ミシガンも五月晴れの5月です。冬が長く厳しい当地の春の訪れは例年なら喜びが一際大きく胸がワクワク、心がウキウキする筈なのですが、この冬は暖冬であったのと今も地球規模で猛威を振るい数多の犠牲者を出し続けている新型コロナウィルス騒ぎで心が痛み、気持ちが沈みがちの毎日です。現在の居住地が米国または日本、その他に拘らず読者の皆様とご家族並びにご親戚、友人、知人など関係者のご無事を切に願って止みません。振り返れば、本紙新年1月号で「今年は何かいい事あるかな?」と書いたのに年明け早々のイラン騒動から始まってこのコロナ騒ぎで負の連鎖が止まりません。去る2月に70の大台に乗ったこの年齢でまさかこんなことが起こるなどとは思いもしませんでした。もちろん、過去にスペイン風邪やSARS、MERS、エボラ出血熱、ジカ熱など多数の諸国や地域を巻き込んだ感染症の歴史的知識や関連情報はありましたが、今回のコロナ騒ぎは規模もレベルも違い過ぎます。本題で後述する前にちょっとだけスポーツの話題です。二刀流大谷選手の復活を首を長くして待っているこちらの気持ちにお構いなく開幕が延び延びになっているMLBですが、現時点では6月末か7月初め頃の開幕で例年のような2リーグ制160試合のレギュラーシーズンではなく、遠距離の移動をしないで済むように国内を3地区に分けそれぞれ約100試合程を無観客の球場で行いTV中継するという腹案もあるようです。実現すれば異例の試みになりますが、アメリカン・パスタイムとして歴史と伝統、国民的人気もあるプロ野球を何とかファンに届けて少しでも勇気付けたい気持ちなのでしょう。チームや個人の成績、記録の扱いがどうなるかなど詳細は分かりませんが、今後コロナ騒ぎがかなりのレベルまで沈静化しプロ野球放送T V観戦が実現することを願いましょう。

 では、本題の『トランプウィルス、終息に向かうか?』に移ります。

 前号では「新型コロナウィルス:トランプにとって吉か、凶か?」がテーマでしたが、先月の一連の動きを辿りますと、3月半ば過ぎにホワイトハウス特別対策チーム(タスクフォース)結成以来遅ればせながら国家非常事態宣言、感染防止ガイドラインの作成・公示、受入れ医療施設・病床の増設、マスク、手袋、フェースシールド、防護服、人工呼吸装置などの医療器具・用具・消耗品の増産・配布、治療薬・予防ワクチンの開発・検証など医療面の対応が間借りなりにも加速しています。同時に経済・財政面では、日常生活に必須の事業や業務(エッセンシャルワーク)以外の事業は生産・営業活動停止、在宅勤務、自宅待機、失業などで企業や個人の収入激減の経済的、財政的苦境を救済・緩和するためトランプ政権と上下院議会で複数の国家緊急経済復興刺激予算案の作成・審議・議決・承認が超党派で迅速に行われ、既に小規模企業への救済資金や各納税者向け救済チェックが一部手元に届いたり、銀行振込みがなされ始めてトランプの思惑通り大統領と政権の人気支持率もやや盛り返した4月前半はトランプにとって『吉』と出ました。しかしながら、銀行など金融業者との関係が弱く救済資金を待ったなしで最も必要とする小規模企業や個人経営の店舗の多くはリソースの不足や手続きの煩雑さのためにタイムリーに動けず、当初割り当てられた緊急予算もあっと言う間に底をついて救済を得られない結果となってしまった実態が浮かび上がり『小吉』程度になりました。個人店舗が受益出来なかった一方では、全米もしくは多州に跨(また)がるかなりの規模のホテルチェーンや飲食チェーン店がいち早く動いて救済資金を受取り本来の狙いと食い違いを見せました。その後自主的にあるいは政府の要請を受けて救済資金を返金した企業もあるとのことですが、後続の救済予算に関しては同じ事が起こらぬように明確な制限と監視が急務です。

 また、ホワイトハウスでの連日のタスクフォースチームの記者会見では当初から感染症医療専門家メンバーとトランプの認識と対応策にズレが見られましたが、回数を重ねる度にそのギャップが是正されるどころか広がるばかりで、タスクフォースチームの合意による速報や質疑応答ではなくトランプの個人的見解を主とする選挙キャンペーン色が強くなり、データや事実に基づかないトランプの登場時間が長くなって感染疑義者の検査・追跡能力アップや自宅待機・自粛を推奨したホワイトハウスやCDCのガイドラインも各州知事が個別に実施している自宅待機、外出自粛の緊急政令も無視する形で営業生産活動再開を出来るだけ早くしたい、またそのタイミング決定は州知事権限ではなく大統領である自分に最終権限があると言い張る始末。3月の記者会見で「検査が上手く行かなかった場合は責任を取るのか?」と訊かれて「責任を取るつもりはない」と答えたのは記憶に新しいですが、責任は取らず権限は保持して自分のやりたいことだけ権力行使するのでは理屈が通りませんね。権利・権限と責任・責務はセットで成り立つもの、自分に都合の良いやりたい片方のみでは通りません。ましてや国家の最高責任者がそんないい加減であってはなりません。ついでに言えば、ミシガン州知事の自宅待機命令に抗議する人達がランシングの州庁舎の周りに集まり撤回、解放を求めるデモをしていましたが、マスクもせず周囲との間隔もガイドラインの目安である6フィートを保たぬ密な状態でした。抗議のプラカードにはFreeの字句がありましたが、自由を求める権利と他人に迷惑を掛けない義務・責任は同じく対を成すものです。他の大勢の人が自宅待機、外出自粛している時に少数の人が自分勝手に行動して、その中にたとえ一人でもウィルス保有者がいれば直ぐに複数の人に感染させるリスクがあり、家に帰った後で更に感染が広がるリスクもあります。ニュースで知った時に「これでそれまでの減少傾向が逆戻りするかも」と思い、当事者達の自律・自制心の無さにがっかりしました。

 また、つい最近の記者会見では検証データが不十分な2種類のマラリア治療薬(その後死亡例が多い事実が判明)が「新型コロナウィルス感染症の治療にも効くはず。感染者は失うものはないので使うべき。ゲームチェンジャーだ」と勝手で無責任な思い込み発言をし、別の記者会見では「人体への紫外線照射や市販の殺菌消毒剤の体内注入でウィルス感染が防止出来ると思う」と飛んでもない発言をし、脇で控えていた医学博士のバークス女史もフォローする言葉に詰まる失態を招き大統領に対する国民の不信感を増幅してしまい、4月後半は『凶』に転じました。発言内容やメディアの質問に対する応答も鋭い質問には答えられず、「無礼だ!」と怒り出し、答えても前後の発言がコロコロ変わって直ぐに嘘や事実に反する内容とバレてしまう有様で、政権内部や共和党のメンバーからも「大統領の会見TV放送への出演時間が長過ぎて次期選挙に向けて大統領にも共和党にもマイナスリスクとなる」と窘(たしな)められたようですが、他人の意見を聞かず我が道を行くトランプは一度は質疑応答なしの短時間で会見終了したかと思えば、翌日は会見を行わない事態もありましたが、民主党が次期大統領選候補をバイデン前副大統領一本に絞って結束を固めてきたことと下馬評では不利な支持率から焦りとイライラに苛まれ、選挙対策マネージャーに当たり散らしたり、ジッとしていられない状況となり、やはり自分自身が自らのスポークスマンとなってしゃべらずにはいられない自己中の性格は変わらず、先月末の会見では再登場していました。

 そのような中でいち早く感染拡散防止策を取ったカリフォルニア州や今も世界中で最悪・最大のホットスポットであるニューヨーク州、ニューヨーク市内の新規感染者数、死者数が数日連続で減少傾向を示し、明るい希望が見え始めて来ました。アンドルー・コモ、ニューヨーク州知事は記者会見で「引き続き注意は必要だが、上昇カーブが頂点を打ち下降側に入ったと思われる」と発言。また、「このまま減少が続き安定した状態になれば段階的に営業生産活動を再開しても良い。但し、検査能力・実施数と感染者の追跡能力確保が前提条件」と断言しました。トランプ大統領が検査能力・実施数と感染者追跡能力についてそこまで必要がないと真剣に取り合わないのとは対照的ですが、感染症対策の基本は感染者の囲い込み、検査・追跡能力、治療法とワクチンの開発・確立が柱ですから、それらを抜きにしたままで営業生産活動再開は無謀の極みでウィルスの拡散再燃、感染者・死亡者数も再度増加する危険性大です。もしそんな事態になったらば、今でも疲労困憊、辛うじて限界ギリギリで繋いでいる医療機関、医療従事者・関係者の体力も気力も続かなくなり、医療崩壊になりかねません。ジョージア、フロリダ、テキサスなど共和党所属州知事政権下の数州でやや性急と思われる解放策が実施されそうですが、その点が大いに懸念されます。感染第二波襲来ではなく今の第一波が長引くことになれば、解放策は失敗=人的・経済的ダメージは更に大きくなってしまいます。

 そう言えば、タスクフォースのリーダーに指名されたペンス副大統領が先月末米国内ではベスト、世界中でも有数の医療機関であるMayo Clinicのミネソタ事業所を訪れ、医療スタッフや患者と面談した際に院内規定で義務付けられているマスク着用を拒んだ挙句に握手代わりに肘を突き合わすエルボー・バンプや面談している映像がニュースで流れましたが、タスクフォースチームのリーダーがホワイトハウスのガイドラインや訪問先のルールを無視してこの行動は呆れて物が言えません。国民にはガイドラインやルールを守れと言っておきながら、自らルール破りをする態度は一体何なのでしょう?トランプ大統領が先の記者会見で「自分はマスクをするつもりはない」と発言したので、ゴマすりペンスとしては親分に追随の意味でそうしたのでしょうか? それとも「俺は男だ!ウィルスなんか怖くない!」と男気を出したつもりでしょうか? どうせ男気を出すなら、トランプが嘘をついたり、事実と反することを言ったり、ルール違反をした時にピシッと注意したり窘めたりして欲しいものです。残念ながら、彼はインディアナ州知事時代にエイズ感染予防対策で失敗し、州内で信用を失い居場所が無くなっていたところをトランプに救われた恩があるので絶対に逆らったり、トランプの不利になるようなことは言わないし、機嫌が悪くなるようなことはしないのです。次に行く所もないから現職にしがみ付くしかないのです。男気どころか、女々しくて情けないですね。

 新型コロナウィルスよりも怖いトランプウィルスに冒されているトランプ教信者やトランプ支持派または前回選挙で深く考えずに「ものは試し」程度の考えで投票してしまった有権者がトランプウィルスから目覚め、バイデン候補を次期大統領に選び、民主党が上院過半数を占めるように投票するかどうか?我儘、やりたい放題のピークを過ぎて「終息に向かうか、トランプウィルス?」ですね。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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