
食に関する言い回し(2)
さて、食べ物に関する言い回しの続きです。「棚から牡丹餅(ぼたもち)」は思いがけなく幸運がやってくることですね。英語では、“receiving a windfall” という言い方があります。手の届かないような高い木の果実などが風で落ちてきて手に入った、と言う感じです。「花より団子」は、“Bread is better than the songs of birds.”という表現がありますが、“Functionality over aesthetics” (美しさより機能が一番)の方が分かりやすいかもしれません。もっと簡単に “practically minded” でも通じます。次に「トンビに油揚げをさらわれたみたいな顔してる」と言った場合、“You look like your treasure was snatched away suddenly.” のように言えば良いと思います。
それでは「塩」に関する表現をいくつか見てみましょう。「敵に塩を送る」という言葉は、戦国時代に遠江の今川と相模の北条の両氏から武田信玄が経済封鎖をされ塩不足で困窮していた時、長年敵対関係にあった上杉謙信が信玄に塩を送って助けたという話に基づいており、お互いが万全の状態で正々堂々と戦えるようにするという武士の精神のことを言っています。今で言えばスポーツマンシップでしょうか。英語にすると“to help one’s enemy (rival) in difficulty to level the playing field” と言ったところ。この “level the playing field” と言う表現は「フェアに戦えるようにする」と言う意味でよく使われます。歴史的事実に基づく言葉ですが、恐らく西洋でもそういうフェアな人たちの事例はあるのではないでしょうか。
次に「青菜に塩」ですが、これは人が元気がなくしょげる様子を言いますが、英語には似た表現はなく“be crestfallen” (がっくりする)となります。もう一つ、「手塩にかける」という言い回しがありますが、手塩とは食膳に備えられた少量の塩で、自分で味加減を整えられるようにしたものを指します。そこから自らの手で面倒を見るという意味になりました。これも英語では説明的で、“to bring up/raise with the most tender care” となります。
上記についてご質問のある方、又その他の表現について知りたい方は、izumi.suzuki@suzukimyers.com まで。 ――――――――――――――――――――――――――――――――― 鈴木いづみ: 会議通訳者、公認法廷通訳者、アメリカ翻訳者協会日<>英翻訳認定資格を有す。通訳・翻訳・日英語学クラス等のサービスを提供する鈴木マイヤーズ&アソシエーツ(株)社長。www.suzukimyers.com