明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。この紙面をお借りして簡単な年始のご挨拶とさせて頂きます。今年は『戌年』。雪の中でも元気に走り回る犬のようにミシガンの冬にへこたれず今年も乗り切りましょう。元々夏の暑さより冬の寒さが苦手な私ですが、シニアの年齢になるとますます寒いのが苦手になりました。ミシガンの冬はここで四半世紀余りの年数を経ても好きになれません。とは言うものの、鍋料理の美味しさと有り難味が際立つのも冬ならではですので、悪い事ばかりでもありません。一つでも良い点があれば善しとしましょう。

犬と言えば、子供の頃に遊んだカルタ取りの一種に『いろはカルタ』、別称『犬棒(いぬぼう)カルタ』というのがありましたが、皆さんご存知ですか?いろは47文字(「ん」を除いて)の『いの一番』が「犬も歩けば棒に当たる」です。実際にカルタ取りで遊んだ事はなくても一度ならず耳にした事があるのではないでしょうか?リズムが良くて子供でも覚えやすいのですが、何となく知っているこのことわざには結構深い意味があります。諸説ありますが代表的な一つは、何かをしようとすれば思わぬ災難にあうことも多い。出しゃばって余計な事をせずにじっとしていなさい、という戒め(いましめ)。もう一つは、家にじっとこもっていないで外に出歩けば思いがけない幸運に出会うことがある。どんどん外に出なさい、という勧め。全く真逆のような意味ですが、両方合わせて、外に出れば災難にも幸運にもあうことがあるが、じっとしていては何も経験・学習が出来ない。良くても悪くても経験・知識が得られそこから智恵が生まれる。もっと積極的に外に出なさい、という完成型(?)もあり、最近は『ポジティブ思考』でこちらの使い方が多いのかもしれません。例えが良いかどうか分かりませんが、プロ野球界で日本ハムファイターズからMLBロサンゼルス・エンゼルスにポスティング制度を使って移籍が決まった『二刀流』大谷翔平選手の挑戦もそう言えそうです。願わくは、米国で歩き始めたら幸運な棒に多く当たって欲しいですね。二刀流の打者として持つバットは昔風に和訳すれば『打撃棒』ですから当たって何ぼ。ダジャレでもおじんギャグでも構わないので上手く芯に当たるといいですね。

では、新年1月号のテーマ『犬も歩けば・・・年頭雑感』です。

犬も歩けば、については上述しましたので、昨年来日頃感じ、思っていた事柄を年頭雑感として記してみます。先ず初めはやはりこれは外せない、触れなければならないトランプ大統領と政治のお話です。

連日ニュースに事欠かないトランプ劇場は興行を続けていますが、昨年末最大の話題はクリスマス前に共和党内だけで作成・調整・修正後上下院とも可決通過し、大統領が署名した税制改革法案です。大統領自身や政権及び共和党幹部の言によれば、「ミドルクラス米国民の所得増と雇用促進のための税制改革」との謳い文句ですが、どう見てもその実態は大手法人企業と全体のわずか1%程の富裕層向けの大幅かつ恒久的減税・所得増が目玉です。中小規模の個人事業主も恩恵を受けますが、ミドルクラスには雀の涙程のしかも時限付きの恩恵のみです。高税率の州や都市に住む人々や低所得層の人達の中には従来あった各種の所得控除や補助・助成金が削られ、増税または所得減になる恐れがあります。

リーンカーン大統領とは正反対の「トランプの、トランプによる、トランプのための政治」を体現している大統領自身とそのファミリー、お金や利権で繋がっている富裕層のお友達は大幅減税=即金で大幅所得増ですから大喜びで万々歳です。支払う税金が減って出費が減れば、コストが掛からずたちまち所得増となり自身の運営事業や他社に投資してその企業の事業が上手く行き利益を上げて初めて株主配当や投資リターンを得るような時間の掛かるまどろっこしい手順を踏まなくても済む訳です。こんなおいしい話はありません。トランプ大統領にしてみれば、この税法改革案立法化が一番やりたかった事で、極端な話他の面倒臭い政治の話や政権運営を逃げたくてもういつ辞めてもいい心境ではないかと思います。お金持ちや良家の出身者が多い共和党の偉い先生方も減税で自分の所得が増え、支持者からの政治献金増も見込めるため、強いて反対する理由がありません。

減税を受けた企業が社員の給与アップ、事業拡大、雇用増大するとか米国内の高税率を嫌って海外に拠点を移した企業が戻って来るとか聞こえの良い説明をしていましたが、高税率の従来でさえウォールストリートの株価は史上最高レベルにあり、雇用は増え続けいるのに必要以上に景気を過熱させ、高インフレを招くのは得策ではありません。環境破壊のおまけまで付いてきます。一時的な景気過熱ではなく、むしろ環境に優しい安定継続的な経済成長を出来るだけ長く続ける方がベターです。

そうでないと、好景気は一時的、短期的なものに終わり、バブルがはじけて多くの国民がまた不幸な目にあいます。好景気の今は減税する必要はなく、高税収を維持して国の累積負債を少しでも減らす方がより重要と思いますが、大統領を始め他人の事は考えず「自分さえ良ければ」とお金儲けに貪欲な一部の富裕層は後先考えもせず、この時とばかりに更なるお金儲けに走るでしょう。従来の高税率でもまともに税金を払っている大手法人企業は極めて少なく、大幅利益増となっても社員や取引先に還元される恩恵は微々たるもので、大部分は株主配当やCEO他の重役連への巨額なボーナス支払いとなって消えてしまうことでしょう。『金は天下の回り物』と言いますが、我々庶民にはなかなか回って来ないですね。一説によれば、お金は大変寂しがりやで仲間がいる所に集まるそうです。お金がお金を呼び、お金持ちが更にお金持ちになるのはそのためです。(嘆息)

次に触れたいのは、最近良く耳にする『ニューノーマル』という言葉です。日本でもう何年も前から問題となっている学校にも行かず仕事もしないで親の世話を受け続ける『ニート』や『引きこもり』、年間所得が生活保護受給者と大差のない200~300万円 レベルの貧困層・低所得層、安定した定職や勤務地、定点事務所を持たないフリーターやノマドという職業形態。人種・宗教的差別とは別に性的志向に基づくLGBT(男女同性愛者・両性愛者・性転換または自認性不一致者)差別など政治安定期、経済成長繁栄期には存在していなかったり、存在しても極めて少数派で余り話題にならず目立たなかった人達の絶対人数が増えて日常茶飯事のように話題となり、ノースカロライナ州で立法化されそうになった学校や公共施設でのトイレの利用者識別区分など取扱い方法や差別による衝突が一部社会問題化しています。過去には例外・特殊扱いされていた事が常態化し、保守派や保守的価値観保有者、差別主義者の抵抗を受けながらも普通の事、通常の事として新たな認識と理解を得始めており、ニューノーマルと呼ばれています。社会通念の変化や価値観の多様化がなせる業ですが、最近の大小様々な出来事を見るにつけ「あなたの常識は私の非常識」を思わせるギャップの大きさを感じます。私もどちらかと言うと古い(価値観の)人間の範疇に入るかもしれませんが、新しいグループや事象を何でもかんでも無条件にニューノーマルとして認めてしまうのではなく、公序良俗に反するもの、社会的にマイナスとなるもの、他人に危害を加えたり存在を脅かすものについてはアブノーマルとする適切な判断と対応処理をし、必要あれば抵抗、拒絶する勇気も持ち合わせねばならない、歴史の中で変えてはならない、維持し続けねばならない重要なものも有る筈だと思う次第です。お叱り、ご批判を受けるかもしれませんが、率直な意見として記しました。

以上、年頭雑感として書き綴りましたが、戌年の今年が皆様にとって少しでも良い一年になりますようにお祈り致しております。最後に私も含めて寒い冬場も元気な子犬のように心して外に出ましょう!思わぬ幸運という棒に当たるかもしれませんよ!!

執筆者紹介:小久保陽三

Premia Partners, LLC (プレミア・パートナーズ・エルエルシー) パートナー。主に北米進出の日系企業向け経営・人事関連コンサルタント業務に従事。慶応義塾大学経済学部卒。愛知県の自動車関連部品・工業用品メーカーに入社後、化成品営業、社長室、総合開発室、米国ニューヨークの子会社、経営企画室、製品開発部、海外事業室、デトロイトの北米事業統括会社、中西部の合弁会社、WIN Advisory Group, Inc.勤務を経て現在に至る。外国企業との合弁契約、技術導入・援助契約、海外現地法人設立・立ち上げ・運営、人事問題取扱い経験豊富。06年7月より本紙に寄稿中。JBSD個人会員。