喧喧諤諤 ケンケンガクガク
喧喧諤諤

五月(皐月:さつき)新緑の季節となりました。先月末3日間のN F Lドラフトイベントで賑わったデトロイト周辺のミシガン州南東部では最高気温78度F(約25.6℃)のバカ陽気の日があり、雨上がりの午後に外出した際にはムワッとするくらい蒸し暑さを感じました。米国ではこれから各地の学校で卒業式が目白押しとなる時期ですが、今年はいささか事情が違うようです。

皆さんもニュースでご存知の如く、ニューヨーク市のN Y U、コロンビア大、当地のミシガン大、カリフォルニア州のU S C、U C L Aなどの著名校を含む全米各地の大学キャンパスでは今も進行中のイスラエル・ハマス戦争の煽りを受けて巻き添えの死傷者や医療・食糧危機に直面しているガザ地区のパレスチナ人保護と即時停戦を求めてイスラエル政府及びそれを支援する米国政府に対する抗議活動が日増しに増加・激化しています。従来から続いていた単発的な抗議デモ・集会に止まらず、校則で禁じられているキャンパス内に野営テントをいくつも張って座り込み、泊まり込みで抗議する学生が多数出ています。中には他校の学生や外部のオーガナイザーが紛れ込んで抗議活動を過激に煽っている可能性もあるようです。U C L Aでは反イスラエル・反ユダヤの抗議活動に対抗する反ハマス・イスラエル擁護の対抗抗議活動グループも出現し、グループ間で暴力行為まで発生しました。

これらの抗議活動が直・間接的に目に余るユダヤ人迫害に結びついており、ユダヤ系学生は本来自由に行動できる筈のキャンパス内で行動を制限され、身の危険を感じています。大学側も対応に困っており、校則に従って先ずは校内警備隊を使って抗議活動を制御しようと試みていますが、制御できる限度を超えた場合は止むを得ず市の警察に介入応援を求めたケースもあり、検挙者も出ています。

親が汗水流して貯蓄した浄財から捻出したり、学生自らパートやアルバイトで稼いだり学生ローンを組んで納めた高額の学費の見返りとして本来受けるべき授業が受けられず、浄財の無駄遣いとなっております。人生の大きな節目、一生の思い出となる筈の卒業式も取りやめになったり、卒業生代表でスピーチする予定だったユダヤ系学生の門出のスピーチも「予想されるリスクに対する配慮」を理由に取りやめになったりして当事者や関係者は大いに落胆しています。特に、高校の卒業式がパンデミックを理由に行われず、今回大学の卒業式も取りやめになる学生や親御さんたちの悲哀には気の毒過ぎて慰めの言葉もありません。

 

日本では先月末から今月初めにかけて恒例のG W連休があり、旅行やレジャーに出掛けたカップルや友達グループ、家族連れがひと時の遊興と歓楽を楽しんだ事でしょう。連休中もお仕事だった方々や子連れのファミリーサービスで奮闘のお父さん、お母さんたちはお疲れ様でした。旅行と言えば、日本の国内旅行はともかくとして、狭い日本を抜け出して海外に飛び出した人たちは折悪しく悪化の一途を辿っている円ドルもしくは対円現地通貨の為替レートを反映した旅費、宿泊費、飲食代、遊興費、お土産代の円貨を見てさぞかし(イスから転げ落ちる程)驚かれたのではないでしょうか?1ドル/158円のレートなど1年前にはまるで想像もしていませんでした。1ドル/130円台の頃に150円台まで行くと発言していた人がいて「とんでもない」と思っていましたが、それが現実となるとは!?「驚き、桃の木、山椒の木」、「ブリキにタヌキに蓄音機(もうほとんど死語)」です。

同じG W連休中に岸田内閣の閣僚14名が外遊との記事もありました。「外遊」と言ってもプライベートで遊びに行ったわけではなく、国際会議出席など公務としてそれぞれ世界各地に飛んだわけ(はず)ですが、これが自腹だったら大変でした。余談になりますが、それで一つ思い出したことがあります。

もう何年も前、パンデミック前の話になりますが、日本のクライアントの出張者数名に同行してニューヨーク市内及び隣接州の米国企業を訪問した際に数回利用したハイヤー会社の年配の日本人運転手さんから移動中に聞いた話です。ある時ニューヨーク市内イーストリバー沿いにある国連で開催されたイベントに出席するため来米した日本の国会議員複数名を空港からホテルまで乗せた時の車中の彼らの会話が最初から最後まで「お土産を何にする?」という話題だったそうです。「高級ワインが喜ばれる。」、「あのブランドがいい」、「このブランドがいい」という話で、運転手さんは「この人たちは一体何しに来たのだろう?」と思ったそうです。「センセイ」と呼ばれる国会議員のおエライさんたちが、国民の血税を使った公務の来米で到着早々に来米目的や達成目標ではなく帰りの土産の話とは!?これでは日本の政治が良くなるわけがないと情けなくて呆れてしまったそうです。

裏金問題で揺れている今も似たり寄ったりでしょうが、年明け早々に政治刷新会議で夏の「氷代」、冬の「餅代」と言われる政治活動費の支給を廃止すると決定したにもかかわらず、文字通り「君子は豹変(ひょうへん)す」で恥も外聞もなく前言を翻して復活どころか今年は何と年間300万円から500万円に増額、総額は160億円とのこと。国民は低賃金・給与、インフレ値上げで苦しんでいるのに、増額の理由はどうも裏金問題から派閥解消により表でも裏でも政治活動費収入が減った分を補填する狙いのようで国民の怒りを買っています。「センセイ、いい加減にしてください!」と言いたいところでしょう。

 

余談はここまでとして、恒例のスポーツの話題は割愛して今回の本題「春から夏へ、季節は移れど混乱は続く!?」に入ります。今回もオムニバス形式で書き進めます。

 

  • 上述のイスラエル・ハマス戦争は米国バイデン政権から再三の一時停戦・人質釈放交渉、ガザ住民向け人道的支援を最優先実施の勧告・要望にもかかわらず、イスラエル史上最も極右強硬派と言われるネタニヤフ首相率いる現イスラエル政権はハマス殲滅を最優先してガンとして拒否を続けています。イスラエル消滅を目指すハマス側も一時停戦に合意して人質を全員解放したら、停戦期間が終わるや否やそれこそイスラエル国防軍の総攻撃を受けて壊滅の危機に晒されることは百も承知しているため、人質を全員解放する可能性はゼロと言えます。北朝鮮の金正恩国家主席が数多の政治的、経済的制裁を受けて自国民が窮乏生活に喘いでいても絶対に核開発、大陸間弾道ミサイル開発をやめないのと同じです。イスラエル側も人質解放は実現したいものの、段階的実施では時間と日数が掛かり、一時停戦の間にハマスがまた態勢を立て直していつまた何処で急襲やテロを仕掛けてくるか分からず、そのリスクと引き換えにはできない状況です。戦争が長引いてガザ地区パレスチナ住民の犠牲者が発生し続けても、世界の目にはイスラエルとそれを支援する米国他西側諸国が非難され悪者扱いされるだけで、ハマス側にとっては少しでも有利な条件交渉を目指して好都合です。次期大統領選及び一般選挙を11月に控えるバイデン政権、民主党としては各国の利害関係と国民感情が複雑に交差して何が正解か、何がベストか判断に迷い、容易に結論が出せない全く頭の痛い問題です。
  • トランプが前大統領としては史上初めて被告人となる2016年大統領選挙時の不正に関する刑事訴訟・裁判がニューヨーク市で先月下旬から始まりました。カギとなる証人喚問ではトランプの選挙キャンペーンを支援し、トランプに不利な情報は握り潰し、当時の対立候補者に不利な虚偽情報を掲載したナショナル・エンクワイアラー紙の元発行責任者デビッド・ペッカーやトランプグループ会社で勤務し、毎日のようにトランプの言動を直接目撃していた女性事務員から有力な証言が得られ違法性、犯罪性が強まっています。被告人は毎回出廷を義務付けられるため、トランプ自身と弁護団は繰り返し訴訟の不当性を訴え、裁判の取り消しを求めましたが、主席裁判官は認めていません。同裁判官からトランプと弁護団に対して当裁判に関わる証人、証人候補者、陪審員、法廷関係者に関するギャグオーダー(緘口令)が事前に発令されているにもかかわらず、自分の言いたいことは言わずに我慢できないトランプは再三緘口令を無視した発言を繰り返し、それを止められなかった弁護団は法廷での信用を完全に失くしたと裁判官からダメ出しされ、違反は既に10件以上となり裁判官の判断で最大1件1万ドルの罰金または最長30日の拘束・収監もしくはその両方を処罰実施可能です。トランプに対して罰金だけでは蛙の面に水で効き目がないので、お灸をすえる意味で数日間だけでも一時的拘束・収監か自宅と裁判所の往復以外は外出を禁じる自宅拘束すると効果があるのでしょうが、トランプが今でも次期大統領選挙キャンペーン活動で各地に遊説ができないと泣き言を言っており(実際にはちゃっかりゴルフをする時間は確保)、トランプ支持の過激強硬派の連中が裁判所周辺で騒ぎを起こしたり、証人や陪審員、法廷関係者に圧力や危害を加えて裁判の邪魔をして進行をストップしたり遅らせたりする心配もあり、処罰の程度や実施も難しいところです。
  • ウクライナ、イスラエル、台湾への支援金などを含む臨時特別予算が先月末ようやく議会上下院で可決通過し、即刻大統領承認も得て正式実施可能となりました。イスラエル向け支援金の中では軍事関係費だけでなく、当然ながらガザ地区住民への人道的支援を優先するように条件付けされています。内容的には2ヶ月ほど前にトランプの横槍で下院での審議・可決が見送られた際のものと大差はないようですが、タイミングが遅れた分2ヶ月間もロシア軍の再侵攻を許してウクライナ側軍関係者及び一般国民の犠牲者と成功しつつあったロシア軍による占拠地域奪還に齟齬をきたしたマイナスは大きく、軍関係者や一般国民の士気低下を回復して再度やり直しするのは容易ではなさそうです。
  • 並行して進んでいる他の起訴、訴訟案件の内フロリダでのトランプによる国家機密文書の不正持ち出し、保管義務違反、機密漏洩については担当の地区裁判所判事がトランプ時代に任命された女性でトランプ擁護の姿勢が見え見えで、裁判開始と判決を急ぐ本件担当のジャック・スミス特別検察官からの各種要望には非好意的で機会あるごとにトランプ弁護団側の要望に合わせて進行を遅らせ、いつ裁判を始めるのか予定日さえいまだに未定となっており、訴訟・法務関係者の間では次期大統領選前には裁判は始まりそうもないと見られています。
  • トランプの大統領就務時代に任命された保守派の最高裁判事3名を含めて保守派が過半数を占めている連邦最高裁が今頃ようやくトランプ前大統領の刑事訴追免責が妥当かどうかの判断ではなく、原告側、被告側双方の申し立て聴取を実施しました。焦点は大統領就務時代の行動が本来の大統領職務・職責の一環であったかどうか、公務外の私的な行動でなかったかどうかの判断ですが、直ちに最高裁で審議・結論まで至る可能性は低く下級裁判所に差し戻し再審議するように指示が出たか、出る模様です。もし全て免責という最終判断となれば、目下進行中の複数訴訟・起訴案件は全てご破算となり、トランプは当該案件では免責され、未来永劫再起訴・再審される可能性がなくなり、大手を振ってまた悪事に勤しむ恐れがあります。次期大統領に当選したりしたら、復讐の鬼と化して過去・現在に自分を批判し反対・反抗し、反旗を翻した現・前・元政府関係者、民主党議員、司法関係者、軍部要人とその支持者など悉く排斥・排除に走り、憲法を含む各種法律・法令、司法制度、選挙制度など将来も含めて自分の思い通りになるように専制君主政治に変更しようと動く恐れ大です。万に一つでもそんな事になったりしたら、今でも危うい状況の米国は民主国家でも法治国家でもなくなってしまいます。そうならないことを切に祈ります。

 

いずれにしても、これから先「春から夏へ、季節は移れども混乱は続く!?」ことは間違いなさそうです。米国選挙権のない我々在米日本人としては日頃から気を引き締め、タイムリーで正確な情報を入手・分析・判断し、どのような展開になってもベストの対応ができるように心の準備とできるだけの各種備えが必要です。

 

筆者紹介:Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業種々の室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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