現在、世界中でCOVID-19のパンデミックにより自宅待機、活動自粛を余儀なくされています。感染に対する恐怖をはじめ、様々な要因で不安・ストレスを抱きやすい生活の中で、これらとどう向き合うかが課題となっています。ストレス低減のヒントとなる「マインドフルネス」について、フォーク先生にお話いただきました。    (JNC編集部)


「マインドフルネス」

の聞き慣れない言葉が日本語になりました。2016年に、当時90歳の母から、NHKで「マインドフルネス特集」があったとの国際電話が入ったのを懐かしく思い出します。日本の本屋でも、ここ数年帰国するたびに、マインドフルネスに関する書籍が急激に増えてきました。

 マインドフルネスとは、「今、この瞬間の自らの体験に気づくこと」です。自らの体験とは思考、感情、身体感覚ですね。(五感から入ってくる刺激も含まれます)それらをどのようにして気づくのかというところがポイントです。「注意を払って、批判することなく、優しく」気づくわけです。これはなかなか難しいことです。日ごろ、私たちはあまり「今この瞬間に気づかずに」忙しく時間を過ごしています。

優しく気づく

 例えば、仕事の帰り道、今日あったことを思い出して悔いたり、落ち込んだり、腹立たしく思ったり、またこれからのことを「あれもしなきゃ、これもしなきゃ」と思ったり、心配したり不安を抱いたりしながら、運転したり歩いたりします。そして、ふと気づいたら、もう家だった、という経験をされた方もあるのではないでしょうか。また、今この瞬間の体験に気づいても、それは、批判したり、比較したりしながらの場合も多いですね。また状況が自分の望むようなものではない場合、たとえば不愉快なこと、不都合な事、つらい事が起こった場合など、私たちは自他を責めたり、いら立ってしまったり、また無視して他のことで紛らわせようとしたりします。マインドフルネスとはそんな時、自分のそんな状態にも批判することなく、優しく気づこうとするわけです。そして、心を安定させ、どのようにそれに対処したらいいか、という次のステップへと、それは繋げてくれる一助となるわけです。

 このマインドフルネスですが、実はその昔ブッダが説いた教えであり、ここ
2500年あまり仏教僧侶の修行の一環として存在してきたものです。それが西洋の医療に導入されたのは、まだ日が浅く35年余りです。それ以来、心理療法、医療ケアの分野で広く応用されてきました。ストレス、うつ、不安症、摂食障害、高血圧、疼痛などの緩和、及び人生の充足感が増したといった成果が発表されてきており、またその効果は、多くの科学的(および脳科学)研究により実証されてきました。それも、マインドフルネスが、ここまで世界的に急速に広まった一因だと思います。

トレーニングが可能

 マインドフルネスは誰でも養成できます。「脳の筋トレ」のようなものだという表現もあります。自分が意図するところ(例えば呼吸や体の感覚)へ、優しく注意を向ける、そして注意が他に逸れたら、批判することなく、何度でも戻すわけです。実際、8週間の養成の後、以前と比べて前頭葉の厚みが増えた、ストレスで活性化する偏桃体が縮小したなどの、脳科学者による研究成果も発表されています。養成訓練は、座禅のようなフォーマルな訓練から、ストレス低減養成講座、そして、日常生活の中で、より今この瞬間を大事に生きるか、といったものまで、幅広く行われています。

 この度、ミシガン大学病院では、この「オンラインマインドフルネス養成」(無料)を開催します。(開催についてはhttps://www.japannewsclub.comのホームのページにあるイベント欄参照)この機会にぜひご参加ください。
2020年4月に行われましたMKTHomes/JapanNewsClub共催のオンラインセミナー記録は下記よりアクセス(音声)いただけます(クリック)

https://www.japannewsclub.com/2020/04/covid-19/4-16-2020-webinar2-2/

ーーーーーーーー

講師プロフィール

フォーク阿部まり子 (Mariko Abe Foulk, LMSW, ACSW)
ミシガン大学 Michigan Medicine 老年医学センター,日本家族健康プログラム 臨床ソーシャルワーカー。

関西学院大学社会学部社会福祉卒業。ミシガン大学ソーシャルワーク大学院修士。その後40年、精神科及び老年科臨床ソーシャルワーカーとして活躍。1993年から現職。高齢者と家族、在米日本人、駐在員家族への個人及びグループ心理療法提供。近年は、ストレス解消法やうつや不安の予防及び治療の一環としてのマインドフルネス心理療法の実践をしてきた。 日本では専門職及び傾聴ボランティア対象にマインドフルネスやセルフケアに関する講演提供。著書:「高齢者のマインドフルネスに治療法」(共著2018.誠信書房)、英語では全米ソーシャルワーク学術誌に実践成果を発表(2013.2017)。その他チーム医療など学術論文多数。アンナーバー在住。

ミシガン大学病院についての情報は、ウェブサイトで確認できます。

https://medicine.umich.edu/dept/japanese-family-health-program

返事を書く

コメントを記入してください
お名前を記入してください