ミシガン州はUpper Peninsulaと Lower Peninsulaに分かれている。当地に住む大半の人の知るところだが、ミシガンに移り住んでから認識した人も少なくないかもしれない。ミシガン湖とヒューロン湖の間に架かるMackinac Bridgeの北側がUpper Peninsula。通称U.P.Michiganとか、さらに省略してUP(ユーピー)と呼ばれる。

Mackinac Bridgeから西に車で6-7時間、約270マイルの地にホートン:Houghtonという市がある。スペリオル湖に突き出したキワナー半島への玄関である。ホートンは人口8千人弱という小さな市ではあるが、名門ミシガン工科大学/Michigan Technological Universityの本拠地として、ミシガン人に知名度が高い。

キワナー半島(Keweenaw Peninsula)の名称は、1800年代に地質調査でこの地をたびたび訪れて豊かな銅があることを紹介したDouglass Houghtonが使ったもの。そしてホートンという市の名前は彼の名にちなんでいる。

銅の採掘ブームがおき、キワナー半島の入りであるホートンから半島の北端の町カッ
パーハーバー:Copper Harborまで、Hancock, Calument, Laurium, Lake Lindenなど、総称Copper Countryと呼ばれるMining(採掘)の町が各地にでき、ヨーロッパ各国から人が集まった。多くの優秀な技師も移り住み、ホートンにはミシガン工科大学の前身の採掘技術を主とした学校も設立された。キワナー半島の経済・文化の中心であったハンコック:Hancockには豪邸が建ち並んだほど繁栄をみせた。しかし1930年代以降には採掘ブームが去り始め、1970年代には採掘はほぼ無くなり、仕事を失って土地を離れた人も多く、それぞれの街の様子は大きく変わった。

近年、キワナー半島は観光で賑わう。スペリオル湖の北方に位置し、ミシガン州にある唯一の国立公園である Isle Royale National Parkへのフェリーがホートンとカッパーハーバーから運行している。その拠点の観光地として宿泊施設やギフトショップも多い。

ホートンからIsle Royaleへのフェリー“Ranger III”は5月末から9月上旬まで運行。島行きは火曜と金曜の朝のみ、島発は水曜と土曜の朝のみなため、日帰りは不可。

カッパーハーバーからのフェリー“Queen IV I”は5月中旬から9月末まで(7月末から9月上旬のみ毎日)運行。日帰りも可能であるが島での滞在は3時間弱となる。
Isle Royale National Parkは孤島であり、その行き難さのお陰で本来の自然が残っている貴重な場所である。

「かつて銅で栄えたキワナー半島を訪れたらぜひ行くべき」と地元の人が勧めるのがかつての銅採掘場のツアー。ハンコックの丘にあるQuincy Mineでは、銅の採掘場とそこで働いた抗夫たちの状況を学ぶことがでる。地上の施設を見学するだけのツアーもあるが、Tram Ride(トラム乗り)も含むツアーでは用意されたヘルメットと厚手のジャケットを持ってスタート。一両トラムからトロッコに乗りかえて採掘現場に向かう。地下なので夏でもジャケットが無いと震えるほどひんやりと寒い。約20分で現場に着き、かつての採掘場に身を置くと危険かつ厳しい条件下での当時の長時間労働の過酷さが実感として偲ばれる。当時の産業と労働の歴史を知ることができる貴重なガイドツアーであると同時に、ライドもあるので子供も楽しめるものになっている。
https://www.quincymine.com
*ツアーは6月上旬から10月中旬まで。

ところで、こういった作業現場での携帯食として鉱夫たちが重宝したパスティー:Pastyは今も郷土食として親しまれている。当時、イギリスからの坑夫が持ち込んだ。ミートとポテトや野菜などをパイ生地で包んだもので、過酷な労働を支えただけあり、かなりの重さと腹持ち。各家々の独自のレシピがあり、お店で出している物もそれぞれに違いがある。チーズ入りやターキー肉の豪華版や、最近の嗜好の広がりに合わせて、ベジタリアンやグルテンフリーの物も売られているそうだ。他でも目にするが、この地を訪れた際にはぜひお試しあれ!

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