自動車の街デトロイトを象徴する北米国際自動車ショー (North America International Auto Show) が今年もデトロイト・ダウンタウンのHuntington Plazaで開催された。電気化、クリーンエネルギーを前面に出した今年のショー。 一般公開に先立って開かれた報道関係者へのプレビューの様子をレポートする。

会場のHuntington Plazaに着いたのは公開初日の午後。Jefferson AvenueとWashington Blvd.の交差点にはプレスパスを首から提げたメディア関係者が行き交っていた。”Sustainability Lines Here”— 持続可能なエネルギーがここにある、Plazaのスクリーンは今回のテーマを映し出していた。
チェックポイントから入るとフロアーに所狭しと光り輝く自動車たち。スモーキーブルーのカーペットが敷き詰められ、場内はそれぞれの自動車メーカーのセクションに分かれていた。正面のFordブルーがひときわ目を引いた。その隣にGM。Chevroletのピックアックトラックがいかにもアメリカらしいゴージャスな雰囲気を出していた。少し奥にはStellantis。Big3が入場者を引き付ける。今年の自動車ショーはアメリカの自国中心傾向が強くなった、と言われている。35のブランドが展示を行った。今年は展示に参加しないブランドもあった。Fordの隣にはToyotaの展示。人気のファミリー・ミニバン、Sienna。そこから奥へ進むと高級車の展示へ。Lexus-RZ450eの説明を聞いた。Lexus初のバッテリーEV専用モデルで、航続距離は最長220マイル。加えて、14インチのディスプレーを搭載しており、車内の空間とフットルームがゆったりしているもさることながら、高い実用性にも驚いた。
EV車の展示にさらに目を向けると、7社が試乗体験を行っていた。メディア・プレビューの日でも長蛇の列だった。タイヤとフロアーの摩擦で起きるきしんだ音が会場内に鳴り響いた。アメリカ市場向けにEVへ注力が加速していることを象徴していた。サプライヤーの展示もホール奥や外で行われていた。バッテリーの使用により新たなスペースができたことによるデザインの変化、バッテリーの過熱で起きる効率の低下を防ぐ技術の紹介など、EV化への加速を目にした。

プレビューでの楽しみはなんといっても、会場内が混雑していないこと。特別に作られたダウンヒルのコースをFordのピックアップトラックとJeepがパフォーマンスを競い合っていた。Fordはドライブのデモンストレーションだけだったが、Jeep WranglerやRubiconはプロフェッショナルドライバーの運転に同乗できるコーナーがあった。ホールの天井近くまで上るコースを見ると恐怖を覚えたが、ものは試し、と思って試乗することにした。Jeep Wrangler。前方の様子をカメラがとらえパネルに映し出されているが、それを見るよりも実際車外を目で見て楽しめた。コースの出だしはManeuverability(操縦性)。蛇腹を立てたように置いたV字の谷の中を通っていく。「このJeepはElectric Drivetrain(電動ドライブトレイン)なんだ!」とドライバーは言いながらV字を抜けていった。次は急坂で天井近くまで上り詰めるTraction(牽引力)。勾配を尋ねると「40度」と答えが返ってきた。Top of the Hill、坂の頂上まで上ると展示会場が小さく見えるほどだった。下りはシートベルトがしっかりと体を保護。車輪はしっかりと斜面をとらえていた。そして、階段を上っていく(特設コースでプロのドライバーが運転するので、くれぐれも一般道で同じことをしないようにしてください)。今度は車体ごと上下に体が揺れたがショックは吸収されていく。最後はOff-Camber(オフキャンバー)。先程の坂道と同じくらいの角度を登っていくが、今度は両車輪がそれぞれ狭いコースを走っていく。頂上から降りる際には車輪がコースから外れないようにとドライバーは窓から顔を出し確認しながらゆっくりと下って行った。3分にも満たない試乗だったが、Jeepのパワーを感じた体験だった。

メディア・プレビュー最後のイベントでLight Dinnerも兼ねたFord Mustangのプレスカンファレンスに参加した。会場にはざっと見て300人以上のメディア関係者が参加。Mustangのブランドロゴの巨大オブジェが中心に据えられ、そのバックにはMCコーナーが置かれた。“Bred to raceー レースのために生まれた”、これがテーマ。MCは俳優、モータースポーツ分野でのホスト等で活躍するJerad DeAnda氏。1964年の初代の登場から、第7世代を迎えたMustangの魅力をゲストとともに伝えた。最初はDarkHorse。Mustangファンは、「縦に3つ並ぶテールランプはMustangのオリジナリティー」と言う。GT3のデザインエンジニア、ドライバーらとパフォーマンスについて語り合い、クライマックスはGTDの披露へ。Jim Farley-Ford社社長、Motorsport分野のチーフ、Mark Rushbrook氏、Mustang BrandチーフのJim Owens氏、そしてTechnicalのチーフ、Larry Holt氏が登場した。Fordの技術とHolt氏のMultimatic (革新的技術で
自動車部品、システム等のエンジニアリング提供会社)が少数精鋭チームを作り、レースカーのGTを一般道路向けとしてGTDをデザイン、完成させた。軽量化へのカーボンファイバーの活用、空気抵抗を少なくさせるウイングの改良などを紹介した。流されたビデオの中でFarley氏は「何か、スペシャル、というものを作りたいと考えてきた。50年間温め続けてきた」と締めくくった。そのあと、MCコーナーのバックからGTDが姿を現しだした。メディア関係者は総立ちでその雄姿にくぎ付けになった。なめらかなフロントのラインに洗練さがあり、GTDも前世代からのGTシリーズの面影を残している。歓談の時間の際、Holt氏にインタビューすることができた。「10人中9人はこのプロジェクトを否定しただろう。でも背中を押されて動いたんだ」。さらに「GTDの秘密は、どれ一つもGTと同じ部品を使っていないことだ」と教えてくれた。その言葉の中に、技術の粋を込めてプロジェクトに向かっていく姿やプライドを想像できた。カンファレンスの最後に登場した4人の言葉一つ一つに、光る発想力、それを実現させていく技術力と探求心を感じた。このGTDが疾走していくところはどこだろうか。そう考えるとワクワク感が増してきた。
デトロイト・オートショーは9月13日から24日の12日間開催された。(JNC)

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