Wat Phu Praw, Ubonratchathani thailand

PBSシリーズ −Asian Americans −  バーチャル プレビュー会 開催される

去る5月11日・12日二日間にわたり、デトロイト公共テレビ局DPTV(PBSシリーズ)にて「ASIAN AMERICAN 」と題されたアジア系アメリカ人コミュニティの奇跡を追った番組が放送された。

その放送に先駆け、放送前週末の5月8日、同テレビ局とAPIA Vote(Asian and  Pacific Islander American Vote) ミシガン共催により、番組制作を手掛けた同局One Detroit チームがホストを務めたプレビュー会がデトロイトで行われた。放送予定のプレビュー映像を鑑賞しながら地元デトロイトのアジア系アメリカ人団体のコミュニティ・リーダーたちによるパネルディスカッション・参加者からの質疑応答を含む参加型大規模マルチメディア・ズームミーティング・プレビュー会となった。

アメリカでは、毎年5月はAsian Pacific American Heritage Month (アジア・太平洋諸島系アメリカ人の文化遺産継承月間)とされている(※)。黒人歴史月間や、女性史月間のようなもので、この月間中は、アジア・太平洋諸島系移民の過去を振り返り、彼らの功績を祝って歴史・教育・文化的な活動を伴う様々なコミュニティイベントが各地で開催される。

今年はCOVID-19感染拡大による影響を受け、予定されていた当地のアジア月間のイベントの多くは中止されたが、本イベントは、オンライン上での開催となり、自宅からでも繋がることができる対話・参加型のマルチメディアプレビュー会とあって、参加者は150名にのぼった。

移民としてアメリカにやってきたアジア系アメリカ人に焦点を当て、そのストーリーが紹介される。彼らの暮らしの背景や、コミュニティに貢献した功績、また、そのほとんどが厳しい生活や人種差別に直面した苦しい過去、事件などを取り上げ、その歴史を振り返った。

中でも、このイベントで最初に取り上げられたのは、デトロイトで19年に起こった、ビンセント・チン殺害の事件だ。ご存じの方も多いと思うが、彼は中国系アメリカ人。自身の結婚式二日前にデトロイトにバチェラーパーティに出かけていた。当時日本との貿易摩擦、日本車人気に拍車がかかりデトロイトの自動車産業は衰退。当地では多くの失業者が出ていた。経済が不安定な状況が続いていた中、ジャパンバッシングが起こる。米系自動車工として働いていたエベンスとその息子ニッツは、仕事を解雇されたことで腹を立て、この親子はこの日、チン氏を日本人と勘違いし、差別的発言をかけたころから口論になり、結果チン氏が撲殺されたという大変痛ましい事件である。しかもこの事件の判決は執行猶予と小額の罰金のみで実刑なく、どこまでも不公平なものだった。しかし、この正義のない悲惨な事件は、中国系、日系人のみならず、現地アジア系アメリカ人たちの心をひとつにする。人種差別に抗し、アジア系アメリカ人の人権を一丸となって求めるキャンペーンが広がるきっかけのひとつとして今も語り継がれている。

本イベントが行われた5月上旬は、新型コロナウイルス感染拡大により、ミシガン州知事の自宅待機令が発令されて2ヶ月近くたった頃で、多くの失業者が出ている只中。コロナウイルス感染が中国武漢で拡大したことから、また、トランプ大統領の「中国ウイルス」の発言も相まって、人種差別・ヘイトクライムが加速されるのではと懸念がひろまっている時期だった。ビンセント・チンの事件が起こったのも、ちょうど経済状態が悪化した不安定な生活を強いられている中でのこととあり、この事件が引き合いに出されパネラーたちの話の中心となった。

現に、パネラーのひとりでミシガン大学アメリカ文化科メリッサ・ボヤ助教授によると、今年3月から4月までの1ヶ月でコロナウイルスにかかわる人種差別関連のヘイトクライムレポートが増加していると指摘。“#StopaAAPIHate”(AAPIはAsian American and Pacific Islander)プロジェクトを通してとヘイトクライムの報告を収集しているが、多くのローカル団体が、ホットラインやレポートシステム、ソーシャルメディアなどで援助してくれるなど、新世代の活動も増えてきているので、何かあった場合は声を上げて警察や、地元団体にレポート、相談し、コミュニティを巻き込むことが大切だと述べた。その他、ホストの質問により、今後の当地のアジア系アメリカ人コミュニティの課題に話は進み、パネリストは各自の視点から、その質問に丁寧に答えていった。ジャーナリストであり作家、人権保護活動家のヘレン・ジア氏は、アジア系女性についてのこれまでの環境について、「アジア系女性はいつも影に隠れて耐える姿勢のあるイメージから、差別や犯罪のターゲットになりやすい立場でもある。声をあげることが大切だ」と語った。
アメリカン・シチズンズ・フォー・ジャスティス、アジア・太平洋諸国系米国人人権擁護者ローランド・ワング氏は、「過去には、アジアのコミュニティは個々の教会・団体で活動をしていた。だが、ビンセント・チン事件以降、アジア系コミュニティはひとつとなって戦ってきた。今後も我々は、共通の課題に向かって協力しながら、人種やその他の差別を軽視せず、ともに取り組んでいくことが大切」と語った。
また、日系アメリカ人トシキ・マサキ氏は、ミシガン州アジア・太平洋系アメリカ人委員会(MAPAAC)会長、日系アメリカ人市民連盟(the Japanese American Citizens League)のデトロイト支部長、中西部地区カウンシル理事等を務めるが、「アメリカの地により良い生活を求めて来たアジア系の方々には、ミシガンは最適な環境であり、州からさまざまなサポートを受けられるシステムが整っている。これらのことを引き続き周知していくことが大切」と、説明した。

最後にジア氏は「歪んだ怒りの矛先を他者に向け、特定の人々にターゲットを当てて攻撃することは、断じて許されないこと。人間同士が戦っている場合ではない。闘うべきはもっと大きなものであるということをはっきりさせるべき」とし、「一人間として、より良い明日のために、差別偏見があるのが当たり前と思わず、当たり前よりも、更に良い明日を築くという気持ちをもって行動していくことが大切」と今重要なことを力強く述べ、続いてぼボヤ氏は「ここには、多様なバックグラウンドを持った人々がいるということを知ること、互いを敬い感謝する気持ち、皆違う経験を持ちっていることを理解することが重要」として、番組の放送を楽しみにしているとまとめた。

 番組では、アジア系アメリカ人の多様な過去、その功績、軌跡を取り上げている。過去を振り返り、先人の苦難を知ることで人種のみに限らず、個々の正義・公平性がいかに重要なものかを知ることができる。本イベントは、まさに、デトロイト地域のアジア系アメリカ人コミュニティが、これまで共通の課題に向き合って共に歩んできた、またそれによって培われた絆の強さを認識させるものだった。

 ここではディスカッションの内容全てを紹介しきれないが、放送内容はDPTv.orgのAsian Americans – The Detroit Story 検索で視聴可能となっている。

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