師走。12支の殿(しんがり)である亥年も最後の月になりました。来年は干支が一回りして頭の子年に戻ります。サンクスギビングの連休が過ぎて、残るはクリスマスのみ。冬の冷気の中でホリデーイルミネーションが映える時期です。日本では史上初めてアジアで開催され、国中を沸かせたラグビーワルドカップ日本大会の余韻も師走の慌しさにかき消されてしまいそうですが、国籍・国境、人種、宗教、政治・経済など差別や格差をめぐるニュースに心を痛めていた我々庶民にとって、それらを超越したノーサイドの美しさは正に一服の清涼剤でした。にわかファンも取り込んだラグビーブームの余熱は国内トップリーグ1部だけでなく2部や大学ラグビー、高校ラグビーの試合にも訪れる観客数が大幅増の現象をもたらしているようです。ファンだけでなく、プロ化や莫大な金額の予算も含めてサポート側の問題が極めて重要で、今だにプロチームの運営・維持、プロ選手の生計保証が大変な女子サッカーのように一過性のブームで終わって欲しくないですね。ラグビーワールドカップの話題の陰に隠れてその前後に開催された大きなスポーツイベントのニュース報道が目立たなかった感があります。振り返って見ると、日本のプロ野球ではセリーグで読売ジャイアンツが5シーズンぶりに優勝、お久し振りです!パリーグでは西武ライオンズが福岡ソフトバンク・ホークスとデッドヒートの末昨年に続き連覇。日本シリーズではプレーオフで下克上したソフトバンクが短期決戦での無類の強さを発揮してジャイアンツを4連勝で一蹴。パリーグのチームが日本一になった直近7年間に6度のシリーズ出場で5度優勝(工藤監督の指揮下では4度)は凄いです。選手層の厚さはもちろんありますが、監督の手腕も無視出来ません。ジャイアンツは悲願のレギュラーシーズン優勝でホッとしてシリーズでは疲れが出て燃料タンクが空っぽの感じがしました。当地MLBではワシントン・ナショナルズのワールドシリーズ初出場・初優勝が話題となりました。最終ゲームセブンで決着するまで全てアウェイチームが勝利という前代未聞のシリーズ中、ナショナルズのホームグラウンドで行われた試合にトランプ大統領が姿を見せた際にブーイングと折柄の大統領弾劾審査手続きの影響で「ロック・ヒム・アップ!」の罵声が浴びせられたニュースもありました。

女子プロテニスWTAツアーファイナルでは大坂選手が1試合消化後ケガで棄権してしまい残念でしたが、オーストラリアのバーティー選手が2連覇を目指したウクライナのスビトリーナ選手を決勝で破り、初出場・初優勝でナンバーワンランキングの貫禄を示すとともに有終の美を飾りました。男子プロテニスATPツアーファイナルはナダル、ジョコビッチ、フェデラーのビッグスリー3選手の誰も決勝に残れない波乱があり、昨年21歳以下の若手トップエリート8選手で争うネクスト・ジェネレーション・ファイナルでチャンピオンとなったギリシアのチチパス選手が今季は年齢制限なし、正真正銘のトップエリート8選手で争うツアーファイナル決勝でオーストリアのティエム選手を下し、こちらも初出場・初優勝の偉業。若手の勢いが止まりません。年明けにはオーストラリア・オープンがありますが、錦織選手はケガを克服して復帰出来るか?タイトル防衛が掛かる大坂選手他男女日本選手陣の活躍を祈ります。

さて、今回のテーマは『ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれる?』です。

皆さんも子供の頃に親や近所の大人達から「ウソをつくと閻魔様に舌を抜かれるよ!」と言われた事はありませんか?燃え盛る火炎を背景に恐ろしい形相で立ち睨む地獄の閻魔大王の図絵は見た事はあっても、閻魔様が本当に居るのか、嘘をつくと本当に舌を抜かれてしまうのか確証はなかった(今も)ですが、子供心に「本当にそうなっては大変。」と自制する効果はあったと思います。幸いにして、1枚ですが今も舌はあります。(笑)

頻繁に嘘をついたり、前言を翻したり、話す度に言う事が変わる人は2枚舌とか3枚舌だと世間から白い目で見られるのが普通ですが、現職の米国大統領が正にそうですね。彼の場合は年がら年中本当に呆れる程、数え切れない程、しかも明らかな嘘をついたり、事実と異なる事、事実をねじ曲げ自分の都合の良いように加工して大衆を扇動したり、責任回避・自己弁護して追及を免れる言い訳をしたりと枚挙に暇がありません。本来ならとっくに閻魔様に舌を抜かれている筈なのに、今だに嘘をつき続けている彼は一体何枚の舌を持っているのでしょうか?ありがたい千手観音ならぬ、悪と毒を撒き散らす千舌魔王かもしれません。

首都ワシントンの議会下院では、サンクスギビングの休会前にトランプ大統領の弾劾審査の一環として、先行していた一連の非公開証人喚問に続き、TVでも実況放送された公開証人喚問が2週間にわたって行われました。最大の焦点はトランプ大統領がウクライナのゼレスキー大統領に掛けた去る7月25日の電話内容がはっきりした理由の説明もなく一時停止していた米国からウクライナへの国家軍事支援金支給の再開を交換条件に2020年大統領選の対抗馬候補として有力視されている『政敵』バイデン前副大統領とその息子に関するウクライナ国内での調査実行をアナウンスさせる交換取引要求もしくは強要であったのではないかという疑惑でした。それに付随して大統領の個人的法律顧問であるルディ・ジュリアニが大統領の意向を受けてウクライナ政府関係者やウクライナ及び欧州在住の米国外交官や政府関係者に正式な外交特権無しに接触し、米国の正規外交チャンネルを飛ばして米国国家のためでなくトランプ個人の利益のために邪魔になる長年の実績と厚い信頼のある政府高官を退任に追い込んだ上、勝手に私的な二重外交をしていた強い疑いが浮かび上がりました。

ホワイトハウスは当日の電話内容を録音したテープを通常の保管ファイルでなくごく限られた大統領直近の幹部しかアクセス出来ない極秘ファイルに仕舞い込んで、議会下院からの提出要請を拒み(先日公開証言した証人の一人はトランプ支援派で自分の身分・役職確保のためかそのファイリングは管理ミスだと下手な嘘証言をしていましたが、管理ミスならミス解消のために通常ファイルに移して議会に提出せよと思います)、当日その場に立ち会った政権幹部5人も同様に証人喚問要請を拒絶し続けています。トランプ大統領自身は電話内容がパーフェクト、“Quid pro quo”=クイド・プロウ・クオはなかったと言い張っていますが、大統領への個人的忠誠ではなく米国国家と米国憲法に忠誠を誓った良識ある政府関係者や軍関係者が直接・間接に見聞した当該電話やその前後関係の出来事をホワイトハウスからの証言禁止指令や退職通知・勧告、家族も含めた恐喝・嫌がらせにメゲずに事実を宣誓証言してほぼ全ての証言が「大統領の言動はクロ」の方向性で一致し、大統領と政権幹部、ホワイトハウス法律顧問陣に衝撃と動揺を与えています。

長時間のTV放送だったため、とても全てを最初から最後まで観られませんでしたが、仕事や雑用をしながら観たり、聞き流していても政権が共和党か民主党かに関係なく長年の外交実績と信用があり、国家のため、米国の国益を守るために最前線で奉仕している(していた)人達の毅然とした態度と揺るぎない確たる証言がとても印象的でした。中でも前ホワイトハウス・ロシア関連担当でドクターの肩書を持つフィオナ・ヒル女史の公開証言は圧巻でした。他の証言者や質問者が先に非公開で行った宣誓証言書コピーやメモを手元に置いて時々確認したり隣席に待機していた法律顧問に相談しながら質疑応答していたのに対し、手元にコピーやメモも見当たらなかった彼女はピシっと背筋を伸ばし、真っ直ぐに質問者を見て冷静沈着な態度で明確に理路整然と応答し、国際外交と米国内の個別の政治的利益活動は相入れない事、2016年大統領選で当時のウクライナの政府関係者が民主党のメールサーバーをハッキングしてクリントン候補が有利に、トランプ候補(いずれも当時)が不利になるように動いたというのは、今尚続いているロシアによる偽装工作による全くの作り事で、それを事実のように米国内で流布しているのはロシアの目論見通りで米国の国益に反する、そのような行動はどうかやめて欲しい、と“Please,”の一言を添えて出席した議会メンバー及びTV視聴者に懇願、補足説明も加える完璧な対応でした。本当に素晴らしい人です。名ばかりのドクターや金で買った肩書と違って、努力と実力で得たドクターの肩書と確信し、たった一度の公開証人喚問視聴だけですが、尊敬の念が溢れました。弾劾審査は犯罪訴訟ではないですが、明から様にトランプ擁護の反対尋問を連射していた共和党議員陣も彼女に質問すればする程不利な事実が浮かび上がるため、ある議員は途中で質問を止め自分の考えをコメントして終わり、時間が余ってしまったのは失笑ものでした。TVのニュース解説者も「彼女に関する共和党のベストの戦略は彼女に喋らせない事」と言っていましたが、的を射たドンピシャの発言でした。

こういう極めて有能で信用の厚い要人を退職に追い込んだり、長年の功績・功労を一切無視して嘘証言だ、信用出来ないと非難、中傷し糾弾を繰り返すトランプ大統領には呆れ果てます。最前線で行動する外交官や軍人は場所によってはテロや誘拐、軍事衝突など身の危険を呈して日々任務を遂行しており、複雑な国際関係と政治地理学的な軍事要素を多々はらんでいる緊張状態の中で国益と友好国支援に取り組んでおり、解任または退任で人が入れ替わると単なる頭数の問題ではなく、長年掛けて築き上げて来た外交関係と信頼関係が一気に失われ、複数国家が関わる微妙な力関係のバランスを含めて回復不能もしくは回復に何年も掛かる状態に陥る甚大なリスクがあります。

連休も開けて議会上下院とも再開しましたが、年末恒例の予算問題もある中、トランプ大統領がこれ以上ウソをつかないように、最後の1枚の舌を閻魔様に抜かれる前に理由は何でも構わないので、1日でも早く退任に追い込んで欲しいものです。では、少し早いですが、皆さん良い新年をお迎えください。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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