
世界は大変なことになっています。3/24からの外出禁止令、3/26付の細則にゴルフの記述がありました。「必要あればゴルフコース従業員に最低限の業務は認められるが、その業務にメンバーやその他の人への対応は含まれない」(Executive Order 2020-21 FAQs)。しばらくラウンドはお預けとなってしまいそうです。
ゴルフツアーにも大きな影響を及ぼしています。米国PGAツアーは、3月のプレイヤーズ選手権から5月のPGAチャンピオンシップまでのうち、9つを中止、3つを延期することに決めました。プレイヤーズ選手権は、初日に松山英樹選手が2位と4打差をつけてブッチギリの首位スタートを切っていたというのに、2日目から中止になってしまいました。判断が早いのは、さすがアメリカです。延期となった3つのうちの1つ、マスターズは10月に開催されるという噂が立っています。ゴルフに限らず色々なスポーツの試合が後ろ倒しになっています。今年の秋は大忙しになることを今から祈ります。
そんなご時世ですが、今月はパットとルールの豆知識でホッコリしましょう!
ゴルフは2019年1月よりルールが大きく変わりました。パッティング関連の一番の改正は、ピンをカップに刺したままでもパットアウトできるようになったことでしょう。旧ルールでは、カップにピンが刺さったままでボールが入ってしまうと、2打のペナルティがついていたので、パットする前にピンを抜いていました。しかし、ルール改正によりペナルティがつかなくなりました。ツアーでも刺したままだったり、ショートパットは抜いたり、選手は状況に応じて対応を変えているようです。ピンが刺さっているほうがカップインしやすいというデータがありますが、傾斜が強くてカップの狭い側から入れなければならない時は、抜いたほうが良さそうです。タッチを合わせて最後の1,2転がりでそろそろっと入れるのが良いか、カップの向こうの壁にガコンと当てるぐらいの勢いで(壁ドン)パットするのが良いのか、選手によっても好き嫌いがあります。
去年、壁ドンパットで話題をかっさらったのは、6月の全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手でしょう。最終ホールの5m下りスライスのパット、2パットでパーならプレイオフ、3パットしたら負けという緊張の局面で、強気に狙っていったボールはカップイン。勢いが良すぎてカップの中でボールが音を立てて踊っているような、見事なバーディで優勝を飾りました。この時、彼女はピンを抜いていました。
逆に優しく転がしたパットで注目を浴びた選手もいました。2014年のメモリアルトーナメント、最終組で回っていたスコット・ラングエイは、16番で3mの下りスライスラインにつけました。彼のパットしたボールはゆっくりと右へ弧を描きなら、カップの左側を通り過ぎ、向こう側の縁で止まりました。ボールは穴をのぞいています。彼はしばらくその場で見ていましたが、諦めてカップの方へ歩き始めました。でもボールはゆっくり動き続けているので、マークすることができません。一緒に回っていたババ・ワトソンも肩をすくめています。なんとボールが縁に(ほとんど)止まった時点から23秒後、スッとボールはカップに吸い込まれていきました。YouTubeの動画には、”Langley’s cliff hanger”というタイトルがつけられています。
ルールには、「ホールにせり出している球」という条項があります(13.3)。合理的な時間でカップに歩み寄り、ボールがカップインするかどうか、その場で10秒間待つことができます。前述のラングエイの場合は、長いことモジモジしていましたが、そもそもボールが動き続けていたなら止まるまで待たなくてはならないし、もし止まっていたとしても、「合理的な時間」が何秒なのかが明確ではないので、彼の行為にペナルティはつきませんでした。
プロアマを問わずパットが入らないと腹が立ちますね(笑)。 2017年のDell Technologiesで、セルヒオ・ガルシアはラウンド中にパターをへし折り、残りのホールは3Wでパットしました。ジョン・デーリーが池にパターを放り投げて、残りはサンドウェッジを使ったこともあります。新ルールでは、故意に自分が壊したクラブは、交換はできませんが、壊れたまま、あるいはプレイを中断することなく修理をして、残りのラウンドで使い続けることができます(規則4)。
ルールブックは辞書のようなもの、とPGAの学校で習いました。全部覚える必要はなくて、分からない時にさっと取り出して調べられればいい。今はスマホのアプリ版もあります。読み物としても面白いです。気が向いたらぜひ目を通してみてください。
<筆者プロフィール> 東京都出身、慶応大学法学部卒。駐在員の妻としてミシガン滞在中にゴルフを始め、ゴルフ好きが高じて2009年にPGAメンバーとなる。「もっと遠くの、狙った場所へ」をモットーに、夏はミシガンで、冬は日本でレッスンを行っている。(sonya_nomura@pga.com / www.crazygolfersworld.com)