やっと3月、春はもう少しですね。「ひと月1作品」、今月は日本のコメディ映画「プロゴルファー織部金次郎」をご紹介します。第1作目は1993年に発表され、パート5まで公開されました。

ゴルフのすすめ武田鉄矢が扮する織部金次郎(オリキン)は、プロ転向以後17年一度も優勝経験のないプロゴルファーです。普段は近所の練習場でレッスンをしながら、補欠枠などを待ってトーナメントに出場します。試合だと言ってはレッスンを休み、給料の前借りを頼むので、練習場の脇田社長はオリキンをよく思っていません。ちなみに脇田社長は、太陽にほえろ!の長さん役、下川辰平です。でもなんだかんだ言いながら、地元のスナックBIRDIEに集まる商店街の人たちはオリキンを応援しています。BIRDIEで働く桜子さん(財前直見)はオリキンが大好き。桜子さんのお兄さんは阿部寛、隣のバーのママはコロッケが演じています。もう30年も前の映画ですから、俳優さんがとっても若くて懐かしい感じがします。

織部金次郎という名前は、実在の名アマチュア選手だった中部銀次郎さん(なかべぎんじろう1942-2001)をもじったそうです。田中秀道、丸山茂樹、友利勝良など、本物のツアー選手があちこちに出場していて、1作目はいきなり中嶋常幸のスイングから始まります。武田鉄矢は共演したプロから「プロっぽく見える」仕草をたくさん教えてもらったそうです。打つ前にちょっと左のシャツの袖をつまむとか、くるっとクラブを回してからソールを置くとか、パットに入る時にボールの上に頭を寄せるとか、回を重ねるごとにおや?と思うような細かい演出(小ネタ)が増えていったのが、見ていて面白かったです。

初回映画は公開の2週間前に、なんとWOWOWで3分の2に短縮された特別バージョンが無料放映されました。武田鉄矢と財前直見が舞台挨拶をしていわばTV版の特別試写会をやるという、全く新しい宣伝手法を試みたそうです。映画は通常、公開後1年はTV放映を控えるという紳士協定があったため、「オリキン事件」として業界を揺るがしました。1992年10月下旬に公開される予定でしたが、けっきょく反発・抗議を避けるために’93年1月まで延期されました。

原作・脚本・主演、2作目以降は監督も務めた武田鉄矢。大学休学中の23歳の時(1972年)に海援隊というグループで歌手デビュー、お母さんへの詫び状を博多弁で歌にした「母に捧げるバラード」がヒットし、紅白に出場して一躍有名になりました。以降全く売れず、翌年の紅白はバイト先の飲食店で皿洗いをしながら見て、「俺は何をしているんだろう」と情けない気持ちになったそうです。しかし5年後の’77年に山田洋次監督、高倉健主演の「幸せの黄色いハンカチ」のさえない青年役で注目を浴び、俳優としての新境地を開拓しました。’79年には金八先生というTVドラマで、清潔感があるとはあまり言えないロン毛・熱血人情派の高校教師を演じました。自らが歌った挿入歌「贈る言葉」は大ヒットしました。1991年の「101回目のプロポーズ」では、これまたさえない中年主人公を演じますが、彼の不屈の精神はある意味衝撃的だったと言えます(笑)。NHK大河「龍馬伝」での勝海舟、「仁JIN」での緒方洪庵は、貫禄あるキレ物としての演技が光りました。「さえない」「勝てない」プロゴルファー織部金次郎の活躍はいかに。ご興味あればぜひご鑑賞ください。

<プロフィール> 東京都出身、慶応大学法学部卒。駐在員の妻としてミシガン滞在中にゴルフを始め、ゴルフ好きが高じて2009年にPGAメンバーとなる。「もっと遠くの、狙った場所へ」をモットーに、Links of Noviでレッスンを行なっている。
(sonya_nomura@pga.com / www.crazygolfersworld.com)

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