喧喧諤諤 ケンケンガクガク
喧喧諤諤

小の月でも一番短い2月があっという間に過ぎて3月弥生となりました。南北に長い日本では3月と言えば、南から順に各地の梅、桃、桜へと春の花々の開花情報、見頃情報が伝えられて「春近し」のムードを直接、間接に感じられますが、雪の降る日もある当地ミシガンではまだまだですね。それでも、積もった雪が根雪にならず大方は1日でとけて、地面から早咲きのクロッカスや水仙の芽が伸びているのを目にすると気分が弾みます。毎年のことですが、自然の力、逞しさには畏敬の念を覚えます。ともすると忘れがちな人間に比べて、自然の力は本当に偉大です。その自然を汚し、破壊し続けている現人類はホモ・サピエンスと分類され地球上で一番賢いはずなのに逆に愚かで最悪の動物、最大のリスクになっていると思うと恥ずかしい思いがします。

誰かのインスタかブログのコメントで見ましたが、半世紀近く前にフロンガスがオゾン層を破壊して地上向け紫外線の過剰放射で地球上の全ての生物の生命を脅かすと分かった時には文字通り全世界が一致協力して1987年に採択されその後5回の改訂を経て現在に至るモントリオール議定書でフロンガスの使用禁止・規制、代替品開発・使用に舵を切ったお陰でオゾン層破壊が減速し、オゾンホールが小さくなった好結果に繋がりました。それと同じことがなぜ二酸化炭素排出抑制、地球温暖化防止でできないのか?という投げかけでしたが、全く同感です。両者で大きく異なる点は、二酸化炭素排出量が多く率先してリーダーとなるべき経済大国のロシア、中国、インドなどが前向き、積極的でなく米国や日本、その他中規模排出量の多数国がいくら抑制努力しても効果が限定的で即効性が小さいということです。国民総人口が多く、再生可能エネルギー、二酸化炭素発生・排出量ゼロか極小の代替エネルギーでは高価過ぎて一般生活には使えず、いまだに薪や石炭、廃油などを日々の暮らしの火力、熱源の主力として使っている国々ではやりたくてもやれない、もっと安価な代替エネルギー開発やその分野の先進国からの援助がなければ実現不可能です。温暖化を促進している石油・石化製品や低品質・安価な石炭の生産・販売で富を得ているメーカー、投資家、富裕層の人たちが改心して自利他責の責任逃れをやめて協力してもらわねば夢物語で終わります。

結果として、以前の本欄でも書きましたが、今すぐにでも全世界が一致協力して温暖化防止に大きく舵を切らねば手遅れとなり元に戻れなくなる復帰不能点(Point of No Return)を既に過ぎてしまっているかもしれない現在も人類は環境破壊、地球破滅への道をひた走っています。既に人生時計が午後11時を過ぎており余生が残り少ない私のような年寄りはどちらに転んでも大差ないですが、これから人生を謳歌するはずの今の若年層や次世代の子どもや孫たちに大きな苦難と負の財産を残すことになります。今は規制厳格化に逡巡、躊躇している大国の強い決意と責任感、リーダーシップが求められています。

では、前回飛ばしたスポーツの話題を少々。

目下最大の関心事は今月8日から始まるW B C(ワールド・ベースボール・クラシック)でしょうか?野球ファンはもちろん、ファンでなくても、常に話題となり注目を集める日本の人間国宝的二刀流大谷選手、ダルビッシュ投手他メジャーリーガーも多数参加する今大会は米国、韓国、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ベネズエラ、メキシコなど優勝候補、有力国がかなり本気で参加します。直近のニュースで日本代表に選ばれていたシカゴカブスの鈴木誠也選手が打撃練習中の脇腹の張りで大事を取って不参加になったのがちょっと残念ですが、代替選手も含めて他のメンバーで2009年以来の優勝を目指して欲しいですね。但し、レギュラーシーズン前にケガだけはしないように気をつけてもらいたいです。

その他にもN B A、N H L、カレッジ・バスケットボールなどプレーオフに入るスポーツのファンには申し訳ないですが、ここから本題に移ります。

今回のテーマは「春近しも揺れ動く混乱の世界」です。

短い2月中でも米国内外で色々な出来事がありましたが、国外の大きなニュースとしては先月6日に起きたトルコ・シリア地震と直近の余震でトルコだけでもアパート60万棟以上、商業施設5万棟以上、犠牲者が5万人以上出たことです。建物自体が不法・不良建造物で多数階のアパートが簡単に層崩壊(いわゆるパンケーキ崩壊)していたずらに犠牲者を増やしたケースもあり、建造に関与した関係者が180人以上検挙されたと報道されていましたが、犯人探し、検挙しても犠牲者は戻ってきません。関連ニュースによれば、トルコに20年以上も住んでいる日本の建設会社共同体のトルコ代表の日本人の方が震源地であるカフラマンマラシュを昨年12月に訪問した際に近辺の活断層が割れ始めていることから推測して次は同地が危ないと予想していたとのことですが、同氏の談話ではトルコ国内の建設業の構造的問題で建築確認申請未提出、施工管理会社にも未連絡、エンジニアろくにいない状態で作業がどんどん進んでしまい、国内2100万棟の建物の内なんと60%が無許可、無届けの状況で被害を更に大きくしてしまったようです。政府も税金さえ払えば安全基準を満たさない建物でも使用許可を与える生ぬるい恩赦制度があるとのことで、自然災害だけでなく、人的災害の部分もかなり大きいと言えます。

地震国であり日常的に大小の地震を経験している日本は地震対策が世界で一番進んでいると言われていますが、いつどこで起こるか正確な予想ができない以上、決して気を緩めず警戒を怠ってはいけないと改めて思います。

欧州ウクライナに目を移すと先月24日で事前警告や宣戦布告もないまま始まったロシア軍侵攻後1年が経過しました。当初はどちらが勝つにしても誰もこれ程長引くとは予想しなかったと思いますが、米国とN A T O加盟国及び西側自由民主主義諸国の迅速な結束支援を受けて国の独立・主権、自由と民主主義、存在そのものを死守しようと政府も軍も国民も一体となって抵抗したウクライナと侵攻・占拠が短期間で完了すると安易に考えていた節のあるプーチン大統領率いるロシア側の杜撰な対敵情報入手・分析・戦略・侵攻計画の不備という両面の理由でここまで長引いています。トルコやベラルーシ、直近では中国などの第三国が停戦交渉仲介申し出や停戦案提案をしていますが、基本的にウクライナ側はロシア側が侵攻をやめて(先の侵攻で占拠したクリミヤ地区を含めて)侵攻前の国境線外まで撤退しない限り停戦交渉はあり得ませんし、ロシア側は絶対に負けられないプーチン大統領とその軍部・政府強硬派側近たちの意地と体面を保つために自ら撤退はできない状況です。

侵攻1周年直前にバイデン大統領の電撃的ウクライナ初訪問、ゼレンスキー大統領との会談と記者会見、被災地・被災者訪問、ポーランドでのN A T O諸国首脳との結束確認後のウクライナ支援強化・継続宣言を通してプーチン大統領への警告と侵攻停止、撤退を促しましたが、同じタイミングで中国の習近平国家主席、共産党総書記がロシア訪問、プーチン大統領と会談し両国の友好協力関係継続を強調し、輸出制裁措置を受けているロシア産原油やロシア製品の輸入継続、ロシアへの原材料、生活物資の輸出支援継続を明示しました。また、今回明言はしていないものの長引くウクライナ紛争で在庫が減りロシアの国内生産が間に合わずに貧窮しつつあるロシア軍への直接的な兵器・軍事物資供給支援開始の可能性もあり、米国、N A T O側は警戒を強め、もしそうなった場合の対抗措置、中国への懲罰案検討を進めています。本稿作成中の現時点で米国議会でも超党派で聴聞会と対抗措置案審議が実施される見込みです。

ウクライナとしてはゼレンスキー大統領が過去に何度も公言しているように、地上戦用の戦車供与だけでなくロシア領内や国内から民間施設をミサイル攻撃してくるロシア軍に対抗して決定的な打撃を与えられる長距離ミサイルや米軍用機F−16ファルコン戦闘機の供与を強く要望していますが、米国側は少なくとも今は必要なしと判断しています。英国ではウクライナ空軍パイロット向けに英国製戦闘機の操縦訓練を実施中ですが、米国が躊躇する理由は1機数十億もする戦闘機を即席訓練を受けただけのウクライナのパイロットが操縦して未経験のロシア空軍戦闘機との命懸けの空中戦や対空ミサイルの攻撃を受けた際に間違いなくかわせるか、防戦できるか?戦闘機を無駄にしないか?が本音であると思います。また、政府予算として議会承認された多額のウクライナ支援資金も高価な戦闘機供与に使ってしまうと他の支援に回す資金が枯渇する懸念もあります。
同時にロシア領内や国内本土に攻撃を受ければ、それが軍事施設目標であっても、今でも誤情報、偽情報で誘導操作されているロシア国民の強い反感と愛国心高揚を招き、戦術核兵器使用を含む一層激しい攻撃を受け、第3次世界大戦に向かうきっかけになるのを心配して自重を促している軍関係者も多いと思います。

更に、ウクライナ紛争と同時に米国の軍事力、財力消耗による国力低下を漁夫の利的に歓迎していると思われる中国は横睨みで台湾侵攻を考えていると日本を含む米国他西側軍部や軍事専門家の中には実行はIf(もし)ではなくWhen(いつ)の問題だと以前から警告しているメンバーもいますが、上述のロシア向け兵器支援や台湾侵攻が実行されたりしたら。それこそ世界中を巻き込む一大事で収拾のつかない大変なことになります。そうならないことをひたすら祈るばかりです。

この点ではもう何度も言われていますが、世界平和維持の目的で設置された国連安全保障理事会が全く機能していないのが情けない限りです。世界のどこかで紛争が起こりそうな気配があればそれを事前に回避する手立てを講じ、もし紛争が起こればそれが激化、拡大しないように対策を講じて平和維持すべき立場の常任理事国であるロシアが自らウクライナ侵攻という暴挙に出て、それを非難する国連総会決議や安全保障理事会での侵攻停止勧告などに当事者のロシアだけでなく中国も賛成投票せず、何もできない状況で国連の存在意義自体が揺らいでいます。ロシアや中国は拒否権があるためどちらか一方が賛成しなければ理事会全体の賛成合意になりませんので、お互いに非難声明を繰り返すだけで他に手の打ちようがありません。世界平和維持という本来の目的を遂行するためには、第2次世界大戦の遺産である常任理事国の拒否権を否認する方法か常任理事国の資格を剥奪する方法を新たに、しかも真剣に検討する時期だと思います。

国外の話だけで長くなりましたが、米国内では一時収まりかけたインフレが1月にまた少し上昇しましたが、他方では50万人以上の新規雇用があり、失業率も大きく変わりませんでした。現時点では経済アナリスト、大手銀行・金融業者、投資家の大半は景気鈍化を予測しており、景気動向に比べてインフレ上昇傾向が改善されない場合はF R B(米国連銀)が近々もう一度小幅の金利上げをするのではないかと推測されています。好景気が永久に続くことはないので、いつか鈍化、不景気の波が来ます。願わくは、それがいわゆるソフトランディングで大恐慌、大失業時代にならないことを願います。

その他の国内ニュースとしては、ミシガン州のお隣オハイオ州のイースト・パレスティンで貨物列車の脱線事故があり、積載していた化学薬品の散乱・汚染問題が今も続いています。汚染土、汚染水の処理だけでなく大気中に飛散・拡散したガス蒸気が上水道に混入して飲料水に適さなかったり、目や口・鼻から吸い込まれて痛みや呼吸器系の障害を起こすリスクがあったりで、地域住民だけでなく隣接州の近隣住民も不安を拭えず、政府高官やE P Aの責任者が現地に出向き、訪問した家庭の水道水を自分で飲んで見せたり、データ上は安全なことを強調していますが、完全には不安を解消し切れていないようです。現地の住民はバイデン大統領が同地よりもウクライナやポーランド訪問したのを不満に思い非難していました。ここぞとばかりに次期大統領選出馬を目指すトランプ前大統領が現地訪問して、実際には何も効果のある手立てはないものの上辺(うわべ)だけの同情を示しポイントを稼ぎました。全く悪知恵だけは良く働く嫌な奴です。

同地で回収した汚染土や汚染水が住民には事前通知なくミシガン州ベルビルにある有害物質廃棄処理施設に持ち込まれたことが発覚して地域住民が激怒し抗議活動をしています。施設は拙宅から南方にあり距離も近いので、風向きによっては北から近づく低気圧団に向かって暖かい南風に乗って蒸気化した有毒物質が飛来しないか?出入りする車や人・物について近所に持ち込まれないか?などと余計な心配をしてしまいます。何事もないことを願います。願い事ばかりですね。(笑)

他の注目ニュースとしては、バイデン政権が目玉政策の一つに挙げていた学生ローンの一定額返済免除・減額政策を一時停止した最高裁で合法か否かの審議が進行中です。トランプ就務中に任命した3人の判事を含めた過半数保守派は現政権下の教育長官主導で実施されたこの政策自体が国家予算に大きく影響する重大な事項でパンデミックのピークが過ぎた今は緊急事態ではなく教育長官として本来の権限を超える越権行為であり議会に諮って審議・可決した上で実施するのが理にかなっているという見解のようです。バイデン政権としてはこの政策はパンデミックの影響で財政的に困窮した(今もしている)ローン利用者の緊急救済が目的であり、今もまだ残っているパンデミックの影響を軽減する意味でトランプ前政権でも認められたのと同様に認められるべきだと主張しています。
この救済政策が否認されるとその影響を受けるローン利用者の数は数千万人に上り、何と62歳を超える高齢者だけでも2,600万人にもなると予想されています。一例としてT Vニュースで報道されたケースでは、1977年に准学士号取得のため約5千ドルのローンを組んだ退役軍人の人が今年2023年時点でもまだほぼ同額のローン返済残高があるとのことで、借入金利と手数料の支払いだけで精一杯で借入元金の返済にまで至っていない事実が浮き彫りになっていました。もっと多額のローンを組んでいる人たちはその比でなく、本人だけでなく家族も返済メンバーに巻き込んで親子から孫まで3代続くローン返済をしている家庭も少なくないとのことで、救済政策がボツになったら悲惨な事態、悲劇のニュースを耳にすることになります。保守派最高裁判事たちよ、賢い判断と裁定を!!

他にもジョージア州の2020年大統領選挙で不正があった、ドミニオンの投票機械が操作され正しい投票結果を反映していないと提訴した裁判の関連資料やF O Xニュースのマードックオーナー自身のインタビュー記録で、同オーナーや重役陣が同大統領選挙で不正があった、無効だと根拠のない主張と訴えを起こしたトランプとその支持グループの言動が事実でないと知りながら、また悪名高き主力番組のホストたちが内輪のテキスト交信で「嘘っぱち」、「信じられない」と批判コメントしながら人気取りと高給確保にために自分の担当番組ではその嘘と誤情報を拡散していた事実が明らかになり、普通ならF O Xグループの信用度を揺るがす事態になっていますが、直後のアンケートに対する視聴者の反応は「信用度が落ちる」と予想した人は20%台で「影響しない」と答えた人が60%超と常識人には呆れる回答内容でした。F O Xニュースしか見ない、信用しないというカルト宗教を盲信・陶酔するのと同じような人たちが余りに多過ぎて事実が明らかになってもハッと目覚めて考えを改めようとしないのは驚き以外の何物でもありません。残念至極。

春が近いというのにこの混乱は一体いつまで続くのでしょうか?答えが出ないまま筆を置きます。

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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