アメリカ屈指の日本庭園  その2

2018年4月号でサンフランシスコのゴールデン・ゲート・パークに在る日本庭園を紹介したが、今回は、本格さで評判の高いオレゴン州ポートランドの日本庭園を取り上げたい。

PORTLAND JAPANESE GARDEN オレゴン州ポートランド

この庭園は、「息を呑むほど美しい、海外にある日本庭園12選」(2017年4月、http://tg.tripadvisor.jp/news/advice/12-japanese-gardens/)で、12選の筆頭に挙げられている。

サンフランシスコの日本庭園の敷地面積が約2万m²であるのに対し、ポートランドの庭園はおよそ4万8千m²。イメージできないほどの広大さである。実際に訪れても、木々や起伏によって、その全容を一望することはできない。市内を見下ろす小山と呼べそうなワシントンパーク内の中腹に位置し、駐車場横の入り口からジグザクの登り道を数分登ることになる。ワシントンパークそのものが、自然豊かな森をふくむ丘陵。これがダウンタウンに隣接していると言える近さにあるのが素晴らしい。

但し、この森を含む自然を保全しているせいもあり、限られた数の幹線道路は近年急速に混雑さがひどくなっている。余談ではあるが、数年前には全米で最も住みやすい街に挙げられたポートランドであるが、ラッシュによる通勤時間の増加、そして浮浪者が多くなったことなどが原因であろうか、上位から外れてしまった。

とはいえ、パーク内の自然の豊かさ、そして木々の合間から見える景色の良さは住民の宝であり、訪問者にとっての人気観光スポットである。

1963年に当時の東京農業大学教授により設計されたこの日本庭園は、8つの庭園様式から構成されている。路を歩いて鑑賞する「池泉回遊式庭園」、茶室へ続く「茶庭」、自然風景の「自然庭」、小石や砂で水の流れを表現する「石庭」など。深い木々の影と日ざしによって表情が変化する砂と石の禅庭園、建物の縁側の下に広がる石庭の美しさには定評がある。日本国外で最も本格的と言われることもあるほど。木や花の配置や刈込など、デザイン性に配慮と努力を注いでいることが窺われる。

開園50周年を迎えた後に進められてきた数年がかりのリニューアルプロジェクトが昨年ひと段落。和の大家とも称される建築家の隈研吾が関わり、大規模かつデザイン性の高いランニングセンターとギャラリーが新設された。門前町をモデルにしたと言われる直線的で洗礼された外観のギャラリーにはふんだんに木材が使われている。内装も直線的でありながら温かさを感じるのは、柔らかい日差しが差し込むせいか、日本的な空間だという懐かしさのせいか。チケット売り場もモダンに新築された。前述した登り坂は自然道であったものが、改装によって一部人工的になったことなど、整備されて趣が無くなってしまったとの声も少なくないとの話。しかしながら、庭園の奥に進むと、そこには苔むす茶庭や自然と一体になった豊かな樹木、滝や池が年月を経た豊かさとともに維持されている。ポートランドでは9月から4月までレイニーシーズンと言われ、靄のような細かい雨が降ることが非常に多い。その気候に育まれた木の高さや苔の厚さと美しさに目を奪われる。

受賞歴  昨年(2017年)だけでも以下のような数々の賞を獲得(同庭園ホームページより)。幅広い分野にわたっているのが興味深い。

  • エンジニアリング・ニュース・レコード誌 北西部ベストプロジェクト部門 ベストカルチャー・ワーシップ賞
  • 構造力学会 エンジニアリング部門 審査員特別賞
  • アメリカ建築家協会 ポートランド名誉賞
  • ASLAアメリカ造園家協会賞
  • メタル・アーキテクチャー・デザイン誌 メタルルーフデザイン賞
  • トラベル・ポートランド社 ツーリズム&ホスピタリティ産業賞