5月(皐月)、木々の新緑と芝生の緑、種々の草花、木花が咲き誇り1年中で一番気分が晴れ晴れとし、心が躍る季節になりました。生憎と花粉アレルギーがある方には天気が良くても喜んで外出できず、家の中にいても風があると窓を開けられない一番辛い時期ですが、少しでも症状が軽く、辛い期間が短く済むことをお祈りします。日本では4月下旬に東京、大阪の東西2大都市で緊急事態宣言が出され、一般の方々は折角のGW連休中も家族や友達と自由に外出することもできず欲求不満が溜まり、観光客やレジャー客を当てにしていた観光業、レジャー・エンターテイメント業、飲食業の関係者の方々は思惑が外れてまたもやガッカリという悲しい事態でした。ワクチンの接種状況も遅々として進まず、一体いつになったらこの長いトンネルを抜けられるのやら。『まん防法』という新たな法律もできましたが、新しいのは名前だけで目に見える実効性は期待外れのようで、昨年一度延期されたオリンピックの開催が再び危ぶまれていますね。

 日本国内の憂鬱とは別に米国初の日本人関連グッド・ニュースが立て続けにありました。

 一つは先月ジョージア州オーガスタ・ゴルフクラブで開催されたオーガスタ・ナショナル女子アマ選手権で世界の強豪を相手に17歳の梶谷翼選手がプレーオフで競り勝ち日本人として初優勝。そして、その翌週松山英樹選手がローアマ(アマチュア選手としてのベストスコア)を獲得したマスターズ初出場から10年目、20代最後の節目となる挑戦で日本男子として海外メジャー初優勝。当地の日本人コミュニティーも湧きましたが、本国日本ではメディアがこぞって取り上げ、国中に歓喜の渦が巻き起こり大騒ぎが続きました。私も家内と一緒に最終日のTV実況中継を応援しながら観ていましたが、後半に入り名物11番から13番のアーメンコーナーを無事に乗り切り、3打差で上り3ホールを迎えられれば勝てるだろうと思っていたところ15番、16番連続ボギーで2打差。迎えた最終18番のティーショットでは「何とか無事フェアウェイをキープしてくれ!」と祈るように観ていました。その通りとなり、2打目は一番安定していたフェード系のアイアンショットで2オン間違いなしと思っていたら、何とグリーン右手のバンカーに着地。プロにとってはラフからの寄せよりもずっとやさしいと言われるバンカーショットは寄せ切れずボギーとしてギリギリ1打差での優勝でしたが、格好良くフィニッシュできなくても勝ちは勝ち。振り返ってみるとムービングデーと呼ばれる3日目の6アンダーの貯金が大きかったですね。最終日、最終ホールも2打差の貯金があって本当に良かったです。改めて優勝おめでとう!! 梶谷選手との男女ダブル優勝は日本人として嬉しい限りです。ゴルフ好きの日本の友人に直ぐに連絡をしたところ、案の定早朝からずっとご夫婦でTV観戦していた由。これで米国での日本人、アジア人を見る目が変わり、昨今大きな社会問題になりつつあるアジア人、アジア系米国人に対する差別や暴行事件が少しでも収まるといいですね、と思いを同じくしました。

 もう一つは過去形でなく現在進行形のMLBエンジェルスの二刀流大谷選手の活躍です。オープン戦から好調でしたが、レギュラーシーズン開幕後も文字通り投打で躍動。毎日のようにニュースやネットで話題になっていますが、先月のレンジャースとの試合では投手として先発、2番打者として打席にも立ち、その時点で両リーグの本塁打王として先発したのはあのベーブルース以来実に100年目の偉業とのこと。続いて先月末日のマリナーズとの試合では今シーズン8本目のホームランを放ち、同じ月に先発投手を務めた投手が1ヶ月に8本以上のホームランを記録したのもベーブルース以来二人目とのこと。投打だけに限らず、盗塁や塁間走塁、左翼手としての守備、バッターボックスや塁上での表情や仕草まで、嫌味なくこれほど絵になり、ニュースになる選手は前例がありません。何かする度に過去の偉大なプレイヤーと古い記録を呼び起こし、今彼がやっていることがどれほど常軌を逸しているか、いかに尋常でないかを明らかにし、野球ファンはもちろん、自軍や他球団の選手、監督、コーチ、解説者、評論家諸氏に驚きと感銘を与え続けています。

 MLBは日本とは試合数、移動距離など環境が大きく異なり、連続出場で疲労が蓄積し過労で病気や怪我をしないか、特に猛暑の夏場からプレーオフ進出が掛かる秋口が心配ですが、監督、コーチと相談しながら体調管理を万全にしてとにかく無事にフルシーズンを通して活躍し、我々の目を楽しませて欲しいものです。

 さて、今回のテーマは『バイデン政権誕生後100日と今後の行方』です。

 バイデン新政権の当初実績評価の対象となる100日が経過し、米国民の支持政党や居住する州、郡、都市、地区によって差がありますが、米国内の総合的評価としては派手さや演出力はないため歴代大統領の中では「中の下」となる過半数の57%ですが、前任者トランプの同時期41%をかなり上回りました。

 バイデン政権誕生後最優先として取組み中の諸々のコロナ対策が功を奏して政権誕生後100日時点でワクチン接種実施数2億3千7百万回超、16歳以上の国民の3割超、65歳以上のお年寄りの75%以上が接種を完了し、コロナ起因の死亡者数も今年1月の最悪値から8割減と目に見えるポジティブな効果が出ているので当然と言えば当然と言えます。同時にトランプ信者や共和党支持層を中心にしてコロナワクチン接種に反対・拒否を頑なに続けている人々がまだ26%も存在するという驚きの事実もありますが、コロナ関連では他にも小さな朗報・吉報がありました。

 先月のTVニュースで流れていましたが、お孫さんとずっと会えずに寂しい思いをしていたおばあちゃんが、ワクチン接種を終えて自分の90歳の誕生日にお孫さんとサプライズ面会できて大喜びしている姿を見て涙が出そうになりました。ひょっとしたらもう2度と会えないかもしれないとまで思ったこともあったかもしれないので、再会の喜びは例えようのないほど大きかったでしょう。逆に驚きと嬉しさの余り心臓発作でも起こさないか心配になるほどでした。(笑)こういう嬉しいニュースを日本や米国だけでなく世界各国・各地でもっともっと沢山聞けるといいですし、これを聞いて「じゃあ、私もワクチンを打ってもらおう」という気になってくれる人が増えるといいですね。

 コロナと言えば、我々が住む地元ミシガンでは先月半ばまで一日当たりの新規感染者数が8,400〜8,500人レベルで数日続き全米ワーストを記録しましたが、月末までにそれが約半数ほどに減少して今は4千人未満となり最悪の時期は過ぎたようです。変異株の心配もありまだ安心できませんが、競馬ケンタッキーダービーで5千人の観客入場許可、ディズニーランド、ディスニーワールドの営業再開などパンデミック以前の普通の生活に少しずつ戻れる明るい兆しを無駄にしないためにも、今月末のメモリアルデーの連休や夏休み期間中にコロナが各地で再燃せず、このまま収束(終息)に向かうことを切に願います。

 一方、世界を見渡すと直近で最も心配なのはアジアの大国インドです。

 皆さんもニュースでお聞きになったと思いますが、今現在インドは世界で最悪と言えるコロナ被害が出ています。一日当たりの新規感染者が何と40万人以上も発生し、病院に収容できないばかりか呼吸困難で不足する酸素の体内取込みを補助する酸素の供給が全く間に合わず、患者の多くは病院の外や路上で待機というより放置状態で何も手が施せないまま家族の目の前で息を引き取るのを見守るだけというやり切れない惨事が起きています。亡くなった人も感染拡大防止のために直ぐに火葬が必要ですが、火葬場や遺体の移動手段がキャパオーバーのパンク状態で近くの公園や駐車場で何人もの犠牲者を同時合同火葬(遺体を地面に置いてその上に薪を円錐か三角錐上に組み立てて点火する焚き火のような簡易火葬)で済ませている悲惨な映像がニュースで流れていました。人間の尊厳などまるで皆無の様相です。インド政府の現政権はしばらく前からコロナは収束に向かっているという誤情報を感染拡大の原因となった政治集会や各種イベントの際に選挙キャンペーンの一環として流して群衆操作し、この実情をひた隠しにして事実の報道や証言者を弾圧しており、実際の犠牲者は公表されているよりずっと多いのではないかと懸念されています。世界で最大のコロナワクチン製造・供給国であるインドは国内のワクチン接種率が10%程度のみで自国内で起きているコロナ禍を全くコントロールできていないのは皮肉な話です。

 直後にフィリピンでも首都マニラで感染が急拡大し、患者の病院収容が間に合わないとのニュースがありましたが、トランプ前政権下でも明らかだったように長く不安が続く南米のブラジル、アルゼンチンなども含めて国政のリーダーが科学的なデータを軽視し、事実を隠して誤情報を流し自分の都合の良いように群衆操作をしようとしている国ほど感染拡大と被害、混乱が大きく長引くようです。

 コロナの話が長くなりましたが、バイデン政権就任後100日の初期評価がそこそこ良かった一方、今まで議会に提出され審議・可決した全ての法案に対して共和党議員は誰一人として賛成票を入れず、下院も上院もギリギリで通過した事実があるように、トランプ前政権当時から悪化の一途を辿っている両党の対立と一般国民間のトランプ・共和党支持層とバイデン・民主党支持層の対立が続いており、理由は色々あるとは言えバイデンが選挙前から公約していた『融和』が一向に進まない事実や難民・移民政策、国境警備、入国管理の不手際、銃規制や人種差別問題のスローな対応に関する不平・不満の声が大きいことも無視できません。

 また、連邦政府による1.9兆ドルの緊急経済救済・財政支出効果で景気回復、雇用・労働市場の好転、失業率低下などのプラスの反面、建築資材、産業原材料・資材、食料品、生活用品、住宅売買・賃貸価格、流通費用の値上がりが顕著になっており、景気過熱とインフレが懸念されています。それに加えて先月末米議会上下院合同セッションでのバイデン大統領のスピーチでも明らかにされた2.3兆ドルの『現代的で持続可能なインフラ(社会基盤施設・構造物)と公平なクリーンエネルギーへの公共投資計画』は古くなって経時変化が進み劣化して安全性や利便性で時代のニーズに合わなくなった道路、橋梁、鉄道、ダム、港湾施設、発電所、通信施設などを刷新し半恒久的に継続使用可能な施設・構造物に置き換えようとするもので、その作業のために新たな雇用が生み出され、完成後もその継続運営・管理のために雇用が続くという論理ですが、悪く言えば『お金のバラマキ』で遅かれ早かれ物価上昇、インフレを招くことは容易に想像されます。しかしながら、国民の生活苦を救うための第1弾の緊急救済財政支出は、「今日、今の苦しい急場を凌がなければ明日はない」数千万人にものぼる国民の切羽詰まった窮状を前にしては止むを得ない選択肢で必要悪と言えます。

 実際に今年第1四半期の経済成長率は予想を上回る1.6%(年率換算6.4%)を記録し、米国経済はコロナパンデミック前の90%レベルまで回復し、2月、3月の2ヶ月で137万人以上の新規雇用を生み出しました。第2弾のインフラ投資の具体的な内容が本当に必要なものなのか、国税の無駄遣いにならないか、誰がコスト負担するのか(とりあえずトランプ前政権時代の大型減税を最も享受した富裕層や大企業の税負担率を上げると言っていますが)、インフレに拍車を掛けないかなど十分熟慮しないといけない点もあり、超党派の議案作りと多難な議会審議の行方が注視されます。更に追い掛けで、実施可否とタイミングの見極めは難しいですが、徐々に金利上昇も追随すると思われ、経済回復の足枷か逆風となって程度の差はあれ国民生活にマイナスのブーメラン効果があるかもしれません。

 米国内の問題だけでなく、国際的にも地球温暖化対策、アフガン駐在米軍の最終的引き上げと国際テロ組織の再台頭・分散化、ロシアの米国政治・選挙への介入、サイバー攻撃、クリミア進駐継続とウクライナ国境での軍事圧力行動、中国の東アジアからインド、アフリカに及ぶ『一帯一路』経済・軍事拡大構想、北朝鮮・イランの核開発問題、つい先日ニュースになったホワイトハウス周辺での不可解なエネルギーアタック(昨年キューバの米国大使館員が被害を受けた電磁波攻撃に類似または別物)などなど国家安全保障に直接関連する重要課題が山積みの中、バイデン政権に極めて非協力的な共和党メンバーも来年の中間選挙で上下院とも過半数獲得を目指すのは自明の理としても、全ての政策・議案に反対・拒否したり、全米47州で360以上もの投票有資格者審査の厳格化、投票場所・時間の制限、事前投票・郵便投票の期間短縮、手続きの煩雑化など民主主義の基本に反する露骨で姑息な差別的投票権圧迫法案の提出、立法化を進めるのではなく、いい加減に悪夢から目覚めて国会議員の本来の役目と責務に立ち返り、就任時に誓った米国国家と憲法への忠誠を思い出して国と国民の安全と健康を保障し、一般国民に寄り添い実効をもたらして心から感謝される政策を立案、審議にかけてほしいものです。

 バイデン政権誕生後100日の政策は分かりやすく、結果も目に見えて実行・実現しやすいものでしたが、年内残り200日余りの政策は同じように国民の理解を得て、議会審議・可決通過し、実行するのは徐々にハードルが高くなるため、今後の行方に期待と一抹の不安を抱えながら注目ですね。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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