
文&写真 by ヤマトノオロチ
紅葉が一段と進み、冬の気配を感じる秋の終わり。夏を懐かしみ、秋の豊穣を祝いながら、あちらこちらのサイダーミルを訪れた人も多いだろう。Flushingはミシガン南東部より少し北、Flintの西、農業を主とする小さな町だ。ここにあるAl Mar Orchardはスーパーや健康食品の専門の店でよく見かけるハードサイダーを作っている。
1885年から続く家庭経営のこのサイダーミルは、農業地帯の真ん中にぽつんとある。幸い、建物は比較的大きいBeecher Roadからも見えるので、だだっ広い農業地帯であっても、見失わずに着いた。平屋のかなりクラシックな建物だったので、これがあのハードサイダーの醸造所かと思うほどだ。看板もいたって質素で、300エーカーの果樹園はアメリカでも最大級とは思えないほど素朴。
ここではオーガニックのりんごを育て、サイダーへと仕込む。ベストセラーはJK’s Scrumpy。
Scrumpyとは、古い英語の言葉で、農家のサイダーと言う意味がある。添加物は一切加えず、自然にりんごだけで作り発酵させているという。まろやかな黄金色のこのハードサイダーは甘いと言うよりも深くすっきりしている。以前、Flint近くのブリューワリーをこのコーナーで紹介したときに、そのブリューワリーにもあったサイダーだ。それが健康食品専門の店でも売っていたことに後日驚いた。この農園で育ったオーガニックのりんご園から作ったので、正真正銘のオーガニックサイダー。
次に人気があるのは、Northern Neighbor。Al Marのりんごにカナダ・サスカチュワン産のベリーの実とあわせて作った。酸味も加わった、カナダとミシガンのコラボを楽しみたい気分だ。
Al Marのミルは建物の中も素朴。収穫したりんごを分別する場所からは独特のりんごが発酵する香りが漂う。ここではサイダーのほかにウイスキーも造っており、それぞれテイスティングをしてから購入できる。年季の入ったサーバースタンドにはずらりとノブが並んでいる。ここでは試飲と販売のみで、ここのサイダーですらグラスで飲むことはできない。人気のハードサイダーの醸造所、と言うよりも本当にこのサイダーを求めてやって来る人のためにあるような場所だ。それでも日曜日に訪れたせいか、客足は途絶えることはなかった。12オンスの缶入り、16オンスの瓶入り、32オンスのGlowerer入りと、さまざまな容量で買い求めることができる。実はここのサイダーは北はアラスカから西はニューメキシコまで流通しており、全米級のハードサイダーなのである。
FlushingはFlintの西にあり、US 23やI-75からも少し遠いところにある。しかも、未舗装の道路になり、決して足を運びやすいとはいえない。FrankenmuthやアウトレットモールがあるBirch Runが比較的近いと言えるが、サーバーノブから注がれるサイダーを自分の舌で確かめてから買いたい、というこだわりがある人や、商業色が強いサイダーミルより違った雰囲気を味わいたい人にはいいかもしれない。
もう一つこのサイダーミルでお勧めのものがある。紙袋入りの新鮮なりんごだ。中でも食感と酸味と甘みが混ざったCrimson Crispがよかった。これを使ったサイダーCo-op 39(この名前はりんごのライセンス番号)は、白いラベルの後ろに広がるピンクのボディーがどこにもないような色合いだ。
Al Mar Orchard
1431 Duffield Rd Flushing, MI 48433
Tel: (810) 659-6568
Website: www.almar-orchards.com