米国に住み始め、一番のカルチャーショックは、個人のボランティア活動や企業の社会貢献活動に対する人々の姿勢だと感じる方は少なくないのではないでしょうか。ふと、多忙な
日々のなか立ち止まり周りを見渡すと、活発に活動を行なっているNPO、チャリティ団体が
存在し、個人でも積極的に取り組み参加していることに気がつきます。今後もJNCでは不定期シリーズとしてこれまで知らなかった「こんな団体のこんな活動」を紹介していきます。(JNC編集部)

 

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乳がん 卵巣がん 子宮がん患者をサポート ー ひとりで病に立ち向かわないで ー
1. SHARE 日本語プログラム

1976年、ニューヨークで活動を開始した乳がん、卵巣がん、子宮がん患者を支援する非営利団体「SHARE-Cancer-Support」。その傘下で、2013年より拠点であるニュー
ヨーク州以外に居住する日本人/日系人向けにも同活動を広めていく取り組みを始めたのが、「SHARE 日本語プログラム」だ。同団体は、全米に住む日本人、日系人の方が病気になった時、言語バリアのあるなか一人で病に立ち向かわなくてもすむようなコミュニティーを作ろうという使命を持ち、現在、州をまたいで精力的に活動を行っている。

 SHARE日本語プログラムの主な活動は、月に2回の定期患者サポートミー
ティング、電話相談(ヘルプライン)の他、専門家によるセミナーや勉強会だ。

 患者サポートミーティングは、乳がん、卵巣がん、子宮がんの方を対象に、これらのがんの疑いがあると診断された方から、すでに治療が終わった方までが参加が可能だ。時には家族や大切な方と一緒に参加することもでき、同ミー
ティングには、トレーニングを受けた同じ疾患の経験者が、ファシリテーターとしてミーティングをまとめている。

 「ヘルプラインでの相談は様々で、検査をどこで受ければ良いか、アメリカで医療サービスを受ける場合、また日本での治療を選択する場合、治療中に渡米や日本へ帰国することになった場合など、それぞれの状況に応じて幅広く対応をさせていただいております」と話すのは、同団体で活躍する
コーマン寧子さん。セミナーや勉強会も定期的に開催しており、医療研究者、医師また専門家を迎え、乳がん、卵巣がん、子宮がんの啓発セミナーだけでなく、多くの方に有益なトピックを選ぶように心がけているという。これらのサービスはすべて無料で受けられる。
これまでに乳がん、卵巣がん、子宮がんを経験された方には、サポートミーティングに参加していただくことで、それぞれにお住まいの地域での情報を共有する手助けとなります。心情を分かち合うだけでなく、これからこのサービスをご利用いただく方にとって大きなサポートとなりますので、ご協力をお願いするとともにご参加をお待ちしています」

 去る9月23日にも、同プログラム主催にて「米国で病気になった時に役立つ医療システムの事」と題したオンラインセミナーが行われた。講師は、SHARE日本語プログラムの代表を務める
ブロディー愛子さんと、運営委員(ピアサポーター)の方々。これまでの経験をもとに、病院や医師の選び方から健康保険、支払いについてや日米の医療システムの違いなど、気を付けるべき点、知っておくべき点などに焦点をあてて紹介。また、セカンドオピニオンの受け方や、保険支払いのこと、疑問に感じることに対して「すべて言われた通りに受け入れるだけの良い子になりすぎない」
「疑問をもったらまずは相談してほしい」など、患者に寄り添ってくれるような嬉しいアドバイスを日本語で丁寧に説明した。このようなセミナーは海外に住むうえで言葉のバリアがある人にとっては大変ありがたいもの。「一人でも多くの方に、このようなさサポートをしている団体があるということを知っておいていただきたい」と話した。

 セミナーだけでなく、他にもアメリカで生活するうえで知っておきたい医療関連記事を日本語に翻訳し、ウェブサイトに掲載している。また、ニュースレター登録をすると、セミナーやイベントの案内がメール配信される。

 同団体では、医療関連記事を日本語に翻訳できるボランティアの方も随時募集している。SHARE日本語プログラムの患者サポートミーティングへの参加お申し込み、お問い合わせ、ニュース
レターへのお申し込みは、Email: admin@sharejp.org-または、URL: https://sharejp.org/「お問い合わせ欄」から日本語でお申し込みを。

Photo courtesy of SHARE Japanese Program

SHARE日本語プログラム https://sharejp.org
<使命>
– アメリカにお住まいの日本人が、一人で病気に立ち向かわなくても済むようにすること・
– 患者力をつけていただくための正しい情報を提供すること
SHARE日本語プログラムは、SHAREメインオフィスの方針に基づき、すべてのサービスを無料で提供しており、活動は企業や個人からの寄付で運営しています。

各種ボランティアを募集
翻訳、ウェブサイト/SNS、各地域のコミュニティーリサーチ、各地でのファンドレージング、セミナー講師
SHARE日本語プログラムでのボランティア活動内容について https://sharejp.org/volunteer
ご寄付に関して> https://sharejp.org/donate

Photo credit: Leader Dogs For the Blind

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ー 盲導犬養成で視覚障がい者を支援 ー
2. Leader Dogs for the Blind

ミシガン州のロチェスターヒルズに、Leader dogs for the Blind という団体がある。こちらは、その名のとおり、リーダードッグ(盲導犬)育成をはじめとする視覚障がいを持った方(クライアント)の暮らしを援助する団体だ。クライアントは、アメリカ国内だけでなく、メキシコ、スペイン、カナダ、その他にも及び、盲導犬訓練施設としては全米でも世界でも最大級という。

 同施設の主な活動は、1)盲導犬(リーダードッグ)育成・訓練、2)盲導犬との暮らしや白杖(White Cane)使用の生活を実現させるための視覚障がい
(または加えて聴覚障がい)者向けオリエンテーション&モビリティ訓練、
3)ティーンエイジャーを対象とした夏休みのプログラム など。すべてこれらを必要とする方々に無償で提供している。

 1939年に創立されてから、現在同施設では180名が活動に携わり、世界中から迎えるクライアントの、3週間にもわたる訓練時の宿泊、食事、交通費も同じく無償で提供している。これらの活動はすべて個人や団体/企業による完全フィラントロフィーの寄付により実現されている。年間約200名のクライアントに盲導犬のサービスを提供しており、
100名のクライアントに白杖(はくじょう)トレーニング、サマーキャンプは今年はコロナの影響で、通常受け入れは24人のところを、バーチャルキャンプにしたことで、通常の倍、50名の若者たちに、サービスを提供することができたという。その他にも、視覚に加え聴覚障がいのある方たちにも、同様に手話を交えた特別のプログラムを展開している。

 同団体のチーフ・フィラントロフィー・オフィサーを務めるメリッサ・ウェイスさんに話を伺った。

「現在米国でBlindと診断されている人口は約130万人に上り、盲導犬や白杖のトレーニングを受けて過ごしている人口は、そのうち10%に過ぎないのです。90%の方は低所得層に属し、60%は職につけず、43%がデプレッション(うつ、または深刻な精神不安定状態など)の状態にあります」と現状を説明。

「重要なのは、このように完全に無料でサポートを受けられるサービスがあることを周知すること」と続ける。「周りにもしも、サポートが必要な方がいれば、ぜひ声をかけてください」と話す。社会から孤立しがちな生活を続けるクライアントが、職を見つけ、家族と、友人と、社会と繋がる基本の生活は、同団体の活動で叶えられる、と話す。

 ここで忘れてはいけないのが、この活動、施設に関わる多くのボランティアの活躍だ。

 こちらのリーダードッグは、ゴールデンリトリバー、ラブラドールリトリバー、
ジャーマンシェパードの3犬種。親犬の世話・出産前後を担うボランティア、また、子犬を育てる「パピー・レイザー」
(生後7週間から15ヶ月までの生活を共にする)、施設に会いにきてリーダードッグと一緒に時間を過ごすなどの施設でのボランティアなど、いろいろな形でボ
ランティアが活躍している。

 特にパピー・レイザーのボランティアは、その大きな役割のひとつ。家族の一員としてパピーを迎えて育てる。愛情を注ぎ、人や犬と触れ合わせ、いろいろな場所、スーパーやレストラン、仕事場などに連れていき、様々な環境のもと基礎マナーを教え生活させていく。現在、500名を超えるボランティアが、パピーレイザーとして大切に未来のリーダー犬を育てている。

 日本で高校時代を過ごしたという
メリッサさんに、当地で日本人家庭がパピーレイザーのボランティアを希望した場合、言語の壁があるかという質問をした。
「犬を理解して接し方を知っていれば、トレーニングやマニュアル、ビデオ、ウェブサイトでサポートが随時受けられるようになっているので、ウェルカムです。興味のある方はぜひ連絡をしてください」

 パピーレイザーと過ごした後、犬たちはこのロチェスターヒルズの施設に戻され、盲導犬になるための16週間の訓練が開始される。うまく行けば、その後世界中のクライアントとマッチングされ、各地域より訪れるクライアントと3週間の宿泊訓練に移ることができるのだ。特別資格をもつ「ガイドドッグ・モビリティ・インストラクター」により、クライアントの異なる生活環境に合わせた訓練(公共交通機関を利用する、極端な気候の土地(気温差)での生活など)が実施される。晴れて、卒業を迎えられれば、
ヘルパーとしてだけなく、パートナーとして、家族として盲導犬との生活を始めるスタート地点に立つのだという。

 通常は見学ツアーもあるが、現在はまだコロナのため休止中。周りにサービスが必要な方がいればぜひ声を広め、ボランティアに興味のある方は、ぜひこちらの団体まで連絡を。

Leader Dogs for the Blind
<ボランティアとしてできること>
– 繁殖犬受け入れ
– 子犬の受け入れ
– ロチェスターヒルズ施設でのボランティア
Leader Dogs for the Blind では、認定された条件のもと、盲導犬、白杖訓練のサービスを無償でおこなっている。すべての活動は、企業や個人からの寄付で運営している。

Leader Dogs for the Blind ボランティア活動内容について https://www.leaderdog.org
ご寄付に関して> https://www.leaderdog.org/donate/

 

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