
3月11日(日)の午後、森みゆきさんによるコンサートがウォルドレイク市のハイスクール(Walled Lake Central High School) にて催された。春遠いミシガンの広い講堂に明るい歌声が響き渡った。
みゆきさんはNHK子供番組『おかあさんといっしょ』の第15代‘歌のお姉さん’ として1983年にデビュー。今年デビュー35周年を迎えた。結婚を機に1999年よりミシガン州に在住し、日本とアメリカでの音楽活動のほか、豊かな経験や見聞をもとに、日本の小学校での『わくわく授業』をはじめとする講演や執筆など幅広く活躍を続けている。
2004年に当地で「ドリームコンサート」を初めて開催し盛況を博し、2006年にも実施。その翌年末に子供パフォーマンスグループ『ドリームシンガーズ(以下D.S.)』を結成し、2008年以来、共にコンサートを毎年開いてきている。プロ歌手であるみゆきさんの指導、そしてプロデュースによる本格的なステージは高い評価を得ている。
D.S.は日本人に限らず、日本に関心をもつ子ども達がメンバー。みゆきさんは、歌の練習に留まらず、歌を通して美しい日本語や日本文化を習得し、仲間との協調性を学んだり自信をつけたりする場であって欲しいとの信念のもと指導をしている。日本祭りなどの文化紹介イベント、チャリティーイベント、世界子供フェスティバルなどに参加し、国際交流、文化紹介の担い手としても活躍している。
今回のテーマは「みんな世界に一つだけの花!」。みゆきさんは、「D.S.も毎週いいこと探しをすることで、ポジティブな物の見方をするようになっていき、ハーモニーや互いを支え合うことで友達を思いやる気持ちや自己表現が豊かになり、様々な違いを認め合う素敵な関係性も育っています」とプログラムに記している。
オープニングは、みゆきさんのソロで、世界中で愛された映画/ミュージカル作品『サウンド・オブ・ミュージック』の原曲と日本でアニメ化されたテーマ曲『両手を広げて』のメドレーでスタート。みゆきさんはこの作品に感動し、憧れのジュリー・アンドリュース女史やトラップ一家と出会う機会も実現したことで、さらに子供の気持ちを尊重した活動への想いは強固なものとなっていき、今日の「ミユキッズワールド」を確立してきたという。続いて同作品で最も親しまれているといえる『ドレミのうた』をD.S.が加わって合唱。映画の情景が目に浮かんだ観客も多かったのではないだろうか。
50年以上、どの時代の子供たちにも親しまれてきている“お猿さんだよ~”の歌『アイアイ』、そして、『おかあさんといっしょ』で生まれた人気曲『どんな色がすき?』など、大人も童心に戻るような懐かしい曲の数々の他、一転して、みゆきさんのピアノの弾き語りによる『ハナミズキ』(作曲:マシコタツロウ)がしっとりと奏でられ、ピンク色の照明と相まって、会場は優しい雰囲気に包まれた。
アニメ『ちびまるこちゃん』の『踊るポンポコリン』の陽気で軽快な曲では、会場からダンサーを募り、和やかが溢れた。
前半の終盤は、みゆきさん自身の母としての想いを詩にした曲『お母さんっていいね』を慈愛にみちた歌声と表情で届けたあと、D.S.の切れの良い踊りによる『南中ソーラン節』が元気なパワーを会場に届けた。
後半は、D.S.の女の子たちは白いドレス、男の子はワイシャツにネクタイという正装姿で登場。トーンチャイムを使った演奏は、ガラスのような音色と清楚な姿によって、天使たちの贈りもののようであった。
盲目の女の子がウサギが「跳ぶ」という言葉を「飛ぶ」と想像したことを歌にした『空飛ぶうさぎ』の曲には、D.S.メンバー自筆の感想画がスクリーンに映し出され、メルヘンの世界に誘った。子ども達の歌声、演奏が与える素晴らしい力を感じさせられた。
みゆきさんのオリジナル作品『Love Your Life』は、「いじめや差別が減り、互いを尊重できるように、子ども達が強く幸せになるように」との願いをこめ、「もっともっともっと強く生きて」と呼びかけている曲で、D.S.の子ども達と毎年一緒に歌ってきたが、今年は穏やかな子が多いという今年のメンバーらしく、たたみかけるように柔らかく歌い上げた。
最後に、今回のテーマにぴったりな『世界に一つだけの花』を全員の声を合わせて熱唱。「人は一人一人違うことを認め合い、それぞれが輝けることこそが素晴らしい」と謳っている曲の想いが伝わってきた。
メンバー唯一の男の子は、今回が3年目の出演となるお姉さんと一緒に、初参加。二人とも大舞台に気後れする様子を見せず、良い表情でひたむきに歌っていた。終了後、ご両親は「みゆき先生が熱心に指導してくださってて、その情熱にひっぱられています」「どちらかというと内気でしたが、自信がついて、堂々としてきました」と話してくださった。
違いを認め合い、一人一人が輝やけることを大切にしてきたみゆきさんとメンバーたちのパフォーマンスは、観客にも、その素晴らしさが伝播したことであろう。
なお、オリジナル曲 『Love Your Life』を
通して、みゆきさんは 『Love Your Life
Project』というプロジェクトを昨年スタートした。いじめや差別などなど、人々が傷つけあうことを無くし、互いに尊重できるよう、音楽を通して呼びかけている。手話も添えられおり、Youtubeで世界に発信中。立ち上げた理由を弊紙3月号でみゆきさんが綴っている。
LOVE YOUR LIFE (New Version)
作詞・作曲 森 みゆき
どうしてそんなに 悲しい顔しているの
生まれた時は みんな天使だったのに
いじめたりいじめられたり 何が起こったの
ひとりぼっちと 心閉ざしてる
涙は生きるエナジーと信じて
進もう明日へ
LOVE YOUR LIFE
もっともっともっと強く生きて
LOVE YOUR LIFE
きっといいこと待っているから
どうしてうつむいたまま 歩いているの
大きな空を見ることできるはずなのに
冷たい風が 君の心痛く惑わせ
輝くことさえ 置き忘れてる
夢は誰でも持てるパワー
迷わず明日へ
*LOVE YOUR LIFE
もっともっともっと強く生きて
LOVE YOUR LIFE
きっといいこと待っているから
*2回繰り返し
“LOVE YOUR LIFE!”
写真提供:森みゆきさん