT制度からの除外など、これ以上無いほどの強力な追加サンクションを実施し彼らの重要な財源、資金源を断ち切っているので、ロシア経済の生命線であるドイツ他西欧諸国向け石油・天然ガス供給ラインの運転停止や先進国金融・経済圏からのシャットアウトで既に低迷しているロシア経済は更に悪化して国内動乱・暴動、政権崩壊の引き金になると思われます。ドイツは国内消費石油の約半分を世界第2位の石油産出国であるロシアから購入していたので米国など代替え供給源に切り替えて供給確保、レベル維持するのも一苦労ですが、グローバルで石油需給バランスが悪化するため、我々の生活も真っ先にガソリン価格が更に高騰したり、生活用品などサプライチェーンも影響を受け、今後の展開次第では株価暴落、経済衰退、最悪世界恐慌に繋がる恐れまであるので、今後の展開から目が離せません。

 フランスのマクロン大統領他プーチンと直接何度も接触した経験がある複数の政治家・軍事専門家は、彼の直近の言動が以前と違ってきたと証言し、政治・経済評論家は継続する新型コロナのパンデミック騒ぎもあってロシアの国家的存在価値や立場が衰退・弱体化し、国際舞台で孤立化するとともにプーチン自身もロシア国内、国外で孤立化が進み、焦りと欲求不満でイライラが募り、自分が権力の座にある今もう一度ロシアの国際的威厳と栄光を回復して「プーチンがやった!」という歴史的事実を残したいのではないかというコメントをしています。当たっているように思えます。ひょっとして、コロナに感染して脳に障害が残り別人になってしまったのかもしれません。(余談ですが、トランプ前大統領が感染した直後の言動については、感染前から常軌を逸した言動が多かったため、感染後の言動も特に異常とは思われず驚く人がいなかったようですが・・・)

 コロナに感染有無は別として、事後情報によるとプーチン大統領はグローバルシーンでのロシアの権威復活のシナリオを1年前から着々と計画(妄想?)していた節があるようです。国境のロシア軍大部隊集結で威圧し、「戦争は望んでいない。外交で解決したい」と繰り返しトランプ並みの大嘘をつき、ウクライナ政権と国民に油断をさせて(させたつもりで)いきなりミサイルで先制攻撃をかけ、続いて戦車など重装備の地上部隊を送り込めばウクライナ国民の恐怖心と軍関係の犠牲者多数発生で簡単に占拠、政権奪取できるとクリミヤ占拠と同様に2匹目のドジョウを狙っていたのかもしれません。しかし、ミサイルによる先制攻撃で圧倒的優位を保ちながら地上部隊を送り込んだロシア軍はウクライナ北方にある首都キエフに続く国内第2の都市ハリコフでは想定外のウクライナ軍と国民有志の抵抗を受け重装備した軍用車が破壊され一時撤退を余儀なくされたニュースもありました。ウクライナ側の軍関係者、民間人だけでなくロシア軍側にもかなりの犠牲者が出ているようで、ロシア国内の公共放送ではウクライナ側が先に攻撃を仕掛けたとか、ウクライナ国内の2つの地区でロシア親派の人たちが虐待・虐殺されており緊急救援を求めているなどとロシア政府の事前検閲・許可を得たプーチン政権に都合が良い偽情報、プロバガンダ(教宣活動)だけが流されているようですが、SNS情報やウクライナ在住の家族や友人からの直接情報を得ている十万単位の人たちが各地で停戦要求の抗議活動を始めており既に逮捕者も出ています。ロシア軍側の犠牲者の遺体搬送袋か棺桶がロシア国内に輸送されれば、その家族や友人、関係者などから事実が伝わり抗議の声が強まるのは必至です。日本を含む海外でも抗議集会があり、プーチン、ロシアが悪者で非難されるべきという事実は共通の認識として理解されているようです。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は身の危険を承知で国外退去せず居残り、18歳から50歳までの男性は予備役として国内に留まるように義務付け、希望者には、誰でも銃を支給するとして国民に国家防衛、民主主義維持のための徹底抗戦を呼びかけ、短期決着を目論んでいたロシア軍にゲリラ戦を仕掛けて簡単に都市部への侵入を許していないようです。心配なのは、長引くウクライナ側の抵抗に業を煮やしてプーチンが軍事施設、軍関係者だけでなく民間施設や一般民間人にまで無差別攻撃を仕掛けないか?です。最新ニュースではプーチン大統領は場合によってはロシア軍保有の核兵器使用もある得る発言をして更に威嚇したようですが、そうなるとたとえ局地的、限定的な戦術核兵器の使用でも通常兵器とは比較にならない甚大な被害が出ますので、歴史的な建物や市街地、各種インフラが破壊され、戦争の最終決着がどうなろうと国の政治・経済機能や日常生活が元に戻るのは至難になります。プーチンはそこまで狂気の行動には出ないと思いたいですが、今回も可能性はあっても最後のところで侵攻は思いとどまると思っていたのに強行した事実があり、100%ないとは言い切れない不安があります。

 米国もNATO諸国も正式なNATO加盟国でないウクライナに対して軍隊を派遣したりウクライナ国内でロシア軍と直接交戦など戦闘活動はできないため、有事に備えてNATOメンバーの隣接国、周辺国に軍隊を派遣増員はしても当事国のウクライナには兵器や軍用資材、消耗品、軍用資金の緊急支給・支援に留まり、隔靴掻痒(かっかそうよう)の感は否めません。米国のサッキ大統領報道官はTV記者会見でプーチン大統領の核兵器に関するコメントは『作り上げた脅し』であり真実ではないとしていますが、万一どんな形の核兵器でも使用されたりすれば、NATOの枠を超えた対応をせざるを得なくなるでしょうし、そうなると米軍またはNATO混成軍はロシア軍との直接交戦が避けられなくなり、局地戦から全面戦争、更に絶対にあってはなりませんが、最悪人類滅亡の第3次世界大戦まで発展し兼ねません。

 ロシア軍の越境侵攻に関しては、プーチンが侵攻開始直前の会見で今更ながらウクライナを独立国として認めず、現在親ロシア派が多数を占めるウクライナ東部地区を独立国として勝手に承認し、その連中をウクライナ側の攻撃から保護する『平和維持軍』としてロシア軍を派遣するという全く理解不能な詭弁を弄して突然侵攻を開始し、米国や諸国が即対応しなければそこからなし崩し的に西方に進む意図が見え見えでしたが、この一大事にプーチンと大の仲良しのトランプはこの狡(ずる)賢い戦法を『天才的』と絶賛し、前国防長官であったマイク・ポンペイオも次期大統領選でトランプが再当選となれば自分も復活できる可能性に期待してプーチン礼賛のコメントで調子を合わせていたのが誠に腹立たしい限りです。トランプとその悪党一味はホワイトハウスを伏魔殿に変えて暗躍し、私利私欲のために謀略の限りを尽くしましたが、内部告発や部内者によるメディアへの情報リークで悪事がバレると告発者や情報漏洩者を『売国奴』、『反逆者』呼ばわりしていましたが、国や国民の平和や幸福を蔑ろ(ないがしろ)にして自分の野望と欲求のためにひた走った過去と敵性国家のリーダーを礼賛する彼らこそが『売国奴』、『反逆者』であり、最近明らかになった事実でも就務時代にホワイトハウスから機密情報書類をフロリダ州マララーガの自宅に持ち出していた行為はその秘密情報を取引条件の餌として私腹を肥すために使っていたとしても全く不思議はありません。

 ウクライナでは、ゼレンスキー大統領が事前の国民向けメッセージでパニックにならないように冷静を呼びかけ、特に避難命令・勧告を出さずにいたため、いざ実際に侵攻が始まって国民間の驚きと動揺、混乱は避けられず、避難場所も極めて限定されるため、食べ物も飲み物もない状態で地下鉄の構内や地下室に一時的に緊急避難する人たちのニュースが報道され、子供連れの女性の不安な姿、子供を守る健気なコメントが印象的でした。その後隣国ポーランドなどへ避難する長い車の列や途中から諦めて何十マイルも歩いて国境に辿り着いた人たちの映像も流れ、非現実的な環境に置かれた姿や家族を避難させた後自分はウクライナに戻り国を守るために他の同志と共にロシア軍と戦うとコメントした男性の姿に胸が熱くなりました。

 2月末のニュースでは当事者の両国が前提条件抜きでベラルースとの国境付近で面談交渉の予定があるとの報道がありましたが、直後にそれを否定しロシア側の仕組んだ偽情報、ガセネタであるとの別情報もあり確認できておりません。本欄も状況が刻一刻と変わる切迫した中での記述になりますので、印刷物がお手元に届く頃には古い情報になっていますし、注意していても誤認、誤解、勘違いの可能性がありますので、もしそのような場合は平にご容赦願います。

 いずれにしても抗争が長引かず、1日でも早く収束して犠牲者や被害がこれ以上出ないことをお祈りして末筆と致します。

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第228回:バイデン政権の苦悩と苦境

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喧喧諤諤

月になりました。米国では元々日本の正月気分は味わえず、年明け早々に仕事始めとなり、学校の新学期も始まってパンデミック下での日常生活が再開しましたが、皆さんは順調な新年のスタートを切れましたでしょうか?「1年の計は元旦にあり」と言いますが、私の新年の抱負はここ数年あいも変わらず「家族の安全と健康」です。そのために自分で何か特別努力するのでなければ、抱負と言うより『願掛け』ですね? 長年ミシガンに住んでいながら寒さが苦手な私の冬場のプライベートな楽しみ(慰め?)としては、週末テニスの他にTVやオンラインでのウィンタースポーツのプレーオフ、映画、イベント鑑賞くらいですが、読書や音楽好きの方は特に不平・不満はないかもしれませんね。恥ずかしながら最近はほとんど読書をしていませんが、以前は気に入った本なら夜更けから明け方近くまで読み続けて最後まで一気に読み切ったのが夢のようです。小説にしろ随筆にしろ、はたまた新聞や雑誌、オンライン記事やブログ、メールにしても長文を読むのがだんだん苦痛になってきました。決まり文句のような「時間がない」、「目が疲れる」を言い訳にしていますが、時間管理、自己管理が出来ていないだけで「これではいかん!」と反省しております。

 さて、そのウィンタースポーツの話題ですが、年末年始にかけて一足先にプレーオフが終了したカレッジフットボール王座決定戦では準決勝で久しぶりに大舞台に出た地元ミシガン大に圧勝したジョージア大がプレーオフの常連であるアラバマ大を33−18のスコアで破って41年ぶりに全米王者となりました。前半こそロースコアの接戦でしたが、後半第4クォーターに3タッチダウンをあげたジョージア大が攻守に圧倒しました。個人的にはまたアラバマ大が優勝かと予想していましたが、とにかくジョージア大が凄かったですね。(脱帽)

 プロフットボールNFLプレーオフでは、1/23(日)にたまたまタイミング良くNFC及びAF Cのディビジョンラウンドの試合を続けてチラ観する機会がありました。前者はベテランQBトム・ブレイディ率いる昨年のスーパーボウル覇者タンパベイ・バカニアーズ対デトロイト・ライオンズから今シーズン移籍したQBマシュー・スタフォード率いるロスアンジェルス・ラムズ。こちらもまたバカニアーズ勝利を予想していましたが、試合開始からラムズが攻守に圧倒し、前半あのブレイディをFGの3点のみに抑え20−3とリード。後半も先にタッチダウンで加点し一時は最大27−3の点差。バックスが1FGで3点は返したもののまだ3TD差があり、「これは勝負あったな」とTVから離れようと思ったところで次のラムズ攻撃時にいきなりボールファンブルによるターンオーバーがあり、バックスが1TD加点で14点差に。QBがブレイディなので「ひょっとするとミラクル・カムバックがあるかも?」「いやあ、いくら彼でも無理だろう」と自問自答していましたが、残り時間4分少々の時点から相手の再度のファンブル、ターンオーバーを挟んで2TDを加点し残り1分を切ったところで遂に27−27の同点。OTになるかという場面でラムズのスタフォードも最後の意地を見せてギリギリの連続パス攻撃を成功させ、時間切れ直前最後のプレーでFGをものにし紙一重の勝利。どちらを応援していたわけではありませんが、ハラハラ、ドキドキの凄い試合でした。

 これ以上のスリリングな試合はないだろうと思いましたが、その直後のカンザスシティ・チーフス対バッファロー・ビルズの試合がそれ以上の2転3転の内容でまたまた驚かされました。既に長くなりましたので詳細は割愛しますが、この試合は最終盤残り時間1度でも得点するのが難しい2-minutes warningを切って(1分54秒でしたか?)から両チーム壮絶な点の取り合いとなり、何と3TD(2ポイントコンバージョンが1回)+1FGで25点もスコアが動き、36−36の同点でOTに突入しコイントスで先攻となったチーフスが攻撃権を譲らず劇的なTDをものにして勝利しました。両QBがそれぞれ4TDパスを成功し300ヤード以上を投げ、自ら70ヤード近く走り、パスインターセプトやファンブルによるターンオーバーはゼロ。他のプレーヤーのランプレーを含めると合計500ヤード近く、二人合わせると1,000ヤード弱もボールを前に進めたことになり、本当に信じがたい、あり得ない、クレージーでアメージングな試合でした。上記2試合にご興味のある方は、「論より証拠」、“Seeing is believing.”でオンラインの録画かストリーミング配信でビデオクリップをご覧ください。

 久しぶりにアメフトの試合を観たため前書きが長くなり過ぎましたので、ここらで本題に移ります。

 今回のテーマは『バイデン政権の苦悩と苦境』です。

 バイデン大統領と政権誕生から先月でまる1年が経過しました。ご承知のように前半6ヶ月は積極的なコロナ対策と中小企業・個人商店のビジネス継続支援や一般国民のための生活保護・経済復興策が功を奏し、大統領の好感度、支持率が55〜60%近くでしたが、後半6ヶ月はアフガン駐留米軍の引き上げによる混乱、移民・難民受け入れ緩和策によるメキシコ国境での入国管理問題、半導体を始めとする物・部品・資材・原材料不足、港湾における輸入品の受け入れ、通関手続きの遅れ、輸送・配達サービスの不足と遅延、それに伴う急激なインフレ・物価高騰、史上最低レベルの失業率で仕事はあるにもかかわらず働き手がいない人手不足、コロナ変異株(デルタ、オミクロン)の感染拡大、頑固なワクチン未接種者や接種対象外低年齢層の存在によるワクチン接種率の頭打ち、全米各州・都市・市町村での大企業、医療機関、学校などでマスク装着、ワクチン接種の義務化を巡る論争・対立・混乱、前回選挙後の国民間、2大政党間の融和が進まず、相変わらず分裂・対立・憎悪が蔓延し、犯罪件数とともに悪化していること、昨年議会を通過し立法化されたインフラ投資・雇用促進関連予算に続くはずの総枠3.5兆ドルのリコンシリエーション(財政調整)と投票権保護法案(正式法案名はBuild Back Better Act、及びVoting Right Protection Act)の議会通過・承認・立法化が民主党内の意見不一致で遅れ、遅れになっていること、更に直近ではウクライナ東部国境にロシア軍の大部隊が集結し、突然越境・侵攻の恐れがにわかにクローズアップされている等々、大統領と連邦政府に対する批判、不平・不満が続出し、現時点では支持率45%、不支持率50%前後と逆転しています。ただでさえ通常不利な11月の中間選挙に向けて大統領の支持率低下は民主党の苦戦に更に重荷となってしまいそうです。

 原因・理由は歴史的なもの、地域的なもの、人種・階層差別的なもの、政党間の過半数議席追求的なもの、国家安全保障上の地政学的なものなど色々あり複雑ですが、共通する悪の根源(元凶)として全てに影響している一番大きなものは新型コロナウィルスによるパンデミックだと思われます。

 即ち、感染急拡大で罹患者が急増し、人が集まる会社、事務所、工場や作業現場、販売店、飲食店、スポーツ・娯楽施設などは営業停止・制限・制約で在宅勤務やリモートワーク以外は通常のビジネス活動ができなくなり、特に消費財や部品、資材、原材料の製造メーカーはモノづくりができないか大幅に制限されて生産量が大幅減となり国内生産品も海外からの輸入品も需要に供給が追いつかない状態が発生。パンデミック下でも比較的制限・制約が緩かった建設業界では鉄骨材、建材などがかなり早い時期から品不足でそれらの値上がりと連動して新築物件や既存物件の増築・改装コストも上昇し、戸建てや集合住宅の価格も上昇しました。

 産地と消費地を繋ぐロジスティック(輸送・倉庫保管・配達)も運転手不足、稼働トラック・トレイラー不足、輸送用コンテナー不足で物不足に拍車がかかり、スーパーの陳列棚に物が空っぽとか、入荷しても即売り切れて次の入荷がいつになるか分からない時もありました。需給のバランスが崩れれば価格変動が起こるのは自明の理ですが、食料品や生活必需品など生活に毎日必要な物は品不足で値段が上がっても買わないわけにはいかず、昨年1年間の物価上昇率や今年初めの前月比の物価上昇率が30年ぶりとか40年ぶりというレベルのインフレでした。車がないと動けない米国ではガソリン価格の急騰も喉に刺さった魚の骨のように毎日気になり不自由を感じる頭の痛い問題です。米国の音頭取りで日本を含む主要国が国家石油備蓄の一部を市場に緊急放出して一時的にガソリン価格は下がりましたが、先月半ば過ぎから再度また上昇トレンドとなっており、冬場は暖房用に使われる石油量も多いためこの傾向はまだしばらく続きそうです。

 また、あらゆる電子製品のコア部品である半導体が世界的に供給不足となり、自動車やパソコン、スマホ他の電子機器など極めて多くの関連製品が生産量大幅カット、供給不足になりました。近年特に電子部品の塊のような自動車の生産・供給不足は顕著で昨年実績で前年比5割超減のメーカーも多く、グローバルリーダーのメーカーでも計画比で4割減を余儀なくされました。私自身も車の定期点検で立ち寄ったディーラーで待ち時間の間に「今はどんな車が展示されているのかな?」とショールームを覗いてビックリした経験があります。いつもなら少なくとも5〜6台は展示されていたのに全くゼロ、1台もなかったのです。セールスマンも姿が見えず、点検の係員に聞いたら「今はオーダーしてから平均6ヶ月待ち。特殊な車体色やオプションを希望したらいつになるか分からない。次に入荷予定の車も輸送用のトレーラーに載せられた時点で既に買主が決まっている」とのことでした。 

 『産業の米』である半導体の生産・加工工程は長く複雑で1箇所では全て処理できず、グローバル規模で役割分担して作業しており、顧客も容易に発注から入荷まで自分の思い通りにコントロールできないようです。自動車用の電子部品は一般的に軍需産業や航空宇宙産業向けの最新・最先端の電子部品は不要でどちらかというと汎用タイプの電子部品で用が足りるようですが、数年前から世界的な設備の過剰投資で生産能力過剰だったところにパンデミック騒ぎとなり、多くの製造メーカーは更に需要が落ち込むと予想して設備削減、生産量削減を続けていましたが、勤務形態が在宅勤務やリモートワークに移行したり、既にやり始めていた所はそれが加速したりでパソコン、ノートパッド、スマホなどの半導体需要が急増するという予想と逆目となり、品不足に拍車が掛かったようです。需要予測は、特に特異な状況下では難しいですね。

  それもこれも、突然国外で発生し米国に侵入してきた新型コロナがトランプ前大統領とその政権幹部の甘い読みと科学的知識・データを無視した杜撰で拙速な対応で国としての初動が遅れ、米国内の急拡散を招き、その後の対策(らしき動き)も株価維持の情熱ほど力が入らず、マスク装着や身体間距離確保、ビジネスの営業制限・制約にしても徹底せず、連邦レベルの感染拡大防止策が的外れでタイミングも後手後手となり、前回の大統領選挙では「このままでは皆トランプに殺される!」恐怖感と「国が滅亡する!」危機感からどっち着かずだった中間日和見(ひよりみ)層と一部の共和党支持層もトランプ降ろし=バイデン支持に回って大統領・政権交代に至ったわけですが、もしトランプが再選され今も大統領だったとしたら米国内1月末で7,600万人超の感染者数、91万人超の死亡者数はもっとずっと多くなっていたと確信します。恐らく昨年中冬のホリデーシーズン前に既に死者は100万人を超えていたと想像します。今現在バイデン大統領の支持率が下がり国民の不平・不満が聞こえる問題のほとんどは現大統領・政権の責任ではなくトランプ前政権から引き継いだ負の財産(コロナ対策不備と国際的信頼喪失)の後始末が根本原因で、とばっちりを受けている現大統領が気の毒です。

 トランプはワクチン開発が過去に前例がないスピードで完成したのを自分の手柄にする発言もしておりましたが、前回選挙前に開発の進捗度を把握もしておらず、完成後の生産・輸送・配布・接種計画など政権内で誰も考えてもいなかったのに選挙キャンペーンに利用できなかったことを悔しがっていましたが自業自得ですね。自分はこっそり内緒でいち早くワクチンを接種したのに自らは公言せず、トランプ支持派、支持層の有権者はその後もマスク装着反対・拒否、ワクチン接種反対・拒否のままでずっと来ておりますが、最近のニュースでは幾つかの集会で「ワクチンは打った方がいい」とか「ブースターを打ったのに打ったと言えないのは臆病者だ」などと暗にひょっとすると2024年次回大統領選挙候補のライバルになるかもしれないデサンティス・フロリダ州知事を皮肉る場面もあり、毎度のことながら勝手なものです。

 コロナのせいで営業できない、できても人が確保できない、モノが作れない、作れても動かせない、配達できない連鎖で世界中どこも物不足となり物価高騰の大幅で継続的インフレとなっています。また、地球温暖化、気候変動の影響でこれも世界規模で大規模な自然災害、異常現象が続出し、その被害も1件数十億ドルから数百億ドル規模と甚大で被災地や被災者救出・緊急支援のために緊急物資・設備輸送、緊急人員派遣など予定外、予想外の突発需要と緊急出費が重なり、当然その調達費や輸送費、人件費は通常の何割増しとか何倍かになりますので、それが更に物価やサービスコストを引き上げ、インフレが拡大します。

 最後に直近の緊急懸念であるウクライナ問題ですが、NATO陣営の切り崩し、米国の世界的な政治・経済コントロールと権威失墜、旧ロシア帝国またはソビエト連邦並みのロシアの覇権回復を目指しているプーチン大統領が何をどこまでやろうと本気で考えているのかですが、彼は元KGB出身のスパイ。非常識な世界で生きてきてトップに返り咲いた人物なので、世間一般の常識的な考えや行動はしません。敵や狙う相手の弱みを突き、無警戒か警戒が薄い時に秘密裏に(最近はしばしば半ば公然と)突然行動を起こすのがスパイの常識。バイデン大統領と米国政府はウクライナやNATO諸国首脳と連携を取りながら対抗措置を準備または取りつつありますが、必ずしも全ての関係者が同じページ、同じ考えになっていないように見受けられます。当のウクライナにとっては国家存亡の死活問題で万一ロシア軍が侵入すれば、既に過去の衝突で軍関係者や一般人で1万5千人もの死者が出ている上に更なる犠牲者が出ることは避けられなくなります。腐敗政治が問題であった専制的前政権に代わって現政権が民主主義路線を取り、西側諸国と協力・協働して国力と経済振興を目指している中で戦争状態となれば、外国からの要人や企業、投資グループが国外逃避し、将来的な希望が全くなくなってしまうため、ロシアに対抗するにしても米国やNATO諸国の意地や思惑優先でウクライナの運命を決めて欲しくないことは明白です。米国にもロシアにも慎重な配慮と行動が望まれます。 

 私見では、中国の習近平中国共産党総書記・国家主席に対する配慮でプーチンは中国が国家の威信をかけている北京冬季五輪開催中は動かないと思いますが、過去にもソチ冬季五輪直後の2014年3月にクリミア侵攻・併合、2008年北京夏季五輪と同時期にグルジア(現呼称ジョージア)侵攻の歴史があり、五輪閉幕後が一番危ないと感じています。バイデン大統領と政権幹部には何としてでもこの苦悩と苦境を乗り越えて欲しいと願っています。

May the Force be with you!!

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第227回:ご存知でしたか?

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喧喧諤諤 ケンケンガクガク
喧喧諤諤

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 皆さん年末年始はどのようにお過ごしでしたでしょうか?日本への入国手続きの厳格化にもめげず一時帰国された方、米国内で小旅行された方、ご自宅で家族団欒(カウチ・ポテト化?)された方、医療関係などのエセンシャル・ワークでお仕事されていた方など様々でしょうが、どなたもつつがなく新年をお迎えになったことを願います。我家では家内と長女が一昨年見合わせた一時帰国を昨年末にする予定でしたが、米国内でもサンクスギビング連休以降デルタ変異株に加えてオミクロン変異株の感染急増に伴い、日本の入国手続き、到着後の強制・自粛隔離、滞在中の行動管理・監視厳格化に一時帰国を諦めキャンセルしました。塞翁が馬と言うべきか、一つだけ良かったのはクリスマスにミシガンの自宅で家族4人全員で過ごせたことです。今の状況下で家族全員の安全と健康が確保され、一緒に食事しオンラインで映画鑑賞などして過ごせたことが何よりありがたいことでした。

 さて、2022年寅年。五黄(ごおう)の寅年生まれの私は年男です。来月誕生日を迎えると話半分として36歳になります。(笑)お陰様でこの歳になるまで大きな怪我・病気をせず、入院・手術もせずに来ております。加齢による体力・気力の衰えは明らかですが、幸いにして今も週末テニスを続けられており、本当にありがたいことです。同年代や私より若い友人・知人の病気や怪我のニュースを耳にすると余計にそう思います。この幸運が少しでも長く続きますように、年初の祈願をすると同時に魔除けの意味で英語では“Knock on wood.”(木を叩く)ことにします。また、年男と言っても単に『年をとった男』にならないように、欲張らずに一つでも二つでも何かお役に立てることができればと思っております。

 当地ミシガンでは先月クリスマスに雪がなくホワイト・クリスマスになりませんでしたが、元日の夕方から雪が積もり綺麗な雪景色となりました。一昨年、昨年と世の中コロナ騒ぎで混乱し良い年と言えませんでしたが、嫌なことは雪の白色で白紙に戻し心機一転、皆様にとっても良い1年になることを願います。

 では、スポーツの話題です。米国プロ野球MLBでは球団オーナー陣と選手団の団体労使協定が昨年12月1日深夜過ぎに期限切れとなり、労使間交渉も合意を見ないまま年越しとなりロックアウト状態が続いています。従って、シーズンオフとは言えMLBとしての公式行事・活動が一切なく、広島東洋カープからポスティングシステムを使ってMLB移籍を目指している鈴木誠也選手を始め、移籍・新規入団希望の選手たちも具体的に動けず不安とイライラがつのっていると思います。交渉妥結が長引くと、最悪の事態にはならなくともそれらの選手たちの移籍・入団が見送りになったり、レギュラーシーズン開始のズレや期間短縮、試合数減になる恐れもあります。昨シーズンの大活躍で日本と日本人だけでなく世界中を明るくしてくれた大谷選手の姿を見る機会が制限されたら失望する人たちが後を断ちません。そうならないことを切に願います。

 プロテニスでは、今月初めにオーストラリアで開催された男子のATPカップを皮切りに男女のメジャートーナメント前哨戦に続いて1/17からオーストラリアオープンが始まります。最大の注目は女子シングルスで3度目の優勝を目指す大坂なおみ選手ですが、若手の台頭も見られた昨年後半公式戦をプレーせず今月前哨戦1イベントのみの出場で実戦感覚がどこまで戻っているかが鍵ですね。男子の錦織、西岡両選手にもひと頑張りして欲しいので、遠くから応援します!

 さて、今月のテーマはいつもと趣を変えて「ご存知でしたか?」です。

 もうここ2年ほどトランプ絡み、政治絡みにコロナ関連の話が多くて、良い話、明るい話が少なかったので、私と同様に読者の皆さんも気持ちが沈み食傷気味ではないかと思い、年の初めだけでも少しでも気分が軽くなるようにと考えました。いつもと同じようなテーマをご期待されていた方々には申し訳ありませんが、ご容赦願います。なお、ネタは全て受け売りか又聞きですが、古いネタも含めて出所元、引用元がはっきりしないものが多く引用クレジットを付与できないことを合わせてご容赦願います。

 初笑いとまではいかないかもしれませんが、気分転換になれば幸いです。では、
最初の「ご存知でしたか?」から始めます。  

「ご存知でしたか?」     

先ずは簡単なものから。双六やゲームで使う6面サイコロの対面数字の合計はどの対面も全て7です。これは皆さん既にご存知ですよね。

西欧ではキリスト教信者を中心に13日の金曜日を厄日として忌み嫌っていますが、日曜日から始まる全ての月は13日が金曜日になります。今年は5月がそうですね。

シマウマの白黒縞は縦縞ではなく横縞です。生物学上では脊椎に対して縞模様の縦・横を言うためです。

同じくシマウマの白黒縞ですが、遺伝学的には白い地肌に黒縞ではなく、黒い地肌に白縞です。白毛の下も黒色です。パンダはこの逆で黒い体毛部分は白い地肌に黒毛です。尾も白い?=面白いですね。

和名では『べにづる』と呼ばれるフラミンゴ。元々の体色は白です。主食であるエビ、カニなどの甲殻類に含まれるベータ・カロチンが体内に蓄積してピンク色になります。甲殻類を食べないフラミンゴは白色のままです。

フラミンゴでもう一つ。米国では本物のフラミンゴよりプラスチック製フラミンゴの数の方が多いです。数えたことはありませんが・・・

英国に住む白鳥は全て女王陛下の所有物です。盗んだり傷つけたりすると国家反逆罪です。英国訪問時にはご注意を!

タイムマガジン誌1938年のマン・オブ・ザ・イヤーはアドルフ・ヒトラーでした。私もまだ生まれていません!

もう一つヒトラーで。彼の私有専用列車の名称は”Amerika”でした。皮肉か?羨望か?

地球の南緯60度に沿って航海すると陸地に一切タッチせずに世界一周航海が可能です。船酔いが激しそう!?

 まだまだありますが、出し惜しみして今回はここまでとします。皆さんの受けがそこそこ良くて、また機会がありましたら続編を試みます。

 となるとこの原稿がここで終わってしまうので、もう一つおまけに昨年のMLBワールドシリーズで26年ぶりに球団史上3度目の栄冠を勝ち取ったアトランタ・ブレーブスに関する「ご存知でしたか?」エピソードです。本当は優勝達成直後に書きたかったのですが、他の記事を優先したため実現しませんでした。かなり事後になりましたが、この機会を利用して書き留めます。

 これは出所元、引用元がはっきりしており、ブレーブスの対戦相手であったロスアンジェルス・ドジャースの専属ブロードキャスターとして2016年まで67年間勤め、現在94歳の高齢にも関わらずツイッターは続けているビン・スカリー氏の昨年11月5日付けツイートからです。原文は英語ですが和訳すると以下のようになります。

 「あなたはハンク・アーロン(注:日本の王さんに抜かれるまで通算ホームラン数世界一)が亡くなった年(注:昨年2021年)にブレーブスがオールスターゲーム前に44試合、またその後にも44試合勝ち、その年の44週目にワールドシリーズを勝ったことを信じられますか?もちろん、アーロンは背番号44番をまとっていました。もしかして、結局のところブレーブスはある秘密兵器を持っていたのかもしれません。」

 数字44にまつわる奇跡的な一致ですが、アーロン氏が亡くなられた2021年の1月早々に長年連れ添ったスカリー氏の愛妻サンドラさんも亡くなられていたので、勝敗に関係なくあらゆる意味で思い出深いものがあるのでしょう。奥様とアーロン氏のご冥福をお祈りします。(合掌)

 この他にも昨年末押し迫ってから異なる分野・業界で3人の著名人が相次いで亡くなられました。

政界では元民主党上院議員・院内総務のハリー・リード氏(享年82歳)。

スポーツ界では元NFLオークランド・レイダース監督、アメフト解説者のジョン・マッデン氏(享年85歳)。

そして芸能界では大ヒットしたTV番組ゴールデン・ガールズのスター女優ベティ・ホワイト女史(享年99歳)。

 余談と言っては失礼になりますが、リード氏はネバダ州出身で元ボクサー。国のため、国民のために善政を施そうとする信念と闘争心は並大抵ではなかったのも頷けます。同州副知事を経て1982年に民主党から下院議員に初当選。1987年から上院議員となり、不慮の転倒事故で右目を打撲・失明のため2016年の上院議員選には出馬せず、2017年に引退するまで民主党上院のリーダーとして手腕を発揮。民主党内の説得、調整はもちろんとして党派を超えて共和党議員にも自ら接触し、信義を通して協力を仰ぎ超党派の法案成立も実現しました。オバマ政権下で国民皆保険制度(いわゆるオバマケア)の立法化に尽力し、法制化したのは最大の成果といえます。オバマ元大統領が大統領出馬を決めたのも「リード氏のためだった」と本人が惜別のコメントをしています。

 マッデン氏はアメフトファンなら知らない人がいない程の有名人。膝の怪我のためプロ現役期間は1年のみと短かったものの、その後カレッジフットボールのコーチ経験を重ね、1967年にNFLオークランド・レイダースのラインバッカーコーチを経て1969年に当時史上最年少の32歳でヘッドコーチに就任。1978年までの10年間でスーパーボウル優勝は1977年の第11回のみですが、レギュラーシーズン通算成績103勝32敗7分け、勝率0.750は100勝以上挙げたヘッドコーチでは最高勝率。歴史に残る名監督と言えます。また、コーチ引退後はTV解説者としてCBS、FOX、ABC、NBCとフットボール中継放送の4大ネットワーク全てでナンバーワン解説者として人気を保ち、2006年には元コーチとしてNFL殿堂入り。エミー賞のスポーツ解説者部門受賞は通算16回。2010年には功労賞も受賞し、2009年に引退するまでの30年間でTV放送におけるフットボールの存在価値を最大のレベルにまで高めた貢献度は再論を待ちません。また、1988年から彼の監修で製作されていたアメフトTVゲームは彼の名前を冠してマッデンNFLと呼ばれ、今も世界中でファンを楽しませています。大の飛行機恐怖症でキャンピングカーで全米中を移動していたため、例年ハワイで開催されるNFLオールスタープロボウルの解説を務めることは一度もなかったことも一つのエピソードです。

 ホワイト女史は私の知らない1950年代から60年代のTVクイズ番組にレギュラー出演し「クイズの女王」的存在だったとのことで頭も切れる女性だったのでしょう。1983年に女性司会者としては初受賞のデイタイム・エミー賞番組司会者賞を含め7度のエミー賞受賞。2009年には全米映画俳優組合賞として生涯功労賞を受賞しましたが、その後も引退とは無縁で生涯現役として通し、動物愛護活動とともにTVや種々イベント、関連ニュースで元気な姿を見せてくれていたのに、後2週間ほどで迎えるはずだった100歳の誕生日を前に亡くなられたのは大変残念です。近年で特に記憶に残っているのは2010年1月のスーパーボウル用に製作されたスナック菓子「スニッカーズ」のフットボール版特別CMに出演し、雨の中パスを受けて走り屈強な大の男にタックルされ、泥水の中で顔まで汚れて大の字に倒れても意に介せずというヒロイン役が受けてFacebook上で彼女をNBC土曜日深夜のコメディーバラエティー番組「SNL(サタデー・ナイト・ライブ)のホストにしよう!」というキャンペーンが突然起こり、結果として同年5月8日の同番組のライブ放送で88歳6ヶ月の史上最年長ホスト役を務めることになったことですね。私とは親子ほどの年上ですが、いつ見てもおばあさんと言う感じは全くせず「元気なおばさん」と言う感じで、元気とエネルギーをもらっていただけに残念至極です。

 ご三方のご冥福をお祈りします。(合掌)

 年初に明るい話題を、と思っていたのにやや暗い気分にさせてしまい申し訳ありません。罪滅ぼしができませんので、代わりにと言っては何ですが、ベティー・ホワイト女史の出演した番組の再放送かビデオクリップをオンライン配信またはストリーミングでお楽しみいただければ幸いです。きっと元気が出ますよ!

 では、皆さんにとって寅年の今年が素晴らしい1年になりますようにお祈りして筆を置きます。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第226回:さよなら、丑年! 年越すコロナ!!

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喧喧諤諤

 師走12月、丑年も残りひと月を切りました。自宅周辺の植木の葉もほとんど落ち、前庭に溜まった落ち葉をそろそろかき集めてヤードウェイストの大袋に入れてゴミ出ししないといけないと思っていましたが、先月号の冒頭で書いた願いが通じたのか、今年はコンドーの管理事務所から依頼先のメンテ業者がサンクスギビングの連休前に早めに一度クリーンアップに来てくれました。「やったー!」と喜ぶと同時にこれが今年最後でないことを心の中で祈りました。(笑)

 では、先ずスポーツの話を少々。

 日本では何と言っても一番の話題はプロ野球日本シリーズでしょう。セ・パともに前年最下位のヤクルト・スワローズとオリックス・バッファローズがプレーオフCSでは下位チームの下剋上を許さず、1勝のアドバンテージを含めて両チームとも3勝1分の無敗通過で顔合わせは誰も予想しなかったものでした。最終決着した第6戦まで全ての試合が2点差以内という接戦、熱戦の連続。初戦で2点を追うバッファローズが9回裏の土壇場で3点入れ大逆転のサヨナラ勝ちが「野球は筋書きのないドラマ」そのもので、その後のシリーズを予兆する形でしたが、どの試合も途中経過では結末が想像できないハラハラ、ドキドキの展開で最後の最後まで分からない好試合の連続でした。私は実況中継やビデオ録画、ストリーミングサービスを観ておりませんが、ネットでの試合速報、ブログや紙面でのプロの解説、ファンのコメントを読むだけでも選手たちの熱い思い、真剣なプレーが伝わってきて近年(少なくともここ10年)で最高の日本シリーズだったのではないでしょうか?両チームのファンでなくとも画面に引き込まれてシリーズ通して大いに楽しめたと思います。

 結果はスワローズが4勝2敗で20年ぶりの栄誉に輝きましたが、僅かの差で敗れたバッファローズも全く恥じることはありません。敵地で1勝3敗の崖っぷちに追い込まれながら「神戸に帰ろう!」の熱い思いを胸に続く第5戦を逆転勝ちして、本拠地に戻った意地と根性は素晴らしかったです。特に第6戦では今季パリーグ投手部門4冠に加えて投手の最高栄誉である沢村賞をただ一人受賞した絶対的エース山本由伸投手が先発登板。8回終了で降板の予定を自ら志願して9回も続投し、プロ入り後初めてとなる最長141球の熱投。先発投手は100球前後が目処になっているプロ野球界で甲子園の高校野球を思い起こさせる大奮闘で「負けない、負けられない」という強靭な意思を感じさせ、ファンの胸を熱くしました。お見事!天晴れ!

 スワローズは故野村監督の教えを受けた高津監督の下で結束し一丸となったプレーが印象的でした。レギュラーシーズンを2位阪神タイガースとゲーム差なしの紙一重で優勝し、日本シリーズも制して頂点に上り詰めました。監督の手腕でこれほどチームが変わるのか?とリーダーシップの重要性と難しさを同時に感じさせるとともに、これは日米他どこの国でも同じだし、スポーツの世界だけでなく政治やビジネスの世界にも通じることだと改めて思いました。スワローズの選手、監督、コーチ、球団関係者、ファンの皆さん、優勝おめでとうございます!!

 同じくバッファローズの皆さん、お疲れ様!両チームとも感動をありがとう!!

 一方当地米国では、これまたやはり何と言ってもMLBロスアンゼルス・エンゼルスの二刀流スーパースター大谷選手の話題に尽きます。右肘の手術や故障から復活した今年、球聖と呼ばれるベーブ・ルース以来100年ぶりにシーズンを通して二刀流を貫き最後まで連日のように明るい話題を提供してチームのファンだけでなく、他チームのファンや選手たちまでが注目し賛辞を惜しみませんでした。母国日本では毎朝起きて直ぐに大谷選手の試合結果、プレー速報を見て明るく楽しい気分で仕事や学校に出かけたり、家庭で1日の始まりとした人たちがどれだけ幸せな気分を味わえたかしれません。また、野球というスポーツ自体がプレーされず関連知識がなかったり、マイナースポーツで関心が薄い国々の一般の人々の間でも話題となり、地方チームの1選手という存在から一気に世界的なヒーローとして認識されるまでになりました。

 本人はただ野球がたまらなく好きで、野球小僧か野球少年が大きくなって「世界一のプレーヤーになる!」と夢を追い続け、毎試合一生懸命プレーした結果として先月1位票満票で獲得したア・リーグMVPに続いて最終受賞した最強指名打者賞を含めて合計11冠の偉業。同賞は引退したイチローさんがシアトル・マリナーズに現役として在籍当時の指名打者であり、その後慈善活動に多大の功績を残した選手に贈られるロベルト・クレメンテ賞も受賞しているエドガー・マルティネス氏に因んで命名されたもので、日本の野球ファンにも馴染みが深く、これでイチローさんから大谷選手にスーパースターのバトンタッチがなされた思いがします。(拍手)

 もう一つ、日米にまたがるプロ野球絡みと言えば、広島カープの鈴木誠也選手が球団の合意・協力を得てポスティング制度を利用してMLB挑戦を発表したことです。チームとしては今シーズン満足な結果にならず多少心残りはあると思いますが、個人としては今年も優秀な成績を残し、大いにチームに貢献しているので、前々から本人の意向を聞いている球団としても気持ち良く送り出すことになり、本当に良かったです。既にMLBでも話題になり、複数球団が興味を示しているようで正式にポスティングで交渉権を希望する球団が今月早々にも名乗りを上げるかもしれません。投手に比べて野手としてMLBでも活躍した事例はまだ少なく、鈴木選手には良い意味で例外になって欲しいものです。

 MLBで成功するための課題をいくつか挙げると、①広い球場での外野守備適応、②投手の縦横に大きく鋭く動くムービングボール対応、③誤審を含む審判のボール、ストライク判定のバラつきに惑わされないこと(審判を味方につけて長嶋巨人名誉監督の現役当時彼が見逃せばストライクでもボールと判断された『長嶋ボール』を再現して欲しい)、④国内で時差、気温差のある中での長距離移動及び連戦や総試合数の多さを克服し怪我・病気なくプレーし貢献すること、⑤英語でのコミュニケーション能力と米国文化・慣習への順応、⑥地元かアウェイかにかかわらずファンや各種メディアへの適切な対応、などがありますね。

 MLBに挑戦すると決意した以上は多少の障害や困難はあってもへこたらず一つ一つベストの対応をして乗り越え、野手として成功する事例となり後に続く後輩たちに夢と希望を与えてもらいたいものです。『聖闘士星矢』という漫画の主人公もいましたが、名前が『誠也」なので苦しくても「何とかセイヤ〜!」と言いたいです。(ダジャレで失礼)

 少々の筈のスポーツの話がやたらと長くなってしまいましたが、本題の「さよなら、丑年! 年越すコロナ!」に入ります。

 先月号拙稿では「よもやま話」と題したにもかかわらず、終わってみればわずか4つの小話のみで自分でも中途半端で内容不足だったなと反省しています。本当はもっと多くの話を詳しく書きたかったものの、言い訳ですが紙面と締切り期限の関係(実は私の能力不足が真の原因!?)で実現できませんでした。友人にも話したのですが、最近は情報過多でインプットは必要以上に溢れるほどあるのですが、それに見合ったアウトプットができずバランスが取れていない感じがします。原稿のネタ探しでネットサーフィンや検索をして興味をそそるテーマやトピックがあるとそれを追いかけて調査、深掘り、内容と正誤の確認など反対意見も含めて事前準備作業をするわけですが、実際に原稿作成する時間よりもそちらの時間の方がはるかに長くなるのが実情です。反対意見や偽情報、誤情報もそういうものが存在し、世の中に氾濫しておりそれを信じて行動する人たちもいるということで無視できず、それらが事実かどうか?正しいかどうか?は別としても認識して考慮する必要があり、たとえ気分は悪くても見たり読んだりしないわけにはいきません。そこまで手を広げるとインプットの件数が膨大となり時間がいくらあっても足りない程になります。特に最近ではSNSやネット検索サービスを利用すると一つの検索作業中に似たような商品やテーマ、トピック、サービスの紹介・お勧め提案が表示され、利用者がそれにも興味を示すと更に追加の紹介・お勧めが提示される仕組みが多く、本来利用者が望んでいなかった画面に誘導されたり、商品やサービスを半強制的に押し付け、押し売りされたりするケースが多くなりました。表面上は如何にも利用者の便宜を図って助けているように感じられますが、これがアクセス件数や広告表示件数、更に購入件数・金額を増やすためのサービスプロバイダー側のマーケティング戦略であり、利用者は自分が選んで判断・操作しているつもりでも知らず知らずのうちに本来の自分自身の意図・意思とは別に誘導され、その仕掛けられた罠に嵌まり込んでいくわけです。そしてその全てがデータとして記憶され、次回同じような検索やサイト訪問すると新たな紹介・お勧め提案が展開され更に深みにはまることになります。

 この話題については、最近長女と家内に勧められて自宅で観たオンライン映画制作・配給会社のN社が配給している“Our Social Dilemma”という映画を観ていただくとその背景と詳細が分かります。最近また問題になっているFacebook(今は社名変更してMeta)やInstagramの社会倫理問題、特に低年齢層利用者の鬱(うつ)症状助長から自殺につながる事例、人身売買につながる誘惑行為の氾濫・放任など、先日議会証言にまで至った内部告発や実際に同社や類似サービスを提供するApple、Google社などのアプリ企画・開発現場やマーケティング戦略部門の最前線でアイデアを出し、指揮して指示を出したり実行したりしていた人たちが、自分で「これでいいのか?社会正義・倫理に反していないか?」と疑問を抱き、退職後内部告発、議会証言、啓蒙活動など反対運動を始めた経緯が描かれており、映画を観ると利用者は彼らの商品として扱われ、プロバイダーの思い通りに操られ誘導されて彼らの巨万の富の源泉となっており、思っていた以上に恐ろしいことになっているのが分かります。私は元々口座を持っていませんが、長女は観賞後Facebookの利用を減らそうと考えています。映画にご興味がある方は一度ご覧になることをお勧めします。決して誘導ではありません。(笑)

 本号が今年最後の発行になるので改めて世相を眺めてみると、今も続いているコロナ騒ぎは米国内最初の感染者認知から既に2年近くになり、トランプ前政権が迅速で的確な初期対応からベストの継続対策を打っていれば、今頃はほとんど収まって普段の生活スタイルかそれに近いレベルまで回復していたのではないかと思うと本当に残念です。特に今年の2月には過去にない異例の速さでコロナワクチンが完成し、大きな負の財産を含めて政権を引き継いだバイデン大統領と政権幹部による強力な優先実施策の下FD A、CDCの緊急承認・実用化がOKされ、各地で接種が徐々に実施され接種数、接種率が上がるとともに新規感染者数、入院者数、死亡者数は目に見えて斬減していたので、そのまま行けば早ければ今秋、遅くても年内には騒ぎが静まるのではないかと期待していましたが、その期待はあっさり裏切られました。残念ながら干支が切り替わる来年まで年越しになるのは火を見るより明らかです。現職大統領や政権幹部がワクチン接種を奨励または一部義務化しても、それ以前のマスク装着や人身間の距離確保の奨励時と同様に国民の安全・健康問題を政治問題化したトランプ前大統領支持グループ、共和党の保守強硬派、右派・保守偏向メディアに加えて世論に影響力がある人気映画スター、スポーツ選手、有名セレブなどが科学的事実・データを無視し(あるいは偽情報や誤情報と加工データを使って)真っ向からワクチン不信・拒否・反対を連日のように呼びかけ、嘘とデタラメのストーリーをでっち上げ自分たちに都合の良いように群衆心理操作・煽動しながら現職大統領と民主党の政権運営、政策実施の妨害に全力で今もなお継続集中しているのが最大の原因です。更に直近では南アフリカから新たに広がり始めた感染力がデルタ株より強力なオミクロン変異株が最初の知見からわずか2週間でデルタ変異株に取って代わって南アフリカの新規感染者の主要原因になっており、既に周辺諸国の他に欧州、香港、カナダ、更に本邦日本でも感染者が知見され岸田首相が外国人入国禁止という思い切った緊急対策を打ち出しましたが、米国内で知見されるのも時間の問題でしょう。 先月末バイデン大統領は南アフリカからの入国制限を実施すると同時に緊急会見で「新たな(オミクロン)変異株は心配の元にはなるが、パニックの元ではない」と国民に冷静を呼びかけ、「米国内にも早晩やってくるので対策としてワクチン未接種の人は至急接種を、初期接種の済んでいる人は免疫力強化のためにブースターショットを追加接種することが重要」と繰り返し強調しました。これで少しでも接種人数、接種率が上がればいいのですが、既に反対派はこの新変異株も「民主党の作り話で、それを来年の中間選挙に向けて政治利用しようとしている」とケチをつけています。本当に彼らは国民の安全と健康を無視して、死人が出てもへっちゃらという人非人(にんぴにん)だと何度も思います。

 政治面では、バイデン政権の目玉となる永続的再生可能エネルギー型新規インフラ投資案が予算額は多少削られたものの、ようやく上下院とも可決通過し、大統領署名を受けて正式に立法化されました。今後は一つ一つの分野・項目について具体的な投資内容と方法、実行に移すタイミングが重要となりますが、担当幹部も新たに任命され着実に前進して国民が効果を実感できるレベルに少しでも早く到達して欲しいと思います。

 もう一つの目玉である社会的弱者救済を目指す超大型経済振興予算法案もギリギリ下院を可決通過し、上院での審議が始まります。前々から膨大な予算額とその原資の調達方法、インフレ助長のリスクなどで反対している身内のマンション民主党上院議員やインフラ法案には賛成投票してもこの法案については必ずしも協力的でない多くの共和党議員が抵抗を続けており、上院としてかなりの変更を盛り込んだ新たな変更案を作成して可決通過できるか微妙な状況です。それを下院に差し戻して再審議し前進派も納得した上で可決通過できるかは更に難度が高いですが、この二つの法案が揃って立法化、実施できないとバイデン大統領と民主党政権の選挙公約が果たせない失態となり、来年の中間選挙と2024年の次期大統領選に向けてアフガン米軍撤退でミソをつけ雪崩現象的に低下している現職大統領と政権与党民主党の更なる支持率低下が危惧されます。

 中間選挙で上下院の過半数議席を共和党が奪還すると現政権と民主党が今までやってきた政策、今後続けてやろうとしている政策を全てひっくりされる恐れがあり、バイデン大統領と民主党を支持してきた有権者を裏切り、国際舞台でも安全保障問題や地球温暖化防止協定に沿ったCO2削減対策、石化燃料から再生可能エネルギーへの切り替えなど基本的な重要国家政策がまたまた方向転換してトランプ前政権当時に逆戻りし、NATOなど同盟国、友好国の米国に対する不信感を増長し、リスペクトも失う羽目に陥りそうです。今年1月6日に起きたトランプ支持グループの米国議会乱入・暴動事件の下院合同捜査委員会も即解散、証人喚問も撤回され何もなかったことにされて、大きな汚点となった歴史をトランプと共和党にとって都合が良いように書き換えられてしまいそうです。

 バイデン大統領と民主党政権には上記双子の法案を是が非でも立法化し、弱者救済を図るとともに共和党があからさまに打ち出している各州での投票権や投票方法を制限・制約する州法を無力化し全ての有権者の投票権と民主主義の維持・強化を実践してもらいたいものです。

 では皆さん、多少早いですが、年末に向けて安全・健康に留意され、素晴らしい新年をお迎えください。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第225回:秋の夜長のよもやま(四方山)話

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 11月に入りました。ようやく残暑も収まりコート姿の人々が見られ始めた日本では神無月が過ぎて出雲に集まっていた地方の神々もそれぞれのホームタウンに戻り、地場のお守りに専念してくださっていることでしょう。ハロウィンを境に一足先に秋から初冬に向かうミシガンでは気温もグッと下がり、先月のある朝には初霜が見られました。陰暦では11月を霜月と呼びますが、言い得て妙ですね。米国では日本のような小さな真っ赤な紅葉は見られませんが、黄色、オレンジ色、紫色などのカラーリングは別な趣があり、黄色の葉に陽が当たると目に鮮やかなゴールド色が映えます。種類によっては既に一部落葉し始めている草木もあり、落ち葉拾い、落ち葉かきをせねばならない季節になりますが、雨に濡れると濡れ落ち葉の始末が厄介ですね。お隣さんと屋根続きのデュープレックス・コンドミニアムの我家はあいにく風下の吹き溜まりになる立地のため、風上の向かいの他家の落ち葉がこちらの庭に吹き寄せられ迷惑しています。予算が厳しいコンドーの委託管理会社は毎年シーズン最後に一度だけしか落ち葉かきをしてくれないため、それまで放っておくわけにいかず溜まり過ぎたり濡れ落ち葉になって見苦しくならない内に掃除をするのですが、去年一度1時間半以上も作業して汗をかき、膝や腰も痛くなってヤードウェイスト4袋分の落ち葉を綺麗にした翌日、北風がピューッと吹いて向かいから落ち葉が吹き寄せられ掃除する前と同じ位の落ち葉が吹き溜まりガックリしました。向かいの家主は自分で掃除しなくても風が代行してくれるので落ち葉かきに熱心でなく、こちらは迷惑しています。今年はちゃんとやってくれるといいですが……

 さて、先月割愛したスポーツの話題です。

先ずプロ野球。日本ではセ・リーグでヤクルト・スワローズがパ・リーグではオリックス・バッファローズがレギュラーシーズン優勝。しかもどちらも2年連続最下位からという野球評論家さえも全く予想外の結果でした。特にパ・リーグでは投打に盤石のソフトバンク・ホークスが昨年同様に独走と予想されていたのに、CS(クライマックス・シリーズ)にも残れない4位になるとは誰も予想しませんでした。バッファローズは近鉄とのチーム合併後初優勝で25年ぶりとか、宮内オーナーはじめ関係者の喜びはひとしおでしょう。セ・リーグはヤクルトと阪神、パ・リーグはオリックスとロッテと両リーグとも最後の最後まで優勝争いが続き、野球ファンは毎日の試合結果に一喜一憂したことでしょう。「勝負はゲタを履くまでわからない。」と言いますが本当にわからないものです。だからこそ面白いとも言えます。勝因は監督の手腕、選手の奮起、投打のバランス、チームケミストリー、予想外のヒーローなど色々ありますが、とにかく結果が全て。スワローズ、バッファローズ、両チーム関係者の皆さん、とりあえずレギュラーシーズン優勝おめでとうございます!!CS、日本シリーズも頑張ってください。

 当地米国MLBではプレーオフ最終ワールドシリーズの最中。直近5年間で3度目進出のア・リーグ、ヒューストン・アストロズと22年ぶりに進出のナ・リーグ、アトランタ・ブレーブスの対決。本紙発行の頃には覇者が決まっていると思いますが、ブレーブスが優勝すれば実に26年ぶり。結果はどうなりますか?

 スポーツの話題では、日米とも他にも色々話題があり冒頭前書きだけでは書き切れませんので、今月号のテーマは『秋の夜長のよもやま話』として他分野の話題とともに続けます。

 その1:MLBでは今シーズンを通して話題を提供し続けたエンゼルスの二刀流大谷選手を外せません。日本人一ファンとして怪我・病気なくシーズンを全うして活躍できるかが
一番の関心事(心配事)でしたが、こちらの(大方の)心配をよそに見事に完走し、記録ずくめの本当に素晴らしい成績を残しました。投打の二刀流に加え、走塁でも飛ぶような走りを見せ、投手として23試合、130回1/3投球回、9勝2敗、防御率3.18、156奪三振、打者として155試合、46本塁打、100打点、103得点、138安打、26盗塁、100四死球(96+4)、出塁率.372、長打率.592というとてつもない数字を残しました。189三振と打率.257は今一つでしたが、ホームランバッターには良くあるケースで打点、得点は100越えしてますのでチーム貢献度は抜群です。彼の性格からして既に改善策も考えているでしょうし、オフシーズンに具体的なトレーニングをして来シーズンこの二つの数字が改善されたら、もう本当に手が付けられない打者になりますね。チームはここ何年も言われ続けている弱体投手陣のせいで今年もプレーオフ進出できず、もう少し長く彼のプレーする姿が見られなくて残念でしたが、ワールドシリーズ初戦のアストロドームに姿を見せ、事前公表を聞いていなかったメディアやファンは驚きましたが、MLBコミッショナーから『Historic Achievement Award(歴史的偉業アワード)』の受賞に喜びを分かち合いました。また、その直後にはMLBの選手間投票による年間最優秀選手賞(日本人選手では2005年のイチロー氏以来16年ぶり)とア・リーグの最優秀野手賞を同時受賞し、多くのスタープレーヤーから賛辞を受けました。それまでに受賞していた米専門誌「ベースボール・アメリカ」の年間最優秀選手、「ベースボール・ダイジェスト」の野手部門最優秀選手、スポーツメディア「スポーティング・ニュース」の年間最優秀選手受賞と合わせて、先月末時点で所属球団内受賞とは別に球団外で6冠達成。ワールドシリーズ終了後に予定されるMLBア・リーグのMVP(年間最優秀選手)最有力候補にもなっており、他のいくつかの受賞候補と合わせて10冠から12冠まで受賞の可能性があります。現役選手の実体験からのコメントを見聞きしても、投手か打者か片方だけでも心身ともに多大なストレスがかかるにもかかわらず、年間通して、しかも今季のようなハイレベルでプレーをし続けたのは驚異的(異常)なことで前例がありません。『異次元』、『異星人』、『地球外生命体』などと通常使われない表現で称賛されるのも無理ありません。「称賛する適当な言葉がない」と嘆く評論家までいます。100年も前の先人ベーブルースと度々比較されますが、グローバルなスポーツになった現代と時代も選手層も、球団数やプレーレベルも全く違う環境では妥当な比較になりません。ルースさんには申し訳ないですが、大谷選手の一人勝ちです。大谷選手自身の歴史的記録を更新できるのは彼自身のみと確信します。来年も健康を維持して、エキサイティングな “SHO–TIME”を見せて欲しいですね。

 大谷選手の話だけでこんなに長くなってしまいました。まだまだ書き足りませんが、既に数多のメディアで報道されていることも多いので、今回はここまでとして他の話題に移ります。

 その2:NPB西武ライオンズの松坂大輔投手、日本ハム・ファイターズの斎藤佑樹投手、読売ジャイアンツの亀井善行選手が今季限りで引退しました。松坂投手は高校時代から『平成の怪物』と呼ばれ横浜高校、ライオンズやサムライ・ジャパン代表、MLBボストン・レッドソックスなどで活躍した大スターで同期や前後の有力選手団も束ねて『松坂世代』と呼ばれ、一世を風靡しました。日本代表として出場したワールド・ベースボール・クラシックでは2006年第1回、2009年第2回と2大会連続でMVPとなり、勝利数6勝は今も歴代1位。現役時代中盤から後半にかけて股関節、右肘、右肩と次々に怪我に見舞われ、彼本来の力強いピッチングができなくなっての引退は残念でしたが、前半の輝かしい成績と記録は消えるものではありません。特に今でも記憶に残っているのは横浜高校3年在籍時最後の1998年第80回夏の甲子園大会準々決勝でPL学園相手に延長17回、250球を一人で投げ切った完投勝利、翌日の準決勝明徳義塾戦でも1イニング登板、更に決勝の京都成章戦ではノーヒットノーランで春・夏連覇達成、と正に『怪物』の名に相応しい神がかり的な大活躍でした。他にも記録と記憶に残るストーリーが山ほどありますので、ご興味のある方はご自分で!(笑)

 次に斎藤投手。言わずと知れた『ハンカチ王子』です。元巨人軍の王さんと同じ早稲田実業3年在籍時の2006年これも最後の夏の甲子園大会で延長再試合となった決勝戦で当時の駒大苫小牧(とまこまい)のエース『マー君』こと田中将大投手と先発で投げ合い4−3で勝利して甲子園初優勝。同大会での投球回69、投球数948はいずれも1大会では史上最多記録。大会中彼が尻ポケットに入れた青いハンカチで汗を拭う仕草が話題となり、ハンカチ王子の愛称を授かりました。以後『ハニカミ王子』と呼ばれたゴルフの石川遼選手他様々な分野で活躍する男性ヤングスターを次々と〇〇王子と呼ぶ走りとなりました。2007年高校卒業後直ぐにプロ入りせず早稲田大学に入学し、野球部に入部。その年春の東京6大学リーグ戦で東大相手の開幕戦で勝利し、1年生春の開幕投手勝利は当時で何と昭和初期以来80年ぶり、優勝がかかった早慶戦でも先発を任され勝利投手として優勝。その春のリーグ戦では4勝無敗、防御率1.65の成績で1年生投手として史上初のベストナイン入り。大学時代は球速を追い求めた結果フォームを崩して成績がパッとしなかった3年生時を除きほぼ無敵・無双状態で数々の功績と記録を残し、国際大会にも大学日本代表として4年連続選出されたのも史上初。2011年に日本ハムファイターズに入団しプロ入り、2年目の開幕戦に先発指名され9回1失点の完投勝利は当時のNPBで50年ぶり、パ・リーグでは62年ぶりの快挙。その4月にはプロ初完封勝利もあげ順風満帆かと思われましたが、「好事魔多し」とはこのことか6月中旬以降は6戦連続勝ちがつかず成績不振に陥り、7月末には1軍出場選手登録抹消となり2軍で再調整を余儀なくされ、2軍戦や社会人チーム相手の試合でも打ち込まれて苦しみました。9月末に1軍に復帰し10月初旬の試合に先発するも6失点でシーズン8敗となり、翌日1軍登録抹消されそのままレギュラーシーズン終了。その年の成績は12球団全投手の中でワーストとなる悲惨なものでした。2012年の夏頃から感じていた右肩痛の原因が関節唇損傷と判明し、その後は1軍での登板・勝利がほとんどなく2軍での調整と登板が続きましたが、今季をもって引退となりました。プロ在籍10年で合計15勝と学生時代無双状態だったことを考えると本人が一番悔しいと思いますが、松坂投手と同様に怪我が投球能力を低下させ、投手生命を縮めてしまった例で残念でなりません。松坂投手ともどもこのプラス・マイナス両面の経験を生かして引退後も何らかの形で野球界に関与してもらいたいと思います。

 最後は、ジャイアンツの亀井選手。先の二人ほど大スターではなく目立つ存在ではありませんでした。それでも原監督が「困った時には亀ちゃんがいる。巨人においての守り神という存在だった。」と言うように打撃、守備、走塁でレギュラーの穴を埋めるユーティリティー・プレーヤーとして地味な存在でしたが、時にはサヨナラ打とか代走やファインプレーでニュースや活字に表れることもありました。基本的には縁の下の力持ち的存在でしたが、原監督にとっては実際に試合でプレーする、しないにかかわらず、いなくては困る貴重な選手だったようです。お守りか胃薬もしくは精神安定剤のような存在だったかもしれません。

 今季も打率が悪いにもかかわらず終盤戦にクリーンアップに起用などと使い続けて偏重起用とも思える原監督の選手起用に批判が高まっていましたが、今年引退の花道を飾らせる温情起用とも言われました。もう一つ、彼が2009年の第2回WBC大会の日本代表に選ばれた際には原代表監督の巨人贔屓(びいき)だとやはり批判されましたが、この時はチームキャプテンのイチロー選手に何かあった場合の控えとして他に代表候補となるスター選手は大勢いたものの、ずっとイチロー選手の控えでベンチではやる気をなくしてしまい、不満が出てチームケミストリー(化学のように反応・生成するチームの調和やメンバーの相性、団結する一体感)に悪影響する恐れがあり、万一の時の代役としてあえてスターではないが守備・走塁は固い亀井選手を選出したようです。亀井選手自身も「正直選ばれたくなかった。」と戸惑いがあったようですが、そう言われてみれば納得できる理由かもしれません。彼も怪我で苦しんだ選手でしたが、引退会見時の笑顔を見ると自分のやるべきことをやり切った満足感が感じられました。3選手ともアマ時代も含めて長い間ご苦労様でした!!第二の人生に幸あれと祈ります。

 その3:政治面では、バイデン政権が前回キャンペーン中から言い続けている永続的再生可能エネルギー型新規インフラ投資と社会的弱者救済を目指す超大型経済振興予算がまだ下院で投票も可決もされていません。主な理由は毎日のように報道されている民主党内の意見の食い違い、調整・合意難航による単純過半数の確保が保証されていない点です。マンションとかシネマとかしょっちゅう出てきますが、建売りまたは分譲マンションや映画館の話ではなく、下院投票と可決通過を阻んでいる民主党の上院議員2名の名前です。マンション上院議員は相変わらず総枠予算3.5兆ドル案に対し上限1.5兆ドルに拘っており、シネマ上院議員は予算の使用目的には大筋合意しているものの、その予算の収入源としてバイデン政権や民主党前進派が描いている今は、全くもしくは微々たる納税しかしていない大富裕層や高収益の有力大企業に対する増税はビタ一文認めずと真っ向反対しているとの報道です。バイデン大統領は先月末にイタリアのローマで開催されたG20首脳・外相会議及びその後スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26国連気候変動枠組条約締約国会議に発つ前に両案の議会可決通過を完了し、米国として確約できる手土産として持参し現政権と国家の面目を保ち、グローバルリーダーとして権威と信頼を回復したい意向でしたが、自分の所属党内の取りまとめができず空振りに終わりました。ただでさえこのところ急降下している同大統領の支持率低下に歯止めがかからない状況です。党内最新情報では盛り沢山の予算構成の中で原案にあったコミュニティーカレッジの授業料無料化の見送り、チャイルドケアサポートの実施対象期間の短縮など止む無く一部を削って総枠予算を1.75兆ドルから2兆ドル程度に圧縮した調整・妥協案で最終合意を目指しているとの報道もありましたが、党内前進派は既に共和党も事前合意しているインフラ予算だけの投票には反対し、総枠調整後の財政調整予算も同時投票しない限り、インフラ予算投票に賛成投票しないと宣言しており、合意点、着地点が見出せていません。既に11月に入りタイミングが遅れるほどバイデン政権と民主党支持率に悪影響しかねず、関係者全てに焦りが見えています。本稿作成時には結果が出ていませんが、11/2(火)実施のバージニア、ニュージャージー両州の州知事選挙にも影響して民主党候補落選の恐れも十分あり得ます。特にバージニア州は両党とも必勝目指す大接戦でどちらに転ぶか予断を許しません。ニュージャージー州も民主党勝利が絶対保証できる状況ではなく安心できません。

 その4:前出のCOP26会議に出席予定だった英国のエリザベス女王が担当医師から静養が必要とアドバイスされ先の北アイルランドと今回スコットランドへの公務訪問を取り止めたとの報道がありました。先日も公務で初めて杖を使われているお姿が映りましたが、先月中旬には数日の検査入院をアドバイスされ1日だけでご退院したニュースもありました。95歳というご高齢に加えて今年4月には長年連れ添われた夫である故エジンバラ公フィリップ殿下のご逝去もあり、またコロナ禍の中今年だけで既に6,500Km以上も旅行されていると聞いた覚えもあるので、決してご無理をしていただかないようにお祈りするのみです。

 以上、先月末週には米国内外で色々な出来事、ニュース報道があり、どれを題材にしても簡単に書き切れないほどでしたので、どれも中途半端で不十分ですが『秋の夜長のよもやま話』としてご容赦願います。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第224回:居座るコロナ、秋風吹くバイデン政権 混迷する民主党

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10月(神無月)。日本では全国の八百万(やおよろず)の神々が出雲に集まり、土地神様が不在になる各地では神無月。逆に出雲だけは神様全員集合の神在月(かみありづき)です。出雲以外の住人は今月神頼みしても声が届かず、願いは叶わないかもしれません。逆に出雲の住人が「神様が大勢ござる。」とあれこれお願いしても聞いてもらえるとは限りません。何処にいても先ずは自助努力ですね。私もですが(汗)。ミシガンは秋のお彼岸が過ぎた途端に朝晩かなり涼しくなり暖房のスイッチが入る日が出てきましたが、新型コロナとその変異株だけでなくインフルエンザの流行も予想される冬場に向かう季節の変わり目は、お互い体調管理に気をつけましょう。

 コロナと言えば、日本では9月30日付で19都道府県の緊急事態宣言および8県の蔓延防止法が一斉解除されましたが、その週末いきなり都市部で人出が急増したとの報道があり、直ぐにまた逆戻りにならないかハラハラします。解除後3〜4週間の新規感染者数の動きを注視する必要があります。菅前首相退任に伴い先月末誕生した岸田自民党新総理・新首相の重要政策はコロナ対策と経済復興という従来路線に貧富の差・二極化を是正する『富の再分配』を掲げているようですが、従来以上にはっきり目に見える効果と成果を見せてほしいものです。岸田新首相は外務大臣経歴があり、外交面では知識・経験がありますが、従来露出度が少なく存在感は薄いため内政、外交とも安倍・菅政権時代から続いている基本路線に大きな変化は期待できなさそうです。

 本号では定番のスポーツ関連コメントは割愛し、本題に入ります。拙稿作業時にはまだMLBのレギュラーシーズンが終了しておらず、プレーオフ出場チームも確定していないため、大谷選手関連だけでも書きたいことが沢山ありますが、次号のお楽しみに願います。

 さて、今回のテーマは「居座るコロナ、秋風吹くバイデン政権、混迷する民主党」です。

 先のCDC発表によると、米国では9月末時点でコロナワクチン接種有資格者の77.5%が少なくとも1回は接種済み、65%が接種完了済みとのこと。いまだに3割前後の有資格者が未接種ということになりますが、ワクチンが異例の早さで開発・認可され有資格者は誰でも無料で接種を受けられるにもかかわらず、まだこれほどの未接種者(約7百万人)がいるのは驚きです。そのため同じく先月末の統計データでは、全米で世界の19%にあたる約4,350万人の累計感染者数、また14%にあたる約70万人の累計コロナ死亡者数となり、これは第1次世界大戦下の1918年から1920年にかけて世界中で大流行したスペイン風邪パンデミック時の米国内総死亡者数を上回る惨状と悲劇です。いずれも世界最悪の数字でトランプ前大統領が掲げたアメリカ・ファーストが別な意味で実現してしまい、これがMAG A(メイク・アメリカ・グレート・アゲイン)の悲劇的結末でもあります。

 当地ミシガンでも学校の新年度、新学期が始まり、幸い今のところコロナ絡みでクラスター感染発生など大きな問題は出ていないようですが、油断禁物ですね。カリフォルニア州ではワクチン接種有資格者で対面授業受講の学生・生徒に対して全米初のワクチン接種を義務化。同様に人口密度が高く校内・クラス内でも密になりやすい他州もこれに追随するとより安心ですが、拒否・反対派も多くどうなりますか?新たなニュースとして先月末には薬品製造大手のマーク社が開発したコロナ治療飲み薬が入院・死亡のリスクを1/2に軽減する効能があり、FDAに実用化を緊急承認申請する予定との報道もありましたが、これはあくまで感染・発症後の事後対応処理であり、リスク軽減効果も1/2でありゼロにはなりません。事後対応処理よりも事前の予防であるワクチン接種が現存する最善・最強の対策であることに変わりありません。つい2ヶ月ほど前には全米でワクチン接種率第1位で州知事もTV会見で誇らしげだったウェスト・バージニア州が9月末には接種率が全米50州で唯一50%未満の最下位、死亡率はワーストワンと天国から地獄へ急降下。州知事がTV会見で今度は必死の形相で州民に即ワクチン接種を促していたのが気の毒でした。

 バイデン政権はワクチン未接種の一般国民への説得策、指導策の一環として連邦政府の省庁や各部署の職員を始め出入りする取引業者の社員に対しても先月からワクチン接種を義務付けましたが、多くの病院や医療・診療所、顧客との接触機会が多い航空会社やWOKE(ウォーク=目覚めた)と呼ばれて社会現象や風潮に敏感で社会正義や人道的意識の高い民間企業でも社員にワクチン接種を義務付け、未接種のままだと事前の接種猶予許可がない限り解雇や退職勧告の対象となるため、90%以上の接種率を実現しているようです。

 しかしながら同時に他方ではワクチン拒否・反対派も根強く、医療現場の最前線で患者と毎日のように接触する医療従事者の中にも患者や周囲に対する説得努力どころかワクチン接種拒否・反対する人が少なからず存在するのは驚きでしかありません。ワクチン接種すれば自分自身の感染予防はもちろん、患者や同僚、家族や周囲の人に感染させるリスクや重症化、入院、死亡のリスクを遥かに軽減できるにもかかわらず、偽情報、誤情報を恥も外聞もなく継続拡散している偏向報道メディアや悪意ある洗脳・扇動的SNSメッセージの悪影響を受けてワクチン接種すると妊婦は流産や胎児に異常が起きたり、体が磁気を帯びるなどとのデマを鵜呑みにしたり、接種してもブレークスルー感染する人がいるとか、接種後に体調不良や不快感を訴える人がいたり、死亡したケースもあるなどと、確率が1%未満の極めて稀な例外的ケースを言っているようですが、肝心のワクチン未接種の人と接種済みの人の感染率、重症化率、入院率、死亡率の比較や未接種の場合のリスクが何十倍とはるかに大きい事実が看過され科学的な事実・データに基づく説明や真剣な議論が十分になされていないのが残念でなりません。

 また、フロリダ州、テキサス州、ネバダ州、ミズーリ州、ミシシッピ州、サウスダコタ州など州知事が率先して個人の選択の自由を理由に公共の保健衛生を無視した言動を押し通そうとしているワクチン拒否・反対派はマスク装着も反対のまま具体的で有効なコロナ対策の提示も指導もなく「企業や商店は営業しろ」「学校は対面授業再開しろ」とゴリ押ししていますが、では一体どうやって顧客、社員、店員、学生・生徒、教師・教員、一般州民をコロナ感染から守るのか?安全と健康を保証するのか?という点が事実と科学的データを基に理路整然と説明されているのを聞いたことがありません。ラッキーを神頼みし、サイコロ博打のような有り様で情けないですね。

 しつこく居座るコロナのせいでワクチン未接種者がその95%以上という新規感染者数、入院患者数、死亡者数に歯止めがかからず、最前線の病院・医療機関の受入れ病床数、医療スタッフ数は全く余裕がなくなり、医療従事者は連日連夜の勤務で疲弊し、州や都市、市町村によっては患者をトリアージ(選別・優先順位付け)せざるを得ないとか、州内では受け入れ先が見つからない場合は近隣州・都市や隣接市町村に転送せざるを得ず、たらい回しの転送中に患者が死亡する悲報もありました。ニューヨーク市内の病院、医療機関などではワクチン接種の義務化を頑固に拒否するスタッフが退職または解雇され、ただでさえ不足しているスタッフの人員不足に拍車がかかるケースもあり、ワクチン接種してもしなくても悩みは尽きません。この煽りを受けて、世界的な半導体不足、物不足、人手不足、物流サービスの供給不足と大幅遅延など複数のマイナス要因により8月まで回復・拡大基調が続いていた景気動向、経済指標、雇用創出にも陰りが出て、史上最高値を更新していた株価も先月には急落し一時の勢いがなくなりました。先日認可されたファイザー社の3回目のブースターワクチン接種を含めて全米のワクチン接種数・接種率が上がらないとこの先、更に景気の落ち込み、株価の続落につながるかもしれません。

 バイデン大統領就任後、当初の6ヶ月はプラス効果の高い政策実施で比較的順調に推移し、国民の支持率も常に5割以上6割前後あったものが、ここにきて急落し統計的にただでさえ分の悪い来年の中間選挙に向けて逆風が強まってきました。8月末で作業完了が正式発表されたアフガニスタン派遣・駐留米軍の最終的撤退にまつわるゴタゴタや先月突然表面化したメキシコ国境のテキサス州の橋梁下に集まったハイチ人を主体とする何千人もの移民・難民の取り扱い対応、メキシコ湾岸を襲ったハリケーン・アイダの残した爪痕(直撃を受けたルイジアナ州ではもう1ヶ月以上も停電が続き仮設避難所で耐乏生活を強いられている人が多数)、テキサス州で立法化された新たな中絶禁止法、既に上院では事前可決・承認されているものの下院民主党内の意見の対立で遅々として進まない新規インフラ投資予算案及び総枠3.5兆ドルのリコンシリエーション(財政調整)法案の議会通過・承認・実施など早急に対応処理、解決せねばならない問題が山積みで、バイデン政権に秋風が吹き込んでいます。この対応を誤ると共和党が多くの州で立法化に走っている有権者資格・投票権の制限・制約強化法と相まって、現状でも民主党が僅差マジョリティーの下院、同数の上院(同数投票の場合は副大統領のタイブレーク投票権で民主党が紙一重マジョリティー扱い)の力関係が逆転し、大統領は民主党でも共和党マジョリティーの上下院では法案議決権を自力でコントロール不可能になり、就任前に国民に約束した公約や民主党の重要政策の具体的実施の道筋が閉ざされてしまい、更なる国民の不満、支持率の低下、2024年の次期大統領選で共和党に政権奪取される恐れが大となってしまうので、これ以上失点が許されない今が踏ん張りどころと言えます。

 ワクチン接種率向上とともに現政権の挽回策の強力手段の一つが、上院では超党派で事前承認され現在下院で懸案となっている1兆ドルのインフラ投資法案と総枠3.5兆ドルの財政調整法案の議会通過・承認・実施ですが、共和党の非協力とあからさまなバイデン政権・民主党引きずり落としの動きも継続悪化を続け、民主党内の意見対立で両法案の上下院可決・通過も予断を許さず、予算審議時に常に話題となる米国国家財政の債務上限引き上げが通例両党共通責任事項として超党派で可決承認される慣行を破って共和党のマコーネル上院院内総務は「米国として債務不履行があってはならない」と言いながら共和党は投票しないと宣言し、民主党単独議決の責任を押し付けました。上記二つの予算案の審議と並行して債務上限引き上げが実現しないと今月半ばには国家財政上の債務不履行、カスケード的負の連鎖のリスクが再浮上し、国家の信用は台無し、米軍関係者や連邦職員への給与支払い、定年退職者への年金支払い中断、金融取引、国内経済や貿易、海外投資など国際取引も破綻し、世界中を巻き込んで大混乱になります。インフラ予算投資法案に関しては、先月下旬の時点では民主党のペロシ下院議長が9月30日には投票実施したい意向でしたが、民主党内の意見の食い違いで混迷が続き、もう一つの3.5兆ドル財政調整法案を同時審議可決(同時でない場合はインフラ投資法案に賛成投票しない)を主張する民主党前進派の言い分が通り、先送りとなりました。その財政調整法案に関してはバイデン大統領とホワイトハウス幹部が目指す総枠3.5兆ドルの超大型予算構想に対して保守派のジョー・マンション、キルステン・シネマ両上院議員が膨大な予算額が財源の確保不安とともに国家債務を更に悪化させる恐れありと難色を示し、マンション議員は上限1.5兆ドルに固執しており、絶対に譲れないと公言しております。逆に前進派は3.5兆ドルの予算が少しでも削られてしまうと、それぞれの予算割り振り使用分野の活動に不十分となり、期待する成果が得られないとこちらも一歩も譲れない態度です。両予算案の可決・承認・実施を急ぎたい大半の中道派の議員の中には折衷案として2.7兆ドル程度の予算金額打診で妥協を目指している動きもあるようですが、バイデン大統領とペロシ議長のイライラを横目にまだしばらく民主党内の混迷は続きそうです。

 ここにきてバイデン大統領の党内求心力とリーダーシップの弱さが目立っていますが、先の大統領選で出だし複数州の予備選で他候補者の後塵(こうじん)を拝し元気のなかった彼を強力な支援で盛り上げた民主党のクライバーン下院議員のおかげでノース・カロライナ予備選で大量の黒人票を集めて勝利した後一気に勢いがつき、とにかくトランプ外しを最優先して民主党勝利実現に集中すべく対立候補が次々と辞退して挙党体制でバイデン支援に協力した結果当選した経緯があり、自力でなく他力に寄るところが大きかった負い目があり、選挙時には自分の言い分を抑えてバイデン支援に回った民主党の前候補者や前進派、中道派、保守派がそれぞれの主張を言い始めて、今回大型予算の金額、使途割り振り、原資の捻出方法などに関しても有権者に対して自分たちの存在を顕示するため「一言物申す」の態度になった結果、民主党内の意見の食い違いで挙党体制とならず下院の単純過半数確保すら危ない混迷状態が続いている経緯がありと思われます。

ここは「対立グループの融和や意見の相違調整は可能」と自ら公言していたバイデン大統領の腕の見せ所です。当初の志を忘れず国家の持続的繁栄と国民のための善政を目指して老体に鞭打って陣頭指揮、率先垂範でペロシ議長と力を合わせて党内をまとめ上げ、両法案の議会通過・承認・実施を何がなんでも実現して欲しいものです。ちょいと態度が大きいかもしれませんが、頑張れバイデン!!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第223回:つまずくバイデン政権と悩める民主党

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9月になりました。先月はミシガンとしてはかなり暑い日が続きましたが、皆さんお変わりありませんか?今もまだコロナ騒ぎが続く中、Labor Dayの連休明けから州内の多くの学校では新年度・新学期が始まりますが、ワクチン接種認可対象外の12歳未満のお子さんをお持ちのご家庭では通学、対面授業時の安全確保が大いに気になりますね。幸にしてミシガン州政府は学校でのマスク装着を義務付けており、教職員はもちろん、装着しない学生・生徒は登校も授業受講も許されませんので、その点少しは安心感があります。もちろん、マスクは100%の感染予防を保証するものではなく、先生・生徒はもちろん学校職員・関係者、各家庭の保護者は個々に自覚と責任を持って適切な対応を継続しなければなりません。特にデルタ変異株が猛威を奮っている今は一層の注意が必要ですね。

 母国東京ではオリンピックが先月幕を閉じ、続いてパラリンピック開催中ですが、ほとんどのチームがバブル環境のオリンピック選手村と各競技場で過ごした各国の代表選手・役員団のメンバーにはコロナ感染、病気・怪我など大きな災厄がなかったことは幸いでしたが、一般国民の間では既に開催直前から拡大・増加傾向にあったコロナ新規感染者数が開催中、閉会後も増えるばかりで緊急事態宣言都市の数も大幅に増えました。医療関係者・有識者からの警告・警鐘があったにもかかわらず、国家レベルでの事前対策が不十分なまま開催したツケが回ってきたもので因果関係は明らかです。国民の健康と安全よりも自分のメンツとキャンセルした場合のペナルティー支払い義務回避を優先したと批判されている菅首相ですが、日本選手団の活躍によるメダルラッシュと数多くのボランティアの方々の日夜にわたる献身的な奉仕活動のおかげでかろうじて首相としてのメンツを保ち、国民の耳目をコロナ騒ぎから逸らせることに成功したものの、その効果は一時的なもので長続きせず、結果としてコロナ感染の急増・拡大、医療機関の対応能力、企業の事業運営、国民の日常活動、強いては国の経済活動全般の制限・制約と言う負の財産を残してしまい、直近の内閣支持率は26%と超低空飛行。今月下旬に予定されている次期自民党総裁選挙は大混戦の様相を呈してきており、早ければその前に国会解散、衆議院選挙が実施される見込みもある中で強気の自民党の優位がどこまで維持できるか判然とせず、太平洋を挟んで対岸にいる我々も成り行きを注視せねばなりません。

 一方、当地米国では大統領就任後の半年余り積極的なコロナ対策と経済復興・雇用拡大政策が功を奏して過半数の国民の好感と支持を得てきたバイデン政権に逆風が吹き始めています。発端は皆さんも既にご存じのようにアフガニスタン派遣・駐留米軍の最終的撤退にまつわる想定外の混乱です。

 ちょうど20年前の2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロ事件の首謀者でありタリバン政権下で保護されていた反米組織アルカイダのリーダーであったビンラディン容疑者(当時)を追跡し、テロリストの巣窟を一掃するために米軍を派遣駐留開始してから4人の大統領、足掛け20年にわたる『アメリカの最も長い戦争』に終止符が打たれ、米国中央軍のマッケンジー司令官は本稿脱稿直前の先月8/30付で撤退完了を宣言しました。去る4月にバイデン大統領が今月11日の追悼記念日前に完全撤退完了の意向を表明後、8/31を具体的な目標日とし、アフガン政府軍や国際協力諸国軍と慎重に事前協議と準備をした上で先月上旬から徐々に米国人や駐留米軍の協力者を優先して撤退作業を始めたはずでしたが、具体的な撤退開始と同時に驚異的なスピードでタリバン反政府軍が国内の複数主要都市に侵攻し始め、米軍が期待していたアフガン政府軍の抵抗もほぼ皆無のまま次々と主要都市が制圧され、先月中旬には首都カブールもタリバン軍に制圧されてしまいました。

 今月号のテーマはそれに関連して『つまずくバイデン政権と悩める民主党』です。

 アフガニスタンからの米軍撤退の話はバイデン政権が初めてしたわけではなく、歴代の大統領が現職就任中の継続的課題で「アフガニスタンの支援、テロリスト対策は上手くいっている」という趣旨の軍関係者、歴代政権幹部が繰り返す報告や発言を受けて「それなら莫大な費用がかかる駐留米軍を引き上げたらどうか?」と言う世論の圧力が増し、トランプ前政権当時にトランプ自身が「米軍は無駄なお金のかかるアフガニスタンから撤退すべきだ」と明言し、昨年2月に米国とタリバン間で和平合意に至り、同年9月には当時のポンペイオ国務長官がアフガン政府軍とタリバン反政府軍の戦闘が続く中でカタールの首都ドーハにてタリバン交渉団とアフガニスタン政府交渉団の和平交渉の仲介をするとともに、反対意見もある中で実際に一部駐留米軍の撤退、人員削減を実施しておりました。

 バイデン政権はその流れに乗ってタリバン反政府軍と和平状態を維持しながら、多少のリスクは想定内として速やかな米軍撤退完了を目指していたはずですが、タリバン反政府軍の動きが予想以上に速く、政府軍の抵抗が見られないまま瞬く間にアフガニスタン主要地区を制圧してしまい、米軍撤退作業の唯一の空路出口である首都カブールのハミド・カーザイ国際空港が孤立状態になってしまったのは全くの計算外だったと思われます。タリバン側は4月の米軍撤退表明以降綿密な侵攻計画を立て着々と実行準備をし、米軍の撤退開始と同時に動き始めたのは明白で、米軍側がそれ程速くタリバン側が動くと思っていなかったこと、動きがあってもアフガニスタン政府軍が防御壁として少なくとも米軍撤退が完了するまでの短期間は安全確保と時間稼ぎに貢献できると見込んでいたことが大甘で計算外れ、期待外れに終わったと言うことでしょう。

 複数のテロリストグループの誕生・存続の原因となっていたアフガニスタンの内戦停止、米国に対する国際テロ活動阻止を主目的に20年にわたる米軍及び米国政府によるアフガニスタン政府軍への軍事支援・指導・訓練に注ぎ込んだ830億ドルとも850億ドルとも言われる軍事支援費を始め、日本を含む諸外国の国際協力体制で民主主義政権と国民の経済・生活支援に供与した何兆ドルもの巨額な支援金はアフガン政権内外での不正・腐敗で横領・詐取され政治・経済の底上げ、国民の人権擁護・生活改善への効果が減殺され期待通りの成果に繋がらなかったり、米国の後ろ盾があって成り立っていた政権幹部が米国の意に沿わない自分勝手な路線を取り始めたりで、実情は米国内の報道や米国民向けの報告とは大きく異なり、決して上手くいっていなかったようです。

アフガニスタン政府軍は長年の内戦や外国軍または国外グループの攻撃などが複雑に入り混じり、正規軍として長期継続安定した軍隊でなく、まともな軍隊教育・訓練を受けた軍人がどれだけいたのか、今もいるのか?国を守るとか国家のために戦うと言う強い意志・忠誠心が本当にあるのか?も疑問です。政府軍とは言っても多くは雇われの傭兵(ようへい)のような立場の兵士で個人の生計を立てるための職業として選んだだけで、国を守る意志や国家への忠誠心は薄いのではないかと思います。政権が変われば新政権の政府軍として再雇用されたり、反抗勢力に加担したりする兵士がいても驚きません。丁度日本の江戸時代末期に武家社会が崩壊し、主家への帰属意識や主従関係が崩れ禄を切られた下級武士たちが浪人となり食いを求めて一時的、短期的に新たな主人や雇用主を探して渡り歩いていたのと似ています。

 更に、撤退作業進行中の先月26日には空港付近で自爆テロがあり、米軍兵士13名、アフガニスタン人170名もの犠牲者が出ました。事件後、従来から米軍、米人だけでなく一般人まで標的にしている通称I S I S-Kと呼ばれるイスラム系過激グループが犯行声明を出しましたが、米軍情報部、米国政府国家安全保障関係者からは米軍撤退作業に関連して帰国を希望する米人とその家族や国外退避を求めるアフガニスタン人が許可を求めて密集する空港内・周辺でのテロ活動の恐れを事前に警告していましたが、それが現実となってしまいました。その後も空港近くの住宅街で別の爆発(米軍の情報ミスによる誤爆の可能性あり)や小型トラックの荷台にロケット発射装置を取り付け空港敷地内にロケットを数発打ち込んだ改造車を米軍が空爆して破壊した事件が続き緊急対応が迫られる中で期限内に撤退・退避作業完了することが最重要・最急務となりました。

在米の退役軍人、軍事専門家や外交・国際関係の専門家からは「撤退開始のタイミングが遅過ぎる、もっと早く始めるべきだった」とか「大半の撤退・退避作業が完了しても少数の米軍部隊をアフガニスタンに残し、少数(200人程度?)残留米人や国外退避を希望するアフガニスタン人の安全な脱出支援と現地でのテロリスト活動の情報収集にあたるべき」と言う声もありますが、バイデン大統領自ら「今回の決断は間違っていない。そのために発生した問題は私の責任であり、帰国を希望する全ての米人の安全な帰国を保証する。万一期限の8/31までに作業が完了しない場合、完了するまで米軍は居残る。」と明言したのですが、実際は作業が長引くほど新たなテロ攻撃を受ける恐れが大きく、タリバン側も「期日までに米軍が撤退完了するなら米軍や関係者には手出しをしない」と言う意思表示があったため、期限を伸ばすわけにはいかなかった事情があります。

 現地時間の8/30(月)深夜午後11:59に駐留米軍の最後の一人がC−17軍用輸送機に乗り込み、カーザイ国際空港を飛び立ち期限より1日と1分早く駐留米軍撤退が完了しましたが、勝利宣言したタリバン側が現在関係者以外の空港立ち入りを禁じており、今後軍用機ではなく民間航空会社の特別チャーター便を手配しても帰国を希望する残留米人や国外退避を希望するアフガニスタン人の脱出をタリバン側が許可するのか、I S I S-Kからのテロ攻撃のリスクを抑えて空港での安全な離着陸を責任持って保証するのか、今現在はっきりしません。タリバン内部にも派閥があり、必ずしも内部意見が一致するわけでなく時と場所、条件によっては行動が異なったり、以前の約束や前言が翻る可能性もありバイデン政権で記者会見などメディア対応しているカービー報道官は「タリバンは信用できない」と公言しながら、タリバン内部強硬派の協力拒否もあり得る中でその相手に対してバイデン政権から米軍撤退完了まで手出しをしないように、帰国希望の残留米人や国外脱出希望のアフガニスタン人の妨害をしないように要求(お願い)する限定的信頼ベースをあてにせざるを得ない矛盾した状況です。米国以外の諸国からの外交関係者、経済支援者の安全な帰国手続きについても空路か近隣国を経由しての陸路での帰国になるのか明確な指針がありません。

 また、米軍撤退を受けてアフガニスタン国民の多くが「我々は協力したのに感謝もされず米国に見捨てられた、裏切られた」と言う悪感情を持っている事実があり、その一部が今後反米化してタリバン軍や更に過激なI S I S-Kに合流する恐れも十分あります。加えて、民主主義を認めずイスラムの教条主義を押し通し、音楽や女性の権利を認めずミュージシャンや女性の権利擁護者、人権活動家を厳しく処罰するタリバン制圧下で生命の危険を感じている人々も多く、毎日不安と恐怖を抱えながら身を隠し、脱出する機会をうかがっています。米国に移民・帰化したアフガニスタン人で家族や親類がアフガニスタンにおり、移民申請手続きしたもののまだ認可が下りていない在米の人たちも自分の命が危険にさらされているのと同じで気が気でないと思います。

 このような状況になったのは、バイデン政権と米軍幹部の十分な事前情報収集・分析、タリバン反政府軍やI S I S-Kなど反米組織・グループの動き予想、アフガニスタン政府軍や国際協力諸国との連携協力しながら予想リスクの回避・防御策を盛り込んだ撤退・実施計画立案の不備、判断・想定ミス、過剰期待、見込み違い、計算ミスがあったと言わざるを得ません。バイデン大統領と政権幹部、現役軍関係者は米軍撤退の決断は間違いではない、米国内での国際テロ再発防止と言う当初の任務、主目的を達成した上で駐留米軍は最善を尽くし無事に撤退を完了したと自認・自賛しており、諸外国の政治家、軍事専門家やアフガニスタン駐留経験のある退役軍人も含めて賛否両論分かれていますが、やはり計画にがあった事実は順調に来ていたバイデン政権のつまずきと言え米国民の評価と支持に味噌をつけてしまったと言えます。今後米国内での国際テロ活動根絶のための手立ては本当にできたのか?以前より安全になったと言えるのか?などなど一番肝心で最も気になる疑問が残りますが、悲惨な事件、悲しいニュースを見聞きしないで済むことを願っています。

 前後して先にホワイトハウスと両党上院議員有志間で事前協議、予備交渉で合意していた総枠3.5兆ドルの超大型インフラ予算案の下院通過手続き方法に関して下院で合意決議され、今月下旬に正式可決通過する目処がつき、続いて上院でも可決通過する見込みとなり、来年の中間選挙に向けてバイデン政権の評価、支持率が大きく落ち込む心配はないものと期待していたのに、このつまずきは共和党に突かれる弱点として大きなマイナスですね。

 タイミング悪く先日ルイジアナ州に16年前のハリケーン・カトリナの上陸日と同じ日に過去最大規模のハリケーン・アイダが上陸し、百万人以上に影響する大停電がひと月以上続く可能性もあるとのニュースがありました。この救済、復旧支援にも政府として速やかに善後策を講じる必要があり負担は増えるばかりです。被害に遭われた方々には誠にお気の毒で、心よりお悔やみ申し上げます。

 アフガニスタン絡みでつまずいたバイデン政権の擁護と火消しに走りながら、共和党主導で前回民主党が勝利したブルーステートも含めて大半の州で強力に進められている投票権制限・制約法案の立法化に対抗して州法や市条例を無力化するための連邦レベルの投票権保護法案の上下院議会通過を現在進行中のインフラ予算案と抱き合わせで同時にまたは前後して目指している悩める民主党にとっては新たな悩みが増えた感がありますが、それが上手くいかないとトランプ支持層や過激極右白人至上主義団体・グループ、偽情報・誤情報を撒き散らし続けている保守偏向メディアの陰謀プロパガンダに乗せられて共和党支持に変心する有権者が増えて来年の中間選挙で共和党が議会(特に上院の)過半数を占めたりすると、民主党が継続してやりたい政策議案が議会通過できず、立法化も実行もできず存在価値がなくなってしまいます。そうならないことを祈るばかりです。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第222回:東京オリンピックとコロナに思う

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喧喧諤諤

 8月になりました。先月中旬には現地校に続いて日本人補習校も夏休みに入り、お子さんのあるご家庭では親御さんたち(特にお母さんがた)は休みどころではなく余計に忙しい毎日をお過ごしのこととお察し致します。

 本題に入る前に先月号の拙稿中コロナ変異株の種類と呼称に関する記述に誤りがありましたので、本蘭をお借りして訂正とお詫びをさせていただきます。

拙稿に記述されていなかったものも含めて整理しますと、今年5月末に発表されたWHO(世界保健機構)による分類では、イギリス型がアルファ、南ア型がベータ、ブラジル型がガンマ、そしてインド型がデルタでした。通常原稿作成時には事実関係の確認チェックを自分自身に義務付けておりますが、前回は(前回も?)原稿締切りに遅れてその労を惜しんだためにミスに繋がってしまいました。重ねてお詫び致します。

 余談になりますが、このミスは近頃流行りの言葉で言えば①ミスインフォメーション(Misinformation=誤情報)でしたね。似たような言葉で②ディスインフォメーション(Disinformation=偽情報)と③マルインフォメーション(Mal-information=悪意のある情報)というのもありますが、それらの違いをご存じですか?ご存じの方には読み飛ばしていただくとして、

 元々①は悪意のない単純なミスで文中の日付や場所、関係者の名前など記述内容に誤りがあるものを指します。②は意図的に、多くは発信者自身またはその関係者に有利に働くように事実を曲げたり、事実でない架空の情報を指します。③は明確な悪意のある情報で特定の個人や企業、団体を標的として攻撃するもので、必ずしも誤情報もしくは偽情報とは限りません。一例が本意でなく別れた元カレや元カノに対する私情・怨恨からのリベンジ・ポルノや暴露記事、解雇された会社の悪評流布や誹謗・中傷、社内機密情報漏洩など事実であっても通常は公(おおやけ)にしない情報で、しばしばスキャンダルや訴訟問題に発展しかねないものです。

 やや複雑なケースは、②の偽情報を見聞きした人がそれを偽情報と知らずに他の人にそのまま伝えたり、ブログやSNSで流した場合ですが、この場合当人は意図的に偽情報を流した認識がないため偽情報ではなく誤情報の扱いになります。

 偽情報だと認識していたか?意図的に他へ流したか?という判断は元の発信者やそれを繋いで流した当人及び受信・閲覧者側の立場、両者の関係、周辺環境やその時の状況、タイミングなどで判断が難しい微妙な点があるため、正確な分類が難しい場合があり、分かりやすく①、②を合わせて誤情報としているケースが多いようです。

 トランプ前大統領が権力と権限に執着して「前回大統領選に不正があった。自分が当選した選挙を盗まれた。」とウソ発言を繰り返し、それを取巻き陣や支援グループが拡散・扇動したり、コロナワクチンに関する不信・反感・反対・抵抗を促す偏向TV局・メディアニュースやフェイスブック、ツイッターなどの相乗り掲示、投稿も一括りすれば全て誤情報です。FOX Newsの看板キャスターが視聴者に向けて恥も外聞もなく毎日のように誤情報(正確には偽情報)を流していながら2千万ドルとも3千万ドルとも言われるとんでもないサラリーを受け取っていることが本当に信じられません。こんな有害・有毒で恥知らずな行為が何も咎められずいつまでも野放しになっていることも信じられません。『言論の自由』を履き違え他人の不幸を餌にして我が物顔にのさばっている連中(悪い奴ら)を何とかできないものでしょうか?(閑話休題)

 さて、今回のテーマは「東京オリンピックとコロナに思う」です。

 学校の夏休み入りと前後して東京オリンピックが1年遅れで開催され、当地米国でも連日関連ニュース報道と日本選手の話題で持ちきりです。開催前のみならず開催中の今もコロナ禍が続く中での強行開催に賛否両論があり、国際及び日本オリンピック委員会や運営にあたる関係者に対するデモ行進、抗議集会だけでなく、全国各地で無償のお手伝いをしているボランティアの方々や個々の代表選手にまで非難や誹謗・中傷のコメントがネットや個人のブログ、各種SNSツールで見受けられるのはいくら何でも行き過ぎ、やり過ぎの感があります。

 私自身も開催にはやや反対の考えでしたので、実際に開催後、緊急事態宣言が延長されたり、コロナの新規感染者数が急増したりしている事実を見ると開催しない方が良かったのではないかと思う反面、史上初めて無観客で行われたオープニングセレモニーの実況中継やビデオ放送を観た際には「これだけの数の国・地域、異種競技の代表団が国境、政治・経済・社会体制、人種、言語、文化・慣習、宗教などの違いを超えて同時に一堂に集まる大規模な国際イベントはオリンピックしかない」ことを改めて再認識させられ、これも賛否両論あったオープニングセレモニーの内容一つひとつに関してどれだけ多くの人たちがアイデアを出し、計画を立て、長い年月をかけて汗水流し準備をしてきたのかと考えると、費用のことはともかくとして、それらの貴重で尊い努力と時間が日の目を見ないまま無駄にならないように、中止にせず、開催に踏み切って良かったのかなとも思いました。異論はあると思いますが、それが偽らざる感想です。

 更に具体的に各種競技が始まり、開催国である日本の選手たちの活躍を見聞きする度に否応なく自然に心が弾み喜びが込み上げてくるのもオリンピックの力ですね。特に大会4日目を終えて日本の獲得金メダル数8個!常連の強豪スポーツ大国(米国、中国、ロシアなど)を抑えて単独首位となり、8日目が終えた時点でも金メダル17個で首位を維持していたのには日本人として素直に大感激でした。特に今大会で野球と共に復活した女子ソフトボールで前開催の2008年北京大会に続いて13年ぶりの決勝で宿敵米国代表を破って堂々金メダルは感動ものでした。優勝投手は長年第一線で驚異的な記録を残してきた日本の、いや世界のリジェンド上野由岐子選手。米国代表チームに「今回も上野を打てなかった。」とため息を吐かせました。また、4試合に救援登板し、神がかり的な投球で優勝に大きく貢献した左腕の後藤希友選手や予選ラウンド・カナダ戦で延長の末サヨナラ打を放ち決勝では奇跡的なダブルプレーで米国の反撃を断ち切って攻守のヒーローとなった渥美万奈選手も印象的でした。男女テニスと男子水泳陣は残念な結果になりましたが、女子水泳で大橋悠依選手の競泳2種目優勝も凄かったですね。男子体操では最終演技種目の鉄棒まで僅差のポイントのままもつれた結果ほぼノーミスの演技で個人総合優勝した橋本大輝選手の鋼(はがね)のような精神力の強さが際立っていました。長年団体・個人でリーダーとして頑張ってきた内村航平選手の力強い後継者が現れて頼もしい限りです。

 開催直後はメダル獲得が十分期待できた新種目のスケートボードや伝統的に得意種目の柔道などが先行したとは言え、日本選手の活躍には嬉しいと同時に昨年コロナ騒ぎの影響で1年延長が決まった後も人知れぬご苦労の数々を想像して本当に頭が下がります。皆さん、おめでとうございます!!

 もちろん、ご家族や友人・知人にコロナによる犠牲者・被害者をお持ちの方々にはオリンピック開催を喜べない、祝えないお気持ちがあることを忘れてはならず重々心に留め、また1年延期の影響で代表選出に漏れたり、開催時にピークが過ぎてしまったり、ピークを合わせ切れず、残念ながらベストを出し切れずメダルを取れなかった選手たち(中でも白血病から復帰し痛みを乗り越えながら苦しいトレーニングを重ねて代表選考会を経て正式代表に選ばれた女子水泳の池江璃花子選手などはもう競技会場のプールサイドに立っているだけで奇跡でしたが、決勝まで残って泳ぎ切った姿は感動以外の何物でもありません)にも労いの拍手と心からのありがとう!とお疲れ様!を言いたいです。

 国民の誇りと意気高揚というプラス面とは逆に国民の健康や社会衛生上マイナス面があっても、それは根本的に選手やボランティアの責任ではなく優柔不断、判断ミス、的外れの対策と拙速・時期遅れの実施で国民に我慢と辛抱を強いた日本政府と地方行政の落ち度です。ワクチン接種を含めて延期決定から大会開催までにタイミング良く適切な対策がその都度実施されていれば、今のような大きな不安なく開催できたと思うと残念でなりません。

 それでもなお、海外からはコロナ禍の中「日本だから開催できた。他の国だったら開催できなかった。」という声もあり、開催前に日本に入国し、各地でトレーニングキャンプを張っていた各国代表チームからその地の日本人ボランティアの皆さんの献身的で温かいレセプションと応待に感謝の声が鳴り響いています。コロナ騒ぎで何をするにも制限・制約がある中で、一昨年のラグビーワールドカップ開催時に劣らぬ日本の『おもてなし』は来日した各国代表団の心に深い感銘と思い出を残したようです。まだ終わっていませんが、ボランティアの皆さん、お疲れ様!!また、代表選手だけでなく来日してチームに同行取材やオリンピック村や各競技会場などで取材・報道に当たっている海外メディアの一番の驚きとお気に入りは何と日本のコンビニと自販機の素晴らしさとのこと。日本人には日常当たり前の光景ですが、見慣れていない海外からの来訪者にとっては大袈裟でなく欲しい時に欲しい物が何でも買える、手に入る便利さがまるで魔法のランプか打ち出の小槌のように思われるようです。これもちょっと嬉しいですね。コンビニ関係者の皆さん、自販機にもご苦労様!

 当地米国では、冒頭で触れたコロナ変異株デルタが先月の独立記念日連休あたりから全米規模で急速に拡散し、特にワクチン接種やマスク装着に消極的なフロリダ州、南西部諸州、山間部州などでは直近の3〜4週間連続で前週比30%台、50%台、60%台増の新規感染者数となっており、医療施設の緊急受け入れキャパが病床数、医療スタッフ数とも限界に近い状態になっています。ワクチンの接種件数、接種率の伸びが頭打ちとなり、デルタ変異株が目に見えて拡散を始める前でも既に新規の感染者及び入院患者の約95%はワクチン未接種者という状況になって初めて、ワクチン接種奨励に非協力的であった共和党の有力議員や問題のFOX Newsのキャスターまでが突然ワクチン接種を呼び掛ける様変わりの事態になっていましたが、先月末ワシントンポスト紙が入手した CDCの内部資料によるとデルタ変異株は感染力がチキンポックス(水疱瘡)並に強く、また現場勤務の医療関係者などでワクチン接種済みの人にもブレークスルー(ワクチン免疫の防護壁を突き破って人細胞に侵入)感染した事例もあって、要はデルタ変異株は誰にでも感染する危険が少なからずあるとのことで、CDCは以前発表したガイドラインを強化してワクチン未接種の人はもちろん、接種済みの人も室内で人が集まる所ではマスク着用を再度強く求める事態に逆戻りし、余計に国民の不信感と混乱を招いてしまいました。

 その影響もあってか、先月末にはそれまでワクチン接種率、新規接種実施件数とも全米ワースト10の上位に並んでいた南西部諸州や山間部州で一気に接種率、新規接種件数が跳ね上がり、後者の数字では全米トップ10に並ぶ驚きの逆転現象が起きました。遅れていた接種実施が“Better than never”でデルタ変異株の拡散スピードとの競争に勝ち“Too little, Too Late”にならねばと願うばかりです。また、間もなく新年度が始まる学校で現在ワクチン接種対象になっていない12歳未満の学童に対するマスク装着義務付けも猛烈に反対する親・保護者が存在し、どうしたら学童の安全と健康を確保しながらレベルの高い教育を効率良くできるのか?と教育関係者・指導者は頭を痛めています。

 一方、首都ワシントンでは更なる景気浮揚と雇用拡大のための総額5,500億ドルという大型インフラ予算案が先月末ようやくバイデン政権と民主・共和両党(有志)間で基本合意に達し、順当に行けば先に上院で審議可決した後下院で審議可決し正式通過・成立するか?という状況になってきました。タイム誌によれば、通常は考えや利益が対立するビジネスオーナー・経営者側と労働組合側の有力者が協力してインフラ予算は双方にメリットありと両党の歩み寄り合意に強力な圧力を掛け続けたのが大きな後押しになったようです。下院では民主党のペロシ議長がインフラ予算と抱き合わせでチャイルドケア及び教育関連予算など諸々の懸案事項推進のための予算を含む3.5兆ドルの超大型追加予算を同時通過させたいと願っていますが、民主党のシネマ上院議員が余りに巨額過ぎると難色を示しており、民主党内でも完全な挙党一致態勢になっていない点が気掛かりです。

 他方、やはり先月末に司法省が2年前の前言を翻し、IRS(米国歳入庁)にトランプの個人所得税申告書を議会に手渡してもOKと言明したニュースがありました。同じ資料が直ちに一般国民にも公表される意味ではありませんが、トランプ前大統領が初当選する前のキャンペーン中も在職中も退任後も表裏から可能な限りのあらゆる手段を用いて必死に守り続けてきた強固な防護壁が崩れて彼の収支活動報告、所得・納税申告の実態が徐々にまた具体的に表面化されそうです。先に起訴されたトランプグループ会社の金庫番であるワイゼンバーグCFO(最高財務責任者)も絡めてお金の動きを追った会計・財務面から長年積み重ねられてきたトランプとグループ会社の悪行がいよいよ白日の元に照らされ、次々と芋づる式に暴かれていくかもしれません。乞う、ご期待!ですね。

 そんなこんなで、オリンピック開催中の日本でも当地米国でもコロナ抜きでは物事が語れない、進まない状況に変わりありませんが、今後も予想される新種の変異株発生も含めて政府主導でタイミング良く適切な対策が取られ、ワクチン接種が進み、新規感染者・入院患者数、重篤患者数、死亡者数が大幅に減少してコロナ騒ぎが収束に向かい、最終的に終息することを切に祈ります。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第221回:アメリカンドリームか?アメリカンナイトメアか?

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喧喧諤諤

今年の独立記念日ですが、皆さんはどのようにお過ごしですか?

ご家族やご友人と昨年より少しは楽しく幸せな時間を持てたでしょうか?拙宅の近所では花火の音が聞こえたり人家越しに遠目の花火も見えたりしますが、世間の喧騒を他所に我家は今年も代わり映えのしない連休です。古典『徒然草(つれづれぐさ)』の著者吉田兼好ではありませんが、「つれづれなるままに日暮らし、硯に向いて心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば・・・」と毎月原稿締切りでご迷惑をお掛けしている本紙の発行責任者の方に喜んでいただけるように、原稿下書きの書き溜めでもやっておけばいいのですが、締切り直前まで何が起こるかわからないご時世を言い訳にして話題のトピック、テーマのネタ探し、確認作業、取捨選択などをしております。まあ、独断で「日々是好日」特に悪いことがなければ善(よし)としましょう。

 トピックと言えば、海の向こうの本国日本では東京オリンピックの開催日が目前に迫っているにもかかわらず、ワクチン接種の実施も拙速感が否めない中でコロナ禍の緊急事態宣言や蔓延防止法の適用解除に二の足を踏んでいます。日本国内だけでなく海外諸国でも各競技の代表最終選考会と代表役員・選手団の決定が終わり、予定通り開催ならば続々と日本に派遣・入国するばかりとなっています。(既に一部入国したグループでコロナ感染者や濃厚接触者が発生し残念です。)日本国内でも開催賛成派と反対派で意見が二分されているようですが、実際に開催となれば、会場観客の有無を問わず、日本代表団や一般国民は元より海外から来訪する代表役員・選手団、オリンピック運営委員会関係者、ボランティアの皆さんの安全と健康を第一に考えて会場、宿泊施設、移動経路、緊急対応策など全体から細部まで細心の注意を払って最善の方策を取っていただきたいと願っています。なお、テニスの大坂選手は現在開催中のウィンブルドン大会を欠場し、公式会見義務のないオリンピックには出場予定と発表されました。先月号原稿締切り直前のフレンチオープン開催中に起きた公式会見拒否、2回戦棄権については当時十分な情報がなくやや短絡的なコメントをしましたが、その後彼女は2018年のU.S.オープン優勝後ずっとウツ状態が続いて精神的に苦しんでいたと自ら公表しました。選手の精神的健康に配慮しない公式会見での辛辣な質問の繰り返しにも苦痛を感じていたとのこと。その当時も義務違反となる会見拒否は「プロとしての自覚が足りない」、「自分勝手なわがまま」、「今の地位につけたのはメディアとファンのお陰なのに恩を仇で返すのか」などなど厳しい批判コメントがありましたが、外からは見えない心の病は本人でさえ揺れ動く心の実態、実情を正確に把握し、分かりやすく言葉で表現して他人に伝えるのは至難の技、ましてや他人にはとても理解できないことです。批判するのは簡単ですが、彼女の真のファンならば(ファンでなくても)今は批判や叱咤激励するのではなく、彼女が心の健康を取り戻すまで温かくそっと見守り、優しく応援してあげるのがベストではないでしょうか?(閑話休題)

 一方当地米国では、コロナワクチンの接種件数、接種率の伸びが頭打ちとなり、バイデン大統領が力説していた独立記念日までの達成目標に至らず。イギリス型ベータ変異株に続くインド型デルタ変異株の新規感染が世界各国・各地で急増、急拡大しており、米国も例外ではありません。国民全体が気を引き締めず安易な対応をしているとワクチン未接種の若年層や接種反対・拒否・不可能な人達が感染、重症化したり、更に凶悪な変異株の発生を助長したりする恐れがあり、既にワクチン接種済みの人達も決して安心できません。

 明るいトピックとしては、引き続きMLBエンジェルスの大谷選手の活躍が連日のように話題となっています。開幕から先月末まで先発投手を兼務しながら量産した本塁打数がチームメイトのトラウト選手やドジャースに移籍したプホルス選手が持っていた球団記録を更新しました。(本原稿執筆中には未然形だった6月末日の結果次第では更に2、3の記録更新可能性もあり。)また、今月中旬開催のオールスターゲーム前日恒例のホームランダービーに日本人として初めて参加を予定しており、対抗馬と目された現役スラッガーも彼の優勝を予想すると同時にファン投票でDH(指名打者)として選出される可能性が濃厚。おまけにア・リーグの監督采配次第ではレギュラーシーズン同様に二刀流で投手としても出場するかもしれない期待感もあり、まるで漫画の世界のように大いに盛り上がっています。

 逆に暗いトピックとしては、今回のテーマ「アメリカンドリームか?アメリカンナイトメアか?」にも関連する出来事が挙げられます。

 連日の報道でご存じのように、先月下旬フロリダ州サーフサイド市で高層コンドミニアムビルの部分崩壊事故がありました。夜中の1時半過ぎにビルの約半分近くが突然崩壊、翌朝のニュース報道で見た現場の悲惨な光景には息を飲みました。事故発生が日中ならば外出中で難を逃れた人も多かったと思われますが、運悪く夜中の就寝時に起きたため先月末時点で身元確認ができた11名の犠牲者と150名以上の行方不明者という最悪の事態となってしまいました。崩壊した瓦礫に閉じ込められた生存者の緊急救出作業が最優先事項ですが、作業中に瓦礫が滑落したりビルの残存部分が崩壊する2次災害の危険性や不安定な瓦礫上・中で作業する救出部隊の安全確保も難しい状況のところに火災が発生し、消火用散水で作業が一時停止されたりで、1分1秒も待っていられない犠牲者のご家族や関係者の切望を知りながらも作業が遅々として進んでおりません。時間が経てば経つほど生存者の発見救出の望みが薄れてしまうため、ニュース報道を見る度にいたたまれない気持ちになります。一人でも多く奇跡的に生存者が発見救出されることを願って止みません。

 救出作業と並行して原因究明と現場周辺や近隣で懸念される同じような設計構造のビルの崩壊リスク確認調査と崩壊防止・回避策の策定が進められています。

ニュース報道によると、3年前の2018年に実施されたコントラクター(建物保全管理下請け業社)による点検でプールデッキの構造設計が悪く排水を助ける傾斜がないため溜まり水が発生し、浸透した水による直下のパーキングガレージの鉄筋コンクリートの鉄筋のサビ付き、膨張(錆びが進行すると元サイズの7倍にもなる由)、コンクリートのひび割れ、劣化・欠損指摘と改修の必要性報告が出ていたものの何も具体的な改修処理がされないまま放置されており、その後更に劣化が進んだことが崩壊に繋がった原因のようです。天災ではなく明かに人災です。実際に今年4月にコンド経営管理理事会から住人宛にリスク警告兼改修予算(総額$15百万)の分担予想金額通知書の配布があった由。

 また、地元マイアミヘラルド紙がコントラクターから入手した崩落発生36時間前に撮影した現場(崩壊した南側ではなく北側ですが、加速した構造物の劣化は同レベルと推察される)のビデオとインタビュークリップを見るとそんな所に人が住んでいたのか!?と驚くばかりです。従って、今回の崩壊は上層階から雪崩現象的に下層階に順々に崩れ落ちたものではなく、プールデッキ下の最下層が先に崩れ、支えの無くなった上層階が積み木落としかダルマ落としのように次々と崩れ落ちた可能性が大です。また、別の専門家の速報コメントでは同じような設計構造の建物が近隣に100件ほどあるようで、同じ悲劇を繰り返さないように緊急点検実施と場合によっては住人の暫定避難、早期改修工事実施が急務となると推察されます。

 目を移して米国議会を見ると、民主党ジョー・マンションおよびキルステン・シネマ両上院議員の党内抵抗と共和党議員の挙党一致的な反対行動で遅々として進まない連邦政府・民主党主導による雇用確保・創出のためのインフラ投資法案および連邦投票権保護法案(共和党による各州レベルの投票権及び投票行為の制限・制約州法を無力化、無効化するためのもの)というバイデン政権の次なる二つの目玉政策承認・実施が頓挫しておりますが、今回のビル崩壊事件を『天の声』的に活かして共和党の協力的少数議員の票数も加えてインフラ投資法案を突破口として投票権保護法案も抱き合わせまたは前後して何としても議会通過、大統領署名、立法化・実施に漕ぎ着けて欲しいものです。銃規制強化や難民・移民受け入れ問題の改善対策も後に続いていますので、時間を無駄にできません。

 国民の生活保護、経済復興、雇用創出よりもバイデン政権潰しと次期中間選挙、大統領選挙での勝利を党利党略として最優先する共和党メンバーは民主党政権に協力して政策が上手く行ってしまうと主役である民主党の手柄となり、更に国民の評価と支持を得て次期選挙での挽回、失地回復が困難になるとの目算があるのか、全く非協力的で超党派案の検討・交渉をしている少数派議員もひょっとすると国民へのジェスチャーだけで何処まで本気かわかりません。平気な顔で嘘や虚偽のストーリーをAlternate truth(オルタネイト・トゥルース=別の真実)と言い換えてさも真実のように思い込ませて自分たちに有利になるように群衆を扇動操作しようとしている面々の巣窟化している現在の共和党では、彼らが提案、提言する政策案や法案も所詮虚構の世界の産物、砂上の楼閣であり、本当の真実や正確なデータに基づいた確固たる基盤を持たない怪しげで不安定なものになるため超党派での合意、法案審議・通過は極めて望み薄(ほぼ絶望)のようです。

 その間にもQAnonなどの右翼過激派保護主義グループや白人至上主義者グループの多くは大統領在職中に自己中心で自分の野望実現のために勝手気ままに振る舞えた甘い思い出が忘れられないトランプ前大統領がこの8月末までに復職するとか、復職が実現されないと米国は内戦状態となり、今でも全米各地で多発している銃乱射事件や暴力事件があちこちで更に増加すると発言するトランプ信者、トランプ支持層が現実に存在し、良識派の国民の日常生活を不安と不信で脅かしています。最近では各種教会のイベントにも政治論争が持ち込まれ、信者や参列者たちを正しく導くべき神父や牧師自身が政治的かつ偏向的な発言をして反対する者を追い出し排斥する傾向まで表面化しており、神を崇め祈りを捧げに来る敬虔な信者たちは「教会に神の居場所が無くなってしまった」と嘆いている由。

 他方では、トランプの愛娘であるイバンカと娘婿のジャリッド・クシュナー夫妻が負け戦となった前回大統領選挙は不正投票があったために本来勝利すべき自分が当選しなかったといつまでもMove on(次に進む)しようとせず、負け惜しみタラタラの嘘八百を並べてグズついているトランプ親父に愛想を尽かしたのか、最近は前回選挙に関する公のコメントなしで距離を取り始めており、まだ先の長い野望たっぷりの若夫婦はトランプの動向とは別に自分達の人生シナリオの次章に入ろうとしているようです。上手く行ったら、それも怖いですね。

 米国生まれの若者や子供たちだけでなく海外から移住してくる難民・移民の中には『自由な国』米国でアメリカンドリームの実現を夢見て来米し、実際に夢を実現した例もTVやネットのニュース、ブログなどで時々紹介されていますが、単に政情や経済が不安定で身の危険や生活不安のある中近東、中南米、アフリカなどの開発途上の祖国を離れて安全で将来の望みもある米国に来たという人々も多く、なけなしの財産を現金化して渡航費用にしたり、密航業者に手数料として渡したりして、生まれ育った祖国に戻らない一大決心をして文字通り命懸けでこの地を目指して来たわけです。中には密航業者に騙されて金品だけ奪い取られ、同行帯同または子供だけ送り込んで米国に入るはずが、途中で山賊や盗賊に襲われ、携行品や命を奪われたり、子供や女性が誘拐されたり、国境越えや河川横断中の事故で離れ離れや行方不明になったり、不慮の事故や病気で亡くなったりする人も跡を絶ちません。

 しかもやっとの思いで米国に着いたと思ったら、国境管理・警備部隊による入国審査で受け入れ拒否されたり、生命の危険さえある本国に強制送還されたり、メキシコ側の路上キャンプでいつまでも当てどなく待機させられたり、多少運が良くても米国側の収容所暮らしと失望に包まれる事例も多く耳にします。晴れて入国審査に合格し(あるいは密入国で)、米国生活が始まっても雇用や生活保証はなく、食料や飲料水、衣服、生活用品を物乞いし雨露をしのぐ寝ぐら探しは元よりその日暮らしの生活苦に喘ぎ、場所や環境によっては人種差別や暴力を受けて大怪我をしたり、一命を落とす人まで出ております。運良く仕事が見つかっても密入国や公式な滞在資格証明書がない弱みにつけ込まれ、最低賃金以下の給料で半ば強制的に3Kの極めて悪い職場環境で長時間の重労働を課せられたり、人間らしい扱いをされないケースも耳にします。そうなると、アメリカンドリームではなくアメリカンナイトメア(悪夢)ですね。

 少しまともな仕事と職場環境に恵まれても、いつ何処で何が起こるかわからない今のご時世では自分と家族を含めて食料品・生活必需品の不足、輸送・配達の遅延とコスト増、インフレによる継続的物価高、戸建て・リース・レンタルとも住宅費高騰など通常の生活不安だけでなく銃乱射事件、国内テロ、交通事故、住まいや職場・学校での管理監督ミスによる不慮の事故、薬物中毒、医療ミス、地球温暖化と環境破壊により頻発する大規模自然災害・人災など心配の種は尽きません。

海外からの難民・移民に限らず、米国生まれの米人にとっても生きづらい、暮らしにくい世の中になってきていますが、バイデン現政権には粘り強く継続的な効果が望める政策を一つ一つ実施して、着実な成果を出すように誘導してもらい、少しでもまた規模は小さくてもアメリカンドリームを夢見て実現できる人が増えますように祈っております。(合掌)

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第220回:社会正義と商業主義とエゴの合間で

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喧喧諤諤

メモリアルデーの連休も過ぎて6月となり、ミシガンもあちこちで芝刈り、バーベキューや卒業パーティーが見られるようになり、初夏の訪れを感じさせます。コロナワクチン接種率の向上により新規感染者数、入院者数、死亡者数が目に見えて減少し少しずつ普通の日常生活スタイルに戻りつつある中、パンデミックの影響で昨年は見送られた学校の卒業式もヴァーチャルでなく対面現地開催で行われ、学校によっては昨年度の繰越し卒業式と同時開催したニュースもありました。米国では高校卒業には特別な意味があり、卒業生にとっても親御さんにとっても思い入れの強いイベントなので、想定外の苦難を乗り越えて卒業の喜びはひとしおでしょう。ご卒業おめでとうございます!

 米国内のコロナ対策は良い方向に進んでいますが、広く世界を見渡すとインド、ブラジルなどのホットスポットを筆頭にまだまだ多くの国・地域が苦しんでおり先進国でも対応に四苦八苦していますが、自力でワクチン生産能力も入手能力もない開発途上国や小さな島嶼(とうしょう)国では米国からの迅速で差別のないワクチン供給支援が切望されています。日本については後述します。

 スポーツの話題では、当地米国のバスケットボールNBAとアイスホッケーNHLがプレーオフの真っ最中ですが、残念ながら今年も地元チームのピストンズとレッドウィングスが出ていないので、今ひとつ興味が湧きません。セパ交流戦期間中の日本のプロ野球では首位から5位まで5ゲーム差ほどの団子レースが続くパリーグに対して、セリーグでは阪神タイガースが首位を堅持。昨年ドラフト1位で入団したルーキー佐藤輝明選手の活躍(先日も史上4人目となる新人で1試合3本塁打とミスタージャイアンツ、長嶋さん以来の記録)と明るい性格でベンチの雰囲気も非常に良く、今年こそ『はんしん不随タイガース』の汚名(虎党ファンの方には失礼お赦しください)を返上して1985年以来のリーグ優勝なるか?注目されます。当地MLBでは何と言ってもエンジェルスの大谷選手の話題で持ち切りです。「二刀流だ」、「三刀流だ」、「いや正確には二刀流だ」とつまらぬ議論も出ていますが、打者としては打率こそ2割6分〜7分とやや下がっていますが、開幕からチーム50試合消化の先月末時点で15本塁打、11二塁打、3三塁打は1998年マリナーズでプレーしていたA.ロッド以来の記録。しかもそれを200打席以下(正確には195打席)で達成したのはMLB史上初。また、二刀流として同一シーズンに打者で15本塁打、かつ投手として50奪三振したのは2018年にMLBデビューし22本塁打、63奪三振した彼自身のみで2度目の快挙。今シーズンはまだ2ヶ月経過したばかりなので、このまま健康で順調にプレーし続ければ数字も大幅上乗せする可能性大。打席数が制限される二刀流にもかかわらず、単純計算ではシーズン50本塁打、128打点ペースという超一流打者でも同時には難しい数字を達成してMVP(米スポーツ誌のスポーツ・イラストレイテッドが特集した開幕2ヶ月間の記者投票では7人中6人がア・リーグMVPに投票)まで獲得する可能性もあります。本人は野球小僧、野球少年のように純粋にプレーを楽しんでいるようですが、見ている我々もとにかく楽しくワクワク感が止まらない一挙手、一投足が注目を浴びるスタープレーヤーです。これから本格的な夏に向かい地元南カリフォルニアから長距離移動しながら砂漠気候か亜熱帯気候のアリゾナ、テキサスなどの灼熱、猛暑の中での試合が待っており、熱中症や夏バテ、過労が心配されますが、怪我・病気せず残りのシーズンを通してハツラツプレーを見せてほしいと願っています。

 テニスでは今年二つ目のメジャーイベント、フレンチオープンが開催中。今春長い怪我休養から復帰した男子の錦織選手がどこまで調子を取り戻して若手の台頭顕著なトップ10〜20レベルのプレーができるか?第2週まで勝ち残れるか?です。ネットで公私にわたり色々批判する人もいますが、彼があの小さな身体で今までに成し遂げたことがどれだけ凄いことか、日本のテニスやスポーツ界にもたらした貢献度を公平に評価し、過剰期待せず素直に応援してあげたいものです。女子では今や世界的スタープレーヤーとして注目されている大坂選手が今大会中の公式記者会見を拒否する宣言を出し、物議を醸しています。選手のメンタルヘルスに十分配慮していないという理由ですが、大会主催者、スポンサーや現役並びにOB、OGのテニスプレーヤー、テニス・スポーツ評論家、ファンから賛否入り混じったコメントが出ています。実際に初戦勝利後の記者会見をせず、主催者から参加選手としての義務違反に対する1万5千ドルの罰金通知、また4大大会主催者の合同声明として今後の行動次第で今大会失格や将来の4大大会出場停止処分もあり得るという警告がありました。彼女の姉であるマリさんの補足説明によるとクレーコートで良いプレーができないことに関して繰り返し嫌な質問をされることに耐えられなかった、ということですが、彼女の一ファンである私も個人的には今回の行動はロールモデルとなるべきスタープレーヤーとしてはやや性急で大人気ないエゴと取られても仕方ないと感じます。アマチュアテニスプレーヤーの私は世界中を旅するプロテニスツアーやメジャーイベントを含む数多のテニスイベントに参加するプレーヤーにかかる心身のプレッシャーとストレスを知る由もありませんが、自分の普段の試合でも上手くプレーができずに負けて、自分自身に腹を立てたり、パートナーに八つ当たりしてしまったり、試合に関して話もしたくないことがあるので、負け試合直後の記者会見で嫌な質問をされれば、反発したり嫌気が差して答えたくない、その場を離れたい気持ちは分かります。それでもなお、参加プレーヤーの義務として嫌でも辛くてもネガティブな気持ちを抑えて会見に臨まねばならない立場にあります。特に注目度の高い上位ランクのプレーヤーや歴代チャンピオンは他の選手や後に続く後輩、ちびっ子ファンのロールモデルとして余計にそれが要求されます。わずかなエゴや一つの例外も許されない環境です。人間関係をこれ以上こじらせて禍根を残さないように、会見拒否ではなく、会見で自分の考え、意見を伝えるとともに改善のために関係者と何度でも粘り強く話し合いを続けてほしいと思います。また、コートの中では余計なことを考えず、試合に集中して3回戦の壁を越えてほしいですね。(とここまで書いたところで、たった今大坂選手がフレンチオープンを棄権という驚きの臨時ニュースが入ってきました!(事が大きくなってしまい、大変残念です。)

 またまた前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマは「社会正義と商業主義とエゴの合間で」です。

 日本のコロナ対策が遅々として進んでいない状況に海外在住日本人の我々も心を痛めています。先進国のはずの日本が先月末時点でワクチン接種率1%、世界ランクで100位程度と報道され、ワクチン後進国であることが改めて再認識されましたが、先月末に日米間で米人も入ったバーチャル会議の席上、米人から「日本のワクチン接種率が1%って本当?オリンピックは大丈夫?」と質問され、「その通り。オリンピック開催も危ない」と私見を述べましたが、大変恥ずかしい思いをしました。安倍前首相から政権を受け継いだ菅首相は就任前の発言や就任時の所信表明演説では「コロナ対策を最優先する」と明言していたにもかかわらず、有効な対策は何一つとして実施できず緊急事態宣言の発令と延長を繰り返し、観光業、飲食業を主とするビジネスの営業制限・制約と国民の外出自粛の忍耐を強いるのみで、ワクチン接種に関しても「高齢者は7月末までに完了する」とお題目を唱えただけで、実際はとても間に合わない都市や地域があると知って「私もショックでした」とまるで他人事のようなコメントばかり。

 更に追い討ちをかけるように日本国内のワクチン接種が普及する前にホットスポットのインドで変異発生したインド株(最初はインドの株式のニュースかと思ってしまいましたが変異株のことでした)が日本や中国でも確認され、致死率は高くないものの従来コロナの倍以上の感染力による新たな感染拡大が懸念されています。直近で日本とも国交とビジネス関係が親密でコロナ対策では優等生だったタイ、ベトナムでも変異株が確認され不安は増すばかりです。

 菅首相が自民党幹事長時代は安倍前政権の番頭役、調整役としては「総理の意向で…」とか「総理がそう希望している」などと安倍前首相の権威を使ってそれなりに機能していましたが、自分が首相の座につき強力な派閥の援護もなく有能で頼りになる番頭役や閣僚がいない今、揺るぎない自信を持って有効な政策を打てないまま、国民の信頼と支持を急速に失いつつあります。危機管理の能力も欠如しており、所詮、国のリーダーの器ではないということでしょうか。

 昨年一度延期されたオリンピックも延期が決まった時点で「これで安心してしまうとコロナ対策が進まず、来年の開催も危ないかも」と思いましたが、残念ながら首相交代後もその不安が的中してしまいそうです。

 先月立て続けに報道されたIOCのバッハ会長他3名の発言も日本国民に対する配慮を欠いた失言と取られて有識者から批判の声を浴びていますが、「オリンピックは大金儲けの機会・手段」と考える商業主義に凝り固まった組織と五輪関係者の本音が出てしまった感があります。「オリンピックは参加することに意義がある」とは言うものの、すでに渦中にある開催前の混乱に加えて開催中・後に予想される多大なリスク、あるいは想定外のリスクの可能性を考えると、それこそ命懸けで参加する意義のあるものでしょうか?
もちろん、通常4年に一度、しかも今回は母国日本で開催されるオリンピックなので、
すでに代表入りが決まっているか代表入りできそうな日本人選手にとっては、これが最後のチャンスとそれを目指して大袈裟でなく死ぬほど辛く苦しい練習と努力を続けてきた一世一代の価値あるイベントであり、「はい、そうですか」と簡単に諦められるものではないでしょう。

 緊急事態宣言が繰り返されたり、延長されたりで行動の自制・自粛を求められ長く忍耐生活を続けてきた一般国民も我慢の限界がきており、この上オリンピック開催のために更に忍耐生活が長引いたり、開催中・後の安全・健康上の保障と運営管理に大混乱をきたし、今でも受け入れ病床数や医療関係者がしている病院、医療機関がパンクし医療崩壊に繋がるのではないかとの懸念がオリンピック開催に反対する大半の国民感情と見られています。開催中止となればIOCに対して巨額の違約金支払い義務があるとのことですが、コロナのような天変地異、超自然現象は本来ならばフォース・メイジャー(制御不能の不可抗力事項)とみなされ、ペナルティーは免責されるケースが多いのですが、いかんせん日本政府の対応が遅れ遅れで、しかも的外れでしっかり対応すれば自力でコントロールできるものまで制御不能のような状態にしてしまい、100%免責とは行かない雰囲気です。せめて他責部分もありと情状酌量で半額とか何割引とかにできれば金銭的被害・負担は減るのですが果たしてどうなりますか。米国の有力紙
ワシントンポストやニューヨークタイムズなどが社説でオリンピック開催に反対や懸念を表明している一方、国内でもソフトバンクの孫会長の発言にあるように「無理やり開催すれば中止よりももっと大きなものを失う」と言う懸念も的外れでない気がしますので、菅首相以下現政権、JOCオリンピック運営委委員会には見栄や自己満足または商業主義に忖度した金勘定優先でなく、エゴを捨て内外の社会正義と日本及び諸外国国民の安全と健康を第一に考えてベストの判断と決定をしていただきたいと切に願います。

 一方当地米国では、相変わらずトランプ前大統領の亡霊に取り憑かれたような共和党の面々が首都ワシントンの連邦議会だけでなく各地の州議会、市議会でも有権者の選挙資格、投票権・投票方法の制約・制限に明からさまに動いており、干支が亥年の今年に合わせたわけではないでしょうが、恥も外聞もなく文字通り猪突猛進しています。

 また、去る1月6日に起きたトランプ支持派グループの米国議会乱入事件の民主・共和両党同数議員構成とする調査委員会設定議案に対して事件直後には乱入を誘発したトランプの責任を批判する発言をしていたマコーネル上院少数党院内総務とマッカーシー下院少数党院内総務が二人とも前言を180度ひっくり返してトランプ批判を止め、先に提案した共和党の要望通り設定した調査委員会議案の審議・通過を妨害し、直前に議会訪問、共和党議員との面談を希望した乱入事件時に彼ら議員の警護に体を張り、直後に入院死亡した議会警護警察官の母親と内妻との面談を拒絶したり、会っても真摯な対応をしなかったとのニュースを見てやり切れない気持ちでした。

 トランプ前大統領の執務中にあった2度の弾劾裁判審議で無罪投票し、トランプが前回選挙で敗れた事実も認めず、自分たちが大統領職を盗もうとしているのに「不正選挙で当選を盗まれた」と被害者を装う大ボラに加担し、1月6日の議会乱入事件も平和的な通常の訪問であったとか、乱入者はトランプ支持派グループでなく民主党と左翼リベラル派支持グループであったと明かな嘘八百を並べて歴史を塗り替えようとする共和党議員が複数もいて、この連中が今夢中になっている投票権制限制約法が発効して来年の中間選挙や2024年の次回大統領選挙で共和党が勝利したら、今のウソ、デタラメ路線継続で国民を騙し自分達の野望を達成するために群衆操作・煽動するだけで
なく更に悪どく醜くなる恐れ大です。

 丁度100年前の先月末にオクラホマ州タルサで起きた黒人街焼き討ち(焼き払い)、黒人大量虐殺事件の歴史的事実やいまだに根強く残る人種差別、白人至上主義者存在についても白人人口の多い保守主義的な考えが強い州や都市では学校の授業でも教えないとか議論しないとか、歴史や事実を歪曲した偏向教育に逆戻りあるいは強化現象が見受けられます。

 外出すればアマゾンの配送車、家でTVとネットの報道や掲示を見れば銃乱射事件の関連ニュースを見かけない日はないと言っても過言ではありませんが、銃規制強化、警察のリフォーム再編成、人種差別対策、インフラ投資予算案可決承認実施など急ぎで重要な課題は山積みですが、今年5月末までに米国内で起きた銃乱射事件は236件、先月5月17日以降のわずか2週間だけで27件という信じられない惨状では銃規制、取締り強化が最優先でしょうね。

 現生人類ホモ・サピエンスはラテン語で『賢い人』と言う意味ですが、ウソとデタラメで塗り固めた偽情報で国民を騙し続け、都合の悪い事実をひた隠しし、まるで自分達が犯した悪事は何もなかったように歴史を変えようとしているトランプ・共和党メンバーとその支持層、QAnonやフェイクニュースメディアに洗脳されて過激な行動や非常識な言動をするグループを見るととてもそうは思えず悲しい限りです。

 「コモンセンス=常識」という言葉が死語にならないように、また種々の価値観が入り乱れ「あなたの常識は私の非常識」という相反する事態が拡散しないように願うとともに、私たちも社会正義と商業主義とエゴの合間を漂いながらそれぞれの居場所でたとえ微々たる努力でも日々続けて行かねばなりません。

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第219回:バイデン政権誕生後100日と今後の行方

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5月(皐月)、木々の新緑と芝生の緑、種々の草花、木花が咲き誇り1年中で一番気分が晴れ晴れとし、心が躍る季節になりました。生憎と花粉アレルギーがある方には天気が良くても喜んで外出できず、家の中にいても風があると窓を開けられない一番辛い時期ですが、少しでも症状が軽く、辛い期間が短く済むことをお祈りします。日本では4月下旬に東京、大阪の東西2大都市で緊急事態宣言が出され、一般の方々は折角のGW連休中も家族や友達と自由に外出することもできず欲求不満が溜まり、観光客やレジャー客を当てにしていた観光業、レジャー・エンターテイメント業、飲食業の関係者の方々は思惑が外れてまたもやガッカリという悲しい事態でした。ワクチンの接種状況も遅々として進まず、一体いつになったらこの長いトンネルを抜けられるのやら。『まん防法』という新たな法律もできましたが、新しいのは名前だけで目に見える実効性は期待外れのようで、昨年一度延期されたオリンピックの開催が再び危ぶまれていますね。

 日本国内の憂鬱とは別に米国初の日本人関連グッド・ニュースが立て続けにありました。

 一つは先月ジョージア州オーガスタ・ゴルフクラブで開催されたオーガスタ・ナショナル女子アマ選手権で世界の強豪を相手に17歳の梶谷翼選手がプレーオフで競り勝ち日本人として初優勝。そして、その翌週松山英樹選手がローアマ(アマチュア選手としてのベストスコア)を獲得したマスターズ初出場から10年目、20代最後の節目となる挑戦で日本男子として海外メジャー初優勝。当地の日本人コミュニティーも湧きましたが、本国日本ではメディアがこぞって取り上げ、国中に歓喜の渦が巻き起こり大騒ぎが続きました。私も家内と一緒に最終日のTV実況中継を応援しながら観ていましたが、後半に入り名物11番から13番のアーメンコーナーを無事に乗り切り、3打差で上り3ホールを迎えられれば勝てるだろうと思っていたところ15番、16番連続ボギーで2打差。迎えた最終18番のティーショットでは「何とか無事フェアウェイをキープしてくれ!」と祈るように観ていました。その通りとなり、2打目は一番安定していたフェード系のアイアンショットで2オン間違いなしと思っていたら、何とグリーン右手のバンカーに着地。プロにとってはラフからの寄せよりもずっとやさしいと言われるバンカーショットは寄せ切れずボギーとしてギリギリ1打差での優勝でしたが、格好良くフィニッシュできなくても勝ちは勝ち。振り返ってみるとムービングデーと呼ばれる3日目の6アンダーの貯金が大きかったですね。最終日、最終ホールも2打差の貯金があって本当に良かったです。改めて優勝おめでとう!! 梶谷選手との男女ダブル優勝は日本人として嬉しい限りです。ゴルフ好きの日本の友人に直ぐに連絡をしたところ、案の定早朝からずっとご夫婦でTV観戦していた由。これで米国での日本人、アジア人を見る目が変わり、昨今大きな社会問題になりつつあるアジア人、アジア系米国人に対する差別や暴行事件が少しでも収まるといいですね、と思いを同じくしました。

 もう一つは過去形でなく現在進行形のMLBエンジェルスの二刀流大谷選手の活躍です。オープン戦から好調でしたが、レギュラーシーズン開幕後も文字通り投打で躍動。毎日のようにニュースやネットで話題になっていますが、先月のレンジャースとの試合では投手として先発、2番打者として打席にも立ち、その時点で両リーグの本塁打王として先発したのはあのベーブルース以来実に100年目の偉業とのこと。続いて先月末日のマリナーズとの試合では今シーズン8本目のホームランを放ち、同じ月に先発投手を務めた投手が1ヶ月に8本以上のホームランを記録したのもベーブルース以来二人目とのこと。投打だけに限らず、盗塁や塁間走塁、左翼手としての守備、バッターボックスや塁上での表情や仕草まで、嫌味なくこれほど絵になり、ニュースになる選手は前例がありません。何かする度に過去の偉大なプレイヤーと古い記録を呼び起こし、今彼がやっていることがどれほど常軌を逸しているか、いかに尋常でないかを明らかにし、野球ファンはもちろん、自軍や他球団の選手、監督、コーチ、解説者、評論家諸氏に驚きと感銘を与え続けています。

 MLBは日本とは試合数、移動距離など環境が大きく異なり、連続出場で疲労が蓄積し過労で病気や怪我をしないか、特に猛暑の夏場からプレーオフ進出が掛かる秋口が心配ですが、監督、コーチと相談しながら体調管理を万全にしてとにかく無事にフルシーズンを通して活躍し、我々の目を楽しませて欲しいものです。

 さて、今回のテーマは『バイデン政権誕生後100日と今後の行方』です。

 バイデン新政権の当初実績評価の対象となる100日が経過し、米国民の支持政党や居住する州、郡、都市、地区によって差がありますが、米国内の総合的評価としては派手さや演出力はないため歴代大統領の中では「中の下」となる過半数の57%ですが、前任者トランプの同時期41%をかなり上回りました。

 バイデン政権誕生後最優先として取組み中の諸々のコロナ対策が功を奏して政権誕生後100日時点でワクチン接種実施数2億3千7百万回超、16歳以上の国民の3割超、65歳以上のお年寄りの75%以上が接種を完了し、コロナ起因の死亡者数も今年1月の最悪値から8割減と目に見えるポジティブな効果が出ているので当然と言えば当然と言えます。同時にトランプ信者や共和党支持層を中心にしてコロナワクチン接種に反対・拒否を頑なに続けている人々がまだ26%も存在するという驚きの事実もありますが、コロナ関連では他にも小さな朗報・吉報がありました。

 先月のTVニュースで流れていましたが、お孫さんとずっと会えずに寂しい思いをしていたおばあちゃんが、ワクチン接種を終えて自分の90歳の誕生日にお孫さんとサプライズ面会できて大喜びしている姿を見て涙が出そうになりました。ひょっとしたらもう2度と会えないかもしれないとまで思ったこともあったかもしれないので、再会の喜びは例えようのないほど大きかったでしょう。逆に驚きと嬉しさの余り心臓発作でも起こさないか心配になるほどでした。(笑)こういう嬉しいニュースを日本や米国だけでなく世界各国・各地でもっともっと沢山聞けるといいですし、これを聞いて「じゃあ、私もワクチンを打ってもらおう」という気になってくれる人が増えるといいですね。

 コロナと言えば、我々が住む地元ミシガンでは先月半ばまで一日当たりの新規感染者数が8,400〜8,500人レベルで数日続き全米ワーストを記録しましたが、月末までにそれが約半数ほどに減少して今は4千人未満となり最悪の時期は過ぎたようです。変異株の心配もありまだ安心できませんが、競馬ケンタッキーダービーで5千人の観客入場許可、ディズニーランド、ディスニーワールドの営業再開などパンデミック以前の普通の生活に少しずつ戻れる明るい兆しを無駄にしないためにも、今月末のメモリアルデーの連休や夏休み期間中にコロナが各地で再燃せず、このまま収束(終息)に向かうことを切に願います。

 一方、世界を見渡すと直近で最も心配なのはアジアの大国インドです。

 皆さんもニュースでお聞きになったと思いますが、今現在インドは世界で最悪と言えるコロナ被害が出ています。一日当たりの新規感染者が何と40万人以上も発生し、病院に収容できないばかりか呼吸困難で不足する酸素の体内取込みを補助する酸素の供給が全く間に合わず、患者の多くは病院の外や路上で待機というより放置状態で何も手が施せないまま家族の目の前で息を引き取るのを見守るだけというやり切れない惨事が起きています。亡くなった人も感染拡大防止のために直ぐに火葬が必要ですが、火葬場や遺体の移動手段がキャパオーバーのパンク状態で近くの公園や駐車場で何人もの犠牲者を同時合同火葬(遺体を地面に置いてその上に薪を円錐か三角錐上に組み立てて点火する焚き火のような簡易火葬)で済ませている悲惨な映像がニュースで流れていました。人間の尊厳などまるで皆無の様相です。インド政府の現政権はしばらく前からコロナは収束に向かっているという誤情報を感染拡大の原因となった政治集会や各種イベントの際に選挙キャンペーンの一環として流して群衆操作し、この実情をひた隠しにして事実の報道や証言者を弾圧しており、実際の犠牲者は公表されているよりずっと多いのではないかと懸念されています。世界で最大のコロナワクチン製造・供給国であるインドは国内のワクチン接種率が10%程度のみで自国内で起きているコロナ禍を全くコントロールできていないのは皮肉な話です。

 直後にフィリピンでも首都マニラで感染が急拡大し、患者の病院収容が間に合わないとのニュースがありましたが、トランプ前政権下でも明らかだったように長く不安が続く南米のブラジル、アルゼンチンなども含めて国政のリーダーが科学的なデータを軽視し、事実を隠して誤情報を流し自分の都合の良いように群衆操作をしようとしている国ほど感染拡大と被害、混乱が大きく長引くようです。

 コロナの話が長くなりましたが、バイデン政権就任後100日の初期評価がそこそこ良かった一方、今まで議会に提出され審議・可決した全ての法案に対して共和党議員は誰一人として賛成票を入れず、下院も上院もギリギリで通過した事実があるように、トランプ前政権当時から悪化の一途を辿っている両党の対立と一般国民間のトランプ・共和党支持層とバイデン・民主党支持層の対立が続いており、理由は色々あるとは言えバイデンが選挙前から公約していた『融和』が一向に進まない事実や難民・移民政策、国境警備、入国管理の不手際、銃規制や人種差別問題のスローな対応に関する不平・不満の声が大きいことも無視できません。

 また、連邦政府による1.9兆ドルの緊急経済救済・財政支出効果で景気回復、雇用・労働市場の好転、失業率低下などのプラスの反面、建築資材、産業原材料・資材、食料品、生活用品、住宅売買・賃貸価格、流通費用の値上がりが顕著になっており、景気過熱とインフレが懸念されています。それに加えて先月末米議会上下院合同セッションでのバイデン大統領のスピーチでも明らかにされた2.3兆ドルの『現代的で持続可能なインフラ(社会基盤施設・構造物)と公平なクリーンエネルギーへの公共投資計画』は古くなって経時変化が進み劣化して安全性や利便性で時代のニーズに合わなくなった道路、橋梁、鉄道、ダム、港湾施設、発電所、通信施設などを刷新し半恒久的に継続使用可能な施設・構造物に置き換えようとするもので、その作業のために新たな雇用が生み出され、完成後もその継続運営・管理のために雇用が続くという論理ですが、悪く言えば『お金のバラマキ』で遅かれ早かれ物価上昇、インフレを招くことは容易に想像されます。しかしながら、国民の生活苦を救うための第1弾の緊急救済財政支出は、「今日、今の苦しい急場を凌がなければ明日はない」数千万人にものぼる国民の切羽詰まった窮状を前にしては止むを得ない選択肢で必要悪と言えます。

 実際に今年第1四半期の経済成長率は予想を上回る1.6%(年率換算6.4%)を記録し、米国経済はコロナパンデミック前の90%レベルまで回復し、2月、3月の2ヶ月で137万人以上の新規雇用を生み出しました。第2弾のインフラ投資の具体的な内容が本当に必要なものなのか、国税の無駄遣いにならないか、誰がコスト負担するのか(とりあえずトランプ前政権時代の大型減税を最も享受した富裕層や大企業の税負担率を上げると言っていますが)、インフレに拍車を掛けないかなど十分熟慮しないといけない点もあり、超党派の議案作りと多難な議会審議の行方が注視されます。更に追い掛けで、実施可否とタイミングの見極めは難しいですが、徐々に金利上昇も追随すると思われ、経済回復の足枷か逆風となって程度の差はあれ国民生活にマイナスのブーメラン効果があるかもしれません。

 米国内の問題だけでなく、国際的にも地球温暖化対策、アフガン駐在米軍の最終的引き上げと国際テロ組織の再台頭・分散化、ロシアの米国政治・選挙への介入、サイバー攻撃、クリミア進駐継続とウクライナ国境での軍事圧力行動、中国の東アジアからインド、アフリカに及ぶ『一帯一路』経済・軍事拡大構想、北朝鮮・イランの核開発問題、つい先日ニュースになったホワイトハウス周辺での不可解なエネルギーアタック(昨年キューバの米国大使館員が被害を受けた電磁波攻撃に類似または別物)などなど国家安全保障に直接関連する重要課題が山積みの中、バイデン政権に極めて非協力的な共和党メンバーも来年の中間選挙で上下院とも過半数獲得を目指すのは自明の理としても、全ての政策・議案に反対・拒否したり、全米47州で360以上もの投票有資格者審査の厳格化、投票場所・時間の制限、事前投票・郵便投票の期間短縮、手続きの煩雑化など民主主義の基本に反する露骨で姑息な差別的投票権圧迫法案の提出、立法化を進めるのではなく、いい加減に悪夢から目覚めて国会議員の本来の役目と責務に立ち返り、就任時に誓った米国国家と憲法への忠誠を思い出して国と国民の安全と健康を保障し、一般国民に寄り添い実効をもたらして心から感謝される政策を立案、審議にかけてほしいものです。

 バイデン政権誕生後100日の政策は分かりやすく、結果も目に見えて実行・実現しやすいものでしたが、年内残り200日余りの政策は同じように国民の理解を得て、議会審議・可決通過し、実行するのは徐々にハードルが高くなるため、今後の行方に期待と一抹の不安を抱えながら注目ですね。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第218回:見えてきた希望の光と残る懸念

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4月、日本では早めに開花した桜が盛りを過ぎて葉桜となり、これからは目に鮮やかな新緑の季節ですね。国、地方の行政機関や企業、学校も新年度、新学期に入り、春爛漫で本来なら何となくウキウキした気分になるところですが、発生からまる1年を経過したコロナ騒ぎがしつこく続き、まだまだ安心できない状況です。緊急事態宣言前の段階として各都道府県単位で決定・実施可能な『まん防(蔓延防止法)』なる新たな法令も生まれましたが、どれだけ実際の効果が出るかが焦点です。

 スポーツの話題では、プロ野球が先月下旬に日本で一足早く開幕し、米国でも約1週間遅れでシーズンインしました。その中でも一番の話題はやはりロスアンゼルス・エンジェルスの大谷選手の二刀流復活です。日本人としてオープン戦で5本のホームラン(内2本は飛距離140M超のモンスター弾)は元ニューヨーク・ヤンキースの松井選手とタイ記録、打者として出場した全12試合で安打を記録し、打率も最終的に5割5分2厘(0.552)となりましたが一時は6割超の超人的数字。投手としてはオープン戦最後の登板で手指にマメができて結果は芳しくありませんでしたが、その前2度の登板では最速100マイル超えの剛球に打者の視界から消える鋭い変化球で異星人かと思わせる超人ぶりを発揮してプロの評論家もメディアも野球ファンも絶賛の嵐。褒め言葉もグレートとかスーパーとか並みの褒め言葉では表現し切れず、普段はお目に掛からない「アンリアル(現実離れした)」とか「異星人か?」、「漫画かコンピュータゲームみたい」などいう言葉が並びました。開幕には問題なく間に合うようなので安心しましたが、球団の長年の課題であるプレーオフ進出、ワールドシリーズ制覇を遠目に見て、ナ・リーグ球団との対戦を想定して同じ試合で投手として先発と同時に打者としてもプレーする『リアル二刀流』もオープン戦で実現し、ベーブルース以来100年に一度の光景は正にアンリアルでした。「天は二物を与えず(荷物を与える?)」と言いますが、彼の場合はしっかり二物を与えられた稀有の存在。しかも人懐っこい笑顔のイケメンで頭も良いとくれば、ファンが熱狂するのも無理ありません。多くの人が言うように、とにかく怪我なくフルシーズン通してプレーし、前例のないアンリアルな成績を残して欲しいと願っています。また、開幕試合先発の栄誉に浴したサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ投手、ミネソタ・ツインズの前田投手他の日本人選手の活躍も応援しています。秋風が吹く頃にツインズとア・リーグ決勝戦を、パドレスとワールドシリーズを戦い日本人対決が実現すれば、正に夢のような話になりますね。リアル二刀流を生観戦できることを私のBucket Listの願い事の一つに入れておきましょうかね?

 では、今月号のテーマ『見えてきた希望の光と残る懸念』に移ります。

 皆さんもご存じの通り、当地米国ではバイデン新政権誕生後、緊急課題として国民の健康維持と経済支援の両面から同時に取り組んでいる種々のコロナ対策が着々と進み、特にワクチン増産と接種対象層・件数の拡大・増加に顕著な成果が出始めてきました。もう一方の史上最大規模の緊急コロナ救済パッケージも共和党の全面拒否を受けながらギリギリで議会審議可決、大統領承認署名され先月半ばには個人対象者の手元にチェックや振込送金が直接届き始めています。また各州政府へのコロナ対策支援金も適宜割り振られ、それを使ってそれぞれの州の状況に合わせた対策を取れるようになっており、少しずつですが着実に前に進んでいることが分かります。これを歓迎して株価は先月一時史上最高値を更新し、トランプ前大統領が選挙キャンペーン中に「バイデンが当選したら株価は暴落、経済恐慌が起こる」とハッタリをかけて脅していたのとは真逆の展開になっています。政府は更にリニューアルエネルギーなど環境保全型の社会資本投資に数兆ドル規模の財政投融資予算を追加で議案通過させようと計画しているとの報道もあり、この勢いでコロナ新規感染者数、入院患者数、死亡者数が急減し、再燃せずに低水準に止まり究極的には終息し、合わせて経済・雇用回復、失業率減少、ビジネスも個人も経営・経済的不安払拭、企業活動と日常生活安定に結びつけば喜ばしい限りです。

 それにしても、国民の窮状救済が最急務と分かっていながらバイデン政権や民主党に対する共和党の非協力ぶりは目に余るものがあります。CNNのある番組でアンカーが
“GOP’s only position is opposition.”(共和党の取るポジションは反対のみ)とコメントしていましたが、決して皮肉ではなく的を射ています。共和党の面々は国民の中間層や貧困層の救済には関心が薄く、自分達に政治献金や活動資金を提供してくれる金持ちの富裕層や大企業の経営者、大規模投資グループ、有力投資家の支援に熱心なため、トランプ政権時代が象徴するように大型減税、規制緩和などで金持ちが更に金持ちになり、中間層や貧乏人は貧困層に落ちたり更に貧困化したりで、貧富の二極化が拡大する傾向になります。

 その一例がコロナ禍のパンデミックが始まる前までは生活に困っている人達に金銭や物品を寄付していた良心的な中間層の人々までが、パンデミック後に失業し自分達も生活苦に喘ぐ立場となり、失業保険給付を受けフードスタンプをもらい、フードテントに食料品や日曜必需品を受け取りに何千万人の人達が車で長蛇の列に並ぶという悲惨な事実です。それがトランプ前大統領他が自慢していた『世界で最も裕福な国』『世界で最も偉大な国』の実態です。悲しいことに前トランプ政権や共和党の幹部にはその国民の痛みが他人事でしかなく、全く認識も理解もできないのです。

 その痛みが分かり緊急救済の必要性を理解するバイデン新政権の誕生で少しずつでも具体的な希望の光が見えてきましたが、今振り返っても決選投票まで延びた前回ジョージア州の上院議員2議席の改選結果が民主党勝利にならなければ、大統領がバイデンになっても議会審議で可決して具体的に打てる政策が反対や妨害を受け、極めて制約される事態になったと思うとゾッとします。来年2022年の中間選挙で巻き返しを狙う共和党に上下院とも過半数議席を奪われないように今年1年、特にバイデン新大統領就任後100日間の実績が大きく影響するので確実に目に見える、肌で実感できるプラスの成果を出さねばなりません。

 コロナワクチンの増産、接種拡大では事前宣言した予定よりかなり早く56日目で初期目標の100万回接種を達成し更に改善に継続注力しつつ、緊急コロナ救済パーケージの実質的効果も出て経済回復、生活改善が現実化して行けば、中間選挙に向けて国民の信頼と支持を維持、または上積み可能と思いますが、見えてきた希望の光の陰で残る懸念があるのも軽視できません。

 具体的な懸念としては、

1. 感染力が強く、感染すると重症化するイギリス型のようなコロナウィルスの変異体(変性異種・異株とも言うようです)がワクチン接種の国民大半への普及より早く蔓延して医療崩壊に繋がってしまう緊急事態が起こる可能性。マスク装着の義務化やグループ集会の規制に消極的な州や都市、トランプ前大統領(彼自身夫妻は内緒でワクチン接種を受けながらダンマリで他の人には接種を奨励しないズルい奴)や共和党支持層に多く見受けられる根強いワクチン不信者・接種拒否者の存在など欧州で先行している変異体感染拡大が米国にも波及する恐れをCDCの女性幹部が記者会見で涙ながらに訴えるほどガードを下げてしまう現状。

2. 人種差別問題の一例として全米の注目を集めて現在進行中のジョージ・フロイド氏殺害容疑で公判中の白人警官の審判結果が有罪か無罪か?有罪の場合でも懲罰のレベルがどうなるか?また、黒人だけでなく昨年から増加し今年になって更に深刻化しているアジア人やアジア系米国人蔑視・暴行事件の表面化と人種間対立及び難民・移民受け入れと国境の入国管理問題。

3. 各州で共和党主導の投票権、投票機会制限・制約の法令化。前回大統領選挙及び上下院改選で落選、過半数割れしたのは民主党支持者が多い都市部の黒人・移民貧困層が敗因と分析した結果、党内の政策見直しではなく可能な限り多くの有権者が投票できるようにするという民主主義の原理原則を無視し、まるで南北戦争前の奴隷時代に逆戻りするような共和党の政治的動き。

4. Disinformation(偽情報)とMisinformation(誤情報)が氾濫し、真実や事実を伝える正しい報道よりも偏向報道やデマ情報に触れる視聴者が多くそれを信じて自己制御、自己抑制が利かない不条理な言動をしてしまう憂慮すべき社会現象。

5. 昨秋より続いており、ここにきて購入側の生産調整や操業一時停止など深刻化している半導体供給不足や、去る2月のテキサス州全体の大停電の影響で石油化学原料・製品の供給不足・値上がりで転嫁値上げやサーチャージが発生し、経済回復の障害となっている状況。

6. 短期的にはないにしても中長期的には昨年、今年と政権は変わっても実施した緊急経済復興及び救済パッケージ実施によりパンデミック以前よりも経済規模が大きくなっていないにもかかわらず紙幣増刷・バラマキが招くインフレ・物価高騰と過去最大に膨らんだ大幅国家財政赤字補正のための増税の懸念。

7. 国際的にはNATO陣営の切り崩しや西ヨーロッパや中東への進出や米国へのサイバー攻撃、政治・選挙介入を目論む対ロシア戦略、東アジア圏からインド更にアフリカに続く一帯一路構想と共に米国に代わって経済的だけでなく政治的・軍事的にもワールドリーダーを目指す対中国戦略、北朝鮮の核・ICBM開発の抑止戦略、『世界の火薬庫』として常に火種となる中東問題への対応。

などがあり、どれ一つとして軽視できず、また簡単に正解が見出せない重要課題です。

 このように残る懸念を書き出してみると希望の光よりも残る懸念の影の方が強大な感じもありますが、バイデン大統領はそれを承知の上で世直しのために大統領選に出馬し、当選後に改革に挑んでいるわけで、彼が任命した実務経験豊富な玄人集団の政権幹部・閣僚と一致団結、協力・協働して一つ一つ課題を消化して懸念を払拭していってもらいたいと思います。

 その間にもトランプ前大統領やその支持層と共和党の保守強硬派から色々な妨害や嫌がらせがあると思いますが、最大の癌であるトランプを司法当局や議会の各委員会と連動して刑事訴訟や民事訴訟で裁判漬けにし、召喚状による公聴会または非公開の聴聞会、はたまたIRSによる脱税追求と去る1月6日のトランプ支持過激派グループの米国議会乱入などFBIや警察当局による犯罪容疑の取り調べ尋問、事情聴取などで釘付けにして間違っても次期大統領選に出馬したり、来年の中間選挙を表裏で操る黒幕として動き回ったりする時間的、経済的猶予を与えないことですね。関係者の皆さん、頑張ってください!!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第217回:性懲りもなく・・・敗者復活戦!?

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喧喧諤諤 ケンケンガクガク
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3月弥生となりました。先月下旬数日にわたって全米各地を襲ったスノー・ストームは各地で甚大な被害をもたらしましたが、テキサス州の受けた被害は史上最悪、信じられない程の惨状で、今も復旧作業が続いています。TVニュースでは主に凍結と動力源であるナチュラルガスの供給ストップによる発電施設の稼働停止、大口径給水パイプ・水道管破裂、漏水による一般家庭の停電、飲料水不足が連日報道されていましたが、ご存じのように同州はメキシコ湾沿岸州と並ぶ石油産業、石油化学産業の一大集積地であり、膨大な輸出入相手国であるメキシコとも国境を接して電子産業、自動車産業など米国の重要な基幹産業も多く抱えており、その関連の原材料、資材、部品の生産・輸送にを来たし州内のみならず全米のビジネス、経済活動にも多大な影響を与え始めています。

 ある保険会社の試算では、先月末の時点で既に数百億ドル規模の被害及び経済損失が出ているとの報道もあり、バイデン大統領が同州の緊急事態認証後現地訪問しましたが、完全復旧までかなりの時間が掛かりそうな状況のため、まだまだ被害の数字が大きくなりそうです。亡くなられた方、被害を受けた方々には深くお悔やみを申し上げますとともに一日でも早い復旧を願って止みません。

 スポーツの話題としては、先月上旬から中旬にかけて開催された今年最初のテニスメジャー大会オーストラリアン・オープンの女子シングルスで大坂選手が2019年の初優勝に続いて2年ぶり2度目の優勝。4回戦ではスペインのガルビン・ムグルサ選手に1セットオールの最終第3セットで2マッチポイントを握られたのが最大のピンチでしたが、それを冷静なプレーで凌ぎ逆転勝ち。準々決勝では誰もが嫌がる苦手タイプの台湾のスーウェイ・シュー選手を一蹴。事実上の決勝かと見られた準決勝のセリーナ・ウィリアムス戦や決勝のジェニファー・ブレイディー戦は重要なゲーム、重要なポイントをしっかり取り切って見事な優勝でした。今年のハードコートの仕上がりは例年より少し速いサーフェスでしたが、大会前にカリフォルニア州の自宅内でコーチ、トレーナーとチーム全員で泊まり込みキャンプを張り敏捷な動きと強めに重いトップスピンを掛けるストロークの改善が功を奏して、従来ややフラット気味でちょっとタイミングがずれるとアウトやネットしていたストロークの安定性が増し、相手コートのエンドライン際やコーナーに深く押し込む打球とアングルをつけてライン際を狙う打球が上手くコントロールできていました。相手のドロップショットに対する対応も改善されていました。精神的にも強くなり、自分のミスに苛ついて自滅し坂道を転がり落ちるようなつまらぬ負け方はしなくなりました。まだ改善余地も伸び代もあるので、従来苦手としているクレーコートのフレンチオープン、芝コートのウィンブルドン大会でも適応力が増し、以前よりドロー深くまで勝ち進めるのではないかと期待が持て楽しみです。男子シングルスでは錦織選手他全員1回戦敗退で残念でした。車椅子部門ではリジェンドと呼ばれても不思議でない男子の国枝選手が準決勝で敗れ、女子の大谷選手も準決勝で、上地選手は惜しくも決勝で敗れて残念でしたが、サーブもストロークも私より力強く正確で驚きました。皆さん、季節が真逆の南半球で真夏の中色々と制約を受けながらのプレーお疲れ様でした! まだこれからハードコート、クレーコート、芝コート、そしてまたハードコートでの戦いが続きますが、今シーズン誰も怪我・病気をせずに活躍できることを祈ります!!

 ストーブリーグの移籍話とドラフトが済んだ球春間近のプロ野球では日本も米国も全球団キャンプインし、プレシーズンゲーム(日本で言うオープン戦)が始まりました。新人や移籍組はレギュラーの定位置争い、実力者はマイペースの調整に余念がありませんが、昨年は特別仕様の短いシーズンでしたが、今シーズンはどうなりますか?
また、パドレスに移籍したダルビッシュ投手を始め、ツインズの前田投手、エンジェルスの二刀流大谷選手など日本選手の活躍は如何に? ボーイズ・イン・サマーに注目です。

 さて、今月号のテーマは「性懲りもなく・・・敗者復活戦!?」です。

 前号で「トンネルを抜けたと思っていたら・・・」と題して記事を書きましたが、トランプ前大統領の2度目の弾劾裁判で無罪結審となった1月13日以後の共和党要人とトランプ支持グループの動きを見ているとトンネルはまだ続いているのか?別のトンネルに入りかけているのか?と思ってしまいます。それとも、可愛い絵と含蓄のある一言が人気のマリー・エンゲルブライトデザインの去年のカレンダーの1枚の如くトンネルの先に明かりが見えたと思ったら実は対向軌道をこちらに向かって爆進してくる別の機関車の前照灯だったなどと言う悲惨な話だと一大事です。(汗)

 前回大統領選の負けをいまだに認めず、陰謀と不正投票で当選を盗まれたと言い続けているトランプですが、新大統領就任式当日の朝ホワイトハウス退去の際には尻尾を巻いて立ち去る負け犬の体でさすがに元気がありませんでした。そのまま「去る者は追わず」で忘れ去ればいいものを、フロリダに居を移した後もワシントンから共和党下院マイノリティーリーダーであるケビン・マッカシーや古参上院議員であるリンジー・グラハムが前後して『トランプ詣で』し、2022年の中間選挙と2024年の次期大統領選挙・一般選挙に向けて共和党の上下院Wでの過半数議席奪回策を協議したと言うよりトランプの考えと意向を伺いに行った感じで「あんたが大将」と持ち上げた結果、元気を取り戻した様子で先月末同州オーランドで開催された保守的な政治活動団体の世界最大の大会であるCPACの最終日に登壇し、ホワイトハウス退去後初めて公衆の面前で演説をしました。

 振り返れば2016年の大統領選前から当選後、就務期間中、前回選挙前・中・後もずっと選挙キャンペーンの継続かと思わせる程自分の自慢話と公約を果たせない大風呂敷、党内・党外を問わず自分の野望と欲求実現の妨げとなる政敵や自分を叱責・非難する専門家や有識者、メディアを露骨に攻撃・中傷し続けてきましたが、今回の
CPACでの演説も全く変わらずキャンペーンそのものでした。なお、保守派政治家で現在共和党の#1である上院院内総務のミッチ・マコーネルは弾劾裁判では無罪投票したもののその前後に米国議会襲撃事件が起きたのはトランプの一連の過激な扇動的スピーチが原因と非難したためCPACへの招待状さえ届かなかった由。また、襲撃事件のあった1月6日当日に米国議会にて全州投票人投票結果でバイデン当選を最終正式確認した議会承認手続きまではトランプの大の仲良しであったマイク・ペンス前副大統領は招待されたが出席を断ったとのことでした。憲法や法律、ルールをきちんと守って行動しても無理を押し通すトランプの意に沿えなければ、居場所がなくなり縁が切れてお払い箱ですね。

 前日、前々日は一族のドン・トランプJr.、共和党下院議員のマット・ゲーツ、上院議員のテッド・クルーズ、前国防長官のマイク・ポンペイオなど見慣れた(見飽きた?)顔が登壇し、露払い、太鼓持ちとして選挙応援演説の如く前回選挙に不正ありの大ウソを継続し、お決まりのトランプ礼賛、バイデン新政権と民主党の批判、こき下ろし。また、サウスダコタ州知事のクリスティ・ノームは昨年コロナ感染リスクが大きすぎると専門家から警鐘を鳴らされたにもかかわらずマスク未装着で全米から集合のモーターサイクリスト集会を許可・強行し、その結果中西部諸州を中心に感染が一気に拡大した無責任な行動を棚上げして、コロナ対策チームのファウチ博士のコメントの一片を切り取り、自分に都合の良いデータを基に間違っていると批判しました。コロナ関連のデータ隠・改、ワクチン接種もエコして自分に都合の良い年寄の金持ちを優先して批判されたフロリダ州知事のロン・ディサンティスも大事な金づるであるトランプをヨイショしていました。

 「寝た子を起こす」ではないですが、「自分が主役」をこよなく愛し目立ちたがり屋のトランプがこれで気分を良くして勢いを取り戻し、共和党の乗っ取りを確実にすれば、新たな別政党を起こす必要もなく再来年の中間選挙では自分に忠誠を誓う自分好みの共和党候補者のみ推薦し、上下院の過半数を確保した上で2024年の大統領選に性懲りもなく再出馬する『敗者復活戦』の筋書が現実味を帯びてきそうです。もっとも本人は前回選挙で負けたとは認めず、勝ったのに当選を盗まれたと言い張っているため、今回CPACでの演説では次回再出馬するとは明言しなかったものの『3回連続当選』を目指すかもしれない、などとうそぶいていました。

 一方では、大多数がトランプ擁護・支援で団結する共和党各州の州議員も手をこまねいておらず、先月末時点で実に43州で共和党議員が今後の選挙で事前投票及び不在者投票に関して何らかの投票制限・制約する法案を提出したとのこと。明らかに前回選挙で大統領職や上下院議席で民主党に敗れた州の主たる敗因となった大量の
事前投票、不在者投票を制限・制約して歴史的・実績的に投票日に天気が悪くても投票所で長い列に長時間並ばされても文句を言わず現場で投票する義理堅い保守的な共和党支持の有権者が多く共和党の候補者が有利となり当選確率が上がるようにする狙いが見え見えです。民主的政治を示現するために全ての有権者の投票を鼓舞し便宜を図るべき政治家が明らかな投票妨害工作を次回選挙が来る前に立法化してしまおうと言う企みに他なりません。本当に呆れたものです。

 トランプの敗者復活を止める手段として現時点で最有力な手段は、映画『アンタッチャブル』でも有名な禁酒法時代のシカゴマフィアの大ボスであったアル・カポネを逮捕・起訴・有罪に追い込んだ脱税の事実を掘り起こすことです。先月末のニュースでご存じの通り、トランプが自分の公私両方の弁護士集団を使って全力を上げて阻止していた彼のビジネス及び個人の税申告書前後8年分と関係書類が最高裁のルーリングにより遂にマンハッタン地区検事の手に渡り、トランプの元個人弁護士であったマイケル・コーエンが以前暴露したトランプのセックススキャンダル相手の一人であったストーミー・ダニエルへの支払い口止め料13万ドルの経理・税務処理の具体的内容が明らかになります。個人的な口止め料をビジネス経費として経理処理していれば公私混同の虚偽申告ですし、経費として売上げ・利益から差し引いて税申告していれば課税対象金額から意図的に減額したことになり金額の大小にかかわらず脱税行為になります。他にも疑惑を持たれているビジネス及び個人資産の過剰評価申告、粉飾決算、それを抵当や計算ベースにした多額の借入金など芋づる式に悪事が白日の元に晒される日がいつになるか?お金の流れを追って行けば、それに付随して取引関係、人間関係も具体的に表面化しますので、隠されていた家族や友人、知人の名前も浮上するかもしれません。小さな虚偽申告、脱税が『アリの一穴』となり、水圧・水流で少しずつ穴が大きくなり、遂にはトランプが必死に自分を守ってきた強固な堤防が決壊し、大洪水に巻き込まれると言うシナリオでしょうか?

 トランプについては敗者復活戦ではなく、敗者が復活しないように「敗者復活せん!」であって欲しいものです。(笑)

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第216回:トンネルを抜けたと思っていたら・・・

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つい先日新年を迎えたと思っていたら、干支は丑年なのに牛歩の歩みではなくあっという間に2月になりました。小の月の2月は更に短く感じるかもしれません。この冬のミシガンはまだそれ程寒くならずに済んでいたのに、先月末に冬将軍が「お待たせしました!」とばかりにやって来ました。誰も待っていない、お呼びじゃないのに節分、立春の直前に顔を出すとは無愛想なものです。

 例年ならば2月3日が節分ですが、今年は暦のズレ(正確には地球の公転周期の微妙なズレ)で1日早く前日の2月2日になりました。これは実に124年ぶりとのことで、前回の1897年以来だったそうです。映画『カサブランカ』の主演男優ハンフリー・ボガードの台詞ではないですが、「そんな昔の事は覚えちゃいない」と言うかまだ生まれていなかったですね!?

 因みにその年の主な出来事を調べてみると3月に貨幣法公布(実施は同年10月=金本位制確立)、4月に八王子大火、5月にカナダで日本人・中国人排斥法案可決(鉄道工事の人足として使用禁止)、6月に京都帝国大学(現京都大学)創立、8月に発明王トーマス・エジソンが一人用覗き見方式の映画鑑賞装置『キネトスコープ』の特許取得、12月に東京築地海岸に設置した送信機から沖合い1.8キロの小船に載せた受信機に無線通信成功などがありました。(閑話休題)

 皆さんは1日早まった節分の当日慣例に従って恵方巻きを召し上がりましたか?

今年の恵方は南南東より更にやや南、方位角では165度だった由。恵方を向いて目をつぶり黙々と恵方巻きにかぶり付いた人には今年1年歳徳神(としとくじん)のご加護があると思います。万一方向違いでトランプ前大統領の居るフロリダ州パームビーチのマー・ア・ラーゴの方角を向いておしゃべりしながらかぶり付いた人が食べたのはウソとペテンがたっぷり入った阿呆巻きか痴呆巻きでしたか?さぞかし食べづらく後味も悪かったのではないでしょうか?その人達にも少しでも幸あれと願います。

 新春のスポーツ界では今月7日のスーパーボウルを最後にフットボールシーズンが終わり、ウィンタースポーツとしてバスケットボール、アイスホッケーがシーズンイン。日本で言うストーブリーグに入ったプロ野球界ではトレードの話が中心でしたが、ポスティングシステムでMLB移籍を模索していた読売ジャイアンツの菅野投手は結局移籍見送りとなり残留。先月末にはMLBの名門ヤンキースで7シーズンプレーしたマー君こと田中将大投手がMLBでは契約先が決まらず、古巣のNPB東北楽天イーグルスに里帰り移籍となりました。怪我や故障さえなければまだまだMLBで先発投手として十分通用すると思うのですが、コロナ騒ぎが続く中での特殊シーズン、興行収入、球団経営、チーム編成方針など諸事情で条件の合う球団が見つからなっかたようです。先日の入団会見のコメントでは本人も心残りがあるようですが、再度MLB挑戦の機会が巡ってくることを期待して今年は日本で優勝争いに貢献してMLB球団に「うちが契約しておけば良かった」と思わせるような活躍を見せてほしいです。

 テニスでは今月8日から今年最初のメジャー大会オーストラリアン・オープンが始まります。女子シングルスの大坂選手は第3シード。2019年に優勝した相性の良いハードコートで優勝再現なるか?男子シングルスの錦織選手は昨シーズン怪我の回復が長引いて満足なシーズンが送れませんでした。今年も現地入りに指定された協会手配のチャーター便に乗り合わせた他の選手がオーストラリア到着後のテストでコロナ陽性結果が出たため、ホテルの自室に2週間完全隔離状態で練習もできず、ぶっつけ本番で試合に臨む不運なスタートとなりますが、テニスができる喜びを噛みしめながら1試合でも多く勝ち進んでほしいものです。また、連覇が期待される車椅子シングルス部門の男子国枝選手、女子上地選手を始め他の日本人選手もリモートながら応援してあげましょう!

 さて、今月号のテーマは「トンネルを抜けたと思っていたら・・・」です。

 先月渋々、嫌々、未練たらしくホワイトハウスを立ち去ったトランプ前大統領の暗黒の4年間が過ぎ、バイデン新大統領就任・新政権誕生でようやく長いトンネルを抜けたと思っていたら、感染者第1号確認からまる1年経過してもまだ続いているコロナ騒ぎと失業者数高止まり、生活苦、社会不安などまだまだトランプの残した負の財産が世間を騒がせています。

 リアリティーショーかバラエティーショーを観る感覚でトランプ関連報道に接していた人達は重要な情報発信手段であったメジャーのSNSツール使用を禁じられたトランプの露出機会が激減していわゆる『トランプロス』的な寂しさを感じているのかもしれません。また、先鋭的過激極右翼団体であるQAnon(キューアノン)などトランプの熱狂的な支持層は彼自身や取り巻き陣、偏向報道メディアが発信・拡散するウソやデマ情報こそ真実と思い込み、今だに「前回大統領選挙で民主党による陰謀と不正があり、再選されていた筈のトランプは当選を盗まれた」と信じて疑わず、バイデン新大統領、ハリス副大統領他民主党関係者と一般人を含むその支持層や協力者、公正な投票を運営・実施・結果確認した各州の選挙管理人、不正訴訟審議申し立てを却下した連邦及び各州の最高裁などに憎悪の炎を燃やし抗議の牙を向けています。その最たるものが先月6日に5名の死者を出したトランプ支持グループの米国議会襲撃・乱入事件でした。

 事件発生からひと月近く経った今も発生の原因・経緯、事件関与者の追跡捜査、事情聴取、拘束・逮捕・起訴作業が継続しており既に180名程の逮捕者が出ています。事件発生前後の信頼できる各種報道を見るとトランプやその顧問弁護士、共和党議員の街頭演説、記者会見での発言が事件を動、誘発したとしか思えない明白な相関関係が伺えます。それがトランプ就任中2度目の下院での弾劾訴追となり上院に審議が委ねられ間も無く有罪訴求と無罪弁護の応酬が始まります。先月末時点での最新ニュースでは弁護団は大統領退任後の前大統領を弾劾訴追すること自体が違憲であると言う論点を中心にすることで意見が一致していましたが、他人の話を聞かず自分の我儘をゴリ押しするトランプが「大統領選挙に広汎な不正があった」と言う論点を中心にしたいと無い物ねだりして譲らないため、勝ち目のない戦を避けて協力を諦めた5名が弁護団から離れ、残る弁護団も対応に苦慮する羽目になりました。

 にもかかわらず、有罪・罷免判決には上院議員数の2/3以上の得票が必要なため民主党議員全員+共和党議員17名が有罪投票しない限り、4年後の大統領選再出馬の可能性ゼロ化を含めてトランプを公職から永久追放できず、先述の極右団体からの脅迫や嫌がらせ、党内保守強硬派の居丈高なトランプ擁護喧伝により当初有罪支持派だった共和党議員が翻意して人数が増えず、残念ながら今回も有罪判決にならない可能性大です。米国憲法と議会制民主主義を根底から揺るがす今回の騒動でも有罪にならないようでは、大統領の横暴を防止・訴追・罷免する意味で議会の最後の対抗手段として設定されている弾劾手続きの存在意義も価値もありません。

 絶対にあってはならないことですが、今回が前例となり将来また悪事を働いた別の大統領が「退任直前ならばたとえ弾劾されても上院での審議や判決が退任後になれば有罪になることはない」と高を括って更なる悪事を重ねておとがめ無しで逃げられると考えたら恐ろしいことになります。望みは限りなく薄いですが、上院議員就任式や弾劾裁判の裁判員として米国旗に向かって宣誓した「米国国家と米国憲法を擁護する」と誓った言葉が形式的な建前でなく、本心であることを是非とも証明してほしいものです。

 それにしても、バイデン新大統領と新政権のスタート直後の2週間をトランプ前大統領とその政権運営の4年間と比較すると正に天と地、光と闇、明と暗と言うべき雲泥の差は明らかです。

 バイデン大統領は選挙キャンペーン中から公言・公約していたコロナ対策(感染拡大防止、ワクチン投与)、失業者救済・景気回復策、環境保護、移民・難民保護など緊急度、重要度の高いものから大統領権限で可能な即効性のある政策実施のため連日のように大統領令を署名・発令しています。そのほとんどはトランプ前大統領が自分自身の欲望と利権追求のために更に1代前のオバマ政権時代に実施していた政策を全て無効化し、大型減税、規制緩和、経済拡大、株価高騰に方向転換したものを再度Uターンで元の状態に戻そうとするものです。

 閣僚や要職に指名・任命した政権幹部も人種・性別・年齢など多様性を考慮しながら実績・信頼のあるベテラン実務経験者と新進気鋭の若手を登用する配慮が見られ、各メンバーの強い決意と意気込みも感じられます。新政権の国民に対する重要な情報発信窓口として毎週月・水・金と定例記者会見を実施しているジェン・サッキ大統領報道官、いいですね。質疑応答も明快で分かりやすく質問者の選択や質問数、質問時間も差別なく適度に与え丁寧に答えていて好印象です。知らない事、分からない事ははっきりそう伝え、後で調べて分かったら次の会見で回答するようにして、無視したり難しい質問から逃げることもありません。「トランプ前大統領就任式の参観者数は史上最大だった」と写真で見れば一目瞭然の嘘をついたショーン・スパイサー初代報道官や就任最初の会見で「大統領は嘘をつかない」といきなり大嘘をついたケイリー・
マケナニー末代報道官などトランプ政権当時に何人も入れ替わった報道官たちとは好感度も信頼度も段違いです。是非このまま続けて諸政策の効果と共に国民の信頼と安心を積み重ねていってほしいですね。

 「去る者は日々に疎し」と言いますが、米国史上最悪の大統領という汚名と幾つもの汚点を残して行ったトランプ前大統領のことはなかなか忘れられませんし、後世に間違いなく伝えるためにも忘れてはいけないと思います。

 とにかく大統領就任の最初から最後まで前例のない大統領、前代未聞の言動続きの大統領の汚名確定で選挙後の融和策もなくずっとキャンペーン継続中のムードのまま全米国民の大統領になれず、任期中大統領らしき振る舞いは一度もできず、感情的で思いつき程度の政策や大統領令ばかりで常に良識派、常識派からは非難を浴び続けながら一貫した国家戦略やきちんとした事前調査、検討、効果と影響予想、その対策準備を含む計画に基づいた国家のため国民のための政策なし。いわゆる『大統領の品格』も全くなく、本人は「こう言う自分を皆が大統領に選んだのでそのまま変えるつもりはない」と開き直っていましたね。そう言えば、就任式の宣誓場面のビデオを観ると背筋をピシッと伸ばして直立不動ではなく小首を傾げて口元をちょっと歪めながら「こんな宣誓しても真面目にそれを守るつもりはないけどなあ」といやいや宣誓と言う感じのトランプが映っていました。案の定、その後は大統領になれば誰にでも命令できて何でも自由にやれるとばかりに自分の野望、欲望、利益のためだけにひたすら我儘を押し通して次から次と問題噴出。大統領選挙落選後の幕引きも惨めたらしくウジウジ、グズグズと負けを認めず、「不正投票で自分が圧倒的票差で当選していた選挙を盗まれた!」と全く根拠のないケチをつけ自分の失政が根本的な敗因であるのにウソとデマ情報の繰り返しで他人の所為にして自分の支持層や乗っ取った形の共和党議員達を煽り「立つ鳥跡を濁さず」とは真逆のドタバタ劇の連続で最後にはトランプらの街頭演説が火付け役となった抗議デモ集団の米国議会への乱入騒動を引き起こしました。その結果米国史上4度目(自身1期就任中に2度目は前例なし)の大統領弾劾を受けて後味悪く渋々退任、退場。米国史上最悪の大統領という汚名をまとい、後には政府や官公庁組織、官僚、公務員に対する不信感と国際舞台での米国の威信と信頼喪失、国内の対立・分断・分裂・憎悪という瓦礫の山と焼け野原のような内外の問題を負の財産として残しました。

 4年間の在任中唯一終始一貫していたのは「オバマ潰し」、「オバマの足跡消し」の行動。以前にも触れましたが、2011年4月末にワシントDCで開かれた恒例の全米報道関係者夕食会の席上で当時のオバマ大統領がトランプをちょっとからかった発言をしたのが悲劇の始まり。それがずっと尾を引き、その席ではトランプは軽く口元に薄ら笑いを浮かべていたものの、白人至上主義者で自分は天才、何事も自分が一番と自負しているトランプがたとえ大統領とは言え黒人にからかわれて大衆の目前で辱められたとハラワタが煮え繰り返るほどの怒りを買いそれを根に持って、生涯「オバマ憎し」と憎悪の炎と復讐の怨念を持ち続けていた(今も継続中なので、「いる」ですね)ものと確信しています。言った方はそんなつもりは全くなくても(少しはあっても)ハラスメントは受け取る側の感情次第ですから、本当に「口は災いの元」になってオバマ前大統領と家族だけに留まらず周囲や引いては米国民まで巻き添えにする災厄になってしまいました。

 今更後悔しても過去を帳消しにはできないので、オバマ政権当時副大統領であったバイデン新大統領と新政権幹部は前を向いてこれからの政権運営、政策実施にベストを尽くし、結果を出すしかありません。感染力、致死率の高いコロナウィルス変性異株が全米に急拡大する前に現存ワクチン投与実施を加速し、検査、追跡、隔離、療養も先手先手で対応して少しでも早く収束の目処が立ち、経済も回復に向かうことを切に願います。

「トンネルを抜けたと思っていたら・・・」の続きでどうかトンネルの先にまた別のトンネルが現れませんように。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第215回:今年は良い年でありますように!!

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明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 2020年は百年に一度のコロナ騒ぎで忘れられない一年になりましたが、読者の皆様は無事年を越し、健やかな新年をお迎えになりましたでしょうか? 昨年の嫌な思い出を早く忘れられるように、また本欄でも話題にできるように今年は良い事が少しでも多くあることを願っています。この時期スポーツの話題が皆無に近いため、今回は直ぐに本題に入ります。

 新春1月号のテーマは「今年は良い年でありますように!!」です。

 嫌な思い出を早く忘れたいと言ったものの、昨年は年末大晦日まで連日コロナとそれに関連したニュースの連続でした。昨年12月上旬から中旬にかけてコロナ感染防止の究極的対策である2種類のワクチンが米国内で相次いでFDAの緊急使用認可を得て実用化されたニュースは数少ない朗報で最高のクリスマスプレゼントでした。

 ファイザー社とモダーナ社がそれぞれ従来のワクチン開発とは大きく異なる新製法を用いて、文字通り寝る間も惜しんで開発に取り組み、従来製法では数年掛かると言われたワクチンをわずか8ヶ月程の期間で完成した奇跡的な超高速開発で、しかも両方とも数段階の試験的投与で有効性も95%前後と確認された信頼性も高いワクチンで、コロナ収束に向けたトンネルの出口の明かりが見えてきました。

 しかしながら、残念なことに折角完成した希望のワクチンも大量生産が開始され、最初の出荷風景がニュース報道されたものの、それに続いて大車輪の操業で続々生産されたワクチンの具体的な配布割当てと出荷指示がメーカーには届いておらず工場や保管倉庫、配送センターの在庫が増えるばかりで、到着を今か今かと首を長くして待っている医療現場や投与の優先順位が高い人々にはなかなか届かず、一時的に宝の持ち腐れ状態になっていたのは驚きでした。開発から実用化まではオペレーション・ワープ・スピードの名称通り光速のような速さでしたが、その後の配布・輸送はオペレーション・フラット・タイヤ(パンクしたタイヤ)かオペレーション・スネイル・スピード(カタツムリの速度)で残念でした。その待っているわずかの間にタッチの差でコロナに感染して亡くなられたり、入院した方々には本当にお気の毒で悔しい限りです。

 各州への配布・運送担当責任者の米軍関係者が記者会見で、「遅れは自分の責任である」と陳謝していましたが、元を正せばトランプ大統領直々または政権幹部の担当責任者(タスクフォースチームの名ばかりのリーダーであるペンス副大統領)から具体的で明確な実施計画の提示と実行指示が出ていなければならなかったものです。大統領選に敗れた後大統領としてやるべき仕事をさぼりホワイトハウスに籠ったり、マー・ア・ラーゴのトランプリゾートに行ってゴルフに興じたり、選挙結果を覆そうと画策する悪あがきの連続ツイートで時間潰しをしていたトランプは、ワクチン完成の報を受けて奇跡的に超短期間での完成は「自分の手柄だ。名前を『トランプワクチン』としたい。大統領選挙前に完成が発表されていれば自分が当選していた。何故そうしなかったのか分からない。」更に「年末までに2千万回のワクチン投与を完了する」とまたいつものように良い結果は自分の手柄として自慢し大見栄を切っていましたが、配布割当て・運送の不備からとてもそんな数にならないことを指摘、非難された途端に「連邦政府の責任は各州の指定場所に届けるまで。その後は州の責任」とこれまたいつものように責任転嫁していました。

 各州ともそれぞれ事情が多少違っても、コロナ騒ぎで税収大幅減、企業・個人向けの物資・金融支援、コロナ対策費用増で財政逼迫しており、連邦政府から州内のワクチン配布・輸送・投与実施費用を追加で財政支援してもらえないと迅速な対応ができない状況にあり、それも含めてしっかり現状把握して周到な計画を練り責任を持って実行すると言うトランプ政権に最も欠けている弱みを露呈しました。

 もう何度も言いましたが、トランプのコロナ対策、犠牲者やその家族・関係者に対する哀悼や共感を一切示さない無関心、無責任ぶりは驚き以外の何物でもありません。昨年末まで続いたハロウィーン、サンクスギビング、クリスマス後の全米規模での感染者、入院者、死者の急増に続き、年末年始の4連休が拍車をかけ受け入れ側の病院・医療施設のICUベッド数や熟練スタッフ数が飽和状態で職員の気力も体力も限界に来ているのは知らん顔で、国としての緊急対策や緊急支援指示を出さないどころか、4年前の大統領就任時には「オバマのようにゴルフをやっている時間はない」と大ボラを吹いていたにもかかわらず呑気にゴルフ三昧をしながら、その合間に選挙結果を逆転させようとつぶやいたり、自分に賛同・協力しない連中は対立する民主党、身内の共和党の見境なく非難・中傷しまくっています。これ程の悪党がこの世に実在すること、これが現職の米国大統領だとは今でも信じられませんし、それに同調する共和党議員や富裕層、一般大衆がいることも信じ難く情けない限りです。当初は不正選挙、無効投票だと言っていたのに今は理由の如何を問わず単純になりふり構わず選挙結果を覆そうとしており、民主主義に対する冒涜でしかありません。

 これも以前の記事で書きましたが、本当に駄々っ子がお菓子売り場かオモチャ売り場の前で「あのお菓子が欲しい!」「あのオモチャが欲しい!」と手足をバタバタして泣き叫んでいるのと大差ありません。自分の欲しい物が手に入るまで喚き立てるのです。時によっては周りの人に八つ当たりしたり、物を壊して騒ぎを大きくするずるい手も打って、自分が騒ぎ続ければ、親や周りが困って手を焼き何とかしてくれ、最後は自分の思い通りになるだろうと思っているのですね。子供の頃からそう言うふうにしてずっと我儘を通してきているので、大人になった今も同じようにすれば自分の望み通りになると自ら信じている節があります。一説では彼が子供時代から青年時代にかけて17年間通い続けた教会の教えが、「自分を信じて、自分の欲しい物、実現したい事を願い続ければ必ず手に入り、実現する」と教徒を鼓舞し、勇気付けるものであったようで、節度を持って実行すれば他人に認められ尊敬もされる成功者になり得たかもしれませんが、残念ながら使い方を誤り他人の迷惑を一切考えず、自分だけが利益を享受し、気分を良くする独善・横暴的な方向に走ってしまったため、金儲けと利権獲得を共通目的とするワル仲間が多少いても、利用価値がなくなれば使い捨てで直ぐに縁が切れて離れて行くし、自分自身はいつまでも我儘な駄々っ子のレベルで止まったまま、尊敬も共感も得られぬ存在に留まっています。

 先月末までに選挙結果に関して連邦、州、選挙区などで既に60件もの異議または訴訟申請件数となりましたが、その全てが具体的証拠欠如の理由や投票再確認作業で否認、却下されまともな方法で残された逆転策はなく、唯一残された方法は今月休み明けの初招集議会で選挙人投票結果を最終確認・確定する形式的手続き時に異議を唱えることですが、共和党選出で初当選したミズーリ州のハウリー上院議員が自己顕示の絶好の機会と考えて選挙人投票結果に異議を唱えると公言し、他にも複数賛同者がいるとほのめかしていましたが、その結果の如何に拘らず投票結果が変わりバイデン新大統領の就任が頓挫する可能性はなく、ただの時間稼ぎと自己満足に終わるようです。これらの一連の動きを常識的な論理で理解することは不可能で、駄々っ子のかんしゃく、イタチの最後っぺ、訴訟申請など法的行為に掛かる資金集めの表看板に隠れて残った75%のお金を自分の借金返済など他の目的に自由に使える資金集めの延長という裏看板の狙いと考えると悩まずに済むかもしれませんね。

 トランプが大統領の職務を放棄している間にロシアが仕掛けたと断定されている米国の核貯蔵施設や軍関係施設など複数の重要拠点に取引関係のある民間企業のITソフトやアプリを経由して過去最大のサイバー攻撃が仕掛けられていたことが判明し、何と去年の3月から始まっていたのに気がついていなかったという一大事件がありました。米国の国家安全保障関係者や米軍関係者、軍事評論家の間では「これは実際の戦争を仕掛けたと同等の行為。米国も同等の反撃をすべき」との声が上がりましたが、数日何もコメントしなかったトランプはポンペイオ国防大臣がロシアが仕掛け人と認めた発言をした直後に「ロシアではないと思う、中国かもしれない」と前回2016年選挙時のロシア疑惑と同様にロシアに対して好意的、軟弱な発言に止まり、何も具体的な対抗策を取る雰囲気さえありませんでした。前回も強く感じましたが、何事も自分が一番で通すトランプですから、間違いなくプーチン大統領に何か絶対的な弱みを握られていて、正面切って抗議も抵抗もできない立場なのでしょう。それが何であるのか興味津々ですが、トランプのことなので汚れた金にまつわる話か、トランプホテル建設の話か自分がホストで開催したミスインターナショナル大会時にロシアを訪問した際にハニートラップでも仕掛けられて如何に厚顔無恥のトランプでも2度と立ち直れない程のセックススキャンダルの火種となる爆弾を抱えているのかもしれませんね。

 理由はともあれ、米国の国家最高責任者としてまともにロシアに対して抗議も対抗策も打てないまま放置し続けている間に、ロシアは更に複雑かつレベルアップした秘密工作を次々と仕掛けており、米国の軍事施設、軍関係者、政治家、著名人、反政府運動など社会不安と分裂を煽る団体・グループ、一般大衆の扇動などフェイクサイト、フェイクニュースを巧妙に使って如何にも事実、本物のように見せ掛けて米国社会の深部まで広く確実に浸透させている気配が濃厚です。ロシアの目的は米国大統領が誰であれ、米国内の分裂と混乱が深くなり、米国の国力、国際舞台での存在価値が目減りすればする程メリットがあり、たまたまトランプが大統領だと操りやすく、仕事がしやすいだけと思われます。大統領職を離れ役に立たなくなれば使い捨てして代わりを見つけるだけですし、万一過去の関係を暴露するとか、反旗を翻せばK GB配下の部下か手先を使ってトランプが何処にいてもお得意の毒殺で簡単に口封じするでしょう。私もこの程度なら目をつけられなくても、余り目立つような記事を書くと狙われるかもしれません。(汗)

 一方、コロナ騒ぎで営業制限・制約、収入激減、倒産、失業の影響を受けた中小企業、個人商店、その従業員に対する緊急救済基金第2弾の議会審議、可決・通過、大統領承認、実施は大幅に遅れ、民主党が既に5月に下院で提案し審議。可決して上院に審議を依頼した原案を共和党上院院内総務のミッチ・マコーネルが全く審議に掛けず他の多数の議案と共に握りつぶし、まともに民主党メンバーと協議もしないまま月日だけが経過し、7月末に緊急救済基金第1弾の効力が切れても何も動かず、昨年末クリスマスデーの翌日に数百万人の失業手当給付が途絶える直前にようやく上下院で可決通過した妥協案が大統領署名のために回されましたが、トランプは失業者に直接渡る給付金が月額600ドルでは低過ぎて恥辱だ。2,000ドルにすべき」と述べただけでホワイトハウスにいる間に署名せず、クリスマス休暇のためマー・ア・ラーゴに向かってしまいました。本気で失業者の生活を心配していたならば、何ヶ月も前から共和党と民主党のキーメンバーと政権幹部のマヌーチン財務大臣が協議を繰り返している間にはっきりと希望を述べるか指示をしておけば揉めずに済んだものを議案が可決通過して署名に回されてから、思い付きで言い出すので関係者には寝耳に水の出来事で混乱に拍車を掛けました。トランプとしては、自分の支持層や中間日和見層の人気取り、今月5日に決選投票されたジョージア州の上院議員改選2席の共和党候補者への得票増を狙ったものか、大統領選挙結果の逆転を目論む自分に協力しないマコーネル院内総務や共和党幹部に対する嫌がらせか、ホワイトハウスから出て行く前にもう一度注目を集めたい大統領としての示威行為か真意は分かりませんが、駄々っ子のトランプなら後者の二つが有力かもしれません。

 他にも敗戦を認めないトランプの我儘のせいで新大統領及び新政権幹部への政権引き継ぎ作業が多くの部門、分野で遅々として進まず、特に最も重要な国家安全保障に関する国防省からのブリーフィングや情報共有、コロナ対策の決め手であるワクチンの割当て配布、輸送計画などで引継ぎ作業妨害行為まであるようで、新政権立ち上がり直後の船出と舵取りが困難を極めるのではないかと心配です。

先月号で述べた年忘れトランプ劇場の千秋楽はやはり静かな幕引きで平穏無事には終わらず、予想通り最後の最後までドタバタで荒らされ、新政権は大きな負の遺産を引き継いで苦しいスタートとなりそうです。

バイデン新大統領と実力者揃いの新政権幹部が一致団結してトランプの残した廃棄物処理から作業を始め、米国を着実に良い方向に向けて進めて欲しいと切に祈っております。今年は良い年でありますように!!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第214回:年忘れトランプ劇場千秋楽

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いよいよ子年2020年も最後の月『師走』になりました。ミシガンでは先月末初雪も観察され、これからはいつ雪が降ってもおかしくない季節です。皆さんの中にも10月末以降コロナ騒ぎが手の付けられない程大きくなる中、家事やお仕事で止むを得ず外出、面談、現場作業などせざるを得ない方がいらっしゃるのではないかと思います。感謝祭の連休前後CDCの外出自粛警告・要請にもかかわらず、米国内で何百万人もの人が移動し、コロナウィルスの感染リスクがコントロールの利かない過去最大レベルに到達するのは避けられない状況です。特に連休明けから2〜3週間に全米各地で感染爆発、医療崩壊が同時多発して収拾がつかなくなる恐れがあります。とにかく皆さん、年末年始に向けて呉々も安全と健康第一にご留意願います。

 先月は映画界とスポーツ界で二人のレジェンドの訃報が続きました。前者はイギリスの映画俳優ショーン・コネリー氏、後者はアルゼンチンの元サッカー選手
ディエゴ・マラドーナ氏です。

 コネリー氏は言わずと知れたスパイアクション映画007ジェームズ・ボンドシリーズの初代ボンド役で映画界のスーパースターとなり、マラドーナ氏は優勝した1986年メキシコワールドカップの準々決勝対イングランド戦で伝説の『神の手ゴール』と
『5人抜きドリブルゴール』を決めたサッカー界のスーパースターでした。初めてコネリー氏主演のボンドシリーズを観たのは私が中学生の頃ですが、実際のスパイ活動とは違う作り話の世界だとは分かっていても彼の格好良さに圧倒され、学生時代に原作者イアン・フレミングの和訳本をほとんど読破しました。高校時代、大学時代と新シリーズの封切りを待ち切れず、学生には結構な金銭的負担となる上映館限定のロードショーをしかも立ち見で観に行ったものです。今のダニエル・クレイグも好きですが、歴代ボンド役の中でもナンバーワンの適役だったと思います。彼自身は俳優としてのがあり、ボンド役よりも演技力を発揮できる映画出演が本望だったようで、後年ケビン・コスナーと共演した『アンタッチャブル』他数々の映画で味わい深い演技を見せ、アカデミー賞や母国でサーの称号も獲得した実力派でした。

 マラドーナ氏はサッカーファンならずともご存じのアルゼンチンの英雄で、現役時代や引退後の突飛な言動とアルコール依存症、薬物問題などで世間を騒がせたり驚かせたりしましたが、ことサッカーに限れば長年隣国ブラジルの英雄ペレ氏と史上最高のサッカープレーヤーはどちらか?の熱い議論の対象でした。お二人のご冥福をお祈りします。(合掌)

 さて、今年最後の本欄のテーマは『年忘れトランプ劇場千秋楽』です。

 先月11月3日に実施された次期大統領選挙投票の結果、ほぼ3週間後にバイデン前副大統領が事実上当選となりましたが、負けず嫌いで諦めの悪いトランプ現大統領は投票前から繰り返していた「自分が選挙に負けるとしたら不正投票以外にはあり得ない」という具体的根拠のないデマを今も言い続け敗戦宣言を未だにせず、選挙キャンペーンチームの顧問弁護士や地方の弁護士を介して複数の接戦州を中心に法廷闘争に持ち込もうとしたり、各州の選挙管理委員会に手作業を含む投票の再確認、再集計を強要したりしていますが、所詮具体的根拠がなく法廷での審議に持ち込もうとしても担当判事から「メリットなし」と一刀両断、門前払いされるケースが相次いでいます。元々具体的な根拠がなく勝ち目のない戦さに一度は法廷に持ち込もうとした選挙キャンペーンの弁護士団の一部や各州の弁護士も早々に諦め距離を置き始めています。唯一無償で狂気に近い支援をし続けているトランプの個人弁護士であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長もある州のケースでは法律顧問の専門家として提訴した理由と判事への説明内容が食い違い、説明する言葉遣いや態度も礼を欠き、過去にトランプが指名した担当判事からさえ法廷侮辱罪一歩手前に近い警告を受け、そのまま発言を続ければ弁護士資格を剥奪されかねない一幕もあったようです。

 ジュリアーニ氏は2001年9月11日に発生した複数同時多発テロの際には最も甚大な被害を被ったニューヨークの当時の現役市長として同じく当時現職のブッシュ大統領や政権幹部と協力して縦横無尽の大活躍でニューヨーク市民だけでなく米国民全体を絶望感から救い、希望の火を灯した国民的英雄として衆目を集め「アメリカン・メイヤー(アメリカの市長)」と呼ばれて称賛されたものですが、その後表舞台で活躍できず燻っていた間に欲求不満、自己顕示欲が増大・増幅したのか、FOXニュースが飛びつくような過激な発言で久し振りに表舞台に現れるようになったものの、この数年、特にトランプの前回大統領選挙キャンペーン中と就任後の4年間のトランプの政敵を集中攻撃する政治的陰謀を中心にした法に触れるような彼の言動は目に余るものがあり、正に「人生の晩節を汚す」形で、今は常識ある国民から軽蔑と非難の目が注がれ、今回の大統領選投票日直前にはとうとう実の娘からも見放され、彼女はバイデン候補支持を明言してしまいました。

 TVのリアリティーショーの延長のようなトランプ劇場は主役も脇役も大根役者の三文芝居で台本、筋書きもない行き当たりばったり。セリフも刹那的、感情的なアドリブばかりで中身のない戯言の連続のため、最初は面白がって観ていた観衆もワンパターンに近い同じような言葉の繰り返しに気付き、段々飽きて来て興味が薄れ心も離れつつあります。トランプとあれ程蜜月状態だったFOXニュースもテキサス州の開票結果でバイデン当確の報道を早めにしたことで亀裂が入り、まだ不正投票が事実であったようなウソ報道は続けているものの、今まで通りには行かない雰囲気です。

 トランプ大統領自身は今回も2匹目のドジョウを狙って騙し続けて当選できると自負していた選挙開票結果に落胆したのか、大統領退位後の個人的借金返済のやり繰り算段と現職中は保留・中断されていた何千件もの連邦レベル、州レベルの訴訟問題で有罪判決、刑事罰を受ける恐れを憂慮してか、投票日以降しばらく記者会見に現れず、コロナ感染の急増、急拡大で世間は大騒ぎになっているのをよそにツイートも時期外れに開催された男子プロゴルフメジャー大会マスターズの話題や不正投票だと愚痴る程度と控えめでフロリダ州マララガのトランプホテルでゴルフに興じ、現職大統領として連日正式公務の予定が入っておらずサボタージュの状態でした。

 全く無責任で完全に職務放棄しており、政権幹部や共和党議員に対して何もコロナ対策の指示やコロナ禍による営業停止・制限で倒産の危機に瀕している中小企業、個人商店、その連動で生じた大量の失業者に対する連邦緊急救済基金第2弾の議会審議、承認可決、大統領承認・実施を陣頭指揮するわけでもなく、国家的危機管理能力、大統領の職務遂行能力がないことを改めて知らしめました。

 一方、連日のニュースでご存じのようにコロナウィルスは現在全米中で感染爆発状態です。いつ何処で誰から感染するか全く分からず、今は米国本土でどこも安全な場所はありません。最前線の医療従事者にも感染者が急増していて、あちこちで病床数、医療機器、感染防護用具の不足が現実化して全米で同時多発の医療崩壊が大いに懸念されます。米国の感染者数は最初の百万人に到達するまでに98日を要しましたが、感謝祭休日直前の百万人にはわずか6日しか要しませんでした。毎日平均17万人もの新規感染者が出ていたことになり、その後も毎週百万人超の新規感染者が連続発生していることになり、正に国家緊急事態の恐ろしい状況です。

 CDCの外出自粛警告・要請にもかかわらず、感謝祭連休前後の2週間で約1千万人もの人が陸路、空路で移動しており、更に倍数の感染者が出る心配まであります。連休中は統計データが収集・確認出来ず数字を公表していなかった州もあり、今後の10日間〜2、3週間にどれだけ酷い数字になるか悪いニュースが続くのは避けられないでしょう。

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

喧喧諤諤 第213回:11月3日運命の日:米国次期大統領選挙投票日

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喧喧諤諤

つい先日まで全米中を熱気(狂気?)に包んだ次期大統領選やコロナ騒ぎに関係なく、例年通りメトロポリタン・デトロイト周辺では先月色づき始めた木々の葉が色濃くなる一方で早くも落葉が始まっています。拙宅コンドミニアムの前庭も毎日落葉の量が増え、そろそろ落葉拾いをしないとご近所から睨まれそうです。ここのメンテナンスの落葉処理はシーズン最後に木の葉が全て落ち切ってから一度のみのため、それまでほかっておいたら大変なことになります。ドライブウェイや玄関前の通路も雨が降って濡れ落葉になると掃除がしにくくなりますし、後にシミが残って見苦しくなりますからね。自分で落葉掻きとヤードウェイストの袋詰めするのでは、月々支払っている共同管理費が余り意味を成しません。

 スポーツ界では、異例の形で今年の短期シーズンを終えたMLBはワールドシリーズでロスアンゼルス・ドジャースがタンパベイ・レイズを4勝2敗で下し、32年ぶり7回目の栄冠を勝ち取りました。優勝決定と同時にグラウンド上で次々とTVに映し出された歓喜の輪、ハグ、ハイタッチの興奮の一方で、この試合に初めから出場したものの検査結果で新型コロナ陽性が確認されたため、試合途中でベンチに下がった中心選手の一人であるターナー選手が優勝記念のチーム写真の中に加わり、マスクを下げていたのが気になりました。一生に一度かもしれない、しかも球団としては32年ぶりの優勝で喜びが頂点に達していたのでしょうが、最高に嬉しい思い出が後々感染クラスターとなり悪夢とならないことを祈ります。

 また、NFLプロフットボールに続いて地元ミシガン大学、ミシガン州立大学が所属するカレッジフットボールBig10ディビジョンもシーズンインしました。野球以上にコンタクトスポーツなので選手、コーチ他関係者の皆さんには通常の怪我・病気だけでなく、新型コロナに感染しないように十分気をつけてもらいたいですね。プロテニス界では、男子の錦織選手が先に欧州のクレーコートイベントで復活したニュースがありましたが、先月終了したフレンチオープンではシングルスで13度目の優勝をしたナダル選手と3回戦で当たればどんな戦いになるかと楽しみにしていたのですが、その前の2回戦で姿を消してしまいました。また、直近のハードコートイベントではエントリーしていながら、肩の調子が思わしくなく試合直前にプレーを辞退してしまい残念でした。もう今のテニス界では若いと言えない年齢なので、無理をせず完全に回復してからコートに戻って来てほしいものです。万が一でもフェデラー選手より早く引退なんてことにならないように願っています。

 さて、本題です。今月のテーマは『11月3日運命の日:米国次期大統領選挙投票日』です。

 先月末の本稿執筆時点では、両候補者共選挙キャンペーンの総仕上げの最中で、主に接戦・激戦予想州をターゲットにして正・副大統領候補だけでなく家族や幹部総動員で各地にキャンペーンが展開されました。連日の報道ではバイデン陣営は大きな
キャンペーン集会を開催せず、少人数の支援者で全員マスク装着を義務付け、しかも間隔を大きく開けるか車の中に留まって参加の形でしたが、トランプ陣営は相変わらず科学データに基づいたCDCのガイドラインや医療関係者の警鐘を無視した集会を連日開催し、最低限の間隔を確保できない密状態で、しかもほとんどの参加者がマスクなしの始末で、先月からほぼ全米で急増している新型コロナの新規感染者数、死亡者数にお構いなく、ホリデーシーズンに向かう今月は更に悪化して全米中同時に大混乱に陥る恐れが日に日に高まりつつあります。本紙がお手元に届く頃には選挙結果が出ているか、一部延長が認められた郵便投票の開票結果を残して大勢が決しているものと思いますが、トランプ再選の結果にならないことをひたすら祈りながら原稿を書いております。

 本格的な選挙キャンペーンが始まる以前から毎日のように報道されるウソ満載、詐欺同然のトランプ関係のニュースには驚き、呆れ、怒りが込み上げて辟易としていましたが、この2ヶ月程は更にそれが酷くなり毎日落ち着かず、心静かに過ごせた日が皆無と言っても良いくらいでした。有権者でない我々がそうでしたから、有権者の米人は尚更だったのではないかと思います。「早く選挙が終わってほしい」というのが皆の本音で、コロナ騒ぎが輪を掛けて不在者投票や郵便投票、投票所や投票箱に出向いての事前投票が前回2016年の大統領選の時よりも大幅に増加したことは記憶に新しいです。

 9月末に行われた第1回目のトランプ、バイデン両候補者の公開TV討論会では、私の事前予想通りトランプ候補者は具体的な政策論議や過去4年間の施政と現在進行中のコロナ対策の失敗や不具合の弁明を避け、バイデン候補者と家族の人格攻撃に集中し、司会者の制止や警告も無視して相手の発言中に何度もチャチャを入れ、視聴者の注意を逸らして自分に対する攻撃やバイデン候補者が国民に向けた具体的政策説明の時間を奪って、まともに最後まで発言させずに終始しました。事前に設定され、割り振られた両候補者の持ち時間も一切無視した無礼極まりない振舞いで、バイデン候補者も我慢ならず「だまれ!」と発言した場面もありました。結局時間のほとんどはトランプの一方的発言とチャチャ入れに終始し、視聴者に馴染みの深いいわゆる『討論会』にはならず、トランプのスタンドアップ・コメディーかリアリティーショーのようでもありました。
次の2回目の討論会はまたまたトランプの我儘で中止となり、両候補者が同じ時間帯に別々のTVネットワークを使って公開タウンホール・ミーティングを開催する異例の事態となりました。

 大統領候補者討論会の合間を縫って先月半ばに行われた途中一度だけ開催された副大統領候補者同士のTV討論会では、カマラ・ハリス女史とマイク・ペンス現副大統領の攻防となりましたが、お互いに相手の弱点を攻める時には鋭く、自分の弱点を攻められた時はのらりくらりと矛先をかわして、結果はほぼ引き分けか、ハリス候補者にいくらか分があったかな?という感じでした。

 大統領候補者討論会の最終3回目(実質2回目)は1回目の展開に懲りて事前に両陣営(実質的にはトランプ陣営向け)に厳格なルールを通知し、もしも一方の候補者が相手の予定時間内の発言中に口を挟んだらそのマイクをミュートにする方法で大きなトラブルなく進行し、ようやく討論会らしくなって互いに譲らぬ舌戦でしたが、私見では、正論でも身振りが大人しく今一つ迫力に欠け、大向こう受けしにくいバイデン候補者に比べ、口から先に生まれたようなトランプがジェスチャーたっぷりにある事ない事を口先だけの手前味噌を並べてポイントを稼ぎ、それまでの事前予想で伝えられていた劣勢を少し挽回したかもしれないと思いました。

 本当にバイデン候補者は勝てるのか?トランプを引きずり下ろせるのか?と疑念が湧きましたが、その後投票日直前までの新型コロナ犠牲者の実績データが余りに悲惨なもので、トランプがキャンペーン集会を開いたお膝元でも同様でしたから、家族や身内、友人、知人の中に犠牲者が出た人達が快く思った訳がありません。前回トランプに賭けてみた人、今までトランプに心酔していた人、トランプは嫌いでも捨て切れず付いてきた人、等々がさすがに「これでは如何。このままでは自分達もいつ感染して犠牲者になるかもしれない。」と目が覚め、考えを改めた人がどれだけいるかが鍵です。既に投票日当日前に事前投票済みの人はどちらの候補者に投票するか確固たる思いがあって投票したと考えられるので、それまでの流れからするとその過半数かもう少し多くはバイデン候補者支持票だと推測したのですが、投票日まで1週間を切ってもまだ決めかねてギリギリまで様子を見ていた、いわゆる“On the fence”(塀の上に登っていて右か左かどちらに飛び降りようかと考え迷っている状態)の人達のうち、どれだけの票がバイデン候補者に入るかです。それが最後の最後でトランプに流れたりすると、今回もまた大逆転でトランプ再選の悲劇となってしまいます。トランプとその取り巻き連中や
トランプ教の信者、共和党保守派議員などが露骨なバイデン落とし、民主党支持者に
対する選挙妨害、投票妨害などありとあらゆる嫌がらせ工作を仕掛けていますが、バイデン陣営とその支持層は毅然とした態度で必ず締切り期限までに投票し、圧倒的票差で当選という結果を勝ち取って欲しいものです。この原稿を書きながら「神様、仏様、どうぞバイデン候補者が必ず当選しますように、今回のお願いだけは聞いてくださいませ。(次のお願いはしばらく控えますので・・・)」と心の中で思いながら筆を進めています。

 トランプ政権と共和党上院議員のメンバーは、一般国民が今最も懸念し、朗報を待ちわびている有効なコロナ対策と景気刺激救済金の支給をほったらかしにして、国民からすれば全く急ぐ必要のない故最高裁判事ルース・ベーダー・ギンスバーグ女史の後釜指名・承認に血眼となり、多くの反対や非難の声を無視して先月末前に実行・確定してしまいました。その結果、現トランプ政権中に指名・承認した最高裁判事は合計3名となり、全最高裁判事の構成比率は保守派6名、リベラル派3名という極端に偏った構成となり、今回の大統領選挙の投票結果でトランプが落選した場合にイチャモンをつけて最高裁にまで持ち込む可能性だけでなく、最終判断が持ち越しになっていて近々最高裁で審判・判断を仰ぐ予定となっている国民皆保険であるオバマケアや妊娠中絶の違法性判断、人種差別・性差別や移民・難民に関する訴訟問題に関して時代の流れに逆行する保守的な結論が出される可能性が高まってしまいました。

 果たして、11月3日運命の日の投票結果は如何だったでしょうか?

 前号でも触れましたが、これがトランプにとって神風にならないように神様、仏様。何卒よろしくお願いします。あっ、またお願いしてしまった! お赦しください。

<Japan News Club 2020年11月号掲載>

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。