人に嫌な思いはさせないようにといつも心がけているつもりなのに、どうしてだか人間関係に躓きを覚えることが多いという場合、もしかすると、あなたの意思疎通の図り方がその妨げを作っているのかもしれません。今回は、そんな人間関係の不和をも生じかねない意思疎通の図り方というものについて一緒に見ていきましょう。

「Aさんがお願いするとどうしてうまくいくのか、自分もAさんと同じことを言ったはずなのに、どうして相手の反応が異なるのか」など、不可思議を感じた経験が誰しもあるのではないでしょうか。個々背景の異なる者同士が語り合うわけですから、どのような意思表示をしたとしても分かり合えないこともありますが、Aさんが話すとうまくいくというのは、偶然ではなく、Aさんの意思疎通の図り方にその秘密が隠れていることが往々にしてあるものです。

一般に、Aさんのような会話がスムーズにいく人は、人とうまく語り合える技術なるものを身に着けている傾向にあります。人とうまく語り合う技術には様々なものがありますが、例えば、話の要点を簡潔まとめる能力、相手にわかりやすい形で伝達する能力、また、自分の気持ちや考えをまっすぐに表現できる力、同時に、相手の気持ちや考えをも思いやる心こもった話し方ができる能力などがあげられます。

例えば、下記のようなたわいのない友人との会話、

① 「昨日、パスタ美味しかった。行ってみて。」

② 「昨日、Cさんのお勧めのパスタ屋さんに行ってきたんだけど、最悪だったわ。パスタはまあ美味しかったけどさ。まあ、あなたも行ってみればわかると思うけど、私はお勧めしないわ。」

③ 「パスタって好き? 昨日、どこどこで食べた何々のパスタ、この間、一緒に食べて感動した何々の味に似ていて、とても美味しかったので、もしパスタ好きだったら試してみる価値あるかも。」

聞き手が受ける印象を①~③で比べた場合、大きな違いがあるのではないでしょうか。まず、①の場合、聞き手はどのようなパスタであったのかはもちろん、全く話の内容が見えないのではないでしょうか。また、話し手は、一方的に自分の言いたいことを語っているのみで、聞き手の立場に立って話がされていません。聞き手とのつながりに気をとめることもなく、会話を進行しています。このような会話形態の場合、聞き手が話し手の意図を誤解してしまうことが起こりやすく、事によれば、自慢話と解釈されてしまったり、押しつけがましい印象などを与えてしまうこともあるでしょう。では、②はどうでしょう。①と同じく、話の内容が不明確で、一方通行な会話形態です。また、Cさんは聞き手とも友人関係にあるにもかかわらず、後ろ向きな形態で会話が進行されています。聞き手を複雑な気分させてしまうのではないでしょうか。また、Cさんと友人関係でなくとも後ろ向きな表現を聞くというのは、心地のよいものではありません。では、③はどうでしょう。こちらの話し手は、①と②とは異なり、自分の体験を聞き手も心の中にうまく描くことができるように、理解しやすい形で情報が伝達されています。また、会話形態も一方的なものではなく、疑問文を取り入れるなど、聞き手の気持ちや考え、また、価値観なども折入れながら話を進めるというキャッチボール形式です。

では、もうひとつ、受け答え方というものに主眼を置いた例を見てみましょう。

「先週、学校でみんなにびっくりされちゃうことがあって、とてもショックだったの。」

① 「あなたって、やっぱりB型ね。」

② 「いつものようにまたあなたが変なことやったんでしょう?自業自得よ。」

③ 「辛かったでしょう。どんなことがあったの?」

もしあなたが①の返答を受けたとしたら、どうような気持ちになることでしょうか。相手がちゃんと真剣に自分の話を聞いてくれていない、または、自分の話すことに相手はあまり興味がないのだろうなどと、気を悪くしてしまうのではないでしょうか。また、自分がショックだったと表現した気持ちに対してもB型という型にはめ込むことにより、処理されてしまい、更に、落ち込んでしまう結果になるのではないでしょうか。さて、②の返答を受けた場合はどうでしょう。自分の言動に誤りや欠点があるとした前提で批判/非難され、更に、それらの言動を正すべきであるとして言われてしまい、胸がキュッと締め付けられたような気持ちになるのではないでしょうか。また、常時、彼/彼女から間違いの指摘や批判/非難的な言葉を浴びることとなれば、彼/彼女とは、会話を避けるようになってしまったり、また、時として、彼/彼女と会話をする際は、妙に自己を正当化させることに意識が集中してしまったりするのではないでしょうか。では、③の受け答えをされた場合はどうでしょう。①や②とは対照に、相手が自分の気持ちを理解、また、共感してくれたことにより、へこんだ気分が少し軽くなるのではないでしょうか。また、どんなことがあったのか、どんな辛い気持ちだったのかなど、心を開いて話してみようかという気持ちにもなれるのではないでしょうか。

上手な話し方とは、単に丁寧な言葉を使って話せばよい、言葉巧みに流暢に話をすればよいわけではありません。いくら丁寧な言い方をしていたとしても嫌味なニュアンスが含まれていたり、批判/非難的な物も言い方では、自分のメッセージが人にうまく伝わることはありません。また、自分の意思、または、真実を言っているだけだからと相手の意思に心を配らず、自分好き勝手な言葉を並べてしまっては、これまた、相手の気分を害することが生じたり、また、相手に自分の思いが上手く届くことはないでしょう。その一方、相手に気を使い過ぎて自分の言いたいことが伝えきれなければ、同様に、良い話し方とはいえません。もし納得できないことがあるならば、その意をうまい具合に表明することが大切です。

話し方についての数々の本が出版されていたり、人とうまく語り合える技術トレーニングなどがあちらこちらで提供されていたりするように、自分の考えや思いを人に上手く伝えることは多くの者にとり、容易ではありません。しかし、私達人間は主に言葉を使って、人間関係を築いていくゆえ、意思疎通の巧拙というのは、人間関係の在り方までにも影響を与えてしまいます。意識的に嫌な話し方をしているという人はほぼいなく、また、多くの私達は、自分がどのような意思疎通の図り方をしているのかに気がついていないものです。「君の言葉って、厳しいな~」と言われることがよくあったり、話をしていて、どうも相手が不機嫌になるということが多いようなら、これを機に、自己の意思疎通の図り方を振り返ってみることもよいのではないでしょうか。

Lifescape Counseling LLC
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こあきバイヤーズドルフ:Lifescape Counselingのオーナー、プロフェショナルメンタルヘルスカウンセラー。West Bloomfieldにて日本語で個人/カップル/グループカウンセリングを提供。お問い合わせは、お電話、又は、ウエブサイトをご利用ください。

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