「令和初」の日本の夏。2020東京オリンピック、パラリンピックもいよいよカウントダウン。超大型の台風10号が西日本を横断しお盆を直撃。日本の暑い夏がますます熱くなっていたときに、奈良を訪れた。

「ならまち」はJR奈良駅を東へ進んだところ、平城宮の外京にあたる。大戦の空襲を受けず、古きたたずまいが残る地区でもある。典型的な観光地、というよりも古の都の風情に触れながら地元の人の生活と訪れた人が交差できる町だ。古民家などを改修して、民泊や飲食店を開業しているところも多い。投宿した「はる家 ならまち」もその一つ。旧庄屋の母屋の「通り庭」という玄関から坪庭まで伸びる通路の空間を受付や井戸水を一服できる簡易台所、共有スペースとして利用し、大小10の和室の宿泊部屋と土蔵はドミトリータイプだ。いわゆる「ウナギの寝床」のように奥行きのあるこの「はる家」はおよそ120年前に建てられた。利用者の90%は海外から。床の間べりに腰を掛けられる空間は、すでに歴史的な建物の多くを失ってしまった中国からの旅行者にとっては「この場所は何をするため?」と不思議がる空間だそうだ。茶箱を縦に置いたように一段一段が大きい箱階段も限られたスペースを有効に使おうとした先人の知恵。一足進めるごとにきしむ床は足裏の感覚をもはや忘れ、西洋式の生活に慣れ切った心をはっとさせる。片引き戸を開けると、一夜を過ごす和室。その和室の窓から下を覗くと「火袋」と呼ばれる吹き抜け。四季の気温に応じて風の通りを工夫した独特の作りだ。食事の提供はないがスタッフのホスピタリティーは抜群。界隈のお勧めのお食事処等の情報を丁寧に教えてくれる。 散策も楽しい。一般の住宅の軒下にも赤い「身代わり申(さる)」が下がっている。「はる家」から5分ほど坂を上がっていくとほんのちょっとのジグザグ道、古代びとが通った街道の名残がある。千年以上も前から人々はこの曲がり角を往来してきたのか。さらに「ならまち」にある世界遺産の「元興寺(がんごうじ)」もすぐそこだ。飛鳥から奈良に遷都した際、法興寺もここに移転し、718年に建てられた大伽藍の一部が残る名所。本堂隣の地蔵群から本堂の屋根を振り返る。赤と青に見える瓦が飛鳥時代のものだという。

 前述「はる家」からの紹介で、15分ほど歩いたところにある「なら麦酒 ならまち醸造所」も訪れた。奈良市内初のブリューワリーで2017年開業。建物自体はお米屋さんを改装。
「ならまち」全体の雰囲気に合わせようと、格子窓。内部は白が基調で、すっきりしている。

200Lの醸造タンクはいつもフル稼働。玄(くろ)、白(はく)、ならまちエールがこの日のラインナップ。やはりミシガン産のものと比べてみたいと思い、American Pale Aleのならまちエール (AVB. 6.0%) をいただいた。Cascade hopを使っているが、特産の大和ほうじ茶も加えている。フルーティーでほんのりしたほうじ茶の香りが特徴。どのような方法でほうじ茶を用いているのかは製造上の秘密だが、日中は34度ほどの奈良の街を歩き回った後の至宝の一杯。フードメニューにもある奈良名物の「柿の葉寿司」とのペアリングもいいだろう。 東大寺や法隆寺と見どころが多い奈良。最も注目を集めるのは平成21年からの「平成の解体修理」が来年2020年に終了する薬師寺東塔。修理が始まった時、令和の時代になることをだれが予想できたであろうか。水煙の飛天たちが奈良の空を舞う姿を想像し、楽人の奏でる天上の音楽が響くのはもうすぐだ。

「はる家 ならまち」 https://yado-haruya.com/naramachi
「なら麦酒 ならまち醸造所」 http://narabeer.jp/