この冬のミシガンは珍しく例年よりかなり寒い冬でした。日本からの海外出張者、駐在者、出向者やご家族の皆さんは雪と寒さに驚き、戸惑われたのではないかと思います。3月にはさすがに積もっていた雪も溶けてようやく春めいて来たと思っていた矢先の4月頭にはまた雪がチラつき(現時点では予報ですが)エープリルフールの延長かと思わせました。我家の玄関前の水仙も雪の下に隠れていた若芽が日に日に伸びて、既に数株は色付いた蕾が膨らんで今にも咲きそうです。ミシガンのような寒い地域ではやはり長く寒い冬の後に訪れる春の喜びは格別です。日本では今年は桜の開花が例年より早く関西地方では観測史上最速だったとか。うっかりすると花見のタイミングを失って桜が散ってしまったなどと後悔する人もいるかもしれませんね。

スポーツの話題では、マーチ・マッドネスと呼ばれる全米大学バスケットボール選手権でご当地ミシガン大学が今年はファイナル4まで(これも現時点で)勝ち残り、最終的にどうなったか?また、3月末にはMLBシーズンの開幕。地元デトロイト・タイガースの初戦は雨で順延でしたが、他はもう1試合を除き予定通りプレーボール。日本からポスティング・システムでLAエンジェルス入りした注目の『二刀流』大谷選手はオープン戦では投打ともまだまだエンジンが掛からない状態でしたが、打者としては相手投手の球種(特にMLB独特の動くボール)や投球の癖・リズムに、また投手としてはMLB仕様のボール、硬く傾斜のきついマウンド、相手打者に慣れてくれば、大きなプレッシャーに負けず周囲の期待に応える活躍をしてくれるのではないでしょうか。他には行き先がなかなか決まらずやきもきした末に古巣シアトル・マリナーズに復帰入団したイチロー選手、カブスに移籍したダルビッシュ投手、日本の読売ジャイアンツに里帰り復帰した上原投手などそれぞれの場所と役割で活躍して欲しいと願っています。

さて、今回のテーマは「春の嵐か椿事か?」です。

テニスファンの方はご存知のように、男子テニスでは錦織選手、西岡選手が怪我から復活。まだまだピーク時のレベルには程遠い状態ですが、「焦らず、怠けず、諦めず」で進んで欲しいです。

一方女子テニスでは何と言っても大阪なおみ選手が新コーチとの相性がピッタリはまり今期出だしから好調。先月カリフォルニア州インディアンウェルズで開催された4大大会に次ぐレベルの大会で過去・現在のナンバーワンランクプレイヤーを次々撃破しての優勝がWTA初優勝と大躍進。春の嵐と言うべきなのか、彼女の天然な性格と相まって一気に世界中から注目の的となり、4月以降も期待せずにはおれません。

将棋界では昨年プロデビュー後いきなり29連勝で話題になった中学生棋士藤井四段が年明け公式戦初戦黒星の後16連勝、順位戦C級2組で10戦全勝で優勝し一期でC級1組に昇級と同時に五段に昇段、前後して朝日杯将棋オープン戦で一般棋戦初優勝、規定により六段に最速昇段、と全て中学生では初の偉業。五段期間がわずか16日間で六段になったため彼の五段昇段祝い関連グッズが直ぐに生産・販売打ち切りで希少価値のお宝となったというおまけつき。こちらも春の嵐か椿事か?先月末中学生として最後の対局は黒星となり今回連勝記録は16で途切れましたが、まだこれからいくらでも連勝のチャンスはあり、一体どれだけ、いつまで『史上初』の記録が生まれるのか楽しみと言うか末恐ろしい程の偉才・天才棋士ぶりです。

上記2件は明るい春の嵐か椿事ですが、暗い方では先月号でも触れたフロリダ州パークランドの高校内での銃乱射事件がその後も全米レベルの話題になっています。トランプ大統領は事件直後に共和・民主両党の有力議員や被害にあった当該高校の学生・教師・学校関係者を集めて再発防止のために何が出来るか、どんな方法があるかなど意見聴取、アイデア交換したりして銃器購入可能年齢の引き上げや半自動式ライフルを全自動連射可能にするバンプストックの販売制限、精神不安定者への銃器販売禁止など自ら積極的に動いてリードするような素振りを見せたものの、その後NRA(全米ライフル協会)のトップと会談した後はトーンダウンし、単なる気休めのジェスチャーだけだったのかと思わせています。

また、両党の上下院メンバーも過去の多くの乱射事件の際と同様にお悔やみと再発防止対策の必要性を謳うリップサービスばかりで、未だに具体的な銃規制強化案も再発防止案も議案として提出・審議出来ておらず、トランプ大統領・政権共々全く当てにならない、情けない状態が続いています。

業を煮やした今回の被害当事者である高校生・中学生を中心に過去の乱射事件の被害者やその親、友人、関係者が先月24日、25日の週末に首都ワシントンDCの他、全米各地で“March for Our Lives”と銘打った大規模な抗議デモ・集会を開き、大統領、政権幹部、議員達に圧力を掛け、今回一度限りのイベントではなく、Movement(運動)として今後も続けて行くと宣言した事もご存知の通りです。私もTV放送を観て、彼らは本気で真剣に銃規制、再発防止を考え、現大統領や政権、国会議員のみならず全米、全国民に心の底から訴えているなと強く感じました。登壇した演説者の中には亡きマーチン・ルーサー・キング・ジュニア牧師のお孫さんという小学生の少女を含めて中学生や小学生もいましたが、皆それぞれ真摯で情熱的な大人顔負けのスピーチで感心と感動の連続でした。自分自身の小・中・高校時代を思うと(現在も)比べものにならぬくらい立派な態度とスピーチでした。彼らアメリカの若者達は捨てたもんじゃない。現トランプ政権下で混乱と分裂・敵対している今のアメリカも5年、10年したら凄く良くなるのではないか?と明るい希望を抱かせてくれる若者達です。

今春高校を卒業して選挙権を得るシニア(4年生)はもちろん、今は選挙権を持たない下級生達も来年以降順次選挙権を得て投票可能になれば、NRAから政治資金援助を受けていたり、銃規制に積極的でない議員には投票しないでしょうし、彼ら自身が選挙権を持たない今でも選挙権のある両親や親類、友人、知人を説得して同様の影響を及ぼす事は十分可能です。(更に数年後には彼ら自身が議員に立候補可能になります。)そうなれば、NRAや銃規制反対勢力から政治資金援助や選挙支援を受けている上述の『偉い先生』(議員)達も今年の中間選挙や2年後の大統領選挙と通常選挙を見据えて具体的な結果を出さねばならず、従来通り安穏としてはいられなくなり、戦々恐々となるでしょう。

今期限りで引退や再選出馬しない予定の議員は別としても、まだこの先何年も議員を続けて、あわよくば大統領選挙にも立候補するつもりの現議員や復活当選を目指す前もしくは元議員、新たに議席を目指す新候補者などは銃規制問題をノラリクラリとかわして来た従来のようには行きません。また引退するベテラン議員や再選出馬しない議員も栄誉ある議員として過ごした末期と最終章を生涯誇れる形で幕を閉じられず失望と後悔の念が残るのではないでしょうか?

政治面では日米とも政権が揺れています。丁度一年前の昨年4月号で『春の訪れと日米政権の揺らぎ』と題して寄稿しましたが、一年後の今日現在も日米どちらも政権が揺らいでいます。日本では当時も問題となっていた森友学園の土地売買譲渡に関する公文書記録が財務省の幹部指示により改竄されていた事実が最近発覚し、首相夫人関与の影もチラついて安倍首相と政権の支持率が急降下。

米国では前回2016年の大統領選挙時にインターネット活動を含めてロシア政府要人や関係者が介入操作し、公正で民主的な選挙を妨害したのではないか、また当時のトランプ候補者および支援グループメンバーとの癒着・共謀があったのでないかとの疑惑(いわゆるロシア疑惑)で元キャンペーンメンバーや前政権幹部が告発され、刑罰軽減を条件に司法取引に応じたりしてますます疑惑の色を濃くしています。誰彼なく他人の悪口を言いまくるトランプ大統領が何故かロシアとプーチン大統領の事は悪く言わない事実、誰が考えてもおかしいですよね。国家安全保障や国家機密情報活動に関わる国家機関の責任者全てが口を揃えて2016年の大統領選挙前・中・後も米国国家機関や政党、企業に対してロシアのハッキング行為、介入操作活動があったと議会証言しても、プーチン大統領と会った際に本人に2度尋ねたが、「やっていない」という返事だったと権威ある身内の言葉を信用しないで敵対国の首長の言葉を信じるとはもっての他。上下院のほぼ全議員(98%)が賛成可決した対ロシア制裁をつい先日まで何もせずほったらかしにしてあったのも大きな疑問。素人目にもロシアと何か金銭的、政治的癒着関係か共謀があったのではないかと思われて当然。2013年にロシアで自ら音頭取りして開催したミス・ユニバース世界大会やモスクワに建設検討していたトランプホテル構想の絡みでロシアを何度か訪問した際に何か羽目を外した現場をビデオで隠し撮りでもされたか、表面には出せない資金洗浄か裏取引の汚れたカネ絡みで弱みを握られているような感じです。プーチン大統領に首根っこを押さえられている、男性間特有の下品な表現では「キ○タマをつかまれて」自由に身動き出来ない状況でしょうか?(女性の方、ご容赦願います)

また、政権幹部の中でも最重要ポストと言える、商務長官、国務長官、国家安全保障最高顧問が相次いで免職、辞職となり後任人事を巡って物議を醸しています。更に輪を掛けてトランプ大統領就任以前の複数の女性問題が表面化し、トランプ氏の個人法律顧問弁護士(後日当該女性から名誉毀損で訴えられています)がアレンジした秘密保持契約書の有効性疑義と口止め料の支払いが選挙法や選挙資金取扱い規定に違反するのではないかとの騒ぎになって公私共に混迷しています。

他にも米国の輸入鉄鋼・アルミ製品に関する特別関税と貿易戦争懸念、北朝鮮、中国、ロシアの動きなど春の嵐か椿事か?と思う事柄が諸々ありますが、それについてはまた別号で触れたいと思います。

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。