8月に入りミシガンも夏真っ盛りとなりました。本来なら学校が夏休みでサマーキャンプや各種スポーツイベント、家族や友人・知人とのバーベキュー、家族旅行などで賑わう時節ですが、新型コロナウィルスが居座るどころか先月から全米各地で勢いを増しカリフォルニア、フロリダ、テキサス、アリゾナ他数州で新規感染者数、入院患者数、死者数が過去最高レベルで推移し完全に水を差された格好です。

そんなコロナ騒ぎの中、一足先にシーズンインしたPGA男子ゴルフに続いて先月下旬プロ野球MLBが今期60試合の短縮シーズンで開幕しました。ロスアンゼルス・エンゼルスの大谷選手が二刀流で復活し、初登板は1死も取れずノックアウトで敗戦投手となりましたが、打者としては先月末の試合で地面すれすれに変化するボール球を信じられないような曲芸打ちで今期初ホームラン。次回登板では投手としても良い結果が出るといいです。他にも今年からMLBでプレーしているタンパベイ・レイズの筒香選手、シンシナティ・レッズの秋山選手、ベテランの域に入り始めたシカゴ・カブスのダルビッシュ投手、ニューヨーク・ヤンキースの田中投手他、日本人プレーヤーの活躍を期待する一方、コロナの感染被害に合わないように祈るばかりです。続いてNBAバスケットボール、LPGA女子ゴルフも開幕し、男女プロテニスやコンタクトスポーツであるNFLアメフトも開幕可能かどうか?ですが、選手生命を一瞬で台無しにしないようにとにかく安全第一で進めてほしいものです。

 さて、今月号のテーマは『トランプと将棋のお話』です。

 賢明なる読者諸氏は既に看破されていらっしゃると思いますが、トランプと言ってもババ抜きや七並べなどカードゲームのトランプではありません。そうです。毎日メディアを賑わせている大嘘つきで我儘し放題のあのトランプ(大統領)です。自分の子供に「ああいう人物だけには絶対になってはいけない。あんな事は絶対に言ったり、やったりしてはいけない」と話す悪い生きた見本。全てと言っても良いくらい悪の要素を身に付けた反面教師としては最高の人物です。

 6月後半からトランプ大統領の市場再開の呼び掛けに応えて各州毎の判断・決定で再開開始後、半月も経たないうちに事態は眼も当てられない深刻な状況になっています。再開の前提条件であるCDCのガイドラインや医療専門家の科学的根拠に基づくアドバイスを無視した性急な実施はやはり無理筋で手酷いしっぺ返しを受けた感じです。フロリダ州知事は5月頃の会見で「フロリダはニューヨークやニュージャージーとは違う。完全にコントロール出来ている」と大口を叩いていましたが、ニューヨークを抜いてカリフォルニアに続く全米ワースト#2になった今どんな言い訳をするのか聞いてみたいところです。

トランプ大統領やペンス副大統領は「パンデミックはしっかりコントロールされており収束に向かっている。やがて消えて行く」と数字を見れば一目で分かる大嘘をつき、犠牲者の爆発的急増にも相変わらず無頓着で検査実施能力も検体診断・結果フィードバックの改善も手抜きのまま連邦政府として緊急対策を率先垂範せず、各州知事に責任を転嫁するばかりか、更に学校再開、それもオンラインでなく教室内での授業再開を声高に言い出し、それをやらない州には連邦からの教育補助金給付を停止または減額するかもしれないと脅す始末です。先の弾劾裁判で審議の対象となったウクライナ疑惑で問題とされた自分の欲しい物を手に入れるため交換条件を提示して相手に強要するパターンは同じです。

 教育長官のベッツィ・デボスは大統領から任命を受けて議会の関連委員会での聴聞会でギリギリ認証を受けた後ほとんど公式の場やニュースにも登場せず、コロナ騒ぎで休校となり学生、生徒が自宅待機や限定的オンライン授業を強いられる状況になっても会見や公式コメントがなく、教育長官として一体毎日何をやっているのか?と疑問に思っていましたが、学校再開への動きが大きくなって仕方なく表に出てきた感じでした。記者会見やメディアの個別インタビューの発言を聞いた範囲では、彼女のボスである大統領と同じで学校再開は要求しても、その準備や実施要領については政府として何ら指導もガイドラインもなく、現場任せで何か問題が起こっても責任は取らない態度が見え見えで呆れました。安全が保証されないまま命懸けで我が子を学校に送り出す親の気持ちも考えず、ホワイトハウスのケイリー・マクナニー報道官も会見で「科学は学校に戻る邪魔をしてはならない」と訳の分からぬ発言があり、「トランプと一緒に学校に戻って科学の勉強をし直して来い!」と言いたい気分でした。

 当地ミシガン州も段階的な市場再開前までは新規感染者数のカーブが順調に下降し、1日あたり100人を切り二桁の人数で推移していたのが、先月末には500人から1000人レベルまで急増し、市場再開をスローダウンし再度自宅待機、外出自粛を命令もしくは要請するかどうか微妙な状況です。お隣オハイオ州でも似たような状況で相互往来が多い両州共予断を許しません。既に新規感染者数が爆発的に急増しているエピセンター(ホットスポット)の州からの越境旅行者・帰還者に対して14日間の自主隔離を義務付けしている州や都市も出始めており、マスク装着の義務化はもちろん、市場再開を一旦延期するか逆戻りして操業停止させるかの判断を迫られています。

 ここに来て全米各地で検査実施数が急増しているにも拘らず、検査ツールの不足、検体診断結果のフィードバック遅れ(1週間から10日も掛かるようではその間動き回る被験者起因の感染拡大に歯止めが掛からない)が表面化していますが、検査の重要性を未だに理解しないトランプは検査ユニット増産や検体診断と結果フィードバックの迅速化のために何も手を打っていない状況です。前からトランプのテストに対する無理解、無関心は何故だろうか?学生時代にテスト嫌いだったのかな?カンニングでもしていたか、成績優秀な学生にコンプレックスを感じてテストにもアレルギーになっていたのかな?と疑問に思っていましたが、最近出版されるや否や、先に出版されていた元国家安全保障大統領顧問ボルトンの暴露本の販売を上回りいきなりベストセラーになっている彼の姪マリー・トランプが書いた暴露本と彼女のインタビューの質疑応答内容によると、トランプは大学受験に必要なSAT(大学進学適性試験)を受験の際に頭の良い優秀な学生をリストアップし替え玉受験させていた節があり、それで納得が出来た感じです。

 これも前から感じていた事ですが、トランプは言動でミスや間違いをしても決して謝らないし、絶対に自分の非を認めない人物です。上記の暴露本の内容と姪の説明によれば、トランプ家ではミスや間違いをしても謝ったらそれで人生終わり、謝るのは弱い人間、絶対に謝るなと父親から叩き込まれていたとのことで、「然(さ)もありなん」とこれも納得でした。「あの親にしてこの子あり」です。その一つの例が、確か昨年の夏メキシコ湾沿いにハリケーンが接近し、予想進路先の州を何故かトランプが勘違いしたのか間違った発言をし、当該州の住民を混乱に陥れましたが、訂正機会として与えられたインタビューでも素直に間違いを認めず、無理やり作成した進路予想図を片手に自論を正当化する発言に終始していました。他にも大小様々な嘘とでっち上げの発言を挙げれば切りがないですが、彼の育った環境と植え付けられた価値観が常人とは全く異なり、常識ある一般人には理解不能なのはそのためですね。

 もう一つおまけに姪の話ですが、トランプは家では自分の子供の子育て、面倒見をせず兄や周りの人に押し付けて、自分は気ままに外を飛び回ってやりたい放題やっていたそうです。内向的で外向きではない兄には性に合っていたのかもしれませんが、トランプはそれを利用して好き勝手していたので、その習性が抜けず今も続いている訳です。そう言われれば、トランプが子育てしている光景が想像出来ません。自分自身が育った醜い過去の家庭環境、家族関係の経験からではまともな子育てはとても出来ないでしょう。子供にとっても不幸の極みです。

 トランプの話を書くと本当に切りがありません。しかも悪い話ばかりで怒りがこみ上げるか、気分が沈むか、どちらにしても精神的に良くありません。気持ちが明るくなるもう一つの将棋の話に切り替えましょう。先月号の記事の末尾で書いたように、現役高校生棋士、藤井聡太七段・新棋聖の話題です。

 将棋ファンならずとも、日本発の新聞他各種メディア報道でこのところ必ずと言っても良い程関連記事を目にするのでご存知の方も多いと思いますが、何せ将棋界のありとあらゆる最年少記録を次々と更新し、羽生善治永世七冠依頼の将棋ブームを作り出している若者です。

 ここではとても全部を詳述出来ませんが、主なものだけでも拾うと、2012年小学4年生で棋士の卵達が競う奨励会に入会。2015年中学1年生で奨励会三段に史上最年少(13歳2ヶ月)で昇段。翌2016年奨励会三段リーグ戦で優勝し一人前のプロ棋士として認められる四段に昇段、14歳2ヶ月でプロ入り。『ひふみん』の愛称で知られテレビや各種イベントで人気者の神武以来の天才と呼ばれた加藤一二三元名人の最年少棋士記録を62年ぶりに更新。中学生棋士誕生は加藤一二三、谷川浩司、羽生善治、渡辺明に続いて史上5人目。プロデビュー戦は奇しくもその加藤元名人が相手、史上最多年齢差62歳6ヶ月の対局に勝ち公式戦勝利の史上最年少記録14歳5ヶ月を樹立。この対局後加藤元名人は現役引退を表明し、新旧天才棋士のバトンタッチとなりました。藤井四段(当時)はその後も勝ち続け、翌2017年6月にはデビューから無敗の29連勝でそれまで歴代最多連勝記録であった神谷広志八段の28連勝を30年ぶりに更新。名人位を目指す全棋士が参加する順位戦では2018年最も下のクラスC級2組を初参加で10戦全勝と1期で駆け抜け、中学生では史上初の五段昇段とC級1組に昇級を果たす。同年開催の朝日杯将棋オープン戦で当時現・元名人やタイトル保持者を含む並みいる強豪を連破して初優勝し六段に昇段。15歳6ヶ月で一般棋戦優勝、全棋士参加棋戦優勝、六段昇段の3つの最年少記録を同時に更新。五段在位がわずか16日間で終わり、想定外の昇段スピードの速さで五段昇段の記念商品を企画販売した日本将棋連盟を慌てさせました。他にもプロ入り後3年連続勝率8割以上、竜王戦ランキング戦で史上初の4期連続優勝、小学生の頃から参加している詰将棋解答選手権ではプロを抑えての小学6年生時の初優勝から5連覇中等々。

 直近のニュースでは、先月行われた棋聖戦でその昔『お化け屋敷』とあだ名されていたもう一人の天才棋士屋敷九段が保持していたタイトル戦挑戦史上最年少記録を31年ぶりに更新。5番勝負の出だし2連勝後7月9日に地元愛知県で開催された第3局は渡辺2冠が意地を見せて3連勝で一気に初タイトル奪取とはなりませんでしたが、北海道に舞台を移した続く第4局で勝利し、3勝1敗で見事17歳11ヶ月という最年少タイトル獲得記録を達成。特に注目を浴びたのは後手番の第2局58手目に指した「3一銀」の渋い受けの一手。対局中継の解説でも予想される指し手の分析に使われていた現在最強と言われているコンピュータ将棋のAIソフトが4億手読んだ時点では最善手候補の5番内にも入っていなかったが、6億手読んだ時点で最善手に浮上していた由。その手をわずか23分の消費時間で指した藤井七段は「既に6億手読むAWIを超えた棋士か?」と話題になりました。もしかして、未来世界から来た地球外生命体かミュータントかも?

 また、前後して始まった王位戦と合わせてダブルタイトル獲得の可能性もあり。相手は昨年9月に自身7度目のタイトル挑戦で初タイトルを獲得し、46年ぶりに46歳3ヶ月の最年長初タイトル獲得記録を書き換えた苦労人、将棋の強いオジさん、中年の星、千駄ヶ谷の受け師等々数々のニックネームを持つ木村王位。7番勝負の第1局、第2局を連勝し、第3局は8月4日開始予定。王位戦は2日制なので結果が出るのは翌8月5日。果たしてそれぞれ最年長、最年少の記録を持つ両者、年の差30歳対決の結果は如何に?

 超速で進化を続ける話題沸騰の高校生棋士から目が離せません。皆さんもお時間と少しでもご興味があれば、フォローしてみてください。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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