
9月12日、ミシガン州Saginaw市にあるJapanese Cultural Centerにて、在デトロイト日本国総領事館のスポンサーのもとJapanese Festivalが行われた。コロナウイルスの影響で昨年はオンラインイベントとなり、実質2年ぶりとなったこちらのフェスティバル。進藤雄介総領事を迎え、約30人のボランティアが活躍した。スタッフはミシガン州在住の書家、藤井京子氏がした文字入りのTシャツを着て、約300人の入場者を温かく迎えた。
Japanese Cultural Centerはデトロイトから約100マイル北にあるSaginaw市にある。Saginawと徳島市は姉妹都市。1961年、徳島からSaginaw市へ留学した高木宏幸氏が帰国後もSaginaw市滞在時に知り合った友人と友情を深めていた。その友人の知人がSaginaw市長に就任したことがきっかけで、徳島市とSaginaw市との縁は姉妹都市提携へと発展した。1971年に日本式庭園(徳島サギノー親善庭園)が開園。その後、日本の茶室建築と庭園の匠をアメリカにもたらした。茶室の建築設計と組み立てを一度日本で行い、解体し、それをアメリカで現地の労働者とともに組み立てなおした。1986年、日米の共同の力で16世紀の数寄屋造様式の茶室、は生まれた。その茶室と3エーカーの敷地を誇る日本庭園を舞台に、Japan Festival in Saginawは地元からの入場者を中心ににぎわった。
最も人気の茶会は2回、各回17名限定で行われた。残念ながら茶菓の提供はコロナ感染防止のためなかったが、立礼式茶室に設けられた椅子席に集まった観覧者は1回目は裏千家、2回目は表千家のお点前の観覧を十分楽しんだ。所作の一つ一つ、亭主と客のやり取り、床の間に掛けられた掛け軸、生け花が持つ季節感、茶道具にこめられた匠の極みについてボランティアが逐次英語で参加者に説明した。観覧者は静寂と荘厳さを理解した。お点前中には音もたてず見入るように所作に注目していた人々は、最後に出演者が一堂に会し観覧者に一礼したときには一挙に拍手でその感動を表した。「亭主はなぜ一緒に茶を飲まないのか」「客と亭主の会話の内容は決まっているのか」など、もてなしと味わいに対する本質的な質問もでた。
テレビでの案内を見てグランドラピッズからこの茶会に参加したご夫婦は「所作の一つ一つに敬意、深い意味、自制を感じた。すべてに現代には失われているものをお点前に見た。Discipline(規律、立ち振る舞い、などの意)、まさにその通り。」と感動を語った。その女性はK-12(幼稚園から高校まで)の教育に携わっている方で、ひとしお一連の所作に感動していた。
お茶会の後に表・裏千家のみなさんにお話を伺った。「楽しくお点前を披露できた」「2年ぶりの日本祭りでの披露だったが、終わってほっとしている」「お茶を好きな方にもっと知っていただきたい」「コロナの収束を願っています」等、安堵とともに今後も日米の懸け橋として日本文化を広く楽しんでいただける方との交流を望んでいる力強いメッセージをいただいた。
会場は阿波鷺能庵の周囲の日本庭園。入場した人々が楽しめるように、折り紙、生け花、書道、盆栽のブース、グッズや地元陶芸家の作品販売、パフォーマンスステージが設置された。現地の若い人の入場者が多い印象だった。書道体験ではボランティアの補助を受けながら、慣れない筆遣いに苦労しながらも自分の名前を書いて楽しむ入場者や、折り紙の世界の精巧さに興味を示す人々の姿が見られた。遠方からのパーフォーマンス参加では、長年ワシントンDCのNational Bonsai & Penjing Museum of the U.S. National Arboretum でキューレーターを務めた盆栽家Jack Sustic氏が、参加者に作品をプレゼントするラッフル(くじびき)を企画し、入場者を楽しませた。地元陶芸家のTim Rickettsさんの作品の展示販売も行われた。
Saginawのダウンタウンと隣の教会を木々の合間に垣間見ながら、水量豊かなSaginaw川沿いに建てられた茶室と縁側から臨む日本式庭園は、あたかも日本の一景色を切り取ったようだった。ミシガンにいながら日本の趣を感じた空間とも言える。特設テントに設けられたステージでは、地元歌手Emily Bischoffさんの歌、Ensemble Hanabi, Koto, Cloud Hands of MichiganのTaichiと多彩なジャンルの発表があった。Japanese Festivalの締めくくりはダイナミックな太鼓のパフォーマンスだった。Great Lakes Taiko Centerの演奏は、ミシガン湖やミシガンの自然を時には力強く、また時にはその静けさを表現し、人々をひきつけていた。
主催者Japanese Cultural Center, Tea House and Gardens of Saginaw, Inc.の阿津ますみさんは、コロナ感染に対しての安全対策がやはり一番の課題であり、会場の設定を若干変えたり、準備の段階からボランティアには十分に衛生と感染予防の指導をして協力を求めるなどコロナ禍の中安全な環境を提供できることをまず考えていた、と語った。今回のイベントは2年間の思いを温め、その準備が十分なされており大成功だったと言えよう。若い入場者が多く、日本文化への理解を求めている地元の人々の関心の高さを伺うことでき、多彩な出演者・出品者を得たのは主催者の熱意を反映していた。
阿波鷺能庵のあるJapanese Cultural Centerへは、Novi方面からはUS-23を走ると1時間ほどで着く。毎月第2土曜日に予約制のお点前のデモンストレーションを行っているので、日本文化に興味のあるアメリカ人を誘うには最高の機会だ。参加費は$10。すぐに予約がいっぱいになるので、早めの予約を。また、日本文化に関するイベントも企画されている。Japan Festivalのパンフレットにもあるように、阿波鷺能庵の運営は50%がSaginaw市から、10%はイベントなどの催しものから、残りは寄付で賄っている。この本格的な茶室の維持には地域からの協力が大切になってくる。ぜひ、ご興味のある方は下記ウェブサイトでも寄付を募っている。
The Japanese Cultural Center, Tea House, and Gardens
http://japaneseculturalcenter.org/