6月、子年2020年上半期の最終月です。通常ならば学生、生徒は皆夏休みに入り、サマーキャンプや家族旅行、BBQパーティー、各種スポーツイベントなど楽しみが目白押しでワクワクする筈ですが、今年は全くの想定外で新型コロナウィルスが不意に土足で乗り込んできて勝手に居座り多くの楽しみを奪ってしまいました。高校、大学のシニア4年生は人生の一大行事である卒業式もスタジアムや講堂では行えず、インターネットを介したバーチャル卒業式がせめてもの慰みとなってしまい気の毒としか言えません。日本でも桜の下で行う卒業式、入学式がご破算となっただけでなく、国民的行事と言える高校野球夏の甲子園大会が史上初めて中止となってしまい、日頃から厳しい練習に明け暮れていた高校球児の夢を奪い、全国のファンを落胆させました。自分達ではコントロール出来ないどうしようもない理由とは言え、球児の皆さんの心中を察すると気の毒で慰めの言葉もありません。

 その憎き新型コロナウィルスは先月末メモリアル・デーの週末明けにとうとう米国内だけで170万人超の確認感染者と10万人超の死亡者という悲惨な数字に到達してしまいました。悲惨さに輪を掛けているのは、これが終わりではなく今もまだ毎日人数が増え続けているという恐ろしい事実です。その事実から目を背けトランプ大統領はメモリアル・デーの当日こそバージニア州の戦没者慰霊碑に夫妻で献花しましたが、週末は前日からゴルフ三昧。まるでコロナ騒ぎなどなかったように、犠牲者とその家族や近親者に対する哀悼や同情のコメントもなく、折しも話題になっていた郵便投票に関して事実と異なる偽りのテキストをツイッターで繰り返し、次期大統領選のキャンペーンに終始する体たらく。また、その前週の記者会見では、自分は抗マラリア薬であるハイドロキシクロロキン(日本語読みではヒドロキシクロロキン)を2週間前からコロナ感染症の予防として摂取していると発言して出席者や視聴者を驚かせました。この薬はひと月以上も前にもう一つ別の抗マラリア薬と共に実効性や安全性の確かな検証データもないまま無責任にもトランプがコロナ罹患者に摂取を勧めた曰く(いわく)付きのもので、医療関係者は実効性よりも心臓麻痺、肝臓障害など最悪死に至る重大な弊害リスクの方が大きいと使用中止を呼び掛けている程で循環器系に懸念のある彼が実際に摂取しているとはとても思えません。第一この件だけ彼がウソではなく真実を述べていると思うのはトランプ教の信者かトランプウィルスに冒されている輩だけでしょう。トランプはコロナ騒ぎで自分に非難の矛先が集中し、次期大統領選での再選が危ぶまれるため世間の目を逸らす意味でまたまたデタラメを吹聴(ふいちょう)した茶番劇でした。よく詐欺師が「詐欺は騙される方が悪い」と犯罪者側の勝手な屁理屈を言いますが、騙す奴がいなければ騙される人もいないわけで、どう転んでも騙す方が悪いに決まっています。

 では、今月のテーマ「どちらが先に?お先にどうぞ」について書いていきます。

 ご承知の如く、トランプ大統領はメモリアルデー週末前に当地ミシガン州イプシランティのフォード工場を訪れ、国家防衛法に基づき緊急生産中の人工呼吸器生産現場を見学しましたが、ここでも社内規定で訪問客に義務付けしているマスク着用を拒む我儘を通したようで、ミシガン州の司法長官が事前に「フォード社は大統領もルールに従うようにさせること、もしそうしなかった場合は会社がその責任を負うことになる」と警告していましたが、結局マスクなしで見学したようです。見学後の記者会見ではマスクをしておらず、記者から「工場内ではマスクをしたか?」と質問され、「見栄えが悪いので今はしていないが、見学中はしていた」と回答。フォード社社員と一緒にマスクをしているスナップ写真がニュースで流れましたが、それはヤラセの証拠写真として残しただけで、同じくニュースで流れたビデオクリップはマスクをせず見学中の映像でした。フォードの社内規定だけでなく自分の政権本丸であるホワイトハウスやCDC発出のガイドラインでマスク着用励行が謳われているにもかかわらず、ここでも自分勝手な我儘を押し通す態度は全く国民向けのロールモデルとして失格で、この模様をニュースで見た各地の市民の中には外出先での取材に「大統領がマスクをしないのに自分がする必要はない」と断言する人もいて物議を醸しています。市場再開後感染者数が急増しているテキサス州ではマスク着用の義務付けとは正反対にマスクをしている人は入店禁止のバーまで現れたという情けないニュースもありました。何事につけ選挙キャンペーンの材料にして政治問題、政治的対立に仕向けてしまうトランプの身勝手な言動には本当に呆れるばかりです。

 3月以降のコロナ関連ホワイトハウス・ブリーフィングやその前後の記者会見での無責任で人命軽視、ウソだらけの発言を実況TV放送やニュース報道で観ていると「今まさに現職の米国大統領がこんな事を言っているのか!?これが本当に米国大統領なのか?」と信じられない気持ちになります。自分がやった事、やっている事が悪い事だという認識が全くない、認識がないから反省しない、反省しないから悔い改めて直そうともしない、多少の非難・抗議・反対があっても取り巻きや共和党議員が取り繕って弁護、擁護、保護してくれるので同じような事をやってもいいのだ、もっとやりたい事をやってもいいのだと考えて行動に移す。それが今のトランプです。先の大統領弾劾裁判で無罪判決が出た直後スーザン・コリンズ共和党上院議員が「彼はレッスンを学んだと思う(”I hope”という希望的観測でしたが)」とコメントしていましたが、皮肉にも彼女の期待通りトランプはしっかりレッスンを学び、自分に反旗を翻して内部告発した者、不利益な証言をしたメンバーや関係者、公平中立な立場から政権や上下院議員の言動に違法行為や越権行為がないか監視・監査をしているいわゆるウオッチドッグと呼ばれる職位の面々を次々と除外・排斥・入れ替えて確実に自分に忠誠を誓うメンバーだけで周囲を固め、内部情報が外部に漏れないように慎重に極秘行動を取るようになりました。コロナ対策の特別対策チーム(タスクフォース)として表に出て活動する正規の第一チームとは別に娘婿であるジャレッド・クシュナーを中心とした第二チームを結成し、ドアを閉めた会議室で極秘に打ち合わせし、何をどうするのか公式発表は一切なく隠密行動で独自のシナリオを進めている気配です。一度だけクシュナーが記者会見で発言し、医療専門家や国家安全保障関係者の間では情報無視や軽視による初動の遅れ、感染確認テスト能力、個人保護具や人工呼吸器、受入れ可能病床数の不足など対策の不備が指摘され感染者数、死亡者数が急増しているにもかかわらず、トランプ大統領のコロナ対策は素晴らしいと褒め称え、ニューヨーク州など民主党母体の州知事が連邦政府在庫から人工呼吸器の供給支援要請したのに対し、「連邦政府の在庫は州の在庫ではなく我々の在庫である」と発言し、「国の物はオレの物」、「連邦政府もオレの政府」という本音が思わず口から出てしまい政権の私物化を印象付けた瞬間でした。実際ニューヨーク州、ニュージャージー両州からの度重なる要請には直ぐに対応しなかった反面、共和党母体のコロラド州知事からの要請には翌日出荷という即対応を見せる不公平ぶりで、国家緊急事態宣言まで出したコロナ騒ぎを政治問題にすり替え、党利党略を目指す共和党と民主党の対立構図を持ち込んで民主党知事に手助けして手柄話を作らせない助平根性が見え見えでした。

 また、次期大統領選で有利になるように司法長官が司法省や判事に圧力を掛けてロシア疑惑や他の刑事罰で有罪判決を受けて服役中もしくは求刑前のトランプのお友達に特赦・恩赦を使って早期に出獄させたり、減刑判決させ、ロシア疑惑自体が作り話で実際にはなかった事になるように仕向けています。直近では、郵便投票に関する最近のトランプのツイート2件は、とうとうツイッターの運営管理規則上見逃せない重大レベルの虚偽の内容と判断され、『ファクト・チェッキング(事実確認)要』のラベルがトランプの複数ツイートに付加される事態にまで発展。これに逆ギレしたトランプやトランプ支持派から抗議のツイートやメールがツイッター幹部役員に送りつけられましたが、間髪を入れずに通常政治問題にはノータッチのツイッターのオーナー経営者であるジャック・ドーシー自ら直々に「この件は私自身が自社の倫理規定に基づき自分の責任で判断、決定、実施したものである。」と明言。また、「責任のない他の弊社社員には一切何も言わないでほしい。」と社員を擁護しました。

 トランプは再度逆ギレして、ラベル付けは検閲行為であり、もし継続するならばSNSのサービスを制限する事を考えると脅し文句を述べ、新任のケイリー・マッケナニー大統領報道官もレポーター取材に対して「大統領は間もなくSNSに関する大統領令に署名するだろう」とそれを裏付ける発言をしました。これこそ現職大統領による報道管制、メディア操作の試みであり、報道の自由と事実を伝える責任があるメディアの存在意義を根底から揺るがす越権行為であり絶対に許してはならない事です。古くは第二次世界大戦時のドイツ第三帝国総統のヒトラーや三国軍事同盟を結成したイタリアのムッソリーニ、大日本帝国首相の東條英機がそれぞれの国民に虚偽のニュースを流し、騙して悲惨な大戦に導き、多くの尊い命を奪った恐ろしい手段です。今もコロナ騒ぎの火元となった中国武漢の状況を当初ひた隠しにし、国内は元より海外諸国への警鐘、通達の遅れで世界中を悲惨な状況に巻き込んでしまった一方で東アジアからアフリカまで一帯一路の覇権を目指す中国共産党や東欧から西欧、中東へNATOの切り崩しと域内侵食を謀るロシアの野望を隠し、協力支援する国家的陰謀の手先として動いているメディアもあります。以前にも「トランプが大統領に当選した事、今もなお大統領として居続けている事自体が米国の国家緊急事態である」と書きましたが、民主主義下の米国でも絶対的権力に憧れるトランプの独裁者化、専制君主化、暴君振りをこれ以上
許してはなりません。特に最近は「何か精神的疾患を患っているのではないか?」とまで言われるほど傍若無人な言動を繰り返し、政権放棄前の末期的症状ではないかと思える程次から次と支離滅裂な発言やツイートばかりで、ホワイトハウスの取り巻きや共和党幹部の誰も歯止めが利かず、最後は自滅しかないか?と思わせる酷さです。私はもうこの2〜3年、米国は世界一の国家とか世界の誰もがアメリカン・ドリームに憧れる文化的で人道的な民主的法治国家ではなくなりつつあると感じています。その一端は当地ミシガンでも実感出来ますが、カナダ側から国境を越えて米国側に入った途端に道路はボコボコの穴だらけ、ハイウェイでもポットホールや亀裂があって車で走るとタイヤのパンクだけで済まず、シャーシや車体にまで損傷が及ぶケースまであります。昨年はたまたま暖冬でしたが、雪と氷で凍結する冬場は更に酷い状況になります。他にもニューヨーク市の地下鉄、全米各地の道路、橋梁、オーバーパスなどインフラの老朽化、人種差別、銃乱射事件、国内テロ、移民・難民の受入れ拒否、正式な滞在許可証のない外国人の強制退去、移民親子の強制分離と再会不能状況、地球温暖化無視の環境破壊、貧富差の二極化と貧困層の増加、国際安全保障と友好国との外交破綻、米国内三権分立無視の司法介入、子飼いの司法長官を使った国家安全保障関係部署や司法省への私的介入、信用破壊などなど大小未解決の問題は山積みです。

 もしトランプが再選され更に4年間この状況が続くばかりか悪化の一途を辿るのを想像すると暗澹たる気持ちになるのは私だけではない筈です。一方では信じられない位の人数のトランプ親派・支持層がいるのも事実です。アメリカの良識と良心は死んだのでしょうか?トランプはこういう人間になってはいけない、こういう事を言ったりやったりしてはいけないという意味で反面教師としては最高のお手本です。まるで禁断のパンドラの箱を開けてしまった結果、病気、犯罪、災厄、苦しみ、悲しみなどありとあらゆる苦悩と困難が世の中に溢れ出し、多くの罪のない人々を苦しめているようです。

 新型コロナウィルスの終息とトランプの次期大統領選落選のどちらが先か?

 皆さんはどう思われますか? 私はどちらでも「お先にどうぞ。」と言いたいです。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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