
男声合唱団ホワイトパイングリークラブ(以下WPGC)恒例の演奏会である春のファミリーコンサートが6月3日にファーミントンヒルズ市にある教会にて開催された。今回のコンサートはグリークラブの創立20 周年に当たる記念すべき節目で、日本に帰国した元団員が10人強かけつけて参加。また、交流のあるニューヨークのグリークラブの団員2名も友情出演し、現メンバーのほぼ2倍の人数での演奏が行なわれた。
プログラムは5部構成で、1部と5部はWPGC、2部と4部はそれぞれ賛助出演の女声合唱団トリリアム(Trilliun)ならびに混声合唱団音ともだち(Otomodachi)、そして3部は合同演奏という様々な形態の合唱であふれるものとなった。
第1部、団員達が歌いながら颯爽と登場した後、WPGC会長を務める斎藤氏が来場歓迎のことばに続けて、「長い間続けてこられたのは、ここにお集まりのみなさま方のご支援とご友情のお陰です」と感謝を伝え、「この20年間、地域の皆様から多くの交流の機会を頂きました」との前置きでこれまでの主な記念すべき活動を紹介した。以下、英語と日本語、両方で伝えられた挨拶のスピーチから引用させていただく。
2002年オペラハウスで、デトロイト・シンフォニー/イツアーク・パールマン指揮で歌った第九、2003年にはマキナーアイランド/グランドホテルで開催されたミシガン州リーダーシップ会議でグランホルム知事や政財界人の前でも歌う機会を頂き、「日本人は車作りだけではないんだな」との印象も持って頂きました。2005年にはニューヨーク・カーネギーホールでニューヨークやボストンの男声合唱団と共にラウンドシンガーズとの共演もありました。2010年には当地で開催された日米中西部会の開会式で、中西部各州、並びに日本の姉妹県である県知事さんたちの前で、日米加の国歌を合唱する光栄にも浴しました。
最も忘れられないのは、あの7年前の東日本大震災が起こった時の事でした。震災の2か月後に、カーネギーホールで仙台の皆さんと一緒にチャリテイー・コンサートを行いました。あの時はミシガンでも多くのアメリカ人の方々、アメリカの団体の方々からご支援を頂き、その支援に感謝するために日本総領事館が主催した「ありがとうミシガン・コンサート」にも参加でき、私たちにできるささやかな地域貢献をすることができました。毎年サギノー市で開催される「日本祭り」では、「カエルの歌」を心待ちにしてくれるファンの方々とお会いするのをいつも楽しみにしていました。有志で参加したMLBニューヨーク・ヤンキースタジアムやシテイー・フィールドでのアメリカ国歌の合唱、天皇誕生日の日米国歌の合唱など、実にたくさんの交流の機会を頂きました。
会長挨拶は、「この素晴らしいミシガン、そして地域の皆様に改めて感謝申し上げます」との謝辞と、団員の勧誘、そして、このスプリング・ファミリー・コンサートが30周年までも続けられるようにと祈念することばで締めくくられた。
第1 部はWPGCの歴代指揮者4 人が交代しての5 曲。幕開けは、エルビスプレスリーがリメークして大ヒットした『Love Me Tender』の原曲『Aura Lee』。続いて『Sailing Sailing』と英語曲の後、ミシガン州と姉妹県州である滋賀県の湖にちなんだ『琵琶湖周航の歌』など、WP GCの定番曲といえる親しみのある曲が続いた。そして、合唱曲の代表曲『大地讃頌』、日本を代表する歌手美空ひばりさんの『川の流れのように』と、不滅の名曲が選ばれ、朗々と歌声を響かせた。それぞれに想い出の深い、歴史を刻んできた曲であろうと思うと、更に心に染み入るものがあった。
第2部は女声合唱団トリリアムが登場。彼女たちの演奏に賛助出演したことがきっかけでWPGCが誕生したとのことで、生みの親とも言える長い付き合いの間柄であり、この年次コンサートにも必ず出演してきている。今回は讃美歌でスタートし、クラシック曲からメンデルスゾーン作曲の『歌の翼に』、そして、ミュージカルより“マイフェアレディ”と“キャッツ” の挿入歌を表情豊かに合唱。最後に日本を象徴する花の名が題名の合唱曲『さくら』(大熊崇子作曲)を可憐に優しく歌い上げた。
第3部は出演者全員でオラトリオ“メサイア”のハレルヤコーラスを合唱。総勢60名余による厚みのある歌声が教会の礼拝室に響き渡った。プログラムの曲目紹介で「この輝かしい合唱曲はWPGC 創立20周年を記念して集まった全員で、喜びと共に歌うに相応しい曲だと思います。」と記載されていたが、聴く者にも喜びが伝わってきた。
第4部は混声合唱団音ともだち。WP GCやトリリアムのメンバーも含まれており、より難しいことに挑戦したい人々が集まり、難易度の高い曲に挑戦している。今回も、かつてのNHK全国学校音楽コンクール課題曲となった『めばえ』に始まり、有名な『アヴェ・マリア』などの聖歌を男女の音域の広く豊かなハーモニーで届けた。
締めくくりの第5 部は再びW P G C が舞台にたち、「詩人立原道造の詩をもとにした愛する喜びを歌った「夢見たものは」、シューベルトの聖歌「Psalm 23 主はわが牧者」を古いドイツ語聖書の言葉に載せて、またアメリカのヒット曲「You raise Me Up」やミュージカル回転木馬の挿入歌「You’ll Never Walk Alone」、さらに日本のヒット曲「サライ」や「島唄」など幅広いジャンルの曲を披露。毎回の演奏会で新しい曲に挑戦しており、歌に対する愛情と意欲が伝わってきた。
節目を迎えたWPGCの更なる活躍を祈りたい。