メモリアルデーの連休も過ぎて6月となり、ミシガンもあちこちで芝刈り、バーベキューや卒業パーティーが見られるようになり、初夏の訪れを感じさせます。コロナワクチン接種率の向上により新規感染者数、入院者数、死亡者数が目に見えて減少し少しずつ普通の日常生活スタイルに戻りつつある中、パンデミックの影響で昨年は見送られた学校の卒業式もヴァーチャルでなく対面現地開催で行われ、学校によっては昨年度の繰越し卒業式と同時開催したニュースもありました。米国では高校卒業には特別な意味があり、卒業生にとっても親御さんにとっても思い入れの強いイベントなので、想定外の苦難を乗り越えて卒業の喜びはひとしおでしょう。ご卒業おめでとうございます!

 米国内のコロナ対策は良い方向に進んでいますが、広く世界を見渡すとインド、ブラジルなどのホットスポットを筆頭にまだまだ多くの国・地域が苦しんでおり先進国でも対応に四苦八苦していますが、自力でワクチン生産能力も入手能力もない開発途上国や小さな島嶼(とうしょう)国では米国からの迅速で差別のないワクチン供給支援が切望されています。日本については後述します。

 スポーツの話題では、当地米国のバスケットボールNBAとアイスホッケーNHLがプレーオフの真っ最中ですが、残念ながら今年も地元チームのピストンズとレッドウィングスが出ていないので、今ひとつ興味が湧きません。セパ交流戦期間中の日本のプロ野球では首位から5位まで5ゲーム差ほどの団子レースが続くパリーグに対して、セリーグでは阪神タイガースが首位を堅持。昨年ドラフト1位で入団したルーキー佐藤輝明選手の活躍(先日も史上4人目となる新人で1試合3本塁打とミスタージャイアンツ、長嶋さん以来の記録)と明るい性格でベンチの雰囲気も非常に良く、今年こそ『はんしん不随タイガース』の汚名(虎党ファンの方には失礼お赦しください)を返上して1985年以来のリーグ優勝なるか?注目されます。当地MLBでは何と言ってもエンジェルスの大谷選手の話題で持ち切りです。「二刀流だ」、「三刀流だ」、「いや正確には二刀流だ」とつまらぬ議論も出ていますが、打者としては打率こそ2割6分〜7分とやや下がっていますが、開幕からチーム50試合消化の先月末時点で15本塁打、11二塁打、3三塁打は1998年マリナーズでプレーしていたA.ロッド以来の記録。しかもそれを200打席以下(正確には195打席)で達成したのはMLB史上初。また、二刀流として同一シーズンに打者で15本塁打、かつ投手として50奪三振したのは2018年にMLBデビューし22本塁打、63奪三振した彼自身のみで2度目の快挙。今シーズンはまだ2ヶ月経過したばかりなので、このまま健康で順調にプレーし続ければ数字も大幅上乗せする可能性大。打席数が制限される二刀流にもかかわらず、単純計算ではシーズン50本塁打、128打点ペースという超一流打者でも同時には難しい数字を達成してMVP(米スポーツ誌のスポーツ・イラストレイテッドが特集した開幕2ヶ月間の記者投票では7人中6人がア・リーグMVPに投票)まで獲得する可能性もあります。本人は野球小僧、野球少年のように純粋にプレーを楽しんでいるようですが、見ている我々もとにかく楽しくワクワク感が止まらない一挙手、一投足が注目を浴びるスタープレーヤーです。これから本格的な夏に向かい地元南カリフォルニアから長距離移動しながら砂漠気候か亜熱帯気候のアリゾナ、テキサスなどの灼熱、猛暑の中での試合が待っており、熱中症や夏バテ、過労が心配されますが、怪我・病気せず残りのシーズンを通してハツラツプレーを見せてほしいと願っています。

 テニスでは今年二つ目のメジャーイベント、フレンチオープンが開催中。今春長い怪我休養から復帰した男子の錦織選手がどこまで調子を取り戻して若手の台頭顕著なトップ10〜20レベルのプレーができるか?第2週まで勝ち残れるか?です。ネットで公私にわたり色々批判する人もいますが、彼があの小さな身体で今までに成し遂げたことがどれだけ凄いことか、日本のテニスやスポーツ界にもたらした貢献度を公平に評価し、過剰期待せず素直に応援してあげたいものです。女子では今や世界的スタープレーヤーとして注目されている大坂選手が今大会中の公式記者会見を拒否する宣言を出し、物議を醸しています。選手のメンタルヘルスに十分配慮していないという理由ですが、大会主催者、スポンサーや現役並びにOB、OGのテニスプレーヤー、テニス・スポーツ評論家、ファンから賛否入り混じったコメントが出ています。実際に初戦勝利後の記者会見をせず、主催者から参加選手としての義務違反に対する1万5千ドルの罰金通知、また4大大会主催者の合同声明として今後の行動次第で今大会失格や将来の4大大会出場停止処分もあり得るという警告がありました。彼女の姉であるマリさんの補足説明によるとクレーコートで良いプレーができないことに関して繰り返し嫌な質問をされることに耐えられなかった、ということですが、彼女の一ファンである私も個人的には今回の行動はロールモデルとなるべきスタープレーヤーとしてはやや性急で大人気ないエゴと取られても仕方ないと感じます。アマチュアテニスプレーヤーの私は世界中を旅するプロテニスツアーやメジャーイベントを含む数多のテニスイベントに参加するプレーヤーにかかる心身のプレッシャーとストレスを知る由もありませんが、自分の普段の試合でも上手くプレーができずに負けて、自分自身に腹を立てたり、パートナーに八つ当たりしてしまったり、試合に関して話もしたくないことがあるので、負け試合直後の記者会見で嫌な質問をされれば、反発したり嫌気が差して答えたくない、その場を離れたい気持ちは分かります。それでもなお、参加プレーヤーの義務として嫌でも辛くてもネガティブな気持ちを抑えて会見に臨まねばならない立場にあります。特に注目度の高い上位ランクのプレーヤーや歴代チャンピオンは他の選手や後に続く後輩、ちびっ子ファンのロールモデルとして余計にそれが要求されます。わずかなエゴや一つの例外も許されない環境です。人間関係をこれ以上こじらせて禍根を残さないように、会見拒否ではなく、会見で自分の考え、意見を伝えるとともに改善のために関係者と何度でも粘り強く話し合いを続けてほしいと思います。また、コートの中では余計なことを考えず、試合に集中して3回戦の壁を越えてほしいですね。(とここまで書いたところで、たった今大坂選手がフレンチオープンを棄権という驚きの臨時ニュースが入ってきました!(事が大きくなってしまい、大変残念です。)

 またまた前置きが長くなってしまいましたが、今回のテーマは「社会正義と商業主義とエゴの合間で」です。

 日本のコロナ対策が遅々として進んでいない状況に海外在住日本人の我々も心を痛めています。先進国のはずの日本が先月末時点でワクチン接種率1%、世界ランクで100位程度と報道され、ワクチン後進国であることが改めて再認識されましたが、先月末に日米間で米人も入ったバーチャル会議の席上、米人から「日本のワクチン接種率が1%って本当?オリンピックは大丈夫?」と質問され、「その通り。オリンピック開催も危ない」と私見を述べましたが、大変恥ずかしい思いをしました。安倍前首相から政権を受け継いだ菅首相は就任前の発言や就任時の所信表明演説では「コロナ対策を最優先する」と明言していたにもかかわらず、有効な対策は何一つとして実施できず緊急事態宣言の発令と延長を繰り返し、観光業、飲食業を主とするビジネスの営業制限・制約と国民の外出自粛の忍耐を強いるのみで、ワクチン接種に関しても「高齢者は7月末までに完了する」とお題目を唱えただけで、実際はとても間に合わない都市や地域があると知って「私もショックでした」とまるで他人事のようなコメントばかり。

 更に追い討ちをかけるように日本国内のワクチン接種が普及する前にホットスポットのインドで変異発生したインド株(最初はインドの株式のニュースかと思ってしまいましたが変異株のことでした)が日本や中国でも確認され、致死率は高くないものの従来コロナの倍以上の感染力による新たな感染拡大が懸念されています。直近で日本とも国交とビジネス関係が親密でコロナ対策では優等生だったタイ、ベトナムでも変異株が確認され不安は増すばかりです。

 菅首相が自民党幹事長時代は安倍前政権の番頭役、調整役としては「総理の意向で…」とか「総理がそう希望している」などと安倍前首相の権威を使ってそれなりに機能していましたが、自分が首相の座につき強力な派閥の援護もなく有能で頼りになる番頭役や閣僚がいない今、揺るぎない自信を持って有効な政策を打てないまま、国民の信頼と支持を急速に失いつつあります。危機管理の能力も欠如しており、所詮、国のリーダーの器ではないということでしょうか。

 昨年一度延期されたオリンピックも延期が決まった時点で「これで安心してしまうとコロナ対策が進まず、来年の開催も危ないかも」と思いましたが、残念ながら首相交代後もその不安が的中してしまいそうです。

 先月立て続けに報道されたIOCのバッハ会長他3名の発言も日本国民に対する配慮を欠いた失言と取られて有識者から批判の声を浴びていますが、「オリンピックは大金儲けの機会・手段」と考える商業主義に凝り固まった組織と五輪関係者の本音が出てしまった感があります。「オリンピックは参加することに意義がある」とは言うものの、すでに渦中にある開催前の混乱に加えて開催中・後に予想される多大なリスク、あるいは想定外のリスクの可能性を考えると、それこそ命懸けで参加する意義のあるものでしょうか?
もちろん、通常4年に一度、しかも今回は母国日本で開催されるオリンピックなので、
すでに代表入りが決まっているか代表入りできそうな日本人選手にとっては、これが最後のチャンスとそれを目指して大袈裟でなく死ぬほど辛く苦しい練習と努力を続けてきた一世一代の価値あるイベントであり、「はい、そうですか」と簡単に諦められるものではないでしょう。

 緊急事態宣言が繰り返されたり、延長されたりで行動の自制・自粛を求められ長く忍耐生活を続けてきた一般国民も我慢の限界がきており、この上オリンピック開催のために更に忍耐生活が長引いたり、開催中・後の安全・健康上の保障と運営管理に大混乱をきたし、今でも受け入れ病床数や医療関係者がしている病院、医療機関がパンクし医療崩壊に繋がるのではないかとの懸念がオリンピック開催に反対する大半の国民感情と見られています。開催中止となればIOCに対して巨額の違約金支払い義務があるとのことですが、コロナのような天変地異、超自然現象は本来ならばフォース・メイジャー(制御不能の不可抗力事項)とみなされ、ペナルティーは免責されるケースが多いのですが、いかんせん日本政府の対応が遅れ遅れで、しかも的外れでしっかり対応すれば自力でコントロールできるものまで制御不能のような状態にしてしまい、100%免責とは行かない雰囲気です。せめて他責部分もありと情状酌量で半額とか何割引とかにできれば金銭的被害・負担は減るのですが果たしてどうなりますか。米国の有力紙
ワシントンポストやニューヨークタイムズなどが社説でオリンピック開催に反対や懸念を表明している一方、国内でもソフトバンクの孫会長の発言にあるように「無理やり開催すれば中止よりももっと大きなものを失う」と言う懸念も的外れでない気がしますので、菅首相以下現政権、JOCオリンピック運営委委員会には見栄や自己満足または商業主義に忖度した金勘定優先でなく、エゴを捨て内外の社会正義と日本及び諸外国国民の安全と健康を第一に考えてベストの判断と決定をしていただきたいと切に願います。

 一方当地米国では、相変わらずトランプ前大統領の亡霊に取り憑かれたような共和党の面々が首都ワシントンの連邦議会だけでなく各地の州議会、市議会でも有権者の選挙資格、投票権・投票方法の制約・制限に明からさまに動いており、干支が亥年の今年に合わせたわけではないでしょうが、恥も外聞もなく文字通り猪突猛進しています。

 また、去る1月6日に起きたトランプ支持派グループの米国議会乱入事件の民主・共和両党同数議員構成とする調査委員会設定議案に対して事件直後には乱入を誘発したトランプの責任を批判する発言をしていたマコーネル上院少数党院内総務とマッカーシー下院少数党院内総務が二人とも前言を180度ひっくり返してトランプ批判を止め、先に提案した共和党の要望通り設定した調査委員会議案の審議・通過を妨害し、直前に議会訪問、共和党議員との面談を希望した乱入事件時に彼ら議員の警護に体を張り、直後に入院死亡した議会警護警察官の母親と内妻との面談を拒絶したり、会っても真摯な対応をしなかったとのニュースを見てやり切れない気持ちでした。

 トランプ前大統領の執務中にあった2度の弾劾裁判審議で無罪投票し、トランプが前回選挙で敗れた事実も認めず、自分たちが大統領職を盗もうとしているのに「不正選挙で当選を盗まれた」と被害者を装う大ボラに加担し、1月6日の議会乱入事件も平和的な通常の訪問であったとか、乱入者はトランプ支持派グループでなく民主党と左翼リベラル派支持グループであったと明かな嘘八百を並べて歴史を塗り替えようとする共和党議員が複数もいて、この連中が今夢中になっている投票権制限制約法が発効して来年の中間選挙や2024年の次回大統領選挙で共和党が勝利したら、今のウソ、デタラメ路線継続で国民を騙し自分達の野望を達成するために群衆操作・煽動するだけで
なく更に悪どく醜くなる恐れ大です。

 丁度100年前の先月末にオクラホマ州タルサで起きた黒人街焼き討ち(焼き払い)、黒人大量虐殺事件の歴史的事実やいまだに根強く残る人種差別、白人至上主義者存在についても白人人口の多い保守主義的な考えが強い州や都市では学校の授業でも教えないとか議論しないとか、歴史や事実を歪曲した偏向教育に逆戻りあるいは強化現象が見受けられます。

 外出すればアマゾンの配送車、家でTVとネットの報道や掲示を見れば銃乱射事件の関連ニュースを見かけない日はないと言っても過言ではありませんが、銃規制強化、警察のリフォーム再編成、人種差別対策、インフラ投資予算案可決承認実施など急ぎで重要な課題は山積みですが、今年5月末までに米国内で起きた銃乱射事件は236件、先月5月17日以降のわずか2週間だけで27件という信じられない惨状では銃規制、取締り強化が最優先でしょうね。

 現生人類ホモ・サピエンスはラテン語で『賢い人』と言う意味ですが、ウソとデタラメで塗り固めた偽情報で国民を騙し続け、都合の悪い事実をひた隠しし、まるで自分達が犯した悪事は何もなかったように歴史を変えようとしているトランプ・共和党メンバーとその支持層、QAnonやフェイクニュースメディアに洗脳されて過激な行動や非常識な言動をするグループを見るととてもそうは思えず悲しい限りです。

 「コモンセンス=常識」という言葉が死語にならないように、また種々の価値観が入り乱れ「あなたの常識は私の非常識」という相反する事態が拡散しないように願うとともに、私たちも社会正義と商業主義とエゴの合間を漂いながらそれぞれの居場所でたとえ微々たる努力でも日々続けて行かねばなりません。

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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