3月の2日(土)と3日(日)、デトロイト美術館(以下DIA)の恒例イベントとなった日本のひな祭りイベントが開催された。DIA、JBSD(デトロイト日本商工会)/JCD(日本文化開発)、在デトロイト日本国総領事館の共催によって企画をしているプログラムで、JSDウィメンズクラブや当地で日本の芸能や文化をたしなむ人々の協力を得て、ひな祭り関連に限らず、広く日本の伝統文化を紹介している。JCD(日本文化開発)は、財政破綻したデトロイト市そしてDIAを救済する“グランド・バーゲン”への寄付を通してその再生に貢献しており、日米間の友好促進のためにJBSD(デトロイト日本商工会)の一部として組織され、主に日本両国を文化、芸術、教育分野で結ぶ活動に携わっている。

エントランスホール:Great Hallには、七段飾りの豪華な雛壇が畳の上に飾られたほか、数多くの生け花が展示され、ひな祭り気分と春の香りを届けた。福引き「ガラポン」、緑茶の試飲、書道実演、日本昔話の読み聞かせなど、終日にぎわいを見せた。急須を用いて煎茶(緑茶)に湯を注ぐ煎茶道の実演披露に、日本人も高い関心を寄せていた。

 エントランスホールの奥、巨大なフレスコ画壁画に囲まれた荘厳なスペース「リベラ・コート」には特設ステージが設えられ、書道実演、茶の湯実演、琴の演奏とワークショップ、ファッションショーなど、盛りだくさんなプログラムが順次行なわれた。

 琴の演奏はニューヨークを活動の拠点としている石榑雅代さんが披露。石榑さんは琴と三味線のプロ奏者として25年以上の経験があり、米国内、日本や世界各国で演奏活動を意欲的に行なっている。長年にわたり米国における日本文化の紹介に尽力にし、日米間の相互理解及び友好親善促進に貢献した功績により、2016年に在外公館長表彰を受賞している。News week 紙「世界が尊敬する日本人100人」(2017年)に選ばれた経歴もある。DIAでの演奏公演は2度目。前回は昨年11月のアジアギャラリーのオープニング記念イベントで、アジア諸国の伝統音楽奏者らとコラボ演奏を行なった。今回はこのひな祭りイベントの他、3月1日(金)にDIAのプログラム「Friday Night Live」に2回にわたって出演した。見事な弦捌きと素晴らしい音色が来場者を魅了。コロンビア大学で邦楽クラスを受け持つ他、各地で指導にあたっているだけあり、ユーモラスなトークを交えた分かりやすい解説も好評を得た。また、当地の琴奏者である大光晴美さんととのコラボ演奏やワークショップも行なわれた。

 書道の公演は当地で活躍している書家である藤井京子さんが披露。これまでのひな祭りでもダイナミックな書のパフォーマンスを見せてくれた藤井さんが今回は平和を願った曲「イマジン」の音楽とともに、墨で地球の絵、「雛祭りにて世界の平和を願う」の言葉と、そして“愛”と“Love”の文字を2枚の身の丈以上の大きな紙に描いた。涙があふれたという声も寄せられたほど、観客の心を打つパフォーマンスであった。藤井さんはホールの書道ブースでは写経を実演披露。多くの質問ににこやかに対応していた。

茶道の実演は、裏千家鍋田社中、表千家コーラー社中の流派合同によるメンバーがお点前を行なった。様々な施設やイベントで文化紹介のために多数の実演をこなしているだけに、水場も無い即席の茶席ながらも、落ち着きと余裕があり、優雅な時を提供した。解説者が作法の説明に留まらず、茶道具や掛け軸に関わる日本の美意識や‟おもてなし”の考え方についても解説が添えられた。

 今回の“IMAGINE JAPAN”をテーマにした同イベントに日本から招かれ、和洋の音楽をダイナミックに届けたのは、名古屋を拠点に活動している“ネオジャパネスク”というバンド。DIA内の劇場DETROIT FILM THEATREで両日、1時間半に及ぶ演奏を行なった。ネオジャパネスクは、日本の伝統楽器である和太鼓、篠笛、尺八と、西洋のドラム、ベースギター、キーボードでオリジナル曲を中心に演奏。日本の美しい情景や四季の美しさを表現し、古代から続く人々の暮らしや文化を伝えようとする彼らの音楽は、時に静寂を生み出し、時にパワフルな音とエネルギーで会場を満たした。モータウン博物館などを訪れてエネルギーを得、人々の温かさに触れ、「デトロイトが大好きになった」という彼ら。彼らの好印象が日本や世界の人々に伝達されることを期待したい。

 日曜日の終了間近に、1回限りのそしてひな祭り2019の最後を飾るプログラムとしてファッションショーが催された。日本的な創作衣装に興味を寄せ、制作している当地在住の人たちによって、数々の工夫に富んだコスチュームが披露された。着物や忍者装束などを元にデザインを起こし、アメリカで入手できる生地やレースなどを使って創作しているとのこと。子どものファッションモデルも大勢混じり、賑やかなショーになった。

 別会場で和菓子作りのワークショップも開かれ、参加者は、どら焼きを作る機会を得た。長い行列ができるほど、大好評を得ていた。

 米人来訪者からは、当地で日本文化の展示だけでなく、実演を見たり体験したりできる喜びの声が多数寄せられた。架け橋になろうと、時間とタレントを提供している人々による文化紹介を通して、交流と異文化理解が図られていることを実感するイベントであった。