明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

皆さんの年末年始は如何でしたでしょうか?私事では、昨年末久し振りに家族揃って一時帰国しておりました。今回は義父の17回忌参列がメインイベントでしたが、そのため米国出発前に通常よりかなり早目にこの原稿を仕上げねばならなくなり、最新時事トピックはカバー出来ない状況になりました。悪しからず。

今回は珍しく前書きを短くし、新年1月号のテーマは『昨年末の騒ぎと新年に思う』です。

先月号で戌年2018年の「幕切れは如何に?」と記しましたが、結局最後の最後までほとんどトランプ大統領とその政権絡みでドタバタ騒ぎでした。前回大統領選挙時に短期間選挙対策部長であったポール・マナフォート被告は8月半ば過ぎにバージニア州連邦地裁にて8つの有罪判決を受けた後、ロシア疑惑調査中のムラー特別検察官に事実開示して捜査協力する条件で司法取引に応じていましたが、11月末に条件違反の虚偽証言があった事が判明し、司法取引はご破算となり更に重い罪に問われる見込みとなりました。続いて初旬にはトランプ大統領就任前から表沙汰にしたくないような私的な揉め事、ゴシップネタの処理を長年手掛けていた元顧問弁護士のマイケル・コーエン被告が同じく司法取引で捜査協力し、協力度を高評価したムラー特別検察官から禁固時間ゼロの推薦をもらっておりましたが、最終決裁権を持つニューヨーク連邦地裁は被告の違法行為の重大性を考慮し、禁固3年の実刑判決を下しました。また、その直後にはトランプ政権の初代国家安全保障最高顧問であり、就任以前の大統領選挙活動中から続いていたロシア政府関係者との頻繁な接触が露見し、国家への重大な背信・裏切り行為があったと自ら罪を認め、やはり司法取引に応じていたものの『売国奴』呼ばわりされ、かなりの禁固年数の実刑が言い渡されると予想されたマイケル・フリン被告の罪状審判がワシントンのコロンビア特別区連邦地裁で行われ、最終判決は新年3月に持ち越されました。その間、トランプ大統領は相変わらずロシア疑惑捜査批判と「ロシアとの共謀はなかった」と念仏のようなツイートを繰り返し、自分に忠誠を尽くしながら有罪判決となりそうな被告には『大統領特赦』を与える可能性を匂わせるツイートをして司法妨害行為ではないかと顰蹙を買っています。更にクリスマス休暇に入る直前には臨時連邦予算の期限切れ、財源切れによるガバメント・シャットダウンが回避出来るかどうか、期限切れ延長のための一時的繋ぎ予算案が上下院議会通過してもメキシコ国境沿いの壁建設予算取りに固執するトランプ大統領が署名するか、拒否するかで休暇直前のもの入りの時期に米軍関係者や連邦政府関係者は給与支給が中断するのではないかと気が気でなかったと思います。

これでさすがに打ち止め、終わりかと思いきや、更に輪を掛けるように突然「ISISは打ち負かした。シリア駐留米軍の全面的かつ速やかな撤収をする時期だ」と国家安全保障や内外の軍事戦略に関わる政権幹部や関係者に何の事前相談もなくツイートし内外の関係当事者を大慌てさせました。それが引き金となって先に昨年末で退任が

決まっていたジョン・ケリー国務長官に加えて生え抜きの軍出身者であるジム・マティス国防長官がこの2月末に辞任すると突然表明。理由は『大統領との見解・考えの相違』となっていましたが、それ以前にも大小様々な苦悩や葛藤があっただろうと容易に察せられます。名誉と規律・統率、同盟国関係者との協調を信条とする米軍エリートとしては、過去にもトランプ大統領の安易な思い付き的言動で何度も振り回され、その後始末や善後策の対応処理に追われて精神的にも肉体的にも疲弊していたところに

このシリア撤収発言。「イラクの二の舞かそれ以上に恐ろしい事態になりかねない。シリアに残るべき」と直訴しても埒があかず、「もうここは自分の居場所ではない、これ以上留まれない」と遂に我慢の限界を超えたのでしょう。これで現政権で実務に携わった専門の軍関係者は全ていなくなります。最重要な国家安全保障、軍事戦略に関わる考察と決定を素人のトランプ大統領が(就任直後「自分は他の将軍達よりもISISの事を一番良く知っている」と息巻いていましたが)他の事項と同様に安易なやり方で進めてしまうのかと思うと暗澹たる気分になります。常日頃トランプ大統領が唯一自慢出来、自画自賛していた税制改革による大幅減税と金融市場・一般経済の好況も昨年10月頭に27,000ドルに迫っていたダウ・ジョーンズ主要平均株価がアルゼンチンでG20開催中の米中首脳会談以降昨年末クリスマス前までに約4,000ドルも暴落(大恐慌以来最悪の12月株価)して、他の不祥事や揉め事には目をつぶっていた連中もトランプ大統領に不平不満を向け始めています。

それ以外で家内も私も気になったのは、一足先にカナダでそうなりましたが、ミシガン州でも12月7日付けでリクリエーション用マリファナが合法になったニュースです。奇しくも太平洋戦争で日米開戦の口火となった真珠湾攻撃の日(米国時間。日本では12月8日)と重なりました。以前から合法になっていたメディカル(医療用)マリファナについては、従前の医薬や治療法では治癒や病状の悪化防止、症状の緩和が不可能だった難病・奇病がこのマリファナのお蔭で奇跡的に改善され、患者とその家族にとっては夢の治療薬であり、医療用マリファナが合法化されていない州の住人は合法化されている州まで遠出し、大枚を叩いてまで買いだめして持ち帰るというニュースを何度か見て、「何でもマリファナは反対」という考えはなくなりましたが、リクリエーション用となると話は違います。責任の重い公職に就く警察官や救急・消防士、学校の先生・教授、託児所の保育士や病院・医療機関の医者・看護士などの中にも常用する人がいるかもと考えると自分も家族も信頼・安心して身を任せられません。特に車の台数、交通事故件数が悪い方で全米トップレベルのミシガン州は今でも運転中の携帯通話やテキスト発信、地図・道順検索行為、速度違反、あおり運転などで危なくてハラハラする場面が多いのに、マリファナ摂取でいわゆる「ラリッた」状態のドライバーが路上に増えるのかと思うとゾッとします。もらい事故を避ける意味でますます自己防衛的安全運転を心掛けないといけなくなり、車で出掛けるのが気が重くなります。

そんなこんなで戌年も後味の悪い幕切れでしたので、新年早々の本稿では少しでも明るい話題にしたいと思っていましたが、現実から目を背ける訳にもいかず、書き連ねてしまいました。ご容赦下さい。

新年の思いとしては、諸事万端、何事につけ今世界中で最も必要とされ渇望されているのは資本主義でも、共産主義や社会主義でもなく、ヒューマニズム、即ち『人道主義』ではないか?ということです。人が人間らしく尊厳を持って生き、周りの人達も一人ひとりの人格を認め、人間として敬意を持って触れあい、命を大切にして生きる」ことですね。経済成長・利益優先、大量生産・大量消費、自動化・ロボット化、効率重視の流れは技術の進歩・発展と利便性をもたらしましたが、同時に資源乱用、環境破壊・汚染、貧富の格差・二極化、人間性の無視・軽視、心と体を病める人の増加という負の財産を残しました。

先月号でも触れたカリフォルニア州複数の山火事、中南米からメキシコ経由で米国を目指す難民キャラバン隊、頻繁に起こる巨大・強力な竜巻、台風、ハリケーン、雪嵐など異常なレベルの自然災害の発生、各地で起こる紛争内戦・爆破テロ・銃乱射事件、人種・性差別、南極大陸の棚氷減少、周辺の水温上昇と海流変化、食物連鎖の素となるオキアミの減少、北極圏の海氷溶解、高緯度諸国の氷河減少、永久凍土の融解など唯一無二の存在である奇跡の青い惑星=宇宙船『地球号』の一員として自然を畏れ敬い、人間らしく、他人と共に助け合って生きるという有史以来人類としての基本的な姿を見失ってしまった事があらゆる災いと不幸の始まりではないでしょうか?私達は今もう一度自分と周りを見つめ直し、機械でもロボットでもない血の通う生きた「人間に帰る」必要があるのではないでしょうか?

そう言えば、11月の中間選挙の結果州知事・検察官とも民主党に奪われたウィスコンシン、ミシガン両州では共和党が年初の政権交代前に民主党の権限を極小化する臨時法案を強制通過させる暴挙に出て、有権者の意思を無視する事態になりましたが、亥年の今年、連邦政府のボスであるトランプ大統領にはこれ以上猪突猛進することなく、切に自重してもらいたいものです。それも儚く消える春の夢となってしまいそうですが・・・(涙)

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。

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