
JAPANニュース倶楽部読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中ではありますが、今年、2021年のお正月を皆様いかがお過ごしでしょうか。
昨年一年を振り返ってみると、100年に一度と言われるパンデミックの発生だけでなく、11月の大統領選挙、米国各地で起きた抗議活動など、様々な出来事がありました。Stay at Home、Remote Work、経済封鎖に三密と、いろいろな言葉も耳にしました。住み慣れない土地で、異なる文化に戸惑いながら、「新しい生活様式」を受け入れていくことに苦労をされた方も多かったのではないでしょうか。ミシガン州でも、既に50万人もの方が感染し、1万人以上もの尊い命を失いました。
こうした中、皆様とともに、ミシガンでまた新たな年を迎えることができたことの幸せを感じるとともに、今もなお、新型コロナウイルスと日夜闘っておられる医療従事者をはじめ、First Responderと言われる方に、心からの感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。
昨年の春以降、ミシガン州においても感染が広がり、私達、在デトロイト総領事館でも、感染防止のため体制を縮減せざるを得ず、領事窓口での応対時間の短縮や、領事出張サービスの停止を迫られました。在留邦人の皆様に様々なご不便をおかけしていることを、とても申し訳なく思っております。現在は、領事窓口の応対は平日全日、平常通りの時間帯に戻しておりますが、感染防止対策として、御来館前に予約をいただくようお願いしております。また、皆様のミシガンでの生活に少しでもお役に立てればと考え、新型コロナウイルスに関する情報等についても、当総領事館のホームページで、できる限り発信するよう努めている他、当地での在留届を提出されている方や、当総領事館のホームページから登録をされている方に対して、領事メールサービスを通じて、日々の情報等もお届けしております。
終わりの見えない閉塞感がいつまで続くのか、なかなか先が見通せない状況ではありますが、それでも、日本とミシガンとの間では、とても前向きで、温かみにあふれた活動がいくつも行われてきました。姉妹都市の間の、対面での人的交流は、そのほとんどが中止となってしまいましたが、オンラインでの、時差を乗り越えての交流が続けられました。ミシガン州の姉妹州県である滋賀県からは、三日月知事をはじめとするミシガン・滋賀姉妹都市交流関係者の方から、熱い想いのこもったビデオメッセージと共に、滋賀産のマスク一万枚がミシガン州に寄付されました。日本の様子はどうか、ミシガンの様子はどうかと、日米両国において長年の友人を気遣い合う姿が見られ、草の根レベルで長い時間をかけて築かれてきた日米の絆の強さと優しさを目にしました。
オンラインツールの普及が、新たな可能性とアイディアを与えてくれたことも発見でした。デトロイト川に浮かぶベルアイル島にある、米国最古の水族館では、三年ほど前から、水族館の見所が池の「鯉」であることをきっかけに、日本祭りが開かれてきました。四年目の昨年、端午の節句の時期には間に合いませんでしたが、7月にオンラインイベントとして、バーチャル鯉のぼりビューイングや、鯉にちなんだ漢字紹介、折り紙ワークショップ等を実施することができました。サギノー日本文化センターが毎年秋に開催しているサギノー日本祭りも、昨年は、オンラインで開催されました。これまで様々な形で日本文化の紹介活動に携わってこられた地域の方々のご協力を得て、バーチャル日本庭園訪問、茶道、阿波踊りの披露等々、一週間にわたって盛りだくさんのプログラムをお届けできただけでなく、オンラインならではの強みを発揮し、サギノーの姉妹都市である徳島市をはじめ、日本からも多くの方に参加していただきました。恒例の日本語学習者によるスピーチコンテストも、今年は、オンラインで実施する予定です。
昨年の春、まだ厳しい外出制限が続く中、妻とともに近くのクランブルックガーデンの周りを散歩していたところ、見事に咲き誇る桜に目を奪われました。50年ほど前、かつてそこにデトロイト日本語補習授業校(現在のりんご会)が開設されていた名残りとのことです。ベルアイル島でも、豊田市との姉妹都市交流を記念して、デトロイト日本商工会の皆様のご支援を得て植えられた満開の桜の木々が、訪れる多くのミシガンの人々の心を和やかなものにしてくれました。
私達、在留邦人を含め、一般の人達が新型コロナウイルスのワクチンを普通に接種できるようになるには、春以降、まだもう少し時間がかかるかもしれません。しかし、そうした厳しい状況下であっても、日本と米国、日本とミシガンの間の友情は途切れません。今年の春も、来年も、ミシガン州の桜は美しく咲き続けることでしょう。
皆様におかれましては、ご自身やご家族の健康や安全のため、感染対策を十分に講じつつ、また、人と人、地域と地域との繋がりも大切にしつつ、今しばらく忍耐の生活を続けていただけるようお願いしたいと思います。私たち総領事館といたしましても、微力ながらも皆様のお役に立てるよう努めていきたいと思っております。
末筆ながら、今年一年の皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。
令和3年1月
在デトロイト日本国総領事館
総領事 中川 勉
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謹んで初春のお慶びを申し上げます。皆様におかれましては、お健やかに新しい年をお迎えのこととお慶び申し上げます。
さて、先月14日に一年の世相を漢字一字で表す「今年の漢字」が「密」と発表されました。他には「禍」「病」「新」「変」が続きましたが、どれも一目見て新型コロナウィルスの世界的流行を象徴していることが分かります。
昨年1月末に、米国内で初の感染者が確認された後、瞬く間に感染が拡大し、3月の学校だよりでは、感染防止対策についての特集を組み、手洗いの励行、毎日の検温、こまめな換気などについて、各家庭に依頼しました。その後、3月10日には州内に非常事態宣言が発令されるとともに、学校を一定期間休校とする指示が出されましたが、この後非常事態宣言は何度も延期され、長期間の自宅待機を余儀なくされることとなりました。このことによって、昨年度の卒園・卒業式、また今年度の入園・入学式を始め、本校の一大イベントである大運動会も中止せざるを得なくなりました。
こうした状況は誰もが初めての経験であり、まさに暗中模索の状態でしたが、りんご会理事運営委員の方々と何度も会合を重ね、その都度適切と思われる判断を重ねながら、歩みを進めてきました。
本校として最も重視しなければならないことは、子どもたちの学習をいかに保証するかということです。具体策を検討し、予定より少し遅れましたが、5月よりネットを利用した学習指導を開始し、継続することができました。このことが実現できた背景には、ネット指導の環境設定や方法を無償で支援いただいた日系企業様、様々な点で情報を交流し共有させていただいた北米各補習校関係者の皆様、また頻繁なミーティングを重ねながら現状を把握し、今後の方向付けを行ってきた理事運営委員会の強力な指導・支援、様々な角度から先生方や保護者を支え、迅速且つ確実に実務を遂行いただいた事務局の方々、いろいろな無理難題をお願いしながらも、お力添えをいただいた保護者の皆様のご理解とご協力によるところが大きいと感じています。そして何より、ネットを利用した学習を、実際に推進していただいた講師の先生方の並々ならぬご努力は、言葉では言い尽くせないほどです。指導に必要なデバイスを始めとする様々な設備、用具などは全て個人で準備いただいた上、授業の内容がより分かりやすくなるようにと、多大な時間を費やして資料を準備したり、学年のミーティングを何度も開いて、指導の方法や内容を確認したりしながら、ここまで質の高い指導を継続していただきました。そこには、この状況であっても、各教科の基礎的基本的内容は何としても理解してほしい、また子どもたち同士がお互いを少しでも理解し合い、確かな仲間関係を築いてほしいという熱い想いや願いがあったからです。あらためて心より感謝申し上げたいと思います。
昨年11月16日、アメリカの民間企業「スペースX」の宇宙船「クルードラゴン」1号機が、野口聡一さんら宇宙飛行士4人を乗せて打ち上げに成功しました。コロナ禍にあって、明るいニュースとして世界中で報道されました。野口さんら4人のクルーは、この宇宙船を「回復力」を意味する英語の「レジリエンス(Resilience)」と命名しました。「レジリエンス」とは、「日常に起こるネガティブな感情(辛く、落ち込むような状況)から立ち直る力」と定義できます。このレジリエンスを鍛え、高めるには、自分の長所や強みが何かを理解し、それらを自分に何度も言い聞かせて強く意識することが大切です。「自分は誰かの役に立つことができる」、「自分の存在が誰かを笑顔にできる」といった、自尊感情、自己肯定感を高めることがその基本です。かつて勤務した中学校で、この「レジリエンス」(当時の和訳は「逆境力」)を高めることを核に、学校経営をしたことがあり、「クルードラゴン」のことが報じられた際、この学校で取り組んだ様々なことが思い出されました。
昨年来行動が大きく制限され、マスク着用、手洗いの励行、ソーシャルディス
タンスなど、生活様式も一変して堪え忍ぶ日々が続いています。感染の状況は刻々と変化していきますが、コロナウィルスによる感染が一日も早く終息することを願うとともに、皆様がコロナ禍の間に確実に培ってきた「レジリエンス」を遺憾なく発揮して、これから始まる新たな年の一日一日が一層充実することをご祈念申し上げ、新年の挨拶に代えさせていただきます。
令和3年1月
デトロイトりんご会補習授業校
校長 井口 豪