
昨年から続くコロナ禍にもかかわらず、日米の若者たちが文通を通してその絆を大切に紡いでいる。福岡県糸島市県立糸島高校と、デトロイト学区のキャステック高校の学生だ。
糸島と言えば、佐賀県との県境に位置する海あり山ありの風光明媚な自然に囲まれた人口10万人の街で、日本では住みたい街として近年人気。福岡市に通勤する人々の住宅地となっていて週末になると福岡市から新鮮な野菜や魚を求める多くの人で市場が賑わう。糸島高校は1学年320名の県立普通科高校だ。
そして、このプログラムを主導するのが同校の英語担当、山崎稔重教諭。約10年にわたりカリフォルニアをはじめとする日本語を学ぶ米国人高校生と、日英両言語で手紙を交換し交流を続ける。過去にはアメリカやイギリスを含め、中国、韓国、フィリピン、イタリア、スイス、ルーマニアなど世界各地の生徒と英語で文通していたが、アメリカ・イギリス以外の人々にとっては英語は外国語。外国語同士での意思疎通の難しさから、10年前に互いの言語を学ぶ「日本語を学ぶアメリカ人高校生」に絞り現在に至る。
両国の授業日程が考慮されたスケジュールで、10月から3月の6か月間で3回の手紙を交換。糸島高校側は、1学年8クラス320名全員が参加しており、交流校は7校320名。一人一人ペアを組み、手紙を交換できるしくみになっている。
そのなかで、デトロイト学区のマグネットスクールであるキャステック高校との交流を開始したのが約2年前。イリノイの大学に留学した経験を持つ山崎教諭は、五大湖周辺にも交流校を広げようとしたことがきっかけだ。在デトロイト日本国総領事館調べ(2019)によると、ミシガン州は幼稚園から大学までの約6000人(カリフォルニア、ハワイ、ワシントン、NYに続く第5位)の日本語学習者数を誇る。
今年は、約400名にのぼる学生が日本語を勉強しているというキャステック高校には、ローレン・ギャスマン先生とメーガン・ウォーデン先生の2名の日本語教師が勤務。文通プログラムには80名の学生が参加しており、そのサポートしている。ギャスマン先生は現在当地の日本語教師会会長も務めるが、隔年、同校から日本への短期訪問プログラムを実施。デトロイト市と姉妹都市となる豊田市はじめ、ミシガン州の姉妹州県となる滋賀県、そして本州を一周することが通例という。新型コロナ感染拡大により、昨年3月より同校は完全オンライン授業となっており、今年は郵送で送り合う手紙のほかに、電子メールやビデオレターをうまく活用して交流を続けている。話題は趣味や部活、また両地域、文化の紹介など(写真)。ワーデン先生は、「コロナ禍のオンライン授業で不安定な状況の中、直接海外の友人との交流ができるこのような場は、彼らにとって大変貴重。学生たちも喜んでいる」と話した。同プログラムに参加する生徒のひとり、エイブリア・デントさんも「日本の高校生と繋がることは大変楽しく、日本文化を知る貴重な機会。日本語の授業以外で語学を磨くよいチャンスにもなりました」と感想を述べた。
山崎教諭は、「特に今年度はコロナ禍がある中で、世界中が他国への移動や他者との接触を控える傾向にあり、アメリカでは「分断」が社会問題になっている。前向きな国際交流活動が地元の高校で展開されていることを知っていただければ」と明るいニュースを届けてくれた。
(写真・取材協力:糸島高校・デトロイト学区キャステック高校)