4月、日本では早めに開花した桜が盛りを過ぎて葉桜となり、これからは目に鮮やかな新緑の季節ですね。国、地方の行政機関や企業、学校も新年度、新学期に入り、春爛漫で本来なら何となくウキウキした気分になるところですが、発生からまる1年を経過したコロナ騒ぎがしつこく続き、まだまだ安心できない状況です。緊急事態宣言前の段階として各都道府県単位で決定・実施可能な『まん防(蔓延防止法)』なる新たな法令も生まれましたが、どれだけ実際の効果が出るかが焦点です。

 スポーツの話題では、プロ野球が先月下旬に日本で一足早く開幕し、米国でも約1週間遅れでシーズンインしました。その中でも一番の話題はやはりロスアンゼルス・エンジェルスの大谷選手の二刀流復活です。日本人としてオープン戦で5本のホームラン(内2本は飛距離140M超のモンスター弾)は元ニューヨーク・ヤンキースの松井選手とタイ記録、打者として出場した全12試合で安打を記録し、打率も最終的に5割5分2厘(0.552)となりましたが一時は6割超の超人的数字。投手としてはオープン戦最後の登板で手指にマメができて結果は芳しくありませんでしたが、その前2度の登板では最速100マイル超えの剛球に打者の視界から消える鋭い変化球で異星人かと思わせる超人ぶりを発揮してプロの評論家もメディアも野球ファンも絶賛の嵐。褒め言葉もグレートとかスーパーとか並みの褒め言葉では表現し切れず、普段はお目に掛からない「アンリアル(現実離れした)」とか「異星人か?」、「漫画かコンピュータゲームみたい」などいう言葉が並びました。開幕には問題なく間に合うようなので安心しましたが、球団の長年の課題であるプレーオフ進出、ワールドシリーズ制覇を遠目に見て、ナ・リーグ球団との対戦を想定して同じ試合で投手として先発と同時に打者としてもプレーする『リアル二刀流』もオープン戦で実現し、ベーブルース以来100年に一度の光景は正にアンリアルでした。「天は二物を与えず(荷物を与える?)」と言いますが、彼の場合はしっかり二物を与えられた稀有の存在。しかも人懐っこい笑顔のイケメンで頭も良いとくれば、ファンが熱狂するのも無理ありません。多くの人が言うように、とにかく怪我なくフルシーズン通してプレーし、前例のないアンリアルな成績を残して欲しいと願っています。また、開幕試合先発の栄誉に浴したサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ投手、ミネソタ・ツインズの前田投手他の日本人選手の活躍も応援しています。秋風が吹く頃にツインズとア・リーグ決勝戦を、パドレスとワールドシリーズを戦い日本人対決が実現すれば、正に夢のような話になりますね。リアル二刀流を生観戦できることを私のBucket Listの願い事の一つに入れておきましょうかね?

 では、今月号のテーマ『見えてきた希望の光と残る懸念』に移ります。

 皆さんもご存じの通り、当地米国ではバイデン新政権誕生後、緊急課題として国民の健康維持と経済支援の両面から同時に取り組んでいる種々のコロナ対策が着々と進み、特にワクチン増産と接種対象層・件数の拡大・増加に顕著な成果が出始めてきました。もう一方の史上最大規模の緊急コロナ救済パッケージも共和党の全面拒否を受けながらギリギリで議会審議可決、大統領承認署名され先月半ばには個人対象者の手元にチェックや振込送金が直接届き始めています。また各州政府へのコロナ対策支援金も適宜割り振られ、それを使ってそれぞれの州の状況に合わせた対策を取れるようになっており、少しずつですが着実に前に進んでいることが分かります。これを歓迎して株価は先月一時史上最高値を更新し、トランプ前大統領が選挙キャンペーン中に「バイデンが当選したら株価は暴落、経済恐慌が起こる」とハッタリをかけて脅していたのとは真逆の展開になっています。政府は更にリニューアルエネルギーなど環境保全型の社会資本投資に数兆ドル規模の財政投融資予算を追加で議案通過させようと計画しているとの報道もあり、この勢いでコロナ新規感染者数、入院患者数、死亡者数が急減し、再燃せずに低水準に止まり究極的には終息し、合わせて経済・雇用回復、失業率減少、ビジネスも個人も経営・経済的不安払拭、企業活動と日常生活安定に結びつけば喜ばしい限りです。

 それにしても、国民の窮状救済が最急務と分かっていながらバイデン政権や民主党に対する共和党の非協力ぶりは目に余るものがあります。CNNのある番組でアンカーが
“GOP’s only position is opposition.”(共和党の取るポジションは反対のみ)とコメントしていましたが、決して皮肉ではなく的を射ています。共和党の面々は国民の中間層や貧困層の救済には関心が薄く、自分達に政治献金や活動資金を提供してくれる金持ちの富裕層や大企業の経営者、大規模投資グループ、有力投資家の支援に熱心なため、トランプ政権時代が象徴するように大型減税、規制緩和などで金持ちが更に金持ちになり、中間層や貧乏人は貧困層に落ちたり更に貧困化したりで、貧富の二極化が拡大する傾向になります。

 その一例がコロナ禍のパンデミックが始まる前までは生活に困っている人達に金銭や物品を寄付していた良心的な中間層の人々までが、パンデミック後に失業し自分達も生活苦に喘ぐ立場となり、失業保険給付を受けフードスタンプをもらい、フードテントに食料品や日曜必需品を受け取りに何千万人の人達が車で長蛇の列に並ぶという悲惨な事実です。それがトランプ前大統領他が自慢していた『世界で最も裕福な国』『世界で最も偉大な国』の実態です。悲しいことに前トランプ政権や共和党の幹部にはその国民の痛みが他人事でしかなく、全く認識も理解もできないのです。

 その痛みが分かり緊急救済の必要性を理解するバイデン新政権の誕生で少しずつでも具体的な希望の光が見えてきましたが、今振り返っても決選投票まで延びた前回ジョージア州の上院議員2議席の改選結果が民主党勝利にならなければ、大統領がバイデンになっても議会審議で可決して具体的に打てる政策が反対や妨害を受け、極めて制約される事態になったと思うとゾッとします。来年2022年の中間選挙で巻き返しを狙う共和党に上下院とも過半数議席を奪われないように今年1年、特にバイデン新大統領就任後100日間の実績が大きく影響するので確実に目に見える、肌で実感できるプラスの成果を出さねばなりません。

 コロナワクチンの増産、接種拡大では事前宣言した予定よりかなり早く56日目で初期目標の100万回接種を達成し更に改善に継続注力しつつ、緊急コロナ救済パーケージの実質的効果も出て経済回復、生活改善が現実化して行けば、中間選挙に向けて国民の信頼と支持を維持、または上積み可能と思いますが、見えてきた希望の光の陰で残る懸念があるのも軽視できません。

 具体的な懸念としては、

1. 感染力が強く、感染すると重症化するイギリス型のようなコロナウィルスの変異体(変性異種・異株とも言うようです)がワクチン接種の国民大半への普及より早く蔓延して医療崩壊に繋がってしまう緊急事態が起こる可能性。マスク装着の義務化やグループ集会の規制に消極的な州や都市、トランプ前大統領(彼自身夫妻は内緒でワクチン接種を受けながらダンマリで他の人には接種を奨励しないズルい奴)や共和党支持層に多く見受けられる根強いワクチン不信者・接種拒否者の存在など欧州で先行している変異体感染拡大が米国にも波及する恐れをCDCの女性幹部が記者会見で涙ながらに訴えるほどガードを下げてしまう現状。

2. 人種差別問題の一例として全米の注目を集めて現在進行中のジョージ・フロイド氏殺害容疑で公判中の白人警官の審判結果が有罪か無罪か?有罪の場合でも懲罰のレベルがどうなるか?また、黒人だけでなく昨年から増加し今年になって更に深刻化しているアジア人やアジア系米国人蔑視・暴行事件の表面化と人種間対立及び難民・移民受け入れと国境の入国管理問題。

3. 各州で共和党主導の投票権、投票機会制限・制約の法令化。前回大統領選挙及び上下院改選で落選、過半数割れしたのは民主党支持者が多い都市部の黒人・移民貧困層が敗因と分析した結果、党内の政策見直しではなく可能な限り多くの有権者が投票できるようにするという民主主義の原理原則を無視し、まるで南北戦争前の奴隷時代に逆戻りするような共和党の政治的動き。

4. Disinformation(偽情報)とMisinformation(誤情報)が氾濫し、真実や事実を伝える正しい報道よりも偏向報道やデマ情報に触れる視聴者が多くそれを信じて自己制御、自己抑制が利かない不条理な言動をしてしまう憂慮すべき社会現象。

5. 昨秋より続いており、ここにきて購入側の生産調整や操業一時停止など深刻化している半導体供給不足や、去る2月のテキサス州全体の大停電の影響で石油化学原料・製品の供給不足・値上がりで転嫁値上げやサーチャージが発生し、経済回復の障害となっている状況。

6. 短期的にはないにしても中長期的には昨年、今年と政権は変わっても実施した緊急経済復興及び救済パッケージ実施によりパンデミック以前よりも経済規模が大きくなっていないにもかかわらず紙幣増刷・バラマキが招くインフレ・物価高騰と過去最大に膨らんだ大幅国家財政赤字補正のための増税の懸念。

7. 国際的にはNATO陣営の切り崩しや西ヨーロッパや中東への進出や米国へのサイバー攻撃、政治・選挙介入を目論む対ロシア戦略、東アジア圏からインド更にアフリカに続く一帯一路構想と共に米国に代わって経済的だけでなく政治的・軍事的にもワールドリーダーを目指す対中国戦略、北朝鮮の核・ICBM開発の抑止戦略、『世界の火薬庫』として常に火種となる中東問題への対応。

などがあり、どれ一つとして軽視できず、また簡単に正解が見出せない重要課題です。

 このように残る懸念を書き出してみると希望の光よりも残る懸念の影の方が強大な感じもありますが、バイデン大統領はそれを承知の上で世直しのために大統領選に出馬し、当選後に改革に挑んでいるわけで、彼が任命した実務経験豊富な玄人集団の政権幹部・閣僚と一致団結、協力・協働して一つ一つ課題を消化して懸念を払拭していってもらいたいと思います。

 その間にもトランプ前大統領やその支持層と共和党の保守強硬派から色々な妨害や嫌がらせがあると思いますが、最大の癌であるトランプを司法当局や議会の各委員会と連動して刑事訴訟や民事訴訟で裁判漬けにし、召喚状による公聴会または非公開の聴聞会、はたまたIRSによる脱税追求と去る1月6日のトランプ支持過激派グループの米国議会乱入などFBIや警察当局による犯罪容疑の取り調べ尋問、事情聴取などで釘付けにして間違っても次期大統領選に出馬したり、来年の中間選挙を表裏で操る黒幕として動き回ったりする時間的、経済的猶予を与えないことですね。関係者の皆さん、頑張ってください!!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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