立秋も過ぎてミシガンでは夏の終わりを感じる頃となりました。先月末に体調不良で安倍首相が突然辞任した母国日本ではコロナ騒ぎの再燃に加えて各地で大雨、洪水、猛暑・酷暑に見舞われ、被災者や熱中症で倒れる人が多く出て誠にお気の毒です。政府が景気刺激策として盆休み前から打ち出したGoToトラベルもコロナと暑さへの警戒から旅行、外出を控える人が多く今一つ効果が薄かったようです。最大人口を抱える東京首都圏在住の人達がこの割引特典を使えなかったのも理由の一つでしたが、結局政府のコロナ対策も景気対策も中途半端になってしまい「二兎を追う者一兎も得ず」の様相です。当地米国でも例年ならば学校の新学期が始まるLabor Day明け直前の2週間は駆け込みの旅行をする人で陸も空もごった返す筈が、今年は大きく期待外れに終わってしまいました。日米とも旅行業、観光業は極めて厳しい状況が続いており、他にも個人商店、レストラン、映画館、各種ジム・娯楽施設など基本的にオンライン営業、リモート販売では商売にならず、客が大勢来て回転率が上がらないとビジネスが成り立たない業種は一様に苦しんでいます。

 スポーツの話題では、完全隔離状態のバブル環境でプレーオフに突入したNBAバスケットボールやNHLアイスホッケーは臨場感、親近感が湧かず個人的には盛り上がりに欠けます。変則シーズン、変則ルール(ダブルヘッダーは7回で終了)で始まったプロ野球MLBは全60試合の半分程消化しましたが、二刀流完全復活を期待していた大谷選手は投手としては2試合先発登板したものの新たな右腕の故障が見つかり、今シーズン残りの試合は打者に専念することになったのは残念でした。打撃の方もホームランは数本出ているものの打率が2割を割る不振で余り貢献出来ておらず、チームも大きく負け越してア・リーグ西地区最下位に低迷しています。毎年トラウト選手がMVP級の働きをしているのに地区優勝どころかプレーオフにも出れないようではいけません。このシーズンオフには確実に投手陣を補強し、来シーズンこそ投手としても完全復活する大谷選手と力を合わせて、対戦カード3試合の内2試合は勝てるようにして欲しいですね。他の日本人選手では野手組がパッとしない一方、シカゴ・カブスのダルビッシュ投手、ミネソタ・ツインズの前田投手ら投手陣が活躍しています。ニューヨーク・ヤンキースの田中投手は好投しながら救援投手が打たれてなかなか勝ちが付かない不運がありますが、プレーオフでは本領発揮し、真価を見せるでしょう。

 プロテニスでは男子の錦織選手が怪我から復帰して初戦となるUSオープン前哨戦の直前にコロナ感染診断テストで陽性となり自主隔離で欠場。USオープンには出場可能だったものの、健康体でもきつい夏場のUSオープンで5セットマッチを戦うには体力と練習量が十分でないと出場を見合わせたのは残念でしたが、賢明な判断だったと思います。女子では2018年USオープンシングルスチャンピオンの大坂選手の復活優勝なるか?本号が発行される頃には2週目の山場を迎えている筈です。コロナに負けずにレッツゴー!ファイト!

 男子ゴルフではフェデックスカッププレーオフに出場中の松山選手が最終戦まで残り優勝争いに加われるかが焦点です。女子ゴルフでは先月中旬にスコットランドで開催されたメジャー大会ブリティッシュオープンで上田桃子選手が自己最高の6位と頑張りました。これから米国内を転戦するLPGAツアーに出場する日本選手達も応援したいと思います。

 さて、今月号のテーマは『次期米国大統領選に続く茨の道』です。

 先月中旬から月末に掛けて前後して民主党全国大会と共和党全国大会が史上初めてバーチャル方式で開催され、民主党はバイデン/ハリス、共和党はトランプ/ペンスの組み合わせで大統領・副大統領候補が正式指名されました。

 それまでの大統領選事前得票予想では各種調査機関のいずれもバイデン有利のデータが続いていましたが、共和党の全国大会初日直後のそれでは瞬間的に49%対48%とほぼタイのデータが出てトランプとそのキャンペーン陣営は勢い付き意気が上がる結果となりました。これから選挙投票日までの約2ヶ月がホームストレッチで両陣営とも最後の追い込みになりますが、大統領・副大統領候補者同士の公開
TV討論会がいわゆるスウィング・ステートと呼ばれるフロリダ、ミシガン、オハイオ、
ウィスコンシン、ノースカロライナ、ペンシルバニアなどの諸州で浮動票有権者の支持獲得を左右する大きな要素になりそうです。

 前回選挙では具体的な政策論争を避け、当時のオバマ・民主党政権に対する有権者の不平・不満・不安を煽り、増幅させマンネリ化、機能不全化していた政界以外からの新顔でビジネスに強いという期待感から感情的な人気取りに焦点を当てた
ポピュリズム手法が上手くはまって、総得票数では3百万票も少なかったトランプがスイングステートで選挙人投票を僅差で獲得し、「勝者総取り」の恩恵に預かって当選したわけですが、今回も同じ手が通用するかどうかです。共和党全国大会での盛り上がりによる反攻態勢に入るまでの状況はトランプ陣営にとって決して明るいものではありませんでした。

 コロナ騒ぎで米国内で6百万人近くの感染者と18万人近くの死者を出していることだけでも一大事なのに、今年第2四半期のGDPがマイナス32.9%と史上最大の落ち込みを記録し、毎週150万人前後の新規失業保険申請者を出して今だに高い失業率が続いているのが追い討ちを掛けました。

 一般国民は、コロナの心配が続く中、政府の第1弾大型緊急経済刺激助成金
給付と同時に家賃、住宅ローン返済、車のリース料などの支払い猶予特別措置の
おかげと旅行や外出自粛で出費が減り、皮肉なことに失業前よりも収入が増えた
世帯では一時的に小金持ち状態となり、住宅購入・改修やネットショッピングに回るお金が増えて不動産・建設業とオンラインサービスのある小売チェーン店の売上増に繋がり、株価の水準もそこそこのレベルを維持してきました。11月の次期大統領選挙までは何が何でも景気・株価を維持してトランプ再選と共和党政権維持を目指す現職大統領及び政権与党の狙いとトランプの言動に倫理的、人道的には疑問があっても余剰な手持ち資金の新たな投資先がない富裕層が株価を高値維持したい思惑が一致し、それに一般国民や個人投資家が乗せられて一時的に小バブル状態となっていましたが、政府の第2弾緊急経済刺激助成金の議会通過、大統領承認、給付実施がもたついている間に第1弾の目玉であった失業保険給付に上乗せする
$600/月の追加助成金が既に7月末で打ち切られ、家賃や住宅ローン返済猶予、車のリース料支払い猶予の特典も失効した失業者、低所得層が強制立ち退き(今月末までに2千万人になるという予想あり)、強制取り立てに追われると一気に景気が底割れして企業の倒産、個人破産、株価の暴落が連鎖的に発生し、最悪の場合米国内だけでなく世界恐慌にまで発展する危険性もあるかもしれません。

 更に、学校の対面授業再開に関して連邦政府としての明確な指針や支援がないまま州や市町村、学校ごとに必ずしも安全・健康面を最優先出来ない政治的プレッ
シャーを受けながら最適解を求めている現状や、最近も発生している警官による黒人の殺人事件や暴行・加害事件、構造的人種差別問題、銃乱射事件と銃規制問題、外国人労働者・移民・難民受け入れ問題、中国・北朝鮮・イランとの国交関係悪化と国際秩序・国家安全保障の揺れなど問題は山積みです。また、これらの諸問題を巡ってトランプ支持派と反トランプ派の対立は激化する一方で米国内で会社・組織・団体、学校や教会、市町村の住民間や引いては家庭内で家族の対立・分裂・離反を引き起こし、まるで米国内に価値観が全く異なる二つの別々な国が存在しているような様相を呈しています。

 直近ではトランプが再選を目指して支持率回復、劣勢挽回のための手段として、確立した科学的データに基づく根拠もないままFDAに圧力を掛け、コロナ感染者の抗体プラズマを他の感染者の治療薬として使用する許可を出させたり、CDCにも圧力を掛けて「自覚症状がなければコロナ感染診断テストを受ける必要はない」とそれまでの見解やガイドラインと相反する内容を無理やり公表させて、国民にFDAやCDCへの不信感を募らせ、科学的なデータや思考方法にも疑問を抱かせ、将来提供接種可能となる見込みのワクチンに対する不信感や接種拒否を考える人達が今から既に増える兆候があり、国民皆免疫によるコロナ終息実現が更に難しくなる懸念があります。

 選挙投票日までまだ2ヶ月程あり、トランプと取り巻き連中が表から裏からありとあらゆる陰謀と工作を仕掛けてくることは容易に想像出来るため、それに対してバイデン/ハリス両候補者と民主党陣営は的確でタイムリーな対応処理をして有権者の信頼を確実なものにしなくてはなりません。11月の次期大統領選までの道のりだけでなく、運良くトランプの再選を防止して民主党指名のバイデン/ハリスコンビが大統領・副大統領に選出されても、上記のような山積みの問題があり、それらを一つ一
改善、解決出来るように茨の道を通り抜けねばならない運命が待ち受けていますが、強力なチームワークで一致団結して何とか持ちこたえ、乗り切って欲しいと願うばかりです。神仏にすがりつきたい気持ちなのは私だけでしょうか?

 追伸:先月号で触れました将棋の高校生棋士藤井七段があの後の棋聖戦五番勝負第4局で勝利し、3勝1敗で見事自身初のメジャータイトル奪取。17歳11ヶ月でのメジャータイトル獲得は従来の屋敷伸之九段の18歳6ヶ月を30年ぶりに抜いて史上最年少。更に続けて同時進行していた王位戦七番勝負第4局でも勝利し、4連勝で二つ目のメジャータイトルを獲得し、羽生善治九段の従来記録を抜いて史上最年少で二冠となると同時に規定によりこちらは『ひふみん』の愛称で知られる加藤一二三元名人の従来記録を68年ぶりに抜いて史上最年少で八段に昇格となりました。おめでとうございます!!

 年内にもう一つ挑戦、戴冠の可能性がある王将戦の決勝リーグにも入っており、リーグ戦を勝ち抜いて挑戦者になると棋聖戦で破った渡辺王将・竜王・名人との再戦となります。こちらは深刻な大統領選とは異なり、今年数少ない明るく楽しみなイベントです。(閑話休題)

 

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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