喧喧諤諤 ケンケンガクガク
喧喧諤諤

日本では新年度、新学期となる4月になりました。当地ミシガン州南東部では先月春のお彼岸が過ぎた直後にかなりの雪が積もり、暦の上では春なのに冬に逆戻りした感がありました。自宅の前庭でクロッカス(先月号のパンジーは誤記。失礼しました)に続いて咲き始めた水仙が寒の戻りに驚いて「まだ出番ではなかったか!?」とでも言うように身を縮こめて様子を伺っていましたが、その後気温の上昇とともに元気を取り戻しています。一部雪の重さで茎や花が倒れてしまった株もありますが、大半は背筋を伸ばして来月中頃までは種類違いの花々が次々と目を楽しませてくれそうなのでホッとしました。

今月号も原稿締切り間近になってビッグ・ニュースが続けて入り、テーマの見直し、差し替えと各種媒体での情報検索・選定・確認・検証作業に追われました。

本題にある『球春』は日本の高校野球春の選抜大会とほぼ同じタイミングで恒例のプロ野球開幕を告げるウキウキ、ワクワクの題材になるはずでしたが、米国西海岸発の一大スキャンダルがそれに暗い影を落とし、冷水を浴びせています。

では、このままの流れで今回の本題『球春と醜聞(スキャンダル)』に入ります。
皆さんも毎日のように日米のニュース報道をご覧になっていらっしゃると思いますが、今シーズンMLBナ・リーグのロスアンジェルス・ドジャースに移籍し、他球団よりも一足早く先月半ばお彼岸の週に韓国で開催されたサンディエゴ・パドレスとの開幕2連戦で新たなスタートを切った二刀流大谷選手の長年の専属通訳であった水原一平氏が起こした違法スポーツ・ベッティング(賭博)と累積450万ドルと言われる巨額の借金の支払いを大谷選手の銀行口座から不正に行ったと言う驚くべきスキャンダルです。開幕初戦の試合終了後にロッカールームで水原氏自身が賭博依存症であることをチームメンバーに告白し、それ以前に広報担当者同席の下で受けた米国のスポーツTV局ESPNとの電話インタビューで発言した内容を発端として、カリフォルニア州では禁止されているオンラインの違法賭博行為と違法賭博胴元との取引行為を理由に球団を即日解雇されたと言うことですが、米韓の時差もあり、当地の早朝にニュース速報が乱れ飛び、眠い目で英語の見出しにあったFiredの文字を目にした私は「はあ?」と首を傾げ、一瞬冗談かと思いながら読み進むと水原氏解雇というとんでもない事実でした。ESPNとのインタビューの際の水原氏談では「借金支払いは大谷選手が肩代わりして一緒にパソコンを使って胴元(FBIがかねてから違法賭博容疑で捜査していたとの別情報あり)に8回か9回に分けて送金した。」と話したようですが、解雇直後のESPNによる再度のインタビューでは前言を翻し、自分が嘘をついたと全面否定したため真偽の疑いと混乱を大きくしています。当地の3/25には大谷選手自身が英語の公式会見で「水原氏に嘘をつかれた。当局の捜査には全面協力する」という主旨の声明を発表しましたが、質疑応答はなく経緯詳細や取材側の疑問については不透明な部分が残されました。

MLBは野球賭博を禁止しており、過去にはシンシナティー・レッズの現役及び監督時代に野球賭博に関与した当時のスーパースター、ピート・ローズ氏が球界から永久追放され、米国野球殿堂入りも認められていません。日本でも今は故人となっている元西鉄ライオンズのエースであった池永正明氏がいわゆる『黒い霧』事件で一時永久失格となり、その後処分が解除された例などがあります。サッカーやテニス、バスケットボールなど野球以外のスポーツも含めて米国でスポーツ・ベッティングが最高裁判決で合法化された2018年以降巨大なビジネスとなりつつあり、新たな税金の収入源としての期待から既に合法化されたり、合法化が予定されている州の数も賭け金の総額も急速に増え続けています。

賭け事は勝った時の快感が忘れられず繰り返す中毒性があり、賭博依存症になると常識的な判断や金銭感覚が麻痺して、勝てば快感で脳内ホルモンのドーパミンが溢れますし、負けるとそれを取り返そうとして賭け金が雪ダルマ式に膨らんで借金がかさみ生活破綻、家庭崩壊、犯罪関与など悲惨な末路が待っています。特に試合会場や場外券売所に出かける必要がないオンライン・ベッティングは自宅に居ながらパソコンやスマホのボタン操作一つで簡単に出来てしまうため、回数も掛け金も歯止めが利かなくなる傾向が強く、ごく普通の人がのめり込んで行くケースが余りに多いようです。今回の水原氏の一件もその一例ですが、ESPNとのインタビューの発言内容やその直前の顔つきや行動にもそれまでとは違う印象を受け、何か問題を抱えているのか?と気になっていた人達もいたようです。恐らく余りの借金の大きさにパニック状態となり正常な判断能力も無くなっていたのでしょう。大谷選手のドジャース移籍と同時に専属通訳として球団に雇われ、大谷選手の10年契約期間中通訳として無難に務めれば安定した高収入が見込まれ、彼のファンも大勢いる絶頂期と言える時期にこの事件。絶頂期からドン底へ、天国から地獄に落ちたようで、全く「好事魔多し」とはこの事でしょうか。誠に残念でなりません。今年1月のスーパーボウルの広告主として新たにオンラインベッティング会社が数社入っていた事実を見ても、オンラインのスポーツ賭博は今後ますます増え続け、銃乱射事件や鎮痛薬のオピオイド過剰摂取・中毒死などと共に米国の大きな社会問題となりかねません。そうならないことを願うばかりです。

日本では当地米国以上に大騒ぎとなっているようですが、昨年末の複数球団との移籍交渉の進捗状況やつい先日前触れもなく突然の結婚報告(お相手は幼馴染ではないか?という私の想像は外れましたが、素敵な方ですね。『普通の日本女性』とはとんでもない。学生時代にバスケ日本代表にもなったスポーツウーマンでした。まあ、ユニコーンの大谷選手から見れば、ほとんどの人が普通なのかも)を始め、取材・公表制限や情報守秘で何度も特ダネ、スクープのチャンスを逃し、売れるはずの記事を書けなかった日米のメディア関係者の中には、ここぞとばかりにしっぺ返しも兼ねて耳目を集める狙いで裏付けできる事実や根拠もなく憶測、推測ベースの怪しげな解説者や寄稿者によるセンセーショナルで悪意あるコメントやガセネタっぽい報道も見受けられますが、日本の国宝・英雄的存在である大谷選手の1ファンとしては、事実関係の調査・報告は当局に任せて静観し、彼の代理人が「翔平は巨額窃盗の被害者であり、この問題は当局に引き渡す」と声明したように、彼が水原氏の違法賭博に一切関与しておらず、100%潔白であることを信じて、今シーズン何らの制約・制限もなくのびのびとプレー出来ることを願って止みません。

続いて、先月同様にスポーツ以外の話題をオムニバス形式で書いてみます。
1.
先月26日未明に米国最大の貿易港であり米国経済活動の重要ポンプ役であるメリーランド州ボルチモア港を跨り東西を結ぶ重要交通路であるフランシス・スコット・キー橋の橋桁にシンガポール国籍のコンテナ船が衝突し、橋梁がドミノ倒しのように崩落し、各種船舶が港湾入出不能になりました。折り悪しく橋上で路面コンクリートの修理工事をしていた作業者8名が橋梁と共に落下し、2名は奇跡的に救助されましたが、残り6名の内2名は遺体で収容され、4名は今も行方不明。また、不運なタイミングで橋上を走行中だった車数台が水中に落下し橋梁の下敷きになったり水没したりしている恐れがあり、1台の水没車中で死亡している犠牲者2名の遺体も収容されました。収容作業、原因究明作業も現場がまだ不安定で視界も悪い状態で思うように進まず、崩落した橋梁の回収撤去作業も容易でなく、連邦政府は6千万ドルの緊急救済資金の段階的注入を決定しましたが、更に新しい橋梁の設置工事がいつ始められいつ完了するのかまで考えると気が遠くなりそうです。また、湾外に待機停泊中やこれから入港を予定していた船舶は他の港に迂回接岸可能ですが、既に湾内に接岸していた船舶は当分港から出られず完成車や商品、部品、原材料などの積荷の処分対応や船舶、コンテナのやりくりが大変です。2,400人の港湾作業者が失業する恐れがあり、地元に落ちるはずの経済効果が消失する経済損失他、船舶が迂回航路をとるため積荷の陸送も含めたルート変更、航行日数・運送費用の増加、納期遅れなど米国経済全体に及ぼす影響も甚大です。
2.
先月22日にロシアのモスクワで開催されたコンサート会場にテロリスト11名が乱入して無差別に銃を乱射。当初133名の死者、数百名の負傷者と報道されましたが、最新情報では死者143名という惨事。直後にISISが犯行声明。彼らが何故ロシア国内でテロ活動?と思われる方もいらっしゃると思いますが、余り話題にはならないもののロシアがシリアのアサド政権支援の一環としてISIS他シリア国内やアフガニスタン地域の反体制グループを攻撃し排除しようとした反発でISISは欧米自由民主主義諸国だけでなくロシアも敵視しており、今回のテロに繋がったものです。プーチン大統領やロシア政権幹部はISISにはそのような力はなく、具体的な根拠はないまま裏でウクライナが関与したと断定しています。欧米の軍事専門家や諜報のプロはウクライナの関与を否定していますが、目下進行中のウクライナ侵攻継続の正当性や国民への説得理由・協力要請手段としてウクライナを悪者にしておきたいのが本音と思われます。これを理由に、また核兵器使用も辞さないと脅しをかけるかもしれません。
3.
イスラエルガザ地区住民の飢餓状態は極限レベルとなっており、直近の国連集会で米国が提出した条件付き一時停戦案は直接当事国のイスラエルが拒否しただけでなくロシア、中国他の反対を受けて否決され、イスラエル国防軍の攻撃は継続中。限定的な飲料水、食糧、生活物資などの搬入は陸路では搬入地点も時間帯も制限が大き過ぎて米軍やNATO加盟国が共同で空から支援物資を投下したりしていますが、陸路でのトラック輸送と異なり、供給量や投下場所の精度など極めて効率が悪く、効果は限定的。ある時は投下木箱のパラシュートが開かず下敷きになって死亡する現地人が出たり、落下地点がズレて海中に落下した際に食糧欲しさに我を忘れて泳げない人まで水中に入り溺死したりというケースもあり、瀕死の飢餓状態が続いています。また、わずかに活動している病院では6歳の子供が適切な治療を受けられず餓死したとのことで悲惨なニュースが後を絶ちません。
4.
米国大統領予備選ではトランプに最後まで対抗していた共和党候補者ニッキ・ヘイリー女史がスーパー・チューズデーの大敗を受けてキャンペーン活動継続を断念。トランプが直後に規定票数を獲得し予備選は終了。今後現在進行中の複数刑事訴訟などで有罪が確定するなど余程のことがない限り、党大会での正式指名を待つのみ。民主党候補者もバイデン現大統領が予備選当確し、両者年齢が4歳老けただけで前回2020年選挙と同じ顔合わせに。但し、直近情報ではロバート・ケネディJRが独立候補として出馬する可能性があり、まだ選挙資金が潤沢に残っているヘイリー女史が誰を支持するか? 彼女の支持層の票が誰に流れるのか? あるいは、トランプの有罪が確定し候補者から除外された場合、彼女が敗者復活で再度候補者に名乗りを挙げるのか?まだまだ先のストーリーが続きそうです。
5.
トランプが被告となっていたニューヨーク市の不動産不正評価・申告に基づく不当資産借入賠償民事訴訟判決を受けて先月25日深夜までに賠償金支払いを保証する$464ミリオン(約5億ドル)の証券供出を義務付けられていましたが、同市アピールコート(控訴裁判所)への減額・期限延長願いが功を奏して判事が$175ミリオンに減額と10日間の追加猶予期間を与えると裁決し、直ぐには不動産差し押さえとならず一息つけることになりました。まだ少し悪運が残っているようです。
以上、今回もまた混ぜご飯的コメントになりましたが、締切り直前のビッグニュース対応で満足に精査、調整し切れなかった事情がありご容赦願います。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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