午後のお茶会 3

文・写真:YOSHIDA

“Under certain circumstances, there are few hours in life more agreeable than the hour dedicated to the ceremony known as afternoon tea.”

Henry James (1843-1916)  アメリカ生まれ イギリスで活躍した作家

「ハイティー/ high tea」という言葉を耳にしたことがあるだろうか。ここアメリカでは英国式の「アフタヌーンティー/ afternoon tea」の内容をさす。

そもそもアフタヌーンティーとは、1845年頃、イギリス女王陛下の元女官が始めた毎日の習慣だと言われている。7代目ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアだ。当時の貴族の生活は、夜の社交的なディナーが観劇や音楽会のあとで21時と遅くなりがち。空腹しのぎのため夕方15時頃から紅茶とバターつきのパンを自室で食していた。ほどなくして彼女は友人や客人たちと応接室でお茶とお菓子を楽しむようになり、これが「女性の社交の場」として定着していった。

さて、ハイティーという言葉であるが、イギリスではアフタヌーンティーが貴族発祥であるのに対し、ハイティーは絶対禁酒運動が盛んな時代の労働者階級発祥のものである。時間帯も夜18時頃から。すなわちそれは「夕食」をも意味し、パンやお菓子だけでなく、お肉やパスタなどをお酒ではなく紅茶とともにいただく。語源はこの時間帯に使用するテーブルが、アフタヌーンティーのローテーブルに対しダイニングテーブルなので背が高い、メニューのカロリーが高い、など諸説はいろいろとあるが、アフタヌーンティーとハイティーは全く別物である。

本来の言語としては意味が異なるということはぜひ理解して頂きたい。が、これから紹介するメトロデトロイトのティールームはハイティーという呼称。内容は、アフタヌーンティーである。

■Sweet Afton Tea Room (Plymouth)

当時の英国貴族たちはこのような空間でtea timeを過ごしていたのだろうか。テーブルウェアも壁紙も絨毯もぜんぶこだわりのお花柄(というか、主に薔薇)。シャンデリアの傘にティーカップ&ソーサーが使われておりそのアイデアに大きな拍手を送りたい。バスルームもぬかりなく。とにかく徹底している。このときサーブしてくださった店員はフレンドリーな方で、「あらあなたのティーカップ地味ね、もっとcuteなの持ってくるわ!」と別のものを持ってきてくれたほど。この時間を心ゆくまで楽しんでねという心遣いを感じることができた。

特徴は、各スイーツのテイストを選ぶことができること。メニュー表を渡されるが、これがまた悩みに悩む。サンドイッチは2種類、スコーン1種類、ミニタルトを2種類、これにキッシュがつく。なかなかのボリューム。ドリンクは数種類の中から1つ選ぶことができ、ポットでサーブしてくれる。もちろんデカフェも選ぶことができる。人気店で常にテーブルはオシャレした女性客でいっぱいの状態。

■Mad Hatter Bistro (Birmingham)

おしゃれスポット・バーミンガム!不思議の国のアリスをテーマにしたお店とのことで、内装は黒ベースでちょっとミステリアス。地下につながる階段は歪んだ時計がデザインされた壁紙で異空間への誘いをイメージしたものだろうか。バーカウンターがあり夜はディナーとお酒を楽しむことができる。男性も気兼ねなく入ることができる空間だ。

特徴は、各スイーツwith bottomless tea! 紅茶を何杯でも違うテイストを楽しむことができる。紅茶はNYで有名なHarney & Sons。全18種うちデカフェ6種。ティーパックを持ってきてくれる。カップに贅沢に一杯分のお湯が注がれる。

スイーツメニューはあらかじめ決まっており、サンドイッチにカリカリの香ばしいスコーン2個、ミニタルトやケーキに新鮮なフルーツが色とりどり。途中、パティシエが私たちのテーブルまで挨拶にきてくれた。特筆すべき点はスコーンに添えられているクリームたち。

レモンカードはハーブの香りでさっぱり、クロテッドクリームはバターの香りが高くふわふわでパティシエオリジナル。※予約の際にクレジットカードナンバーが必要になるので注意。

■TeaHaus (Ann Arbor)

学生にも人気の喫茶店。そして厳選された茶葉が購入できるお店。テーブル&チェア、ティールームは黒、ティーカップ&ソーサーなどテーブルウェアは白で統一されたシンプルでモダンな空間。女性だけでなく男子学生や小さいこども連れのおかあさんの姿もあり、テーブルは満席状態が長く続いていた。

特徴は、なんといっても170種以上にも及ぶリーフティの飲み放題!紅茶の専門店ならではのうれしい内容だ。好みでなければすぐに違うテイストをオーダーすることができる。ホットだけでなく、アイスティーもつくってくれる。ブラックティーだけでなくイエローティやホワイトティー、中国茶も扱っており、飲み比べが本当に楽しい。ティーカップが白色なのでお茶の違いが視覚的にも分かりやすいのだ。気に入ったテイストが見つかればぜひお土産にどうぞ。

スイーツメニューはこだわりの品々。最初にスープがでてくるところも他ではあまり見られない。4種の創作サンドイッチ・バケットに2種の存在感たっぷりのスコーン。大きなフレンチマカロンにも驚いた。パティシエ手作りで季節に合わせたフレーバーもある。※予約しておくとお得価格で楽しむことができる。

■The English Tea Garden (West Bloomfield)

ハガティロード沿いの小さなモールの中にあるお店。外見からはそこがティールームとは分かりづらい。内装はオーナーが仕上げたというカントリー調の壁画。グリーンを基調としたフォトジェニックな仕上がりになっている。

こちらでもハイティーをいただく事ができるが、おすすめはスコーン!ぜひ一度口にして頂きたい。まず、スコーンにしてはなかなかの大きさ。全体的にふわふわしていて食べ応えも抜群。スコーン特融のボソボソ感はあまり感じられない。イングランド出身の方がお店でスコーンを焼かれるとのこと。5~6種類のテイストがクリアケースに入れられて販売されており、持ち帰ることもできる。オーナーもフレンドリーな方でゆっくりすることができる。

ほかにもピンクとお花柄でとっても可愛らしい空間を作り出しているTonia’s Victorian

Rose (Rochester)や、隣国カナダのWindsorでもハイティーを楽しむことができる。

Windsor中心地にあるTeacups & Crownsでは調度品も豪華で棚から自分の好きなティーカップを選ぶことができる。テーブルウェアマニアにはたまらないサービスだ。

最後に・・予約方法。ハイティーを楽しみたい!という方は、予約してください。基本、前日までに電話予約が必要である。英語に抵抗がある方でも大丈夫。「ハイティーしたいです」から始まって、日にち、スタート時間、人数、予約者の名前、電話番号、で終了!

たまたまオーナーやパティシエがおり、且つ食材もあるーなんていう幸運が重なれば、当日オーダーできちゃったりもするが、私はこれでハイティーを逃したこともある。せっかく英国文化があるアメリカに居るのだから。優雅なお茶の文化を楽しんでみてはいかがでしょうか。

■英国式マナー

アフタヌーンティーは癒しの贅沢空間で「ご自由に楽しくお召し上がりください」という場ではあるが、本来は3段のティースタンドの下層からいただく。サンドイッチ、スコーン、スイーツの順。平たく言えば、塩気のあるものから始まり、甘いもので締めるという順番。

サンドイッチは一口サイズならばそのまま手でつまんでOK。大きな場合は自分のお皿でカットしてからフォークでいただく。スコーンは厚みを半分に切ってから。ジャムなどは自分のお皿に取り分けること。

もうひとつ正式なマナーとして、机が「ローテーブル」であるとき。お茶をいただく際は、膝にティーナプキンをひろげ、ソーサーごとティーカップをのせる。そして胸元までソーサーを持ち上げ、カップを口元に運ぶ。お菓子をいただくときも同様にすること。

■アイスティー

アイスティーは実はアメリカで偶然生まれたものである。1904年ミズーリ州セントルイスの世界万国博覧会。イギリス人のリチャード・ブレチンデン氏はインドの紅茶の試飲営業を展開していたが、この日は気温が高く蒸し暑い。お客様はアツアツの紅茶に見向きもしない。たまたまブース近くで氷を扱っていたのを見てひらめき!すぐさま購入。アイスピックを借りて氷を細かく砕き、熱い紅茶の中にいれる。なんて涼しげな飲み物だろうか。これが注目を浴び、たちまち人気となったという。

ちなみに紅茶の伝統国であるイギリスでは紅茶は温かい飲み物だという認識が強く、アイスティーの需要は少ないそうだ。

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