
亥年の正月が過ぎ、2月となりました。昨年のクリスマス頃から年明け1月前半までミシガンの冬としては雪のない暖かな天気が続いていましたが、先月半ば過ぎの強烈な寒波襲来と共に一気に雪景色となり、月末まで最低気温マイナス20℃、最高気温でもマイナス10℃前後の天気が続きました。それまで大人しくしていたインフルエンザウィルスが「待ってました!」とばかりに飛び回り始めていますので、皆さん小まめな手洗い、うがいなどで感染予防に努めましょう。昨年末義父の17回忌参列のため家族で日本に一時帰国しましたが、その機会を利用して何年振りかで私の東京の実家を訪ね、亡父母、亡兄とご先祖の墓参りをすると同時に兄姉、姪達と久し振りの会食、懇談する事が出来ました。我家の娘二人は7歳と5歳の時に来米する前に一度だけ会っただけなのでお互いにほとんど記憶がないと話がしにくいだろうし、昔の写真があれば取っ掛かりの話題として良かろうと考え、千葉の兄と我家の長女に昔の写真を持ち寄ってもらったのが大成功で、最初から話がスムースにスタートして大いに盛り上がりました。その後折角の機会なので、富士山の良く見える山梨県内の温泉旅館を2軒一泊ずつハシゴし、1軒目では湖越えの富士山を、2軒目では屋上露天風呂に横たわって目の前に大きく迫る富士山を眺め、部屋での据え膳、上げ膳の和風料理と共にたっぷり堪能して来ました。幸い好天に恵まれ、コニーデ形状の美しい富士山をゆっくり脳裏に刻みました。私個人的には、富士山は登るものではなく眺めるものです。どちらの旅館でも仲居さんから「最近は外国のお客さんが多いです。マナーが良くない方がいるのがちょっと・・・」と伺いましたが、実際にロビーや風呂場、エレベーターや食堂などあちこちで外人客らしき人を見掛けましたが、欧米系ではなくアジア系がほとんどでした。漏れ聞いた話し言葉では中国、韓国、東南アジアからのグループ観光客のようでした。そこそこの収入があり、手頃な値段で比較的近い日本の温泉旅館にグループツアーで来日するようです。来年の東京五輪を控えて日本政府は外人観光客の増加を目指していますが、日本特有の文化・慣習や風情を損なわないように最低限のマナーは守って欲しいものです。
さて年明けのスポーツ界では、フットボール全米大学選手権決勝でクレムソン大がアラバマ大を前半ファーストクォーターこそ接戦でしたが、後半無得点に抑え大差で圧勝しました。それまで大学フットボールではこの10年程無類の強さを発揮し『ダイナスティー(王朝)』とまで賞賛されていたニック・サバン監督率いるアラバマ大に同校史上最大の点差での敗北を味わう羽目に合わせました。5年前に現在のプレイオフ制度が始まって以来初めてレギュラーシーズンからプレイオフ決勝まで15勝-0敗の完全優勝したチームとなりました。更に驚く事に、この試合で活躍したクレムソン大の司令塔であるQB(クォーターバック)とWR(ワイドレシーバー)は二人共1年生とのことで、この先大学中退してプロ入りせず卒業するまで続ければ、同校は新たな王朝として大学フットボールを席巻する予感がします。プロフットボールではプレイオフ決勝戦のスパーボウルが間もなく開催されます。常連のニューイングランド・ペイトリオッツ対久し振りに登場のロスアンゼルス・ラムズの一戦、いずれに凱歌が上がるでしょうか?
テニスでは今年最初のメジャー大会であるオーストラリアオープンで錦織選手と大坂選手が同大会史上初めて日本人男女同時にベスト8進出。残念ながら錦織選手は天敵ジョコビッチ選手と対戦中に右太腿の怪我で途中棄権となり先に進めませんでしたが、大坂選手の快進撃は続き決勝進出。昨年の全米オープン優勝に続くメジャー大会連覇とNo.1ランキングを賭けてぺトラ・クビトバ選手との決戦はスプリットセットした後最終第3セットを勝ち切った大坂選手が見事優勝。相手のクビトバ選手は2年前に強盗事件に合い利き腕である左手首を切られて負傷し一時は再起不能かと思われたどん底からの復活で最後まで諦めないプレーで二人共勝者にしてあげたい程の素晴らしい試合でした。1年前のこの大会開始時にはランキングが72位であった大坂選手が大会終了後はNo.1になるとは本当に凄い事です。コーチ陣と共にスキルアップだけでなく、身体的フィットネスと精神的なタフネス向上に取り組んで来た成果ですね。
心からおめでとうと言いたいです。まだシーズンは始まったばかり。錦織選手には怪我から完全に回復して再起を、大坂選手には引き続き好調を維持し怪我なくシーズンを通して活躍して欲しいですね。他の日本選手も含めて応援しましょう!UAEで開催されたサッカーアジアカップではサムライジャパンチームがベスト4進出。準決勝ではアジア最高位のイランと激突。何とか決勝まで進み通算5度目の優勝が出来たかどうか?今頃は結果が出ている事でしょう。
前書きが長くなりましたが、今回のテーマは『身勝手な不条理の限界』です。
皆さん既にご存知のように昨年末クリスマス前に始まったガバメントシャットダウンは年を越して史上最長の汚点を残し、連邦政府関係の公職従事者80万人に給与未払いという直接的な被害を、また病欠理由の欠勤者、自宅待機者、更に辞職者続出による人員不足の煽りを受けた空港のTSA(運輸保安局)や航空管制の重要業務が遅延・停滞し、乗客のチェックイン処理やフライトスケジュールにまで悪影響する二次的被害が顕著化し、ビジネス業界や一般国民からも非難の声が上がり、支持率が更に低下したトランプ大統領は遂にメキシコ国境の壁建設予算確保を前提条件にしていたシャットダウン解除・政府業務再開を条件抜きで暫定的に実施する方向に舵を切りました。
トランプ大統領の選挙キャンペーン活動中に何の裏付けもなく口から出まかせ的に大風呂敷を広げ「メキシコ国境に壁を作る。その費用はメキシコが支払う」という身勝手な大見得を切った公約に固執し、無理を押し通そうとし続けたものの、所詮メキシコが支払う筈もなく国民の血税を原資とする連邦予算から建設費用を捻出すれば自分を支持してくれた国民の反感を買ってしまうため、昨年新たに締結した「カナダ、メキシコとの新NAFTA(北米3国間貿易協定)からの大幅収入増で建設予算が賄える」と詭弁を労したり、国家緊急事態宣言を発令し国会議決手続きを端折って大統領独断で国防予算やハリケーン被害や山火事被害などの救援復興資金の一部を取り込んで筋違いの緊急予算組みしようとする事まで選択肢の一つに考えている節が見え隠れしていましたが、余りに甘かった自分と政権幹部の勝手な予想以上に膨大な経済的損失(1月末試算で既に彼が求めている壁の建設予算を超える金額)が発生し、大統領就任前から付き合いのある自分と同じ金儲け優先主義のお友達や共同事業者、選挙資金の大口寄付者からも苦情が出て来て、取り敢えずいやいやながら2月15日までシャットダウン解除・政府業務再開し、民主党との条件協議を再開することにしたようです。選挙時にトランプを支持して投票した有権者の中には深い考えもなく「壁はないよりあった方がいいし、費用をメキシコが払うなら作ればいい」位の考えで賛成した人もいるのではないかと思います。所詮身勝手で不条理な我儘に端を発した壁問題ですので、取り敢えずとは言え落ち着くところに落ち着いた感があります。
トランプ大統領の言動を見ていると、まるで就学前の小さな子供がオモチャ売り場かお菓子売り場の前で周囲の迷惑を横目に「自分の欲しいオモチャかお菓子を買ってくれ!」と駄々をこねて買ってくれるまでワーワーと大声で泣きじゃくったり、床に寝転がって手足をバタバタしている様子と同じですね。今までずっとそんな我儘なやり方で身勝手な不条理を押し通して来たため、大統領になった後もその習慣が抜けず同じ様な言動を続けています。親や周囲が「しょうがないな」と妥協してその我儘を聞いて買ってあげてしまうと騒いだ張本人はゴネ得でシメシメと思い、次にまた欲しい物があると『柳の下のドジョウ』を狙ってまた同じ事を繰り返します。そうさせないように親や周囲は断固とした態度で臨まねばなりません。「大統領になったら自分が一番偉いのだから好き勝手が出来る」と思い込んでいるのではないかとさえ感じさせる現大統領の猪突猛進に「待った!」を掛けてこれ以上の身勝手な振る舞いと不条理を許してはいけません。民主党だけでなく共和党の良識と勇気あるメンバーにも積極参加・協力してもらわねば成功は覚束きません。彼の選挙キャンペーンの主力メンバーの一人であり、リチャード・ニクソン元大統領に傾倒し、その近くで培った黒い政治手腕を振るって長年トランプ支援をして来たロジャー・ストーンがムラー特別捜査官のロシア疑惑捜査妨害、虚偽証言、証言者誘導操作など7つの容疑で先月末に起訴されましたが、これでトランプキャンペーン関係者で起訴されたのは実に6人目です。身勝手な不条理の限界を知らしめる意味で“Stop the President Trump!”には今がその絶好のタイミングではないでしょうか?
中間選挙で当選した23名の新人下院議員を擁し下院を多数派コントロールする民主党と上院多数派コントロールする共和党内良識派の適切でタイムリーな共同作業に期待しましょう。
執筆者紹介:小久保陽三
Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。