華道池坊の教授を迎えて和やかに

  例年になく冬が長かったミシガンに春の花ばなが咲き誇った5月10日(木)、いけばなインターナショナルのデトロイト支部(Detroit chapter 85)による文化交流イベントがサウスフィールド市にある教会にて催された。会場のあちらこちらにメンバーが用意した生け花が飾られ、花の香が満ちる華やかな空間が生まれていた。五月の節句飾りも展示され、雅さを添えていた。

 

在デトロイト日本国総領事ご夫妻も出席し、総領事の挨拶に続いて、当地で活躍する書道家の藤井京子さんが書の実演を行なった。書は畳大の紙に2つ。季節に相応しい、春を迎えた喜びを表した「一陽来復」の熟語とその意味を隷書体で、そして、紀友則の代表歌「久方の ひかりのどけき 春の日に しづ心なく 花のちるらむ」を行書体で書き上げて、英語で意味を解説した。歌中にある‘花’は桜を指し、日本のソメイヨシノは当地のチェリーブロッサムとは異なり、とても繊細で、その美しさを愛でている歌であると講釈した。

  次に登場したのは、デトロイトダウンタウンに在る「PuppetART」の団員による『鶴の恩返し』の人形劇。「PuppetART」では、日本の昔話『鶴の恩返し』:英語名“The Crane Maiden”を恒例の演目の一つに加えており、この日は序の場面である太郎の庭・薬草畑で花を愛でたり、鶴の化身である女性との出会ったりする場面を抜粋して演じた。人形や操り手の衣装・舞台のアート性が高く、日本的な自然感も織り込まれた演出に、参席者は引き込まれるように見入っていた。

この日のメインイベントとして、ノースカロライナ州から招かれた華道家元池坊の鈴木笑子教授による実演に移った。鈴木教授は在住地であるノースカロライナ州ヘンダーソンビルに日本文化紹介施設“WNC Japanese Culture Center”(WNC:Western North Carolina)を設立し、いけばなの普及伝播に努めている。実演は7種(7瓶)に及び、ユーモラスな話を交えた英語の解説つきで進められ、始終和んだ雰囲気に溢れた。池坊の3つのスタイルである「立花」(最も古い様式)、「生花」(江戸時代に成立したシンプルな様式)、そして「自由花」(フリースタイル)、それぞれの特徴を分かり易く説きながら実演紹介していった。

鈴木教授は、2年前に盛大に開催された同支部創立50周年記念イベントにも招へいされ、その折には8瓶の生け花の花材を事前に処理し生ける段階のみを実演したが、今回は枝葉を落としたりワイヤーで形を整えたりするところも披露した。

  「春の風を入れるために枝をトリムしましょう」「美しい茎のラインを見せるために余分な物:茎葉を取ります」など、分かりやすく説明。それぞれの花材を生かすための手品のようなワイヤー処理や、庭の枯れ枝や身近な花々から生まれた、季節感・生命力あふれる作品に、参加者から称賛の声が上がった。日本の華道であるが、トロピカルな葉や花などをあしらうこともある。今回はアスパラガスの花茎も使用され、「Wow!」の声があちらこちらで発せられていた。「自然界ではありえない取り合わせを一瓶の中で楽しむことができるのも生け花の面白さです」との言葉に、より一層、生け花の魅力を感じた人が多かったのではないだろうか。

  メンバーの大半が非日本人であり、その友人を主とする大勢の米人が訪れていたが、それぞれに表情のある美しい生け花作品や、藤井さんの書に高い称賛の言葉が交わされていた。

  いけばなインターナショナルデトロイト支部は、恒例となったデトロイト美術館の「ひな祭り」イベントや、デトロイト日本商工会とJSDウィメンズクラブ共催による日本祭りで生け花の実演や展示を行なっている。いけ花を楽しみつつ、花を通じて日本伝統の美意識と華麗さを人々に紹介し広める一助となっている。

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