
テネシー州とノースカロライナ州の境界にまたがるアパラチア山脈の一部にグレート・スモーキー・マウンテン国立公園(Great Smoky Mountains National Park)がある。面積2,110km²で、米国東部で最大級の保護地区。また、数多くの歴史的な施設も保存されており、世界遺産にも登録されている。日本での知名度・人気度は低いが、訪問者の数は国立公園の中でも屈指。ハイカーにも動物好きにも歴史好きにも楽しめる故であろう。
そのグレート・スモーキー山脈の山間(やまあい)の町Gatlinburg(ギャトリンバーグ)はその国立公園の玄関口として知られている。夏場は山間の秘境とは掛け離れた雰囲気で、ゲームセンターや少々俗っぽい土産物屋が並び、観光地によく見かけるギネス世界記録の館、さらには「こんなところに、何も・・・」と感じてしまう水族館まである。自然を満喫したくて国立公園に来たのにと、げんなりする人もいるだろう。レポーターもその一人。
しかし! ホリデーシーズン、とりわけクリスマス前からクリスマス休暇時期には、この町が良い具合にデコレーションされ、ホリデームードに溢れた可愛らしい表情を見せる。
ここはギフトショッピングにも適している。
この地域のMoonshine(ムーンシャイン)』という、かつての密造酒は有名。禁酒法が布かれた時代や酒税が非常に吊り上がった時代に、ムーンシャイナーと呼ばれる密造業者たちが暗躍した。人里離れた山奥や渓谷に隠れ、月明かりの下でひっそりと蒸溜した姿からきた命名で、彼らがつくる密造ウイスキーはムーンシャインと呼ばれた。ウエストバージニア、ケンタッキー、そしてアパラチア山脈を擁するテネシー南部がムーンシャインの拠点となった。現在、数件(数社)がこの周辺で製造。もちろん今は密造ではなく、堂々と最新蒸溜施設を備え、より洗練された質、オリジナルな香りや味を追求している。GatlinburgにはOle Smoky Barrelhouse、Sugarlands Distilling、Doc Collier Moonshineの3つの出店があり、テイスティング(有料)ができる。様々なフルーツ系のほか、アップルパイ味やシナモン味などなど、変わったものを楽しめる。他にも、地元ワインを試飲できる店もある。また、Gatlinburg出発の周辺テイスティングツアーも提供されている。
お酒の話が長くなったが、もちろん、そればかりではない。ハチミツ専門店では食用の試食の他、ハチミツ入り美容ケア製品(ハンドクリームやシャンプー、パックetc.)を試せたり、観光地定番のジャムやピクルスもあちらこちらのお店で試食できたり、日本のデパ地下や温泉観光地などほどではないが、試食や試飲を楽しむことができる。
個性的なギフトショップ、ギャラリーも点在。カントリー風な素朴な雰囲気の店が似つかわしい土地柄でもあり、趣向を凝らしている。バッファロー肉を出しているレストランもある。
近隣には、クリスマスビレッジや、ライトアップ、様々なショーを催している施設、そしてアウトレットもある。夏には遊び施設が増える。観光地化した部分と、大自然が背中合わせで、少し道を逸れれば田舎そのものの景色も楽しめる、ユニークな所なのである。