落語家の 桂三輝(かつら・さんしゃいん)氏

カラマズー大学で4月20日、落語家の桂三輝(かつら・さんしゃいん)氏による独演会が行われた。

同大学内のDalton Theatre に学内外から約270人ほどの観客が集まり、 英語で語られた日本の伝統的な話芸を楽しんだ。三輝氏はカナダ出身。トロント大学でギリシャ古典芸能を専攻中、能や歌舞伎などの日本の伝統芸能に興味を持ったことをきっかけに日本に移住。 2008年に当時の桂三枝(現:六代目桂 文枝)に入門し、上方落語界では初の 外国人落語家となった。以降、ブロード ウェイやロンドンをはじめとする世界各 国で公演を行い、落語を通じて日本文 化を面白おかしく世界に発信している。

この公演は、19 0 4 年にカラマズー 大 学に留学していた作 家の永井 荷風 を記念して毎年春に開催される“Kafu Lecture”として開かれた。例年は日本研 究の専門家らを招いて行われるが、今年 は、同大学の日本語の授業の一環で落 語を取り上げた際、三輝氏がYouTube に投稿している短い落語を題材としたこ とがきっかけとなり、落語と三輝氏に興 味を持った学生らの強い要望で、三輝氏 の招聘が実現した。

オープニングでは、同大学の太鼓チームが会場を盛り上げた

カラマズ―大学太鼓チームの堂々とし たオープニング演奏に続いて三輝氏が 演じた落語は二席。ひと席目の「桃太 郎」は、昔話の「桃太郎」を読み聞かせ ようとする父親と、年に似合わず理屈っ ぽく話を混ぜっ返してしまう子どもとの やり取りをコミカルに描いた。ふた席目 の「ちりとてちん」は古典落語の代表的 な演目の一つ。珍味や酒をふるまう隠居 と、お世辞が上手な隣人、何もかも知っ たかぶりする隣人の様 子を描いた。

噺の合間には、それぞれの噺の伏線とも なる、酒の注ぎ方や、丁寧になるにした がって長くなる敬語などの日本文化の紹 介が小噺として織り込まれ、観客を楽し ませた。

カラマズー大学日本語学科長 杉森典子教授と共に

公演の冒頭には、カラマズ―大学日本 語学科長の杉森典子教授が、「三輝師 匠のすごいところは、落語をただ訳すの ではなく、英語の中に日本語を見事に織 り込むところ。今夜の公演をぜひ楽しん でください」とあいさつした。公演は、三 輝氏の落語もしばし止まるほどの観客 の大笑いの連続で、大盛況におわった。 観客の中には、デトロイトや他州から来 たという人もおり、観客からは「一生に一 度の貴重な経験」「文化と人の橋渡しを する素晴らしい芸」等の声がきかれた。 三輝氏は来月以降も、ニューヨークや ロンドンでの公演を予定している。

 

落語家の
桂三輝(かつら・さんしゃいん)氏

 

 

(取材協力:カラマズー大学   文・芳賀鷹一  写真:Anthony Dugal)

 

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