3月に入りましたが、ミシガンでは日中の最高気温でさえ氷点下の日が続き、まだしばらく冬将軍は退散しそうにありません。さすがに1月にミネソタで一時的に南極より寒い気温を記録するなど米国の大部分を襲った極渦(ポーラー・ボーテックス)侵入時のように何もかも氷漬けにはならないと思いますが、本当に春が待ち遠しいですね。それでも、少しずつ日は長くなっていますし、陽射しも幾分強くなっています。もう少しの辛抱ですね。今回はいつも長い前書きを珍しく短くして、本題の『小の月の大きな出来事』に入ります。2月は一年で一番短い小の月ですが、内外で色々な出来事がありました。

先ず当地米国のスポーツ界では、NFLプレイオフ決勝戦のスーパーボウルでニューイングランド・ペイトリオッツがロスアンゼルス・ラムズを13-3のスコアで破り、ピッツバーグ・スティーラーズに並ぶ史上最多6度目の栄冠に輝きました。テニスでは1月のオーストラリアオープンで優勝し、昨年のU.S.オープンに続いてメジャー大会連覇を遂げた大坂なおみ選手が世界中の注目を浴び話題となっていた矢先、まだ興奮も冷めやらぬわずか3週間後に突然サーシャ・バインコーチと袂を分かつという驚きのニュース。正式な記者会見ではなく、大坂選手のツイッターでのつぶやきに世界中が驚きました。ランキングベストテン入りから史上最速のメジャー大会連覇、No.1ランキング到達という近年稀に見るコーチと選手の成功例だったため、テニス関係者、一般ファンの誰しもが「何故?」と思ったことでしょう。下衆の勘繰りをする人が先ず思うのは『お金の問題』です。メジャー大会連覇とNo.1ランキング到達でコーチ料の値上げや賞金分配の割り増し要求でもめたか?などと思う人がいても不思議はありませんが、

直感的に私はそれはなかったと思います。今にして思えば、年初の前哨戦ブリスベン国際大会の準決勝で大坂選手が第1セットを多くの自滅的なミスで落とした後のオンコートコーチング(メジャー大会以外では認められている)でバインコーチのアドバイスを何故か素直に聞かず、まるでティーンエージャーに戻ったようにネガティブな反応と発言をして第2セットも修正出来ないまま敗退したり、オーストラリアオープンの試合前の練習時間をわずか15分で切り上げたとか、顔を見て話をしないとかそれ以前にはなかった「らしからぬ」態度が見受けられたり、報道されていましたが、既に二人の関係に溝が出来ていたのかもしれません。大坂選手はまだ21歳になったばかりで多感な乙女。シャイな性格もあってテニスコートのプレースタイルとは異なり普段は内向的で自分を外に出さない性格なので、その分逆に感受性が強く外部環境の変化や外からの刺激には余計に敏感なのかもしれません。個人的にはもう少しバインコーチと関係を続けた方が良かったのではと思っていますが、「女心と秋の空」と言われるくらいですから、多感な乙女が仲の良かったコーチでもそのちょっとした言葉や仕草に傷ついてもう話をしたくない、顔も見たくない、一緒にいたくない程急に嫌いになったりすることもないとは言えません。部外者には真相は分かりませんが、これまでのサクセスストーリーを台無しにするような喧嘩別れではなく、ピースフル・イグジット(平和的別れ)であることを願います。コーチと離別後最初の公式戦であったドバイ大会では残念ながら初戦敗退となりましたが、試合内容を観て感じたのは心・技・体がバラバラで「心ここにあらず」のようで集中力がなく自己コントロール出来ないまま自滅、終戦という感じでした。ディフェンディング・チャンピオンとして臨む次戦インディアンウェルズ大会では外野の雑音は気にせず、リグループして平常心を取り戻し、本来の力を発揮してもらいたいものです。Go, Naomi!!ついでに(失礼)、週遅れの男子ドバイ大会の2回戦で敗退した錦織選手も男女同時開催の同大会で頑張れ!!

日本のスポーツ界では、競泳女子日本代表の池江璃花子選手がこれまた突然に白血病と診断されたことを公表し、内外に激震が走りました。高校3年生の昨年8月にジャカルタで開催されたアジア競技大会の競泳女子6種目で金メダルの偉業を遂げた日本の誇る若きスーパースターですが、外国選手を混えた1月のオーストラリア合宿中に体調不良を訴え、予定より帰国を早めて検査を受けた結果判明したとのことで、来年開催予定の東京オリンピックを目指して強化トレーニングを続けていたのに大変気の毒な話です。偶然にも池江選手は私と同じ東京都江戸川区の出身と知り、海外に居ながら勝手に親近感を抱きましたが、何十年に一度の地元開催で、しかも自分が日本代表選手として参加出来る絶好の機会なのに病気のために参加出来ないかもしれない状況となり、本人が一番悔しい思いをしていると思います。病気公表直後に取材を受けた彼女のおばあ様の「水泳なんていい。とにかく長生きして。」という涙ながらの言葉に胸が痛みます。五輪担当相の発言が問題視されたりしておりましたが、本人が治療回復に専念出来るように周囲は余計な雑音を控えて静かに見守り応援してあげることが最善ではないかと思います。治療には骨髄移植や化学療法などが必要と思われますが、全ての治療が上手く行き完全に治癒回復することを祈るばかりです。

一方政治面では、先月半ばメキシコ国境の壁建設に固執するトランプ大統領とそれに反対する民主党との国家予算枠と再度のガバメント・シャットダウン回避を巡る綱引きの結果、2月15日の時間切れ寸前に予算案が議会承認され、これ以上の支持率低下を避けたい大統領も渋々署名しましたが、大統領が望む壁建設予算満額承認・獲得とはならず、不足分補填のため直後に『国家非常事態宣言』を発令し、軍備予算、ハリケーンや山火事などの災害救済用国家災害緊急基金など本来他の目的用に議会承認された別枠の予算から転用を目指しました。これに対し、カリフォルニア、コロラド他16州が違法であるとして予算転用を阻止すべく直ちに訴訟を起こし、更に過去に国家安全保障に関わっていた元高官58名が連名で「米国・メキシコ国境に壁を建設せねばならないという国家非常事態宣言を正当化する事実は存在しない」旨の声明を発表しました。国家非常事態を宣言した直後の記者会見で大統領自身が「こんなことする必要はなかった。」と口を滑らせたため、「必要がなかった緊急事態って一体何なんだ!?」と批判されています。本人は「壁建設に必要な予算を希望通り満額承認してもらえていれば・・・」の前置きの一言を言い損なったのかもしれません。トランプ大統領は「オレが作った」と自慢したいのでしょうが、コストの割りに期待効果の薄い壁が実際に作られたら(多分実現しないでしょうが)ウォール・オブ・シェイム(恥辱の壁)として末代まで汚名を残す代物となるでしょう。私に言わせれば、トランプ氏が大統領に当選したこと、今も大統領で居続けていることが『国家非常事態』なのですが・・・いずれにしても、訴訟は最高裁(人数的には共和党・保守派に有利ですが)まで持ち込まれ、争われる可能性大です。

次に先月末トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国家主席との2度目の米朝首脳会談がベトナムのハノイで開催されました。昨年6月にシンガポールで開催された初回会談以降、北朝鮮側では非核化の具体的な動きがなく、むしろ開発継続・強化の懸念があり、米国側も対北朝鮮向け金融・経済制裁を緩和する理由が得られない状況が続いており、米国の内政問題、自身と取巻き関係者に降りかかっているロシア疑惑、選挙資金管理法違反の嫌疑やシリア・アフガニスタンからの米軍撤収問題などでゴタゴタ、イライラしている中で国民の目を逸らし、人気回復のために今回の首脳会談で何かしら成果を挙げたい狙いと焦りが伺えます。果たして結果は大統領にとって吉と出るか凶と出るか?余談ですが、会談に向かう数日前の記者会見で「(北朝鮮との関係改善努力により)日本の安倍首相が自分をノーベル平和賞の候補者に推薦してくれた」との唐突な発言があり、「はあっ~、何のこっちゃ?」と思っていたら、日本の報道記事で数ヶ月前にトランプ大統領から安倍首相に電話があった際に依頼があって推薦していたとのこと。野党だけでなく身内の自民党内からも批判や疑問の声が出ている由。ごもっとも。(閑話休題)

その米朝首脳会談と時を同じくして、米国ワシントンD.C.では大統領選挙前から10年間トランプ氏の個人弁護士を勤めていたマイケル・コーエン氏が下院監視委員会にて宣誓議会証言を行ったのは皮肉なタイミングでした。TV放送で民主党議長、共和党委員代表、証人のオープニング・ステートメント(冒頭陳述)と序盤・終盤の質疑応答、最後のクロージング・ステートメント(最終弁論)を観ていましたが、民主党委員は各質問者がコーエン氏を重要証人として丁重に扱い、トランプ氏の大統領選挙前、選挙中、当選・就任後の違法あるいは違法の疑いがある行為、反社会的・非人道的行為に関して出来る限り多くの事例を聞き出そうとしたのに対し、共和党委員は全ての質問者がコーエン氏を犯罪者扱い(実際有罪判決を受けて5月には3年間の服役開始予定ですが)と嘘つき呼ばわりし、トランプ氏と喧嘩別れする前の前回宣誓議会証言ではトランプ氏擁護の証言に終始し、後日偽証罪に問われた証人が今回も嘘をついているに違いない、約2ヵ月後には獄中に入る犯罪人から何時間も掛けて証言を聞くこの聴聞会自体が時間の無駄と決め付け、トランプ氏の過去の言動の善悪や今現在トランプ氏がニュヨーク州南部地区連邦地方裁判所の犯罪調査対象になっているという驚くべき証言(これこそ議会が超党派で精査追及すべき事項ですが)には一切触れず、コメントもありませんでした。

ロシア疑惑を調査中のムラー特別検察官の最終レポートが間もなく提出されるとの情報もあり、上記2月の出来事と共に引き続き注視せざるを得ません。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。