ミシガン大学美術館において、仏教美術に関する特別展『The Six Senses of Buddhism:仏教の六感展』が6月末まで開催されている。

ミシガン大学美術館(University of Michigan Museum of Art)は通称UMMAとして学生に限らず一般に公開し親しまれている。今期はUMMAが所蔵しているコレクションの中から、仏教の修行や祈祷に使われた品々を人間の五感および第六感に訴える展示を工夫し紹介している。

この特別展に関連して、さる5月2日、デトロイト日本商工会とJAPAN CULTURAL DEVELOPMENT(日本文化開発)、そしてUMMAとの共催による特別講演会が催された。UMMAのアジア美術学芸員であるDr. Natsu Oyobe(及部奈津博士)が講師を務め、多数の画像を映し出し、日本語で解説がなされた。

講演では及部氏により、日本近代美術史の博士として学芸員を務めているがアジア担当者は一人であるため、広くアジア全域、時にはイスラム圏も担当していることなど、略歴と紹介に続けて、UMMAの概要が伝えられた。

UMMAは一世紀以上も前の1910年にオープンした歴史ある美術館で、2万2千点という収集品のうち、アジア関連が6千点あり、その中で中国が最大であるが、日本関連1800点という数は州内では最大とのこと。2009年に新館が増築され、それまでスペースの問題で展示が難しかった収集品が表に出ることが叶った。アジア美術セクションはいずれも新館に設けられている。

今回の仏教の六感展では、仏教に関わる道具や装飾品、絵画がどのように我々に訴えているかを、六感に注目して紹介している。

視覚は美術品の鑑賞そのものであるが、聴覚としては、右写真のベル『五胡鈴(ごこりん)』の展示にあわせて、録音したベルの音を流している。鈴など、仏教の儀式に使われる音は、邪気を取り払ったり、幻想を打ち砕いたりし、魂を導く効果がある。実物には触れられないが、ミシガン大学工学部内のラボの協力を得て、自由に触ることのできる3Dコピーを用意。実物のブロンズにかなり近いものが完成したとのことで、美術品の鑑賞と合わせて、さまざまな技術が進んだ現代ならではの楽しみ方を提供している。

次に嗅覚。今回は中国の清代の染付香炉や、明代の青磁香炉、江戸時代の獅子型の香炉など、国も時代も異なる作品を展示している。会場には香りを印刷したカードが用意されており、“嗅ぐ体験”が可能。ちなみに、明代の青磁はDomino’s Pizza Inc.寄贈であるが、美術品収集に凝ったドミノピザ創業者、トム・モナハン氏のアートアドバイザーを先々代のUMMAアジア美術学芸員が請け負い、その際に結んだ契約によって80点ほどの美術品寄贈を後に得たとの話。同美術館のかなりのコレクションが研究者やコレクターからの寄贈によるものだそうで、大学の美術館でありながら、量的にも質的にも充実している理由が知れた。

味覚に関しては、この特別展では“お茶”に注目して展示。健康効果に加え、長時間にわたる仏教の修行を乗りこえるためにカフェインが重用されたという。中国宋代の白磁茶碗と日本の楽焼の茶碗という対照的な展示によって、茶葉で淹れる中国茶が、日本に伝わって、抹茶を点てて飲むものに変わったゆえ、茶碗の形状も変わったことを示している。また、より素朴な土っぽい作風が好まれるようになったことも見て取れる。味覚はここでは体験できないが、同大学の学生が制作した陶器の小片に触れる工夫が施されている。

触感についての展示としては、禅僧が身にまとう絡子(らくす:禅宗で得とくをした平信徒が付けることが許される袈裟[けさ])の横に、触ることのできる緞子の布を置いてある。きらびやかでありながらパッチワーク(継ぎ接ぎ)であるのは、仏陀が王子という裕福な出生であったことと、遁世者として出家してからの貧しい生活を示唆しているとのこと。

さて、仏教における第六感とは。心で捉えるという、最も重要な部分であるが、『当麻曼荼羅』の絵図(右下写真)を例に、もとになっている中将姫伝説の内容と、制作当時に実在した寺院や風景を忠実に描くことで、熱心に信心する尊さを示唆する効果が生まれる。このように、絵画は僧が人々の第六感に訴え、人々を諭すのに利用された。

仏教における五感および第六感に訴える品々の背景や意味が理解できたる分かりやすい講演内容であった。

UMMAの日本ギャラリースペースは、年に2、3回、テーマを決めて展示内容を入れ替えている。5月現在は“富士山”がテーマで、葛飾北斎の富嶽三十六景から『甲州石班澤(こうしゅうかじかざわ)』、そして、戦後日本を代表するグラフィックデザイナー福田繁雄の作品などが展示されている。茶道具も展示中。

UMMAは版画のコレクションも充実している。また、アートクラスやセミナー、パフォーミングアートや音楽のイベントも多数開催している。WEBでチェックを!

www.umma.umich.edu

仏教の六感展      

期間:3月23日(土) – 6月30日(日)

場所:University of Michigan Museum of Art (ミシガン大学美術館)

525 South State Street Ann Arbor 48109

時間:火ー土:11:00 am – 5:00 pm、日:12:00 pm – 5:00 pm