8月になりました。先月中旬には現地校に続いて日本人補習校も夏休みに入り、お子さんのあるご家庭では親御さんたち(特にお母さんがた)は休みどころではなく余計に忙しい毎日をお過ごしのこととお察し致します。

 本題に入る前に先月号の拙稿中コロナ変異株の種類と呼称に関する記述に誤りがありましたので、本蘭をお借りして訂正とお詫びをさせていただきます。

拙稿に記述されていなかったものも含めて整理しますと、今年5月末に発表されたWHO(世界保健機構)による分類では、イギリス型がアルファ、南ア型がベータ、ブラジル型がガンマ、そしてインド型がデルタでした。通常原稿作成時には事実関係の確認チェックを自分自身に義務付けておりますが、前回は(前回も?)原稿締切りに遅れてその労を惜しんだためにミスに繋がってしまいました。重ねてお詫び致します。

 余談になりますが、このミスは近頃流行りの言葉で言えば①ミスインフォメーション(Misinformation=誤情報)でしたね。似たような言葉で②ディスインフォメーション(Disinformation=偽情報)と③マルインフォメーション(Mal-information=悪意のある情報)というのもありますが、それらの違いをご存じですか?ご存じの方には読み飛ばしていただくとして、

 元々①は悪意のない単純なミスで文中の日付や場所、関係者の名前など記述内容に誤りがあるものを指します。②は意図的に、多くは発信者自身またはその関係者に有利に働くように事実を曲げたり、事実でない架空の情報を指します。③は明確な悪意のある情報で特定の個人や企業、団体を標的として攻撃するもので、必ずしも誤情報もしくは偽情報とは限りません。一例が本意でなく別れた元カレや元カノに対する私情・怨恨からのリベンジ・ポルノや暴露記事、解雇された会社の悪評流布や誹謗・中傷、社内機密情報漏洩など事実であっても通常は公(おおやけ)にしない情報で、しばしばスキャンダルや訴訟問題に発展しかねないものです。

 やや複雑なケースは、②の偽情報を見聞きした人がそれを偽情報と知らずに他の人にそのまま伝えたり、ブログやSNSで流した場合ですが、この場合当人は意図的に偽情報を流した認識がないため偽情報ではなく誤情報の扱いになります。

 偽情報だと認識していたか?意図的に他へ流したか?という判断は元の発信者やそれを繋いで流した当人及び受信・閲覧者側の立場、両者の関係、周辺環境やその時の状況、タイミングなどで判断が難しい微妙な点があるため、正確な分類が難しい場合があり、分かりやすく①、②を合わせて誤情報としているケースが多いようです。

 トランプ前大統領が権力と権限に執着して「前回大統領選に不正があった。自分が当選した選挙を盗まれた。」とウソ発言を繰り返し、それを取巻き陣や支援グループが拡散・扇動したり、コロナワクチンに関する不信・反感・反対・抵抗を促す偏向TV局・メディアニュースやフェイスブック、ツイッターなどの相乗り掲示、投稿も一括りすれば全て誤情報です。FOX Newsの看板キャスターが視聴者に向けて恥も外聞もなく毎日のように誤情報(正確には偽情報)を流していながら2千万ドルとも3千万ドルとも言われるとんでもないサラリーを受け取っていることが本当に信じられません。こんな有害・有毒で恥知らずな行為が何も咎められずいつまでも野放しになっていることも信じられません。『言論の自由』を履き違え他人の不幸を餌にして我が物顔にのさばっている連中(悪い奴ら)を何とかできないものでしょうか?(閑話休題)

 さて、今回のテーマは「東京オリンピックとコロナに思う」です。

 学校の夏休み入りと前後して東京オリンピックが1年遅れで開催され、当地米国でも連日関連ニュース報道と日本選手の話題で持ちきりです。開催前のみならず開催中の今もコロナ禍が続く中での強行開催に賛否両論があり、国際及び日本オリンピック委員会や運営にあたる関係者に対するデモ行進、抗議集会だけでなく、全国各地で無償のお手伝いをしているボランティアの方々や個々の代表選手にまで非難や誹謗・中傷のコメントがネットや個人のブログ、各種SNSツールで見受けられるのはいくら何でも行き過ぎ、やり過ぎの感があります。

 私自身も開催にはやや反対の考えでしたので、実際に開催後、緊急事態宣言が延長されたり、コロナの新規感染者数が急増したりしている事実を見ると開催しない方が良かったのではないかと思う反面、史上初めて無観客で行われたオープニングセレモニーの実況中継やビデオ放送を観た際には「これだけの数の国・地域、異種競技の代表団が国境、政治・経済・社会体制、人種、言語、文化・慣習、宗教などの違いを超えて同時に一堂に集まる大規模な国際イベントはオリンピックしかない」ことを改めて再認識させられ、これも賛否両論あったオープニングセレモニーの内容一つひとつに関してどれだけ多くの人たちがアイデアを出し、計画を立て、長い年月をかけて汗水流し準備をしてきたのかと考えると、費用のことはともかくとして、それらの貴重で尊い努力と時間が日の目を見ないまま無駄にならないように、中止にせず、開催に踏み切って良かったのかなとも思いました。異論はあると思いますが、それが偽らざる感想です。

 更に具体的に各種競技が始まり、開催国である日本の選手たちの活躍を見聞きする度に否応なく自然に心が弾み喜びが込み上げてくるのもオリンピックの力ですね。特に大会4日目を終えて日本の獲得金メダル数8個!常連の強豪スポーツ大国(米国、中国、ロシアなど)を抑えて単独首位となり、8日目が終えた時点でも金メダル17個で首位を維持していたのには日本人として素直に大感激でした。特に今大会で野球と共に復活した女子ソフトボールで前開催の2008年北京大会に続いて13年ぶりの決勝で宿敵米国代表を破って堂々金メダルは感動ものでした。優勝投手は長年第一線で驚異的な記録を残してきた日本の、いや世界のリジェンド上野由岐子選手。米国代表チームに「今回も上野を打てなかった。」とため息を吐かせました。また、4試合に救援登板し、神がかり的な投球で優勝に大きく貢献した左腕の後藤希友選手や予選ラウンド・カナダ戦で延長の末サヨナラ打を放ち決勝では奇跡的なダブルプレーで米国の反撃を断ち切って攻守のヒーローとなった渥美万奈選手も印象的でした。男女テニスと男子水泳陣は残念な結果になりましたが、女子水泳で大橋悠依選手の競泳2種目優勝も凄かったですね。男子体操では最終演技種目の鉄棒まで僅差のポイントのままもつれた結果ほぼノーミスの演技で個人総合優勝した橋本大輝選手の鋼(はがね)のような精神力の強さが際立っていました。長年団体・個人でリーダーとして頑張ってきた内村航平選手の力強い後継者が現れて頼もしい限りです。

 開催直後はメダル獲得が十分期待できた新種目のスケートボードや伝統的に得意種目の柔道などが先行したとは言え、日本選手の活躍には嬉しいと同時に昨年コロナ騒ぎの影響で1年延長が決まった後も人知れぬご苦労の数々を想像して本当に頭が下がります。皆さん、おめでとうございます!!

 もちろん、ご家族や友人・知人にコロナによる犠牲者・被害者をお持ちの方々にはオリンピック開催を喜べない、祝えないお気持ちがあることを忘れてはならず重々心に留め、また1年延期の影響で代表選出に漏れたり、開催時にピークが過ぎてしまったり、ピークを合わせ切れず、残念ながらベストを出し切れずメダルを取れなかった選手たち(中でも白血病から復帰し痛みを乗り越えながら苦しいトレーニングを重ねて代表選考会を経て正式代表に選ばれた女子水泳の池江璃花子選手などはもう競技会場のプールサイドに立っているだけで奇跡でしたが、決勝まで残って泳ぎ切った姿は感動以外の何物でもありません)にも労いの拍手と心からのありがとう!とお疲れ様!を言いたいです。

 国民の誇りと意気高揚というプラス面とは逆に国民の健康や社会衛生上マイナス面があっても、それは根本的に選手やボランティアの責任ではなく優柔不断、判断ミス、的外れの対策と拙速・時期遅れの実施で国民に我慢と辛抱を強いた日本政府と地方行政の落ち度です。ワクチン接種を含めて延期決定から大会開催までにタイミング良く適切な対策がその都度実施されていれば、今のような大きな不安なく開催できたと思うと残念でなりません。

 それでもなお、海外からはコロナ禍の中「日本だから開催できた。他の国だったら開催できなかった。」という声もあり、開催前に日本に入国し、各地でトレーニングキャンプを張っていた各国代表チームからその地の日本人ボランティアの皆さんの献身的で温かいレセプションと応待に感謝の声が鳴り響いています。コロナ騒ぎで何をするにも制限・制約がある中で、一昨年のラグビーワールドカップ開催時に劣らぬ日本の『おもてなし』は来日した各国代表団の心に深い感銘と思い出を残したようです。まだ終わっていませんが、ボランティアの皆さん、お疲れ様!!また、代表選手だけでなく来日してチームに同行取材やオリンピック村や各競技会場などで取材・報道に当たっている海外メディアの一番の驚きとお気に入りは何と日本のコンビニと自販機の素晴らしさとのこと。日本人には日常当たり前の光景ですが、見慣れていない海外からの来訪者にとっては大袈裟でなく欲しい時に欲しい物が何でも買える、手に入る便利さがまるで魔法のランプか打ち出の小槌のように思われるようです。これもちょっと嬉しいですね。コンビニ関係者の皆さん、自販機にもご苦労様!

 当地米国では、冒頭で触れたコロナ変異株デルタが先月の独立記念日連休あたりから全米規模で急速に拡散し、特にワクチン接種やマスク装着に消極的なフロリダ州、南西部諸州、山間部州などでは直近の3〜4週間連続で前週比30%台、50%台、60%台増の新規感染者数となっており、医療施設の緊急受け入れキャパが病床数、医療スタッフ数とも限界に近い状態になっています。ワクチンの接種件数、接種率の伸びが頭打ちとなり、デルタ変異株が目に見えて拡散を始める前でも既に新規の感染者及び入院患者の約95%はワクチン未接種者という状況になって初めて、ワクチン接種奨励に非協力的であった共和党の有力議員や問題のFOX Newsのキャスターまでが突然ワクチン接種を呼び掛ける様変わりの事態になっていましたが、先月末ワシントンポスト紙が入手した CDCの内部資料によるとデルタ変異株は感染力がチキンポックス(水疱瘡)並に強く、また現場勤務の医療関係者などでワクチン接種済みの人にもブレークスルー(ワクチン免疫の防護壁を突き破って人細胞に侵入)感染した事例もあって、要はデルタ変異株は誰にでも感染する危険が少なからずあるとのことで、CDCは以前発表したガイドラインを強化してワクチン未接種の人はもちろん、接種済みの人も室内で人が集まる所ではマスク着用を再度強く求める事態に逆戻りし、余計に国民の不信感と混乱を招いてしまいました。

 その影響もあってか、先月末にはそれまでワクチン接種率、新規接種実施件数とも全米ワースト10の上位に並んでいた南西部諸州や山間部州で一気に接種率、新規接種件数が跳ね上がり、後者の数字では全米トップ10に並ぶ驚きの逆転現象が起きました。遅れていた接種実施が“Better than never”でデルタ変異株の拡散スピードとの競争に勝ち“Too little, Too Late”にならねばと願うばかりです。また、間もなく新年度が始まる学校で現在ワクチン接種対象になっていない12歳未満の学童に対するマスク装着義務付けも猛烈に反対する親・保護者が存在し、どうしたら学童の安全と健康を確保しながらレベルの高い教育を効率良くできるのか?と教育関係者・指導者は頭を痛めています。

 一方、首都ワシントンでは更なる景気浮揚と雇用拡大のための総額5,500億ドルという大型インフラ予算案が先月末ようやくバイデン政権と民主・共和両党(有志)間で基本合意に達し、順当に行けば先に上院で審議可決した後下院で審議可決し正式通過・成立するか?という状況になってきました。タイム誌によれば、通常は考えや利益が対立するビジネスオーナー・経営者側と労働組合側の有力者が協力してインフラ予算は双方にメリットありと両党の歩み寄り合意に強力な圧力を掛け続けたのが大きな後押しになったようです。下院では民主党のペロシ議長がインフラ予算と抱き合わせでチャイルドケア及び教育関連予算など諸々の懸案事項推進のための予算を含む3.5兆ドルの超大型追加予算を同時通過させたいと願っていますが、民主党のシネマ上院議員が余りに巨額過ぎると難色を示しており、民主党内でも完全な挙党一致態勢になっていない点が気掛かりです。

 他方、やはり先月末に司法省が2年前の前言を翻し、IRS(米国歳入庁)にトランプの個人所得税申告書を議会に手渡してもOKと言明したニュースがありました。同じ資料が直ちに一般国民にも公表される意味ではありませんが、トランプ前大統領が初当選する前のキャンペーン中も在職中も退任後も表裏から可能な限りのあらゆる手段を用いて必死に守り続けてきた強固な防護壁が崩れて彼の収支活動報告、所得・納税申告の実態が徐々にまた具体的に表面化されそうです。先に起訴されたトランプグループ会社の金庫番であるワイゼンバーグCFO(最高財務責任者)も絡めてお金の動きを追った会計・財務面から長年積み重ねられてきたトランプとグループ会社の悪行がいよいよ白日の元に照らされ、次々と芋づる式に暴かれていくかもしれません。乞う、ご期待!ですね。

 そんなこんなで、オリンピック開催中の日本でも当地米国でもコロナ抜きでは物事が語れない、進まない状況に変わりありませんが、今後も予想される新種の変異株発生も含めて政府主導でタイミング良く適切な対策が取られ、ワクチン接種が進み、新規感染者・入院患者数、重篤患者数、死亡者数が大幅に減少してコロナ騒ぎが収束に向かい、最終的に終息することを切に祈ります。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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