つい先日新年を迎えたと思っていたら、干支は丑年なのに牛歩の歩みではなくあっという間に2月になりました。小の月の2月は更に短く感じるかもしれません。この冬のミシガンはまだそれ程寒くならずに済んでいたのに、先月末に冬将軍が「お待たせしました!」とばかりにやって来ました。誰も待っていない、お呼びじゃないのに節分、立春の直前に顔を出すとは無愛想なものです。

 例年ならば2月3日が節分ですが、今年は暦のズレ(正確には地球の公転周期の微妙なズレ)で1日早く前日の2月2日になりました。これは実に124年ぶりとのことで、前回の1897年以来だったそうです。映画『カサブランカ』の主演男優ハンフリー・ボガードの台詞ではないですが、「そんな昔の事は覚えちゃいない」と言うかまだ生まれていなかったですね!?

 因みにその年の主な出来事を調べてみると3月に貨幣法公布(実施は同年10月=金本位制確立)、4月に八王子大火、5月にカナダで日本人・中国人排斥法案可決(鉄道工事の人足として使用禁止)、6月に京都帝国大学(現京都大学)創立、8月に発明王トーマス・エジソンが一人用覗き見方式の映画鑑賞装置『キネトスコープ』の特許取得、12月に東京築地海岸に設置した送信機から沖合い1.8キロの小船に載せた受信機に無線通信成功などがありました。(閑話休題)

 皆さんは1日早まった節分の当日慣例に従って恵方巻きを召し上がりましたか?

今年の恵方は南南東より更にやや南、方位角では165度だった由。恵方を向いて目をつぶり黙々と恵方巻きにかぶり付いた人には今年1年歳徳神(としとくじん)のご加護があると思います。万一方向違いでトランプ前大統領の居るフロリダ州パームビーチのマー・ア・ラーゴの方角を向いておしゃべりしながらかぶり付いた人が食べたのはウソとペテンがたっぷり入った阿呆巻きか痴呆巻きでしたか?さぞかし食べづらく後味も悪かったのではないでしょうか?その人達にも少しでも幸あれと願います。

 新春のスポーツ界では今月7日のスーパーボウルを最後にフットボールシーズンが終わり、ウィンタースポーツとしてバスケットボール、アイスホッケーがシーズンイン。日本で言うストーブリーグに入ったプロ野球界ではトレードの話が中心でしたが、ポスティングシステムでMLB移籍を模索していた読売ジャイアンツの菅野投手は結局移籍見送りとなり残留。先月末にはMLBの名門ヤンキースで7シーズンプレーしたマー君こと田中将大投手がMLBでは契約先が決まらず、古巣のNPB東北楽天イーグルスに里帰り移籍となりました。怪我や故障さえなければまだまだMLBで先発投手として十分通用すると思うのですが、コロナ騒ぎが続く中での特殊シーズン、興行収入、球団経営、チーム編成方針など諸事情で条件の合う球団が見つからなっかたようです。先日の入団会見のコメントでは本人も心残りがあるようですが、再度MLB挑戦の機会が巡ってくることを期待して今年は日本で優勝争いに貢献してMLB球団に「うちが契約しておけば良かった」と思わせるような活躍を見せてほしいです。

 テニスでは今月8日から今年最初のメジャー大会オーストラリアン・オープンが始まります。女子シングルスの大坂選手は第3シード。2019年に優勝した相性の良いハードコートで優勝再現なるか?男子シングルスの錦織選手は昨シーズン怪我の回復が長引いて満足なシーズンが送れませんでした。今年も現地入りに指定された協会手配のチャーター便に乗り合わせた他の選手がオーストラリア到着後のテストでコロナ陽性結果が出たため、ホテルの自室に2週間完全隔離状態で練習もできず、ぶっつけ本番で試合に臨む不運なスタートとなりますが、テニスができる喜びを噛みしめながら1試合でも多く勝ち進んでほしいものです。また、連覇が期待される車椅子シングルス部門の男子国枝選手、女子上地選手を始め他の日本人選手もリモートながら応援してあげましょう!

 さて、今月号のテーマは「トンネルを抜けたと思っていたら・・・」です。

 先月渋々、嫌々、未練たらしくホワイトハウスを立ち去ったトランプ前大統領の暗黒の4年間が過ぎ、バイデン新大統領就任・新政権誕生でようやく長いトンネルを抜けたと思っていたら、感染者第1号確認からまる1年経過してもまだ続いているコロナ騒ぎと失業者数高止まり、生活苦、社会不安などまだまだトランプの残した負の財産が世間を騒がせています。

 リアリティーショーかバラエティーショーを観る感覚でトランプ関連報道に接していた人達は重要な情報発信手段であったメジャーのSNSツール使用を禁じられたトランプの露出機会が激減していわゆる『トランプロス』的な寂しさを感じているのかもしれません。また、先鋭的過激極右翼団体であるQAnon(キューアノン)などトランプの熱狂的な支持層は彼自身や取り巻き陣、偏向報道メディアが発信・拡散するウソやデマ情報こそ真実と思い込み、今だに「前回大統領選挙で民主党による陰謀と不正があり、再選されていた筈のトランプは当選を盗まれた」と信じて疑わず、バイデン新大統領、ハリス副大統領他民主党関係者と一般人を含むその支持層や協力者、公正な投票を運営・実施・結果確認した各州の選挙管理人、不正訴訟審議申し立てを却下した連邦及び各州の最高裁などに憎悪の炎を燃やし抗議の牙を向けています。その最たるものが先月6日に5名の死者を出したトランプ支持グループの米国議会襲撃・乱入事件でした。

 事件発生からひと月近く経った今も発生の原因・経緯、事件関与者の追跡捜査、事情聴取、拘束・逮捕・起訴作業が継続しており既に180名程の逮捕者が出ています。事件発生前後の信頼できる各種報道を見るとトランプやその顧問弁護士、共和党議員の街頭演説、記者会見での発言が事件を動、誘発したとしか思えない明白な相関関係が伺えます。それがトランプ就任中2度目の下院での弾劾訴追となり上院に審議が委ねられ間も無く有罪訴求と無罪弁護の応酬が始まります。先月末時点での最新ニュースでは弁護団は大統領退任後の前大統領を弾劾訴追すること自体が違憲であると言う論点を中心にすることで意見が一致していましたが、他人の話を聞かず自分の我儘をゴリ押しするトランプが「大統領選挙に広汎な不正があった」と言う論点を中心にしたいと無い物ねだりして譲らないため、勝ち目のない戦を避けて協力を諦めた5名が弁護団から離れ、残る弁護団も対応に苦慮する羽目になりました。

 にもかかわらず、有罪・罷免判決には上院議員数の2/3以上の得票が必要なため民主党議員全員+共和党議員17名が有罪投票しない限り、4年後の大統領選再出馬の可能性ゼロ化を含めてトランプを公職から永久追放できず、先述の極右団体からの脅迫や嫌がらせ、党内保守強硬派の居丈高なトランプ擁護喧伝により当初有罪支持派だった共和党議員が翻意して人数が増えず、残念ながら今回も有罪判決にならない可能性大です。米国憲法と議会制民主主義を根底から揺るがす今回の騒動でも有罪にならないようでは、大統領の横暴を防止・訴追・罷免する意味で議会の最後の対抗手段として設定されている弾劾手続きの存在意義も価値もありません。

 絶対にあってはならないことですが、今回が前例となり将来また悪事を働いた別の大統領が「退任直前ならばたとえ弾劾されても上院での審議や判決が退任後になれば有罪になることはない」と高を括って更なる悪事を重ねておとがめ無しで逃げられると考えたら恐ろしいことになります。望みは限りなく薄いですが、上院議員就任式や弾劾裁判の裁判員として米国旗に向かって宣誓した「米国国家と米国憲法を擁護する」と誓った言葉が形式的な建前でなく、本心であることを是非とも証明してほしいものです。

 それにしても、バイデン新大統領と新政権のスタート直後の2週間をトランプ前大統領とその政権運営の4年間と比較すると正に天と地、光と闇、明と暗と言うべき雲泥の差は明らかです。

 バイデン大統領は選挙キャンペーン中から公言・公約していたコロナ対策(感染拡大防止、ワクチン投与)、失業者救済・景気回復策、環境保護、移民・難民保護など緊急度、重要度の高いものから大統領権限で可能な即効性のある政策実施のため連日のように大統領令を署名・発令しています。そのほとんどはトランプ前大統領が自分自身の欲望と利権追求のために更に1代前のオバマ政権時代に実施していた政策を全て無効化し、大型減税、規制緩和、経済拡大、株価高騰に方向転換したものを再度Uターンで元の状態に戻そうとするものです。

 閣僚や要職に指名・任命した政権幹部も人種・性別・年齢など多様性を考慮しながら実績・信頼のあるベテラン実務経験者と新進気鋭の若手を登用する配慮が見られ、各メンバーの強い決意と意気込みも感じられます。新政権の国民に対する重要な情報発信窓口として毎週月・水・金と定例記者会見を実施しているジェン・サッキ大統領報道官、いいですね。質疑応答も明快で分かりやすく質問者の選択や質問数、質問時間も差別なく適度に与え丁寧に答えていて好印象です。知らない事、分からない事ははっきりそう伝え、後で調べて分かったら次の会見で回答するようにして、無視したり難しい質問から逃げることもありません。「トランプ前大統領就任式の参観者数は史上最大だった」と写真で見れば一目瞭然の嘘をついたショーン・スパイサー初代報道官や就任最初の会見で「大統領は嘘をつかない」といきなり大嘘をついたケイリー・
マケナニー末代報道官などトランプ政権当時に何人も入れ替わった報道官たちとは好感度も信頼度も段違いです。是非このまま続けて諸政策の効果と共に国民の信頼と安心を積み重ねていってほしいですね。

 「去る者は日々に疎し」と言いますが、米国史上最悪の大統領という汚名と幾つもの汚点を残して行ったトランプ前大統領のことはなかなか忘れられませんし、後世に間違いなく伝えるためにも忘れてはいけないと思います。

 とにかく大統領就任の最初から最後まで前例のない大統領、前代未聞の言動続きの大統領の汚名確定で選挙後の融和策もなくずっとキャンペーン継続中のムードのまま全米国民の大統領になれず、任期中大統領らしき振る舞いは一度もできず、感情的で思いつき程度の政策や大統領令ばかりで常に良識派、常識派からは非難を浴び続けながら一貫した国家戦略やきちんとした事前調査、検討、効果と影響予想、その対策準備を含む計画に基づいた国家のため国民のための政策なし。いわゆる『大統領の品格』も全くなく、本人は「こう言う自分を皆が大統領に選んだのでそのまま変えるつもりはない」と開き直っていましたね。そう言えば、就任式の宣誓場面のビデオを観ると背筋をピシッと伸ばして直立不動ではなく小首を傾げて口元をちょっと歪めながら「こんな宣誓しても真面目にそれを守るつもりはないけどなあ」といやいや宣誓と言う感じのトランプが映っていました。案の定、その後は大統領になれば誰にでも命令できて何でも自由にやれるとばかりに自分の野望、欲望、利益のためだけにひたすら我儘を押し通して次から次と問題噴出。大統領選挙落選後の幕引きも惨めたらしくウジウジ、グズグズと負けを認めず、「不正投票で自分が圧倒的票差で当選していた選挙を盗まれた!」と全く根拠のないケチをつけ自分の失政が根本的な敗因であるのにウソとデマ情報の繰り返しで他人の所為にして自分の支持層や乗っ取った形の共和党議員達を煽り「立つ鳥跡を濁さず」とは真逆のドタバタ劇の連続で最後にはトランプらの街頭演説が火付け役となった抗議デモ集団の米国議会への乱入騒動を引き起こしました。その結果米国史上4度目(自身1期就任中に2度目は前例なし)の大統領弾劾を受けて後味悪く渋々退任、退場。米国史上最悪の大統領という汚名をまとい、後には政府や官公庁組織、官僚、公務員に対する不信感と国際舞台での米国の威信と信頼喪失、国内の対立・分断・分裂・憎悪という瓦礫の山と焼け野原のような内外の問題を負の財産として残しました。

 4年間の在任中唯一終始一貫していたのは「オバマ潰し」、「オバマの足跡消し」の行動。以前にも触れましたが、2011年4月末にワシントDCで開かれた恒例の全米報道関係者夕食会の席上で当時のオバマ大統領がトランプをちょっとからかった発言をしたのが悲劇の始まり。それがずっと尾を引き、その席ではトランプは軽く口元に薄ら笑いを浮かべていたものの、白人至上主義者で自分は天才、何事も自分が一番と自負しているトランプがたとえ大統領とは言え黒人にからかわれて大衆の目前で辱められたとハラワタが煮え繰り返るほどの怒りを買いそれを根に持って、生涯「オバマ憎し」と憎悪の炎と復讐の怨念を持ち続けていた(今も継続中なので、「いる」ですね)ものと確信しています。言った方はそんなつもりは全くなくても(少しはあっても)ハラスメントは受け取る側の感情次第ですから、本当に「口は災いの元」になってオバマ前大統領と家族だけに留まらず周囲や引いては米国民まで巻き添えにする災厄になってしまいました。

 今更後悔しても過去を帳消しにはできないので、オバマ政権当時副大統領であったバイデン新大統領と新政権幹部は前を向いてこれからの政権運営、政策実施にベストを尽くし、結果を出すしかありません。感染力、致死率の高いコロナウィルス変性異株が全米に急拡大する前に現存ワクチン投与実施を加速し、検査、追跡、隔離、療養も先手先手で対応して少しでも早く収束の目処が立ち、経済も回復に向かうことを切に願います。

「トンネルを抜けたと思っていたら・・・」の続きでどうかトンネルの先にまた別のトンネルが現れませんように。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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