さんは、新型コロナ禍は、2021年の夏、どうなるのか、いまどうなのか、疑問に思っている人も多いかと思います。アメリカでは、ファイザー・モデルナ・ジョンソンエンドジョンソン(J&J) の3種類のワクチンが承認されており、接種も進んできました。ファイザーとモデルナのワクチンは、メッセンジャーRNAを使ったワクチンで、症状がでる新型コロナ感染を95%予防できますが、2回接種する必要があります。ジョンソンエンドジョンソン (J&J) のワクチンは、症状が出る新型コロナ感染を70%予防し、1回の接種で終了です。これだけ見ると、J&Jのワクチンは効果が低いように感じるかもしれませんが、新型コロナ感染による入院は皆無だったという結果があり、更にワクチンは世界中で治験がおこなわれたので、南アフリカや南米からの変異株にも有効である可能性が高いとされています。

5月4日現在、アメリカ全体では、16歳以上の人口の44%が、ミシガン州では50%が、最低一回のワクチンを受けたと報告されています。目標は、集団免疫を獲得し、はしか、水疱瘡のように、ほとんど流行しない、という状況になることですが、それには、人口の70-80%程度が免疫を持つ必要があります。実際に何パーセントの人がワクチンをうければ、集団免疫を獲得できるのかは、新型コロナに関しては、まだわかっていません。ミシガン州知事は、ワクチン接種の率があがるにつれて、徐々に規制を緩和していく計画を発表しています。アメリカでは、12歳から16歳のワクチン接種も間もなく承認される見込みです。現在は、ワクチンの接種予約は、保健所、民間の薬局、医療システムなど、様々なルートがあり、比較的容易にとれるようになっています。専門家は、アメリカでは、接種率が、集団免疫を獲得する程は上がらないのではないか、と懸念しています。その場合、インフルエンザの流行のように、常時新型コロナウイルスがあちこちで流行ったり、学校が閉校になったりする、という状態が続くことになります。新型コロナを全く心配しないで生活ができるようになるためには、集団免疫を獲得する必要があるので、なるべく多くの人が、ワクチンを受けることが大切です。

たとえ、集団免疫が獲得できなくても、ワクチンの効果はあり、現に、世界中で、コロナ患者の数は減ってきています。ワクチンが進んでいる国ほど、患者数は少なく抑えられています。ミシガンでも、2021年4月16日をピークに、その後は、感染者数は減少してきています。現在、患者数、死亡者数ともにどんどん増えているのは、世界でも、日本とインドだけです。日本でのワクチン接種が遅れていることが原因と思われます。

症例数グラフの出典:Google Statistics (英米日) (https://www.google.com/search?q=covid+data%2C+United+States&oq=covid+data%2C+United+States&aqs=chrome..69i57j0j0i22i30l8.9765j0j4&sourceid=chrome&ie=UTF-8

ミシガンでは、以前ほどの規制はないものの、まだ集団免疫には程遠く、いわゆる、「New Normal」が続いており、常に感染の危険があるという事を意識しておくことが大切です。ワクチン接種が受けられない年齢の子供達が通う学校での流行は頻繁に起こると考えられます。最近は、検査がどこででも簡単にうけられるので、感冒様の症状が出た場合は、新型コロナの検査を受けることが勧められていますが、陰性の結果がでるまでは、新型コロナに感染したと仮定して行動してください。結果を待つ間に、学校、職場、買い物に行ったりしないようにしましょう。

米国疾病センターは、ワクチン接種が終了して2週間たつと、免疫が確立し、ワクチンを受けた人たちは、ワクチンを受けた人たち同士の屋内での集まりはマスクをしないで1.8メートルはなれていなくてもいいと発表しました。ただ、不特定多数の人がいる屋内では、今まで通り、マスクを着用し、手洗いを励行しましょう。また、ワクチン接種が終了している人は、新型コロナ患者と接触しても、隔離をする必要がありません。どういうときにマスクをするべきか、等の詳しい情報は、はこちらを参照してください。https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/fully-vaccinated.html#vaccinated

ワクチンを受けられる年齢については、刻々と変化しており、ファイザーのワクチンは2021年5月10日から、12歳以上が接種できることになりました。モデルナとJ&Jのワクチンは現在のところ18歳以上が適応ですが、どの会社も子供の治験を進めており、子供の接種は秋以降には可能になると思われ、通常に近い形での学校生活の復活が望まれます。

ワクチンの重要性はわかったけれども、副作用が心配、という人も多いでしょう。世界中ですでに19億人が新型コロナのワクチンを受けています。アストロゼネカやジョンソンエンドジョンソンは、脳の血栓症が話題になりましたが、一般人口の発症率よりも低く、ワクチンが原因とはいえないとして、ワクチンが再開されました。ただ、この脳の血栓症は50歳以下の女性に報告されており、米国疾病センターは、若い女性は別のワクチンを受けることを考慮するように注意書きをしています。その他の、ワクチンによる死亡例はアレルギー反応によるアナフィラキシーショックなどによるもので、極めてまれです。それに比べ、新型コロナにかかった場合は、血栓症になる可能性も20倍、感染者の10%程度が入院が必要になります。死亡率は、年齢によって異なりますが、乳幼児、小児から40代までは、0.2%程度、50歳代以上は、1-13%と年齢が上がるほどコロナ感染が死亡につながる確率があがります(韓国のデータ)。入院が必要にならなくても、何か月も疲労、息苦しさ、味覚障害など症状が続く人も少なくありません。よくあるワクチンの副作用は、疲労感、頭痛、ワクチン接種部位の痛みや腫れ、筋肉痛、発熱、悪寒、吐き気などで、ほとんどの場合は1-2日以内に改善します。また、腋のリンパ腺が腫れることもあるため、マンモグラフィは6週間たってから受けることが勧められています。

日本では、変異株についての報道が多く、ミシガン州を含むアメリカ4州から日本に帰国する場合は、3日間専用の施設で隔離するように、最近規制が強化されました。変異株の種類や割合は、アメリカではサンプリングによって調べており、現在、ミシガン州では、イギリスでみつかったB1.1.7という変異株が感染者の大半を占めています。棒グラフは、現在のミシガン州を含む中西部の変異株の割合を示しています。ここ3か月の間にも、変異株の割合が急増していることがわかります。

B1.1.7: イギリスで報告された変異株で、アメリカでは2020年12月からみられている B.1.351:南アフリカで報告された変異株で、アメリカでは2021年1月からみられている P.1: ブラジルからの変異株で、アメリカでは2021年1月からみられている。日本ではこれを空港で調べている。 B.1.429, B.1.427: 2021年2月にカリフォルニア州で報告された変異株 B.1.2, B 1.596, B 1.1.519は変異株とはみなされていない (変異株の出典 https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#variant-proportions のregion 5>IL, IN, MI, MN, OH, WI州 )

ただ、コロナ患者数、入院患者数ともにワクチンが進むにつれて減少しており、米国疾病センターは、ワクチンが変異株にも有効であると発表しています。また、研究が進むにつれて、必要が出れば、ワクチンの追加接種が行われることもありえます。変異株が多くても、ワクチンを多くの人が受ければ、新型コロナ禍は乗り越えられるということを理解することが大切で、子供も含めてワクチン接種が進んで、集団免疫がえられるまでは、引き続きマスクと手洗いを続けましょう。

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筆者プロフィール:
医師 リトル(平野)早秀子 | ミシガン大学医学部家庭医学科助教授
1988年慶応義塾医学部卒業、1996年形成外科研修終了。2008年Oakwood Annapolis Family Medicine Residency 終了後、2008年より、ミシガン大学家庭医学科で日本人の患者さんを診察しています。産科を含む女性の医療、小児医療、皮膚手術、創傷のケアに、特にちからを入れています。
ミシガン大学についての情報:
https://medicine.umich.edu/dept/japanese-family-health-program

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