喧喧諤諤 ケンケンガクガク
喧喧諤諤

2023年夏の非日常性

9月になりました。ミシガンでは過ぎゆく夏を惜しむように近くでセミが儚い鳴き声を奏でています。日本で9月1日は『防災の日』。今年は10万人以上の犠牲者を出した関東大震災からまる100年。地震国日本では悲しい過去の教訓を活かして大都市直下型地震に備えて何がどこまで準備出来ているか?気になるところです。最近頻繁に耳にする線状降雨帯による突発的な局地的大雨や夏から秋にかけての台風による暴風雨、洪水、冠水・浸水によるインフラの機能不全、交通網の切断、建物の崩壊、生活物資の枯渇などが同時発生する複合型大規模災害にも備えなければなりません。

先月ハワイのマウイ島で起きた突然の山火事による悲惨な死傷者の数と甚大な被害、南カリフォルニア一帯で起きた史上初の熱帯性サイクロン『ヒラリー』来襲に伴う同州史上最大の大雨と洪水や鉄砲水、土砂流に地震が重なった災害例もあり、念には念を入れて可能な限りの準備が必要不可欠です。

マウイ島の山火事の場合、115人以上の犠牲者、2,200棟以上の建物被害が出ていますが、数年前から山火事発生リスクと発生時の緊急対応策の不備が指摘されていたにもかかわらず、サイレンなど事前警告、緊急連絡なし。折りからの強風に煽られて1分間に60マイルのスピードで火の手が広がり、住民や観光客は何もなす術(すべ)なし。車で逃げようとした多くの人たちが火の手と濃い煙に行く手を遮られ、逃げ道がなくなり車内で焼死すると言う悲劇。間一髪かろうじて助かった人たちは貴重品を持ち出す暇もなく家を飛び出し、陸地で安全な場所がなかったため海に飛び込み、火勢と化学品が燃える毒煙が収まるまで首まで浸かってやり過ごして一命を取り留めたとのこと。

また、先月末南アフリカ共和国の首都ヨハネスブルグ中心部で深夜にビル火災が発生。現時点で74人死亡確認、50名以上がケガとの報道ですが、まだ増える見込みとのこと。南アでは所有者が放棄したビルをギャングや不審なグループが不法に乗っ取り外国からの移民や経済力がなくまともな住環境に住めない南ア人に安くリースしているケースが多いとのことで、運悪くほとんどの住人が就寝中の夜中の1時半ごろに下層階から出火。こんなことで命を落とされた方々が本当にお気の毒です。マウイ島や南カリフォルニアでの犠牲者の方々と合わせて心よりお悔やみ申し上げます。(合掌)

政治・国際関係では、ロシア支援目的の民間軍事会社ワグナーグループの創設者でありリーダーであったブリゴジン氏所有の小型機が先月下旬ロシア国内モスクワ近郊で墜落炎上。搭乗者名簿にブリゴジン氏の名前もあり、国際機関は現地に立ち入れないため100%確認できませんが、周辺情報から見ても事実として間違いないようです。墜落原因は明らかになっていませんが、機体・部品の不具合による事故説や同機内爆破または爆発事故、プーチンの命を受けた外部からの攻撃・暗殺説などが入り乱れています。米国や西側諸国からは多くの驚きの声と反応がありましたが、情報通の反応はむしろ冷ややかで政敵や裏切り者に対して毒殺や事故死に見せかけた暗殺を常套手段としているプーチンが丁度2ヶ月前にモスクワに向けてワグナー軍隊を進めてプーチンの顔に泥を塗り、彼の強大な国内統率力を揺さぶったブリゴジン氏を2ヶ月間も自由にさせていたことにむしろ驚いているようです。一説では、ブリゴジン氏を国家反逆者、裏切り者と断定、懲罰宣言したものの、ワグナー部隊がモスクワ近郊やロシア国内・領内にいる間に暗殺計画を実行すると一般国民を巻き込んで造反・蜂起するリスクがあり、ワグナー部隊をベラルーシやアフリカなどに遠ざけてリスク回避した上で実行したとの見方もあるようです。

スポーツの話題では、先月『夏の甲子園』全国高校野球選手権が開催され、連覇を目指した仙台育英高校を抑えて慶應高校が107年ぶり2回目の優勝を飾りました。大学だけ慶應義塾に通った私も同じ義塾ファミリーの縁があり、嬉しいニュースでした。また、音量やスケールの大きさが良くも悪くも話題になった応援歌、応援スタイルも大学在学中に神宮球場で観戦した六大学野球の試合で使われ、自分も歌ったものと同じで懐かしく思いました。優勝おめでとう!!日本のプロ野球NPBは最終盤。セリーグは首位阪神タイガースが同じ岡田監督時代の2005年レギュラーシーズン優勝の再現なるか?パリーグはオリックス・バッファローズがリーグ3連覇に向けて独走中。CS(クライマックスシリーズ)も制して、このまま行けばタイガースとの頂上決戦で日本シリーズ連覇なるか?

米国MLBも終盤ですが、ア・リーグ東地区では予想外のボルチモア・オリオールズが今も首位をキープ。中地区はミネソタ・ツインズが頭一つ抜け出し、西地区はシアトル・マリナーズ、ヒューストン・アストロズ、テキサス・レンジャーズが三つ巴の大混戦。首位争いは最終盤までもつれそうです。ナ・リーグは東地区のアトランタ・ブレーブスと西地区のロスアンジェルス・ドジャースは盤石の首位。ミルウオーキー・ブルーワーズが首位の中地区だけが2位のシカゴ・カブスと僅差で逆転の可能性がわずかにあります。

大谷選手所属のロスアンジェルス・エンジェルスはプレーオフを目指して8月1日のトレード期限前に買い手に回って数人の選手をバンドエイド的にトレード補強したはずですが、皮肉にもトレード後に連敗が続きプレーオフは絶望的。二刀流で投打に獅子奮迅の働きを見せていた大谷選手も酷使による過労が祟って右肘靭帯損傷で残りシーズン登板なし。投手としての規定回数をクリア出来ず、8月までの偉大な数字は非公式の参考記録となり大変残念です。

本塁打王、打点王が狙える打者として継続出場・プレーを続けていますが、日本人の誇り、MLBの宝、世界中の夢と希望である彼をケガで台無しにしてはなりません。球団オーナー初め関係者の方々、彼をしっかり守ってやってください。お願いします!!

では、今月のテーマ『2023年夏の非日常性』に移ります。

年男であった昨年は大した事をやれませんでしたが、今年の夏は幾つか非日常性を実現・実行できました。

一つは、7月の独立記念日前後の3日間家内とシカゴに出掛けたのですが、米国に来てから初めてAMTRAKの列車に乗りました。日本の鉄道サービスと同じように期待をしてはいけないと思いながらアナーバーの駅に着くと特に改札口があるわけでもなく、プラットホームには停車位置表示も乗り場表示もなく、何処で待っていればいいのかはっきりしません。発着時刻も日本ほど正確でないと聞いていましたが、ほぼ定刻通りに出発。行きも帰りも4時間半から5時間弱の旅程で、途中停車駅にジャクソン、バトルクリーク、カラマズーなど20年近く前に住んでいた町や近隣の町が含まれていて見覚えのある建物や街路が垣間見れて懐かしく感じました。我々の座席はビジネスクラスで隣接する食堂車では軽食やスナックなどを車内販売していましたが、食べ物を扱う同じ車両の端部にトイレがあるのはいただけませんでした。

2005年までバトルクリークに住んでいた頃は車で時々シカゴまで出掛けましたが、メトロポリタンデトロイトからとなると更に遠くなるので、20年近くご無沙汰していましたが、シカゴでは一足先にニューヨークから現地入りしていた長女とその友達と合流し、湖畔や市内の公園や川沿いを散策したり、食事をしながらお喋りしたり、ホテルの室内プールで泳いだりしてゆっくり過ごしました。観光らしいことと言えば、ダウンタウンにあるミレニアム・パーク公園を訪ね、通称The Beanと呼ばれる大きな豆型で全面が鏡面になっていてさまざまな曲面に映る自分や周りの訪問客、風景を色々な角度から眺められる公共アート作品をしばらく眺めたり記念写真を撮ったりしたのとミシガン湖畔にある有名なシェッド水族館を見学に行ったことくらいです。シロクジラが数頭泳いでいる地下の巨大水槽で有名なシェッド水族館は通常営業を続けながら2027年の設立100年記念行事に向けて2017年から10年がかりの改造・拡張工事が段階的に進行中でした。まだ少し先の話ですが、完工したら再度訪問したいと思います。

二つ目の非日常性は、知人の紹介で知り先月半ばオークランド大学キャンパス内で開催されたミシガン・シニア・オリンピックのテニスイベントに参加したことです。シニア・オリンピックと言っても本大会は1年おきの開催で今年は本大会でもその予選選抜大会でもなく、単なるシニア大会で参加者数も少なく、参加者のスキルレベルも高くないことが分かりました。私は70−74歳エージ・グループの男子ダブルスとシングルスでプレーしましたが、結果はダブルスで金メダル、シングルスで銀メダルでした。凄い!と思われるかもしれませんが、初日のダブルスは同じエージ・グループの参加チームが2組だけで勝てば金メダル、負けても銀メダルでした。2日目のシングルスは参加者3 名で私は定常的にシングルスをプレーしている相手に初戦を落としましたが、1時間後に予定されていた2試合目は今にも雨が降りそうな雲行きの中で休んでいた相手が「雨で順延されたら明日は来れない。今からでもプレー出来るなら2セット先取ではなく10ポイント先取のスーパー・タイブレーク1セットマッチにしないか?」と提案がありOKして即試合開始。結果は10−4で私の勝ちとなり銀メダル獲得。負けた彼は銅メダルとなり雨が降り出す前に全てのイベント終了となりました。

三つ目の非日常性は、先月末からニューヨークで開催されている今年最後のテニスメジャー大会US Openを観戦に行ってきたことです。

ニューヨーク市在住の長女が平日暇な私だけ招待してくれた形ですが、私としては今回が2度目の現地観戦でした。初回は家族4人で行った1994年ですから何と29年ぶりでした。娘二人がそれぞれ11歳と9歳だった当時はルイ・アームストロングスタジアムが最大のスタジアムコートでしたが、ナンバーワンランクで大会第1 シードのピート・サンプラス選手がそこで行われた第4ラウンドの試合でノンシードのジェイミ・イザガ選手に敗れる番狂わせを生で目撃。この大会では女子シングルスはクリス・エバート選手、男子シングルスはアンドレ・アガシ選手とどちらも開催国である米国選手が優勝。アガシ選手はこの大会までに稼いだポイント不足でランキングが低く、ノンシードで出場し、結果的にオープン時代にノンシードで優勝した初の選手となり大きな話題となりました。引退した女子の伊達公子さんも当時現役でプレーしており、米国のリサ・レイモンド選手相手に勝った試合をコートサイドで観戦しました。試合終了後ファンがサインを求めて押し寄せ我々は無理かなと思いましたが、娘たちが「伊達さ〜ん!」と黄色い声を掛けたのが功を奏し、二人ともサインをもらえてラッキーでした。なお、アガシ選手はその後1995年に全豪オープン、1999 年に全仏オープンの男子シングルスで優勝し、1992年に優勝したウィンブルドンと合わせて米人男子選手では初の生涯グランドスラム達成。更に1990年のA T P 年間ツアー最終戦優勝と1996年アトランタオリンピックの金メダルを加えた史上唯一のスーパー・スラム達成者です。ここではとても書き切れませんが、奥さんが彼以上に凄いテニス歴と記録保持者のシュテフィ・グラフさんというウルトラ・スーパー テニス夫婦です。

日本選手男子シングルスではツアー復帰後痛めた左膝の回復が思わしくなかった錦織選手が大会前日に出場取り消し。西岡、ダニエル、綿貫、島袋の各選手もタフドローで1回戦敗退となり、残念。女子はシングルスで本戦出場者がなく、ダブルスで加藤未唯選手組がベスト16で敗退。残るはミックスダブルスの柴原瑛菜選手組のみ。少しでも先に勝ち進んで欲しいです。

日程の関係で残念ながら男子シングルス第1シードのカルロス・アルカラス選手の試合を見ることはできませんでしたが、今年は第1ラウンドから元グランドスラムチャンピオンの実力者や元トップ10プレーヤーがシード選手といきなり当たる好カードの試合がいくつかあり、一緒に行った娘や娘の友達と座席を確保しながら、あちこちコートを行ったり来たりしながらそれぞれ観たい試合を選びました。内容が残念な試合もありましたが、総じて好試合が多く十分楽しめました。初日の8/28(月)は昼・夜両方のセッションを朝の10時に会場入りして夜の11時過ぎまで観戦。2日目の8/29 (火)はデイセッションのみでしたが、また朝10時に会場入りして夜の7時半ごろまで観戦。連日長時間の観戦でしたが、苦になりませんでした。

ナイトセッションでは米国のココ・ガウフ選手の試合後にオープニングセレモニーがあり、今年は男女の賞金金額を同額にしてから50周年の記念すべき大会で、同額実現の最大の功労者であるビリー・ジーン・キング女史が最初に紹介され、次にオバマ元大統領夫人のミシェル・オバマ女史が特別ゲストとして登場し、いずれも大きな拍手を浴びていました。それまで不遇をかこっていた女子プロの待遇改善を実現した前者の功績はとてつもなく大きく彼女の後に続く何世代もの女子プロ選手がその恩恵に預かっており、感謝と称賛の声が途絶えることはありません。元ファーストレディーが登場した際には、男性客の一人が「ミシェル・フォー・プレジデント!」と大声で叫んでいました。その後でメインのジョコビッチ選手の試合が始まりましたが、あっさり2−0リードとなったところで会場を後にして娘のアパートに帰りました。45分ほどでアパートに着いた時点でスコアをチェックしたら、案の定ジョコビッチ選手が既に2セットアップ、3セット目も リードしていて程なく終わりました。

超久しぶりのUS Open観戦でしたが、大会開催前日にニューヨーク入りした午後には番外のサプライズで娘の大学時代のテニスチームメイト二人も合流して市内のパブリックコートで1時間ほどテニスに興じることができました。その夕方には同じメンバーにもう二人娘の友達が加わり下戸の私も含めてビルの屋上パブでおしゃべりした後、博多トントンで会食。美味しい料理の数々と楽しいおしゃべりで時の経つのも忘れ、私よりずっと若い女性たちのエネルギーを沢山もらい、気持ちだけでも若返った気分です。(笑)

ということで、先述の別件とともに、ともすればマンネリになりがちなミシガンでの日常生活を離れて非日常性を体験する貴重な機会と素晴らしい思い出を得られたことに感謝、感謝です。

皆さんも、もしマンネリ気味な毎日に埋没しているようでしたら、思い切って非日常性を体験する機会を作ってみてはいかがでしょうか?

追伸:先のサッカー女子W杯で世界を魅了した「なでしこジャパン」に続いて来年のパリ五輪出場権選考を兼ねたバスケットボールW杯2023で日本代表「アカツキジャパン」が見事自力で48年ぶりの出場権獲得の快挙!たとえ数行だけでも書かないわけにはいきません。おめでとうございます!! (拍手、拍手)

 

 

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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