9月に入ってLabor Dayが過ぎた途端にミシガンでは朝方涼しい日が続きました。現地校の夏休みも終わり、新年度・新学期が始まって休み前に学んだ授業内容を少なからず忘れている生徒・学生が新たな授業内容について行けず学校嫌いや不登校になったりする心配な時期です。親御さんや周囲の人達が日頃から挙動に注意しながら適宜声掛けしてあげたいものです。先月日本では福岡、佐賀で豪雨・洪水による家屋の水没被害や鉄工所の油流出騒ぎがありましたが、米国でもプエルト・リコ近海からフロリダに接近したハリケーン『ドリアン』の影響でLabor Day連休の観光客を見込んでいた地元では当てが外れてお気の毒でした。不幸中の幸いと言えるかどうか分かりませんが、コースが東側にずれて上陸直撃は免れフロリダ特産の柑橘類の成熟・収穫に大きな影響は出ないで済んだようです。特にグレープフルーツはこの時期まだ収穫前とは言え果実がベースボール程の大きさに成長しており、暴風に襲われると枝から落ちて壊滅的な打撃を受ける恐れがあったため果樹農家はホッと胸を撫で下ろした事と思います。本稿作成時メキシコ湾沿いをゆっくり移動中でしたので、その後も湾岸諸州では警戒が必要ですが、大事に至らぬ事をお祈りしております。

今回はこれで前書きを終わりとし、いつものスポーツの話題も本題の「過ぎ行く夏に思う」の一部として以下続けます。

そのスポーツの話題では、何と言っても先月初旬全英女子オープンゴルフで日本人男女を通じて樋口久子さん以来42年ぶりに優勝した『シブコ』こと渋野日向子選手。1ラウンド目の結果を見て「渋野?一体誰?」という感じでしたが、昨年日本でプロツアー資格を得たばかりで、今年国内メジャー初優勝を含めて2勝し、海外メジャーに出場資格を得て本人談話でも「予選通過して来年の出場資格を得れる15位以内に入れれば上出来」とありましたが、何といきなり海外トーナメント初出場でメジャー初優勝!のビックリ箱でした。米国では放送時間帯が都合が良く最終日は家内と一緒にTV観戦。前半終了間際の8番でボギーを叩いて一時は当日絶好調でトップを走る米国のサラス選手に5打差となり今までの日本人選手なら「ちょっと無理かな?」と思わせましたが、後半15番までに4バーディーと盛り返し、トップタイで迎えた最終18番。2オンして残り5メートルはありそうなバディーパットを思い切り良く強めに打って、一瞬「強過ぎ!入らなかったら2〜3メートルオーバーしそう!」とヒヤッとしましたが、何とホールのど真ん中を通って向かい側の壁にドンと当たってボールがちょいと浮き上がってからカップに沈んでバーディーという劇的な海外メジャー初優勝で幕切れ。プレーオフに備えてパッティンググリーンで練習していたサラス選手(優勝してもおかしくないプレー内容でしたが)を落胆させました。初めて目にしたシブコさんは終始笑顔を絶やさず、ホール間の移動の途中や待ち時間にはギャラリーとハイタッチしたり、サインしたり、大好きな日本の駄菓子をもぐもぐしたりと、とてもメジャーの優勝争いをしているプレーヤーには見えませんでしたが、ショットの時にはキリッと引き締まった表情になり、さっとアドレスに入ったかと思うとパシッと打つプレーの早さも小気味良く、近年男女共スロープレーに食傷気味のギャラリーや視聴者には新鮮な驚きと好感度でした。今までにいなかった日本人のタイプ、良い意味で『新人類』かもしれませんね。海外メディアから『スマイルシンデレラ』の愛称を付けられ、「ゴルフは楽しいものだと思い出させてくれた」とコメントされ、昨年MLBで二刀流センセーションを巻き起こし「野球は楽しいものだと思い出させてくれた」とコメントされた大谷選手にも通じるものがありますね。一躍日本どころか世界のゴルフ界で有名になってしまい、日本に凱旋帰国時には大歓迎を受け、メディア狂想曲が渦巻く中で時差ボケ、疲労が溜まった状態で休む間も無く2週続けて出場した二つの国内トーナメントでは上位入賞とスーパーウーマンの活躍。黄金世代と呼ばれる同期の仲間や先輩・後輩プレーヤーにも大いに刺激と希望を与えるだけでなく、今の子供達に将来プロゴルファーになりたいと夢を抱かせるロールモデルになりました。丁度米国で10〜15年前にタイガーウッズが巻き起こしたゴルフブーム(その分他のスポーツが割を食ってしまいましたが)と似た感があります。1年前にテニスの大坂選手がメジャー初優勝後内外のメディアに追い回され、つい最近まで成績もパッとせず「テニスが楽しくなかった。精神的に辛かった。」と思わせてしまった悪い先例があり、シブコさんには同じ思いをさせたくないですが、明るいニュースや楽しい話題が余りない島国日本では普段ゴルフ担当でないメディアの記者まで夜打ち・朝駆けのゲリラ取材やプライバシー侵害の無礼なパパラッチ取材が懸念され、『日本の宝』と成り得る稀有な人材を壊してしまわないように切に自重して欲しいものです。

続いて真夏の日本を更に熱くした熱闘甲子園。令和元年の記念すべき101回大会は大阪代表履正社が初優勝を飾りました。強豪校が並み居る大阪代表になるだけでも大変なのに見事頂点に上り詰めました。おめでとう!決勝戦で惜しくも敗れて準優勝になった星稜高校も初優勝を逃して残念でしたが、超高校級エースピッチャーの奥川選手を中心に攻守にバランスの取れた良くまとまったチームでした。同校OBで在校時に甲子園で伝説の5打席連続敬遠された逸話の持ち主であり日米のプロ野球でも活躍したゴジラこと松井秀喜さんが母校の後輩と監督に紋切り型でない味のあるコメントを送っていました。また、いくつかの試合で打席で投球が当たった打者が自分が前屈みになり過ぎてバッタボックスから体が出たため当たったので死球ではないと審判に自己申告し相手チームの捕手とベンチにも謝ったとか(その直後に公式戦初のホームランというおまけ付きでした)、相手チームの投手が猛暑と軽い脱水症状で腕が攣りかけたのに気付いた対戦チームの選手がベンチからさっとマウンドに走ってスポーツドリンクを手渡したとか、別の試合で相手チームの投手(確か星陵の奥川選手でした)が足が攣りかけていたのに気付いた対戦チームの主将が治療薬を星陵の同僚選手に手渡して「飲んでおくように」と伝えたとか、実際に中継放送は観られなくても後で見聞した美談がありました。自分のチームの勝利に拘り有利になるようにズルく立ち回るのではなく、同じ高校野球をプレーする仲間としてお互いの努力と研鑽を認め合いながら正々堂々とフェアなプレーに徹する高校球児の清々しさに感銘しました。記念すべき令和元年の熱闘甲子園は素晴らしい大会でした。拍手、拍手。選手、監督、運営、応援の皆さん、お疲れ様でした!

その後2週間足らずの間隔で韓国にて高校野球世界選手権が開催され、日本代表チームも甲子園の疲れが残ったまま参加していますが、折悪しく日韓問題で揺れている両国関係と韓国の国民感情に配慮して韓国入国の際や移動時に日本国旗を表示しないことにしたと報道されていました。スポーツに政治問題、政治色を持ち込まないのが原則ですが、不測の事態があってはならないと慎重を期しての判断と思いますが、本来ならば誇らしく日本を代表するチームが国旗の表示も出来ないとは悲しい事です。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。