去る10月13日、クランブルク日本庭園再建のマスタープランを発表するプレゼンテーションがCranbrook Institute of Scienceの講堂で行なわれた。

クランブルクはデトロイトに居を構えていた富豪が郊外に建てた旧邸宅を含む広大な敷地および施設の総称で、一家が住むことが無くなり、現在、日本庭園を含む庭園は公開されている。

日本庭園は、1915年にクランブルックの創設者 George Gough Boothと彼の父によって築かれ、Lily Pondというリバールージュの一部を内包するもので、朱色の日本式の橋と1915年にサンフランシスコで購入した日本の提灯が特徴的。百年を経て、豊かな自然の美しさとインスピレーションを残すものの、あまり手を加えられていなかったこの庭を美しく再建する試みがクランブルク・コレクション研究所(Center for Collections and Research)によって進められている。

クランブルク・コレクション研究所は、ブルームフィールド・ヒルズに位置するクランブルク教育コミュニティの一部で、コミュニティが有する歴史的に重要な数々の美術品や建築物・景観を一般に公開・教育する目的で2012年に創立された研究所。一般公開されているクランブルク美術館、クランブルク博物館も当コミュニティの一部である。

ブース氏の死後、日本庭園はあまり注目を浴びず、時おり資金・注目を得ては美観運動に助けられてきたが、一貫性のないまま維持された。これではあまりにも残念だ、ということで2016年に研究所管轄内に再建プロジェクトのグループ(Japanese Garden Advisory Group)が設置され、2018年にはデトロイト総領事の支援もあり、国土交通省からの援助金を得ることが叶い、それによって庭園の一部が日本の庭師の手で以前より美しく整えられた。同年に開催された日本庭園についての4回にわたる一般公開レクチャーも大人気に終わり、その講師の一人であったポートランド日本庭園のキュレーター(学術員)である造園家・内山貞文氏に日本庭園全体の復興マスタープランを依頼した。

この日のイベントに参席した中川総領事より、クランブルクの百年超の歴史に日本のものが含まれている喜びと、日米の交友のシンボルとして在り続けることを願う言葉が伝えられた。

プレゼンテーションの前半、同センターのディレクターであるWittkopp氏が、クランブルックの日本庭園の歴史の概説と、進められている再建についての解説がなされた。

それによれば、ブース氏は1904年に土地を購入し二代にわたって居所として利用し、様々な建造物や庭を築いたが、日本庭園の発想は来訪した国際博覧会で刺激を受けてのこと。日本の灯篭を入手し、太鼓橋も築かれた。その後1932年に日本庭園に隣接しKingswood Schoolが設立され、教育機関としてのクランブルクがスタートした。一方で、前述したように、日本庭園はあまり注目されず、手入れも行き届かなくなっていた。そして2012年にリハビリ(再生・再建)の動きが生まれ、本日に至っている。

マスタープラン作成の依頼には他の候補者も挙げられた。その中から内山氏に決定したのは、豊富な設計経験や歴史的庭園の再建実績などに加え、内山氏がクランブルク庭園の歴史と可能性に敬意を払っている点が重要であったと語った。

内山貞史氏は造園業を営む家に生まれ、幼少の頃より職人の手ほどきを受けた。タンザニア、イエメンでの開発協力を経て1988年に渡米し、イリノイ大学ランドスケープアーキテクト学士号および修士号を取得。日本庭園の技術と西洋のランドスケープアーキテクトとしてのトレーニングを融合、個人庭園から公共緑化と幅広い分野で活動している。代表作は、シカゴ市ジャクソンパーク、デンバー植物園、デューク大学内の日本庭園など。北米日本庭園協会(NAJGA)の構想・設立発起人でもある。アメリカをベースとして講演・執筆活動、また、公共日本庭園や大学にて造園設計・施工指導をおこなっている。2018年に日本庭園協会100周年式典で「日本庭園協会賞」受賞の経歴をもつ。日本国外に住んでいる初めての受賞者であった。

その内山氏は、クランブルク日本庭園のマスタープラン作成にあたって大切にしたことを以下のように解説した。(英語による解説の意訳)

  • 変えて造ることは容易であるが歴史を残す。
  • 景観を保つ。
  • 生徒が楽しめ、利用できる。

具体的な改善点について、日本では“直行しない”という考え(美学)があるため、入り口をずらして回り込む形にしたり、景観を味わうために高さや段差を設けることなどを説明。「Path(道)が大事であり、歩くことが庭を楽しむ方法である」と語った。背景にある日本的な“庭”の位置づけにも言及。日本では古来から戦国時代においても、庭園を造り、尊び愛でてきたこと、また、生活の中でのエッセンシャルなものであり、平和のためのスペースであることを伝えた。最後に、「この一般に開かれた庭園が祝福され楽しんでもらえたら幸い」と結んだ。

Q&Aタイムには、同プランにおいての、鹿などの動物対策や、寒さが厳しいミシガンでの植物の選定について、また、一般的な話としての雑草対策についてなど、質問が殺到。内山氏は一つ一つ丁寧に答えていた。

プレゼンテーションのあと、参加者はシャトルで日本庭園に向かい、現状と手を加える予定の箇所を視察。初秋の陽光の中、未来の姿を思い描きながら散策した。プランの実現が楽しみである。

日本庭園はクランブルクレイクの東側。Cranbrook house and gardensのパーキングエリアが一般利用可能で、そこから歩いて邸宅の(両側から回り込める)真裏から湖畔沿いのトレイルへ下りることができ、右へ行くと日本庭園がある。

美術館や博物館からもトレイルが続いている。

 邸宅では見学ツアー、ランチやお茶、ヨガなど、様々なイベントが催されている。これらと合わせて訪れるのも一案。

Cranbrook house and gardens  

ウェブ: housegardens.cranbrook.edu

所在地: 380 Lone Pine Rd, Bloomfield Hills, MI 48304

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