喧喧諤諤
喧喧諤諤

9月、ほんの少し前に学校が夏休みに入り、勤務先の盆休みが続いたと思っていたら、もう新学期が始まりました。今月半ば過ぎれば秋のお彼岸、秋分の日を迎えるミシガンは一気に秋色を帯びてきますね。コロナ騒ぎは続いていますが、ピークを過ぎた米国では一足先に航空機内や店舗、学校のクラス内、屋内集会でのマスク装着や人間(じんかん)距離確保の義務が解除され、既往症のある病弱の方、高齢者、特殊業務従事者以外はマスクをしている人をほとんど見かけなくなりました。自由な空気、解放感は感じるものの、変異株やサル痘他の感染症の局地的、一時的感染爆発が再発あるいは新規発生しないかという心配も消えません。世界一マスク装着率が高かった日本でここ数ヶ月新規感染者数が過去最悪になり、実数把握すら危ういというニュースには驚きしかなく、海外在住の我々日本人は「どうした日本?大丈夫か?」という思いです。この10年〜15年ほどで国際的な学力測定・比較
で日本の学生の数学力が下降線をたどり続けていますが、日本政府が難しい数学ではなく単純な算数でさえできない状態とは情けない限りです。正確な数字、データがなくては正確な分析、対策も手遅れや的外れとなり、被害規模が大きく問題が深刻化して長引くことになりかねません。「しっかりせい!」と発破をかけたいのは私だけではないでしょう。

新学期の始まりと機を同じくして、パンデミック中は出来るだけリモートワークを奨励していた企業がRTO(Return to office)の方針に舵を切り始めたニュースもあります。会社の経営者、管理者の多くは業務遂行上、近密なコミュニケーション、OJT(On-the-jobtraining)、業務や部下を目で見る管理が可能なRTO歓迎ムードですが、リモートワークの利便性、自由度に慣れてこれに反対する管理者もいますし、部下であるかなりの従業員が反対・抵抗する傾向もあるようです。会社経営、事業継続、収益性確保が危うかったり、働き手が確保できなかったりでは元も子も無くなりますから、どちらも一方的な要求に固執せず双方納得・合意できる合理的な解決方法、着地点を見つけて欲しいと思います。

スポーツの世界では、カレッジフットボールがシーズン・イン。プロのNFLが直ぐ後に、そしてバスケットボール、アイスホッケーとウィンター・スポーツが続きます。プロ野球MLBはレギュラーシーズンが残り1ヶ月を切り、プレーオフに出れる球団と出れない球団がハッキリしてきました。出れない球団が来シーズン以降に向けて若手の育成やトレード補強の構想を練る一方、まだ少しでも出場可能性のある球団は夢に向かって、また現時点で可能性が高い球団はそれを確実にするために最後の一踏ん張りをするホームストレッチですね。

二刀流大谷選手が所属するロスアンゼルス・エンジェルスは残念ながら1914年を最後に8年連続で今年もプレーオフ進出できず、彼がプレーする姿を少しでも長く観たいファンには残念でなりません。エンジェルスに関しては8月2日のトレード期限までに大谷選手の残留が決まり、球団のファンは一安心したのも束の間、先月下旬にオーナーのモレノ氏が球団売却検討の意向を発表(既にその2ヶ月前から売却の方向で動き始めていたとの報道もあり)。チームのメンバー、ファンはもちろん、MLB全体に波紋が広がっています。トラウト選手に加えて大谷選手が球団にいる、いないで球団の市場価値、売却価格が大きく変わる(逆に買い取り側はその分買取価格に大きく影響する)ため興味はあっても買えない球団もあるでしょう。大谷選手のトレードを見合わせたのは売却価格を高くする狙いがあったと思われます。もう一つの要素は、エンジェルスより5ヶ月ほど前から球団身売りの話が具体的に進んでいるワシントン・ナショナルズの進行状況です。ナショナルズを買い取った新オーナーは資金的にエンジェルスには手を出せませんので、買えなかった落選組からエンジェルスの新オーナーが出る可能性がかなりあります。大谷選手自身は「売却は自分ではコントロールできないこと。自分は残りのシーズンや
れることをやり切るだけ。」と達観していますが、ポストシーズン中にトレードの可能性再燃で周りが騒がしくなりつつあります。所属球団がどこであれ、新オーナーが誰であれ、彼が二刀流を続け投打で活き活きとプレーでき、願わくはプレーオフ進出、ワールドシリーズでMVP級の活躍をして、新たなMr. Octoberの称号を得る日がそう遠くないことを願ってやみません。

さて、今回のテーマは「トランプウィルス、封じ込めなるか?」です。
先月号で世紀末の様相?と書きましたが、今も毎日日替わりで色々なニュースが飛び込んできます。美味しい日替わりランチならいいのですが、良いニュースが少なく、多くの悪いニュースには辟易としています。幾つかを挙げますと;

1) ロシア軍のウクライナ侵攻はまる半年を経過しても収まる兆しが見えず、ロシア軍に占拠されたウクライナ南部のザポロジエ原発が制御不能のメルトダウン状態になるかもしれないというリスクの現場検証のためIAEA(国際原子力機関)の視察団が先月末現地に向かいましたが、経路をロシア軍が砲撃して現地入りを妨害しているという報道もあり、現時点では現場検証が実現するか、検証結果が安全・合格と出るか未知数です。

2) コロラド州では15年ほど前からコロラド川流域の旱魃(かんばつ)による水資源不足が悩みの種でしたが、今年は更に悪化し先月全州で下流での取水制限、企業や一般家庭での水の使用量制限を緊急発令。生活用水だけでなく流域の生態系が回復不能なレベルになる恐れがあると専門家は警鐘を鳴らしており、人間優先でなく生態系保全優先が叫ばれています。上流にある二つのダムの保水量が30%台まで落ち込んでいる旱魃と水不足は同州だけに留まらず灌漑用水の供給を受けている米国西部アリゾナ、ネバダ、カリフォルニア州、更にメキシコにも及び、100年の歴史で初めてという大幅な来年の水使用量削減が義務付けられました。流域で大量の水を使う米栽培をやめろと言う声も出ているので、輸入国日本とも無関係ではありません。

3) テキサス州共和党選出のアボット州知事はメキシコ国境から際限なく入り込んでくる移民・難民の取り扱いに業を煮やし、事前協議・了解取り付けもせず一方的に移民・難民に寛容な民主党基盤の首都ワシントンD.C.やニューヨーク市に毎週連日のようにバスで移民を送り込む暴挙に出ました。既にバス輸送に12百万ドルもの費用を費やし、その累計人数は1万人近くになり、受け入れ側では食料・飲料水の確保、住まいの割り当て、外国人向け英語学習クラスの手配などでテンヤワンヤとなっています。英語表現では「自分の背中のサルを他人の背中に乗せる」と言いますが、責任転嫁で真の問題解決になりません。全く州知事の度量もない恥知らずな行動で、イジメ、嫌がらせとしか思えません。

4) ケンタッキー州東部で過去最大規模の洪水が発生し、多数の死者と物的被害が出たのに続き、ミシシッピー州の州都ジャクソンで河川の氾濫と水処理施設の不具合で飲料水の供給が間に合わず15万人以上が助けを求めています。体を洗うシャワーやトイレを流す生活用水も断水状態で最低限の日常生活に支障を来しています。海外ではパキスタンで致命的な大洪水が発生し、被害、混乱を解決するための海外諸国からの支援を求めています。

5) 先月号でも触れたグリーンランドの融解氷による海面上昇はこのままの速度で進むと今世紀末までに全地球規模平均で10インチ上昇するとの専門家予想。平均ですから、場所や季節、気象条件によってはそれ以上になるので、水没、洪水、浸水、冠水する地域が今の数倍から数十倍に膨れ上がるかもしれません。氷は溶ける時に融解熱として気温を下げる働き以外に太陽光を大気圏外に反射して陸地や海面に吸収される太陽熱を軽減する働きもあるので、極地や氷河、寒冷地の氷の量が減ると二重のマイナスで気温上昇に拍車がかかります。溶けた氷は元の氷塊には戻りません。分離、流出した海上の氷塊は船舶の航行や漁獲作業の障害となります。

6) 過去最大規模の気候変動対策を盛り込んだインフレ削減法案が上下院とも可決通過し、大統領署名を得て正式立法化。前回大統領選時のキャンペーンで公約していた気候変動対策、法人税増税、医療費・薬価の引き下げなど民主党の目玉の政策がようやく実施可能となります。更に追い掛けで学生ローンの負債免除・軽減補助計画の詳細も発表され、生活苦に悩む低所得層、学生には歓迎されています。7月に就任後最低の支持率だったバイデン大統領の評価も急速に40%台に回復し、11月の中間選挙に向けて民主党の士気高揚、予備選でトランプ推薦候補者と非推薦候補者の党内対立が見られる共和党は上下院ともマジョリティーを奪還できるとの楽観視から多少悲観的な予想に繋がっています。

7) トランプ前大統領のマララーゴの私邸に司法省から捜査令状を得たFBIが家宅捜査に入り、最高度の国家機密資料を含む公文書多数を押収。トランプ側や共和党幹部は中間選挙と次期大統領選に向けて民主党有利を目指す政治的目的の個人攻撃と非難していますが、米国国家公文書館が前回大統領選後トランプがホワイトハウスを退去する前後に持ち出した公文書を返却するようにトランプの弁護士団に何と昨年1月から正式書面で繰り返し要求していたにも拘らず、実行されていないことを司法省も察知して今年5月からFBIがトランプの弁護士団に何度か接触し速やかに返却するように、返却が完了するまではアクセス権のない人物が近づけないように安全な保管場所に厳格に保管管理するように指示して、違法行為扱いの大事にならないように配慮していた節がありますが、内部情報源から核に関する国家
機密や諜報活動に携わる諜報員や情報入手元に関するトップシークレットも含まれていることが判明し、国家安全保障に関わる重大問題として公文書押収に急遽動いたものと判明しました。また、持ち出した機密扱いの公文書は機密扱いを解除したものであると、トランプ自身が解除手続きをした記録もないのに嘘の言い訳をしたため、大統領職を離れた後私人の立場で公文書を違法に持ち出したこと、私邸に違法に保管していたことを自ら認めて墓穴を掘った形となり、今回ばかりは如何に弁護士団が言い訳しても、法的懲罰は免れない状況のようです。

8) 本原稿作成作業中に入った最新ニュースでは、旧ソビエト連邦最後の共産党書記長、国家元首であり唯一の存命者であったミハイル・ゴルバチョフ氏が91歳で逝去。米国の故レーガン元大統領との対話で米ソ間の冷戦、核兵器開発拡大競争に終止符を打ち、冷戦の象徴であった東西ドイツを分離していたベルリンの壁を撤去して緊張緩和に向けた功績は西側諸国のみならず世界的に評価された一方、国内共産党タカ派や対立支持派からは『売国奴』、『裏切り者』呼ばわりされて評価が分かれた経緯がありますが、強く記憶に残る人物でありました。R.I.P.(合掌)

上記の内、6)がインフレ、地球温暖化の影響に悩む米国民にとって(間接的には他国民にも)グッドニュースですが、7)も諸悪の根源であるトランプが犯罪者として起訴され法的に有罪となれば、大統領職はもとより二度と公職に就けなくなり、再びホワイトハウスや米国議会で私利私欲のみを追求する悪行を未然に防げる意味で朗報と言えます。トランプの取り巻き連中や頑固な支持派、甘言に乗せられ騙され続けてきた庶民も諦めるか、目が覚めて正気に戻り、「トランプウィルス、封じ込めなるか?」という期待感もあります。

常識ある善男善女の皆さん、Keep your fingers crossed!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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