熊本県知事と くまモンがミシガン大学 来訪

ミシガン大学日本研究センター:CJSは、トヨタ客員教授プログラム30周年を記念して、9月上旬から6週間にわたり、元・現トヨタ客員教授による無料公開講演会を開催している。

 去る9月6日には、その第一回目として2002-03年度のトヨタ客員教授であり、現在、熊本県知事を務める蒲島郁夫氏が迎えられた。日本で最もポピュラーなゆるキャラといって過言ではない『くまモン』も登場し、キャンパス内の講演会場は学生、周辺日系人を多数含む大勢の聴講者で埋まった。

 司会者よりCJSは昨年70周年を迎えたことが言及された後、この日の講演者として招いた蒲島郁夫氏は知事であり政治家、政治学者でもあるとの紹介がなされた。蒲島知事は自己紹介で、親は大陸から引き揚げゼロからスタートし、自身は11年間新聞配達をしたほど豊かと言えない暮らし振りで、県立高校では劣等生であったが、夢があったと語り始めた。

夢はランチャー(牧場主)、政治家、そして小説家。高校を卒業した1965年、大学には行けず、自動車販売会社に勤めたが直に辞め、地元農業協同組合に勤務し、1963年に農業研修のために渡米。まずランチャーになる夢を実現した。その後1971年にネブラスカ大学に試験を受けて入った。「課せられたSATテストは難しかった」「学びつつパートタイムの仕事も持ち、スカラシップを得るためにも猛勉強しストレートA’s(全科A)を取った」など苦労話を披露し、元から優秀でなくとも苦境のなかでも成し遂げられることを示唆した。1974年にはネブラスカ大学農学部を卒業し、さらに学び続け、1979年に最終学歴であるハーバード大学大学院を修了(政治経済学博士)。当時32才、卒業を見越して安い飛行機チケットを先に購入したために非常にハードに追い込んだという話に、会場から温かい笑いが沸いた。

 ちなみに講演は全て英語。経歴から鑑みても当然のことながら、流暢で、かつ、ユーモアに満ちた話が続いた。

 日本帰国後、筑波大学教授を経て、東京大学法学部教授に就任。当時、東京大学卒ではない唯一人の教授であったという。そして55才でミシガン大学に客員教授として再渡米。2008年、東京大学名誉教授に就任したのと同じ年に夢であった政治家を実現するために熊本県知事選に出馬、当選した。2016年より3期目を務めている。3期目の選挙では若い対抗馬が現れたが、70%という高い支持率を得て再選した。

 知事の信念は「皿を割ることを恐れず(しっかりと洗う)」。願望をもち、ゴールを決め、その実現に向けて務める。自身の行動でも県の運営においても貫いているという。知事就任直後、負債を抱えていた県の立て直しのため、まずは自身の知事給与を大幅カット。長年先送りされてきていたダムプロジェクトを退ける決定を、分析に基づき理念をもって下した。

 そして、『くまモン』のケースにあてはめ、判断決定の基と方法を説明。『くまモン』戦略は見事に成果を収め、熊本県の認知度やイメージをあげる効果のみならず、海外では有償ライセンスを供与し稼いでもいる。海外有名ブランドとのコラボも多数あるとのこと。

 話題は一変して2016年の熊本地震に移った。家屋倒壊・破損197,000件、死者244人、そして被害総額は3.8兆円。

蒲島知事は「以前の熊本より良くする」と目標を掲げ、直後には、被災者が求めることが日々変わる現実に対応すべく、アナウンスすることを大切に考えたという。そして、苦痛を最小に留めるために、住宅や職に関して、県としての支援や策を講じ、再生・復興を模索、実現してきた。スポーツで人々に活気を与えようと、2019年にはラグビーのワールドカップを熊本で開催する。

 夢をもつことを何より大切にし、人々にも語りかけている蒲島氏。「これからもドリームをつくり、ハッピーを届けたい」との明るく強い言葉で講演を閉じた。地震災害にからめて、「元に戻すのは大変なこと。日々に感謝しましょう」との言葉に、多くの聴講者が頷いていた。

Q&Aタイムには、聴講者から感謝の声が重ねて届けられたほか、熊本ラーメンについて、災害時の県レベルの支援の必要性などなど、多岐にわたる質問が上がった。「海外での経験のある政治家は多いのか?」との質問に、「海外経験のある人は少なくないが、自分ほどの多様な経験をしている人はいないだろう」と回答。「学び、経験、コネクション、全て役立つ」と加えた。

 くまモンを伴っての海外訪問は4回目とのこと。講演終了後には写真撮影の時間も設けられ、「くまモンに触ってもOK!」という有名キャラクターでありながらのフレンドリーさに大人たちも興奮気味。明朗かつ親しみやすい蒲島教授/知事による分かりやすい講演内容と、癒しキャラくまモンによって、和やかな盛り上がりをみせた講演会であった。

 閉会後、蒲島氏に、当地来訪の感想を尋ねたところ、「当時は東大教授時代での客員教授で、一番生産的だった時期でした。再訪出来て、懐かしく嬉しいです」「ミシガン大学は研究も進んで、より良い環境になっていますね」と、にこやかに応答してくださった。

 夕方には、くまモンとの交流会も開かれ、日本を遠く離れて、人気のゆるキャラと遊んだり記念撮影をしたりできる貴重な機会となった。