2017年5月に、デトロイトダウンタウンの目抜き通りであるウッドワードアベニューにQ-lineという路面電車が運行を始め、モノレールタイプのPeople Moverと合わせて、公共交通機関での観光や散策がしやすい街になった。

ハートプラザ:Heart Plazaを含めたリバーサイドやコボセンター:Cobo Center、ルネッサンスセンター界隈ではイベントが多く開催されるが、かなりの人が会場に限らず周辺にも繰り出す様子が見られる。この辺りはビジネス街なので、以前から昼間はそれなりに人が歩いている場所ではあったが、最近は観光客と見受けられる写真を撮っている人の姿も多い。

 タイガースやライオンズのゲーム日ともなれば、早い時間から道路が渋滞し、バーやレストランは満杯状態。スポーツ以外にも、フォックスシアター、オペラハウス、ミュージックホールなど劇場・ホールもダウンタウンにあるが、ゲーム開催日や開演日に限らず、散策や観光をしている人が増えてきた。ダウンタウンエリアでは、Q-Line走行のために路肩駐車が禁止されているため、ウッドワードアベニュー沿いがすっきりした印象になったのも好ましい変化である。

今回は主にダウンタウンの観光スポットの一部を紹介したい。

ダウンタウンに車で乗り入れたくない人はデトロイト美術館のパーキングスペースに車をいれてQ-lineを利用して散策する方法もある。ただし、以前より人通りが増えたとはいえ、銃発砲などの事件のニュースも珍しくない程に耳にする。安全に対する感度を高くして過ごすべきこと、お忘れなく。

◇観光スポットの紹介の前に、デトロイトの歴史を極簡単に。

デトロイトは1701年にフランスの探検家がフォート・デトロイトを築いたのが始まりとされている。『デトロイト』には海峡の町という意味がある。1805年の大火の後、ウッドワード知事により都市設計された。目貫通りであるウッドワードアベニューはその名前に因んでいる。時代が前後するが1909年にアメリカ初の舗装道路として開通したという歴史に刻まれた道なのだ。

1837年にミシガンがアメリカ26番目の州となり、その最初の州都はデトロイトとなった(1847年まで)。州としては開拓当初は毛皮取引が主たる産業で、その後、北部の森林や地下資源によって木材業や鉱業、やがて農業の盛んな地になった。デトロイト周辺では蒸気船の航行,水路や鉄道の開通により,五大湖における商業取引地および製粉業の地として繁栄し、造船、鉄鋼、鋳造、機関車、靴、車輪などの製造業も始まった。そして1899年に自動車工業が興った。1903年にヘンリー・フォードが量産型の自動車工場を建設、1908年発売の「T型フォード」のヒットとともに全米一の自動車工業都市となり、急激かつ大きな発展を遂げた。直にゼネラルモーターズとクライスラーが誕生。周辺を含めてモーターシティと呼ばれるようになる。1850年には2万人であった人口が1920年に約28万人、1970年頃の全盛期には約150万人、(周辺を含めると180万人)となった。

しかしながら、1967年7月に人種問題による大暴動が市内で発生し多数の死傷者が出たことにより白人の郊外への脱出が進んだ。さらに日本車の進出=ビッグスリーの自動車産業への打撃→大量解雇や関連企業の倒産によって、人口流出に拍車がかかると同時にダウンタウンに浮浪者が増え、治安悪化が進んだ。

1970年代に「ルネサンスセンター」を建築するなど、民間・市によって再生が図られたが、2013年7月、財政破綻を声明(負債180億ドル、約2兆円)。ミシガン州が市の運営を引き受け、2014年に再建計画が承認され、また70億ドルの債務免除も承認され、破産法の保護の終了が発表された。

下落した地価と安い賃金を武器にスタートアップ企業やエンターテイメント産業を誘致した結果もあり、景気は回復しており、ダウンタウンに活気が戻ってきている。

◇公共交通機関の他、「Uber」など配車サービスが普及したことでダウンタウンを移動しやすくなった。また、シェアリングシステムの電動スクーター(Bird、Limeなど)や自転車(MOGO)のサービスも需要供給が増し、あちらこちらで見かける。MOGOはデトロイト周辺、44のステーション(置き場)に430台を保持しているとのこと。

☆デトロイトの景観のシンボル的存在「ルネサンス・センター」

1970年、フォード・モーターの会長ヘンリー・フォード2 世が、デトロイト経済の再活性化のためにダウンタウンの再開発を計画。同センターは民間主導の再開発としては当時世界最大規模のプロジェクトとして1971 年に始まり、1977年、第一期の工事が完工、6つのビルがオープンした。当初、フォード・モーターのオフィスがあったが、1996年にゼネラルモーターズ(GM)が買収、本社を移転した。現在、7つの高層ビルと4つの低層ビルがある。中央のDetroit Marriott at the Renaissance Center は230.1m、73階建て。完成時は「ウエスティン・ホテル」で、ホテルとして高さ世界一を誇った。

中央棟1階にあるGMの展示スペースには多くの観光客が足を運ぶ。現在、デトロイトタイガースやディズニー、その他のパートナーシップ企業にちなんだデザイン車が展示されている。

☆歴史を伝える像と、新しいアート:KAWSの作品スカルプチャー

2016年にユニクロとコラボしデザインを手がけて日本での知名度が上がり、ファッションやプロダクトなどのデザイナーのイメージが強いKAWSだが、元々はストリートアーティスト。

作品の特徴は目のバッテンマーク。彼のキャラクターの中で最も人気があるのが「Companion」で、世界中に展示されている。そのひとつがダウンタウンのOne Campus Martiusビルの前(Campus Martius Parkに面した入り口前)に存在する。2トン以上のブロンズから成る17フィート(5.2メートル近く)の大作品はデトロイトの新しい観光&写真スポットになっている。

公園の逆側には南北戦争で戦った兵士たち(Civil War veterans)の記念碑がある。

☆かつての繁栄を物語る歴史的な建築

デトロイトには数多くの古めかしい建物が残っている。デザインにも材料にも莫大な資金を投じた超高層ビルはかつての繁栄を伝えつつ、現役で活躍している物も多い。アール・デコスタイルの特徴的な超高層ビルとしては、フィッシャー・ビルディングル、ガーディアン・ビルディング、ペノウスコット・ビルディングなどが挙げられる。発展期にエンターテイメントや社交でも高いレベルに達し、デトロイト・オペラ・ハウス、フォックス・シアター、アスレチッククラブの内装の豪華さは国内でも最高レベル。

普段は立ち入れないところが多いが、180万本のオレンジがったレンガで覆われた40階建てのガーディアン・ビルディング(Union Guardian Building)は入館が可能。大恐慌の年、1929年3月に完成。1989年にNational Historic Landmark=国の史跡に指定された。

入り口のネイティブアメリカンの像や、1階の大ホール、ネイティブアメリカンアート調のステンドグラスなどの装飾が見ごたえある。外壁も凝っている。ホール手前にあるガラス時計は宝石ブランド「ティファニー」制作で、12個のうち現存するのは4つだけとのこと。

Music Hall Center for the Performing Artsは1928年建造のアールデコスタイルの6階建て。1977年にNational Register of Historic Placesに認定された。館内にある趣のあるJazz Caféはパフォーマンスの無い時間には一般客向けに営業している。

☆旧駅舎  Grand Trunk Pub

1905年、鉄道会社Grand Trunk Railroadが前オーナーの宝石商から買い取り、ビルの2階部分を取り壊してフォーマルな駅舎に改装。洒落た高い天井や立派なカウンターは今も当時のまま。1935年、自動車の台頭によって鉄道路線は産業用になっていた折、当時2件隣にあったホテルがバーとキッチンとして同ビルを購入。バーの隣に続くダイニングルームも駅舎らしい雰囲気が溢れている。