10月に入り今年も残すところ3ヶ月を切りました。「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、ミシガンも秋分の日を境に気温がグッと下がってきました。厳しい残暑が続いていた日本でも9月末に同月内7つ目の台風18号が発生しましたが、一つ前の17号が通過した後は「台風一過」でだいぶ涼しくなったようです。今年は台風の当たり年でしょうか?宝くじや景品のくじ引きなら「当たり」は大歓迎ですが、台風では有り難くないですね。

当地米国でも先月末にフロリダ州を襲ったハリケーン・イアンがその数日前に全国規模の停電被害をもたらしたプエルトリコ(奇しくも5年前にハリケーン・マリアの直撃を受けた当日の1日前に被災)の話題がそっちのけになるほど甚大な被害が出ている模様です。直近通過時の風力強度は最大規模のカテゴリー5に限りなく近いカテゴリー4でしたが、通過速度が遅く同州全域にもたらした長時間にわたる大雨増水と沿岸部の高潮による洪水のため間違いなく同州史上最大・最悪の被害になりそうなことが刻一刻と伝えられるニュース報道で明らかになりつつあります。場所によっては増水が地上15〜18フィートの高さにも達し、乗用車はもちろん平屋建ての家が屋根近くまで水没している映像がありました。沿岸部では停泊中の多くの小型船舶、ボートなどが打ち上がられてかなり内陸まで押し流されたり、車や建物、オーバーパスなどに打ち付けられていました。

最大級の被害を受けたフォート・マイヤーズでは沖の小島と結ぶ唯一の陸上交通手段である渡橋の一部が崩落し、島の住人は孤立状態でボートかヘリコプターでしか行き来ができない悲惨な状態です。ハリケーン通過後も残る洪水、浸水、道路上の瓦礫のため負傷者、病人を救出する救急隊も現場に行けず、行けても収容する先の病院、医療機関が浸水で入院患者を避難させねばならなかったようです。特殊な医療設備、医療技術が必要なI C Uの関係者は即刻患者の生死に関わることなので気が気でないと思います。救急隊も発進基地である消防署や救急センター自体が浸水したり、移動途中で立ち往生したりで思うように動けていないようです。救急隊のメンバーもそれが仕事とは言え、自分の自宅が浸水しているのにもかかわらず救出に出動する姿には敬服します。強風や倒木、落ち枝、飛散物などで断線したり冠水した電線、給電ケーブルの復旧にも州外からの応援を含めて3万人ほどの作業者が避難する人たちと逆行するように現場作業に向かっているというニュースにも感動します。被災地フロリダ全州の皆さんや被害に遭われた方々には心よりお悔やみ申し上げるとともに一刻でも早い救出・救助、瓦礫の除去、復興・回復ができますようにお祈りしております。

ハリケーン・イアンはフロリダ州通過後一旦熱帯性低気圧になりましたが、海水温度の高いメキシコ湾を北上しながら再び勢力を強めカテゴリー1のハリケーンとなり、本原稿作成時点でサウス・カロライナ州チャールストン方面に向かっています。有り難くない訪問者を迎える現地では過去の経験や事前情報を活かしてできる限りの準備をしているようですが、被害が最小限になることを祈ります。

スポーツの話題です。最終盤の日本のプロ野球ではセ・リーグは今シーズン話題の村上選手の活躍でヤクルトスワローズの連覇が決まり、2位のDeNAベイスターズと2チームはいち早くプレーオフ進出確定。もう1チーム3位が阪神に決まりました。パ・リーグは西部ライオンズが3位当確。ソフトバンク・ホークスとオリックス・バッファローズが僅差で首位争いしており、最終戦までもつれるかもしれません。同じく残り数試合となっている当地MLBではナ・リーグ東地区のニューヨーク・メッツとアトランタ・ブレーブスの首位争い以外は両リーグ各地区優勝チームが確定。今年は3チームが出場できるプレーオフはア・リーグがほぼ確定、ナ・リーグは最後の1スポットがフィラデルフィア・フィリーズかミルウオーキー・ブルーワーズのどちらになるかです。

今年も昨年以上に活躍し新たな記録を作り続けている大谷選手がニューヨーク・ヤンキースのジャッジ選手を退けて2年連続ア・リーグMVPに選ばれるかどうかが論議の的になっています。異論は多々ありますが、個人的には数十年に一度レベルのホームラン記録よりも100年〜120年に一度かそれ以上のレベルの二刀流が選ばれるべきだと思います。ネット記事やSNSブログで時々見かけるコメントで「我々は今現実に起きている投打二刀流について慣れ過ぎてしまい、日常起こり得る当たり前のことと勘違いし、正当な評価をしていないのではないか?」という趣旨のものがありますが、全く同感です。大谷選手が毎日のように打席に立ち、数日間隔でマウンドに登ること自体が稀有(けう)でミラクルなのです!しかもただ出るだけでなく、投打の一流選手たちと比較されるほどのトップレベルでプレーし続けているのです。毎日奇跡を起こしていて我々はそれを見てワクワク、ドキドキしながら夢のような時間を過ごしているのです!!はっは、ちょいと熱くなり過ぎましたが、ご賛同いただける諸氏も多いと思います。

今年もまたプレーオフで一流プレーヤー相手に投打両面で溌剌とプレーする姿を見られないのは本当に残念です。シーズンオフには球団の売却先と合わせて大谷選手の移籍の可能性有無が大きな話題となる予想でしたが、10月1日に年俸3,000万ドルの1年契約合意が電撃発表されました。残留が決まった以上は、誰が球団オーナー、G M、編成部長になろうとも来年こそプレーオフに出られるチームメンバー編成になることを切に願います。

前書きが超長くなってしまいました。前書きというより複部構成の第1部という感じになってしまい、失礼しました。

では、今回(第2部?)のテーマ【「明日は我が身」が現実に?】に移ります。

先月起きたウクライナの高速(光速)反攻による南東部におけるロシア軍占拠地域の大幅奪還、ロシア軍特殊部隊壊滅・残軍敗走、プーチン大統領によるロシア軍予備役30万人の部分的招集、国際法に従わず独断的・一方的にウクライナ国土の1/5に相当する4州での強制的住民投票によるロシアの属州扱い賛同多数操作に続いて同4州をロシアに併合する旨の宣言、併合条約の署名問題。英国のエリザベス女王2世のご逝去と空前絶後の葬礼・葬儀。米国内の1/16議会乱入事件調査委員会の継続証人喚問、トランプ前大統領が権限なく持ち出しマララーゴの私邸にずぼらに保管(所有)していた米国政府公文書の違法性問題、各種インフレ対策の効果と来月に迫る中間選挙への影響など幾つか書きたいテーマがありましたが、先月末に起きたプライベートな出来事について急遽書くことに決めました。
誠にお恥ずかしい話ですが、フィッシング・メールによる『なりすまし詐欺』に引っ掛かりました。似たような話は日米のネット記事やニュースで何度もいくつも見聞きしていましたし、家族にも注意を促していましたが、まさか自分が実際に巻き込まれ、「明日は我が身」が現実になるとは思っていませんでした。
自分としては極めて恥ずかしいのでこのような場で公表したくない気持ちもありましたが、本紙の読者やそのご家族、友人、知人のどなたかが同じような災難に遭ってはならないと思い直して本稿で公表することにしました。
「年甲斐もなく」とか「私としたことが」と大いに自省しておりますが、むしろ「この年だから」とか「私だから」起きた事件かもしれません。(汗)

では、一連の出来事を思い出しながら(本音では思い出したくないのですが)時系列で書き出してみます。

1. 事の発端は皆さんもご存知で利用されている方も多いと思いますが、世界中に利用者がいるオンライン決済代行サービスのPayPal(実際はそのなりすまし人物)からのメールです。

2. その日は夕方5時過ぎまでラップトップでちょっと時間のかかる仕事をしていてようやく終わって受信メールでもチェックしようかなと思っていたところにポロンと1通のメール。

3. タイトルを見るとInvoice from Billing Department Of Paypal となっており、「最近何か買ったかな?」と思いながら開いてみると前にも見た様なPayPalのロゴマーク入りのメールで「同社の請求部門が私宛に$1,000の請求書を送った」というフォントの大きな文章とその下に「私のPayPal口座が不正にアクセスされグーグル・プレーのEギフトカード購入費として$1,000が計上された証拠がある。この取引をした覚えがなければ、直ちに無料のこの電話番号にコンタクトしてください。当方営業時間は西海岸時間の月曜日から土曜日の午前6時から午後6時」と記載されていました。

4. この手のメールやテキストは常に疑い、多くは開かずプレビューで見れる範囲のみ読んで削除するか、全く読まずに削除したり、開いてもそこに記述されている関連リンクや添付物は絶対にクリックしたり、開いたりしない習慣でおりましたが、何故かこの時だけ疑念が湧かず反射的に指定の電話番号に掛けてしまいました。

5. 直ぐにアレックスという男性が出て覚えがないと伝え、先方が知っている事情を尋ねたら、私のPayPalの口座がハックされテキサス州のヒューストン、オハイオ州のコロンバス、海外ではナイジェリアとコロンビアでも口座を使った取引が行われた形跡あり、直ぐに止める必要があるとのこと。同口座に連結している私の取引銀行名まで口にしたので、真に受けて信用してしまいました。

6. どうしたらいいか尋ねたところ、「PayPalのセキュリティーカードを持っているか?」と聞かれ「持っていない」と答えると「電話を繋いだまま直ぐに近くのKrogerかWalmartに行ってパーキングロットに着いたら次の指示をする」とのこと。生憎娘が車を使っており家内も出かけていたため「車がない」と伝えると料金は後で払い戻すのでUberで行くように言われ、Lyftを呼んで携帯電話のバッテリーがいつまで切れずに続くか気にしながら最寄りのKrogerに向かいました。

7. パーキングに着いて次の指示を尋ねたところ、その後中国や日本でも私の口座が使われており被害拡大を防ぐ意味で急ぐ必要あり、セキュリティー担当に繋ぐと言われ今度はポールという別の男性に代わり、周りに人がいないのを確認した上で説明を聞くように言われ、音波状態が悪くて聞こえにくかったのですが、「店に入ったら誰とも話さず、プリペイドのeBayギフトカード$400を購入し、レジで何か言われたら孫へのプレゼントだと答えるように。買ったらまたパーキングに出るまで電話でも話すな」と言われました。その店にはなかったので他のではダメかと確認してTargetのプリペイドカードを手に取ってレジに並びました。

8. 夕方の買い物客でレジが混んで並んでいる間に「プリペイドカード購入?何処かで聞いたような話だな。これでいいのかな?」とやや疑念が湧き、元の受信メールの再確認やPayPalのオンラインサイトに行って確認した方がいいかな?と思ったのですが、手持ちの携帯ではあれこれ同時進行でやり切れず、電話が切れたりバッテリーパワーが急速になくなっても困るので、そのままレジで$400のプリペイドに指定して購入し、店外に出ました。

9. パーキングの立ち話でまた周りに人がいない所に行って話す様に言われ、指示通りカード裏のシール部分を指で削り、カード番号とアクセス番号をこれでいいのかな?と思いながら伝えました。今思い返すと被害の拡大を止めたい気持ちが強過ぎて普通の心理状態ではなく、まるで催眠術にかかっているように誘導され不思議な感じでした。番号を伝えた後、電話の相手がまたアレックスに変わりましたが、処理に3分から5分かかるのでそのまま待機する様に言われましたが、それ以上待たされたかもしれません。(帰宅後カードが登録できるか確認したところ既に誰か別人(犯人)が登録済み。当然ながら待たされている間に処理されていました。)

10. その間に自宅に帰っている筈の家内に電話し、詳細は話さず帰りの迎えを頼みました。家内が来て車に乗って家に向かって行こうとした矢先に「更に海外で被害が拡大しており、インターナショナルのセキュリティー対策をしなければならなくなったので、別の店に行って別のプリペイドカードを買って同じようにしてくれ」と言われ、短い説明を聞いた家内に「それ詐欺じゃあ!電話しちゃダメじゃない。」と言われ呪縛が解け、催眠術から目覚め、まだ繋がっていた電話を直ぐに切りました。その後も何度か掛け直してきましたが、もちろん出ませんでした。

11. 自宅に戻って直ぐにPayPal口座とメインの支払い方法としてクレカが登録してあるAMEXに電話して事情を説明しカードを無効にし、新規カードの発行依頼をし、またバックアップの支払い方法として登録している銀行口座の連結も解除しました。その後数日他に何か被害がないか注視していますが、幸い今のところ無いようです。PayPalの口座はハックされた形跡はなく覚えのない購入費用も発生していないので、私のメルアドや連結していた銀行名は恐らく私が過去に購入した先の海外メーカーか中間の取次業者の関係者が犯罪グループにデータを売ったか悪友に漏らして悪用したのではないかと思われ、PayPalのセキュリティーの問題ではないようです。
ご利用の方はご安心ください。

以上、恥を忍んで長々と書きましたが、自戒の念と共に、日本人は狙われやすいので、皆さん似たよ
うなフィッシングメールにはくれぐれもご注意ください。

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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